「ここが私の職場、『機動六課』です」
そう言って車が止まった所は、なんかやたらデカイ建物の前だった。
ちなみに、車の中でフェイトが上司に連絡をとっていたみたいだが、俺は寝てたから聞いてない。
この車、乗り心地が良すぎた。
さすがSF。
しかし六課とは。
「○暴?」
「それは四課です」
「三回程、世話になったことがある」
「え」
ん?
なんで地球の警察機構の話をしているんだ?
「まあ、そんなことはどうでもいいか」
「いやいやいやいや!良くないですよ!?貴方、前科あったんですか?!」
何を言ってんだこの小娘は。
「前
「ああ、良かったです」
バレてたら五年はぶち込まれただろうが。
もう一度言う。
「前
「分かりましたって」
手っ取り早く金が欲しくて、薬(ヤク)の売人ぶん殴って金と薬をぶん盗ったとは言えん。
四課にはその時に世話になった。
確実に金を持っている売人の情報のため、無線傍受とハッキングという形でだが。
バレてないから前科にはなっていない。
まあ、昔から喧嘩しまくってたせいで、中学から月三で警察の厄介にはなっていたがな。
そのたびに説教ですんでたから、それも前科ではないし。
「そう。前科はないんだ」
「本当ですか?!」
後一歩だったよー。
で、とうとう隊長室とやらに来たわけなのだが。
コンコン
「失礼します。『ライトニング隊』隊長、『フェイト・
フェイトがノックを二回し、室内に入る。
どうでもいいが、ノック二回はトイレだ。
三回で家族や親戚や友人、四回で職場などの礼儀が必要な場所となる。
ま、主に欧米での風習になるから、日本ではノックは三回が妥当となるがな。
「邪魔するよ」
扉が開いているため、中に入ってから扉を四回叩く。
「初めまして。私が『時空管理局遺失物管理部機動六課課長』、『八神 はやて』です」
その女と目が合った瞬間、
ピキーン!
と、頭の中で何かが共鳴したような音が響いた。
「お前は新世界の神になる」
「予言?!主語が違うと大違いやな!?」
「俺が新世界の神となる」
「宣戦布告?!さっきと言うとることが違う!」
そこまで言ってから、お互いに一息つく。
「そういえば、貴方のお名前は?」
「あ、訊くの忘れてたね」
………名前、ねぇ?
前世だと『柳田 正晴』って名前だったけど、死んだ今使う気にはなれないしなぁ。
ん~。
『獣王の巣』は混沌の能力だから~。
よし。
「………水無月」
「「ん?」」
「俺の名前は、『
混沌を意味する666。
それが今の俺の名前に相応しいだろう。
「クロックさん?」
ちょっと待て。
「違う、そんな正確に時は刻めない」
「失礼、噛んでもうた」
「わざとだ」
「かみまみた」
「わざとじゃない?!」
「垣間見た」
「何を?!」
「神を見た」
「あ、俺も俺も」
「え?」
ガシッ!
と、お互いに硬い握手を交わし、携帯の番号を交換しようとする。
て、あ。
「悪い。俺の携帯ぶっ壊れてたわ」
死んだときに壊れたな?
服とかは直っているのに。
これはあれか。
前世のことはスッパリ忘れろという、神の意思表示か。
せめてメモリの消去にして欲しかった。
「あらら。じゃあ、メモに書いてあげるわ」
「悪いね」
「ええんよ。わたしら、『親友』やろ?」
「………ククッ!ああ、そうだな」
そう。
俺たちは親友だ。
「………はやてって、初対面なんだよね?」
盛り上がる二人からハブにされたフェイトの声が、虚しく部屋に響いた。
「で、フェイトちゃんからもう聞いたやろうけど、六禄君な、『次元漂流者』っていう壮大な迷子になってしもうとるわけよ」
「ほう」
はやてといちゃこらした後、何時の間にか俺の現状と今後の話になっていた。
「それで一つ訊きたいんやけどな?」
「何でも訊きな」
「六禄君、何者なん?」
………何者、ねぇ。
「『水無月 六禄』17歳。身長176cm、体重68kg。誕生日が8月27日の乙女座で血液型はB型」
「結構詳細なプロフィールありがとうやけど、そうやないで?」
だよね。
「悪いとは思ったけど、用心のためにさっきからスキャンさせてもろてたけど」
「へぇ?で、どうだった?」
はやてがまっすぐ俺を見て、
「もう一度訊くで。いったい、
「さて、何だと思う?」
「焦らさんといてぇな」
ふむ。
もうちょっとこのトークを楽しんでいたいが、それは不味そうだな。
なにせ向こうは、俺がフェイトの前でいきなり焼け、蘇生しているのを見ていたという証拠がある。
おそらくだが、『バルディッシュ』辺りが録画なりなんなりしているだろうしなぁ。
「しょうがない」
「お。教えてくれるんか?」
「ああ」
この場において誰も傷付かないようにするには、言うしかないだろう。
「俺は吸血鬼だ」
「あー、なるほど」
「あれ?でも、何で太陽が大丈夫なの?」
おっとぉ。
妙に反応が薄いな。
ああ、確か友達の一族がそうだったか。
「別に大丈夫というわけじゃない。現に、実際俺の身体は焼けて一度死んだ」
「………吸血鬼には、蘇生能力がある言うんか?」
疑るような、はやての眼。
まあ、それもしょうがないだろう。
「そうでもない。『真祖』と呼ばれる連中ならともかく、俺もそうだが『死徒』という括りに入る奴らは総じて日光に弱く、定期的に血液を摂取しないと肉体を保てないしな」
「でも、今六禄君は生きとる。…なんでや?」
「高位の吸血鬼は、それぞれが特殊な能力を持っている。例えば、万物を枯渇させる空間を形成したり、平行世界を運営したり、四大の魔獣を作り上げて己の四肢としたり、自らが選抜した赤子への転生を繰り返したり、な」
「「………そんな」」
「ああ、血液をカレー味にするとかいう奴もいたか?」
「「なんで?!」」
「カレー大好きなんだと」
錬度が低いせいで、めちゃくちゃ不味い代物になるらしいが。
「そして俺の能力が、かのギリシャの大英雄『ヘラクレス』の逸話をモチーフとした『十二の試練』」
「…効果は?」
「大体予想はつくだろう?」
まさか、という顔をする二人。
ククッ。
いい顔だねぇ。
「11の代替生命ストックがあり、さらに一度受けた殺害方法では二度と殺せない。それが俺の能力だ」
「「………えええぇぇぇぇぇぇえええぇぇええぇぇぇぇっっっっ!!!!???」」
ククッ!
さすがにここまでとは思わなかったみたいだな。
ボケ倒す人とボケ倒す人で化学反応。
ツッコミが過労死するコンビです。