『ミッドチルダ』首都、『クラナガン』。
数多ある次元世界の総元締めに相応しく、人も町も活気に溢れている良い町だ。
しかし、そんな首都でも一歩表通りから離れると、途端に別の空気を醸し出す。
空を覆うようにビルに付いた看板は、カラオケやゲーセンにボーリング場から、風俗店や飲み屋、アミューズメントパークの物へと変わり、少し子供が来づらい雰囲気になる。
そこから更に細い路地を入り、段々とガラの悪いのが増える地域に侵入する。
ここはあくまでも中継点。
ここに来た目的は、
「おい、兄ちゃん。悪いけど俺たち今金持ってないんだわ。ちょっと募金してくんねーかな?」
「へへ…」
下備た笑いを浮かべる、全身を白で固めた三人組。
どうやら、カラーギャングとかいう集団は、地球だけの文化ではないらしい。
「ん?…ああ、お前たちで良いか」
「はあ?何がですか~?」
「いいから早く金出せよ!」
「痛い目にあわせてもいいんだぜ?」
三人組が何か言っているが、そんなことは、どうでもいい。
「この近くに、麻雀のできるアミューズメントパークで、それなりにレートの高いとこはないか?」
ここにはあくまでも、情報収集に来た。
「じゃ、もう一度訊こうか。ここの辺りで麻雀ができて、レートが高いとこはないか?」
「か、会員制の『Greeders』って店です!看板は出てなくて分かりづらいけど、ここから真っ直ぐに行ったとこにある、『アンナ』ってソープの隣のビルの六階に!」
俺に腕の関節をキメられ、情報をゲロるしかない白装束。
他の二人は、それぞれ顎と喉に一撃を入れられ、ノビている。
「会員になるには?」
「会員の奴に連れて行ってもらえば、店に入れて会員になれます!入会費で15万とられるけど」
ふむ。
そんな店なら、期待できそうだな。
「じゃあ、お前は会員なのか?」
「え?………い、いや」
ミシィッ…
「アダダダダダッッ!?」
「本当のこと言えよ?ポッキリいかれたくはないだろう?」
「なってます!先輩に頼み込んで会員になりました!!」
そうそう。
人間、正直に生きるべきだぞ。
「じゃ、紹介してもらおうか?」
「は、はいぃ………」
さてさて、どの程度愉しめるかな?
「混ざらせてもらっても良いか?」
「………ああ」
白装束に案内され、店内に入って会員登録を済ませて白装束を解放し、麻雀卓の並ぶエリアで、三人しか座っていない卓に座る。
俺以外は、全員40代~50代といったところ。
二人は明らかに堅気の風貌ではなく、一人はどうにもさえない。
借金をこさえたおっさんが、麻雀で借金を返そうとしているのが丸分かりだ。
「兄ちゃん。この卓のレートは今、1点1000円だが、それでも良いかい?」
おっさん、どんだけ借金をこさえたんだ。
まあ、
「大丈夫だ。むしろ、そっちが大丈夫か?」
「………ぶっはっはっはっはっ!!剛毅な兄ちゃんだ!…いいぜ。打とうじゃねえか」
さあて、牌を握るのは久しぶりだから、この一巡目だけはまともに打つか。
全自動卓が動き、牌が並べられる。
賽を転がすと、親は左隣のオヤジ。
次は俺が親になるな。
「ほれ、『北』だ」
オヤジが牌を置く。
…当たりはn「ロ、ロロロロロッ、ロンです!」「「「なにぃっ?!」」」
おっさんがまさかの豪運を見せただと?!
しかもこれ…っ!
「『人和』。…役満です!」
役満は32000点。
オヤジというか、全員の最初の持ち点は25000点。
………まさか親番一発で終了するとは。
オヤジ唖然としてるぞ。
おっさんは歓喜してるけど。
「これで借金は返済!それどころか一千万も貰えるなんて!」
二千万も借金してたのかよ。
「………あんたの口座に金は振り込んでおく。とっとと行け」
「はい!よろしくお願いします!」
おっさんが店を出た瞬間、この卓に流れる重苦しい空気。
「………デッカい損失だな。おっさん」
「…ああ。組に帰ったら、えんこを詰めにゃあならんな………」
「ワシもだ………」
辛気臭い空気が流れる。
俺は関係がないのに。
「随分と辛気臭いな。ここは葬式の会場か?」
おっさんがいなくなり、空いた席に座る男。
そいつの顔を見て、驚く。
「『カイン・スカリエッティ』?!」
「アグスタ以来だな。『水無月 六禄』」
…何でこいつが、ここにいるんだ!?
麻雀って、もっと長引くはずなんですけどね。