「………なんだよ、これ………………」
新人たちの守っている箇所に、あの金髪の二人の片割れが来ていると聞き、急いで現場に向かったあたしの目の前に広がる光景は、明らかに異色異常なものだった。
地面に広がる黒い
ガジェットは敵であるはずなのに、それを抜きにしていっそおぞましいとさえ感じる光景。
いったい、誰がこれをしているんだ?
………いや、できそうな奴が一人いたな。
通信に寄れば、確かそいつもここn「あれ?ヴィータも来たのか」いたよ。
肩まで伸ばした黒髪に黒い瞳の典型的な日本人の顔つき。
袴に上半身は羽織を羽織っただけの『バリアジャケット』に身を包んだそいつが、あたしから少し離れたところにいた。
「…これは、お前がやっているのか?」
「そうだが?」
いや、そんな見て分からないか?って顔されても。
確かに、お前の足元と黒いのが繋がっているけどさ。
「これは何なんだ?」
「『原初の海』。効果は見ての通りだが、詳細は伏せさせてもらう」
………名前しか分からなかった。
もっと聞きたいのだが、こいつは秘密主義だからそうそう言いはしないだろう。
ま、仲間だから信用はしているけどな。
~Side主人公~
かの教授が『アカシャの蛇』に伝授された『創世の土』。
それをベースにして造った、俺のオリジナルである『原初の海』。
500の分体の結束で生み出した混沌を、広範囲に展開して敵を捕縛、咀嚼する術。
『創世の土』が対個人用とすれば、『原初の海』は対群用となるな。
拘束力こそ劣るものの広範囲に渡って展開できる分、一度に捕食できる数は桁違いに増えている。
まあ、実際のところ、拘束力が劣るといっても真祖を捕らえきれないというだけであって、この世界の魔導師たち程度なら、たとえなのはクラスでも問題なく捕獲できる。
問題点といえば今みたいな敵の大群に襲われた時に使える術だが、逆に言えばそれ以外では使えない、使い勝手の悪い術だ。
…そういえば、ガジェットは金属の塊だが、そんなものを喰って俺の腹とかそういうのは無事で済むのだろうか。
「………いや、後回しにしよう」
「どうしたんだ?」
「いや、こっちの話だ」
気にしたってしかたがない。
どうせ結果は後で来る。
と、ガジェット全機咀嚼完了、と。
「そういや、ティアナはどうした?」
「どっか行った」
「…ティアナが?」
「ティアナが」
ガジェットが消えたと同時に、丁度思い出したかのようにヴィータが訊いてくる。
そういえば、どこに行ったんだ?
「ティアさんなら、スバルさんが探しに行きましたよ」
「もう見つけて、一緒に裏手で警備をしているそうです」
なるほど。
裏でいじけて泣いているのがよく分かる。
「…そうか。六禄、経緯を教えろ」
「俺がか?まあ、別に構わんが」
とりあえず、全部ゲロっておいた。
~Sideティアナ~
「…ティア、そろそろ、戻ろう?」
スバルが話しかけてくるが、今はそれが酷く煩わしい。
「あたしは、ここの警備やってるから。アンタはあっち行きなさいよ」
「………あのね、ティア」
「いいから行って」
「ティアは全然悪くないよ!私がもっとしっかr「行けっつってんでしょ!?」………………」
スバルはあたしを思って言ってくれている。
それは痛いほど分かっている。
でも、今は誰にも関わって欲しくない。
一人にして欲しい。
そっとして欲しい。
「ご、ごめんね。また……後で、ね?ティア」
スバルが走っていく足音が聞こえる。
その後姿を見て、ホッとしている自分が許せない。
「私は………」
あの時、あの男が言っていた事例。
私は丁度、それと同じだった。
あの男は、吸血鬼になるまでは普通の高校生だったらしいから、今の私はただの高校生と同じなのね………。
「私は…っ!」
その続きが出ることは、終ぞなかった。
どうしようもなく悲しくて、
どうしようもなく辛くて、
どうしようもなく惨めで、
どうしようもなく