魔法混沌アニマルむろく   作:逸環

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時間が欲しい。
とにかく時間が欲しい。

じゃなきゃ書けんがな!


可愛いわけではない。

「さて、と。ここか?」

 

 

指定された場所に着くと、そこには誰もおらず蓋の外されたマンホールが口を開いていた。

 

 

「…どう考えてもここだよな」

 

「【………エリオ君やキャロちゃんの反応は、この下から来ています】」

 

 

ジャンヌが無情にも、逃避したい現実から逃がしてはくれなかった。

せめてこの下が下水管ではなく、雨水管ならいいんだが。

ちらり、とマンホールの蓋を見る。

 

そこには堂々と、ミッド語で『下水管』と書かれていた。

 

 

「………詰んだ」

 

「【馬鹿なこと言っていないで、さっさと行かないかい!】」

 

「りょーかい」

 

 

フランシスに尻を叩かれ、マンホールに飛び降りる。

糞尿に塗れた、臭気と汚濁の世界へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?思っていたほど、臭いはしないな」

 

「【………本来、下水処理技術の発達しているミッドでは、下水管と雨水管は区別なく造られています。ですが、この近辺はビル街ですので、生活排水が他所よりもが多くなります。そこで降雨時に下水管がパンクしないよう、首都近辺では通常の下水管に加え、雨水専用下水管が造られているというわけです】」

 

「なるほどなぁ」

 

 

つまりここは雨水専用下水管というわけか。

どうりで鼠の一匹もいないわけだ。

餌になるものが流れてこないなら、生息しようがないからな。

 

ちなみにだが、鼠は意外と泳ぎが達者だから襲われたときに水の中に逃げても無駄でしかない。

鼠に襲われる状況があればの話しだが。

 

さらにちなみにだが、鼠は一日に自分の体重の30%程度の食料を摂らなくては生存できない。

つまり、一日中何かを食べていなくてはいけないわけだ。

これが鼠が昔から拷問に使用されていた理由でもあるな。

常に腹をすかせていて、餌があれば即座に食い漁ろうとする。

人間が一人群れの中に落とされたら、あっという間に群がって、その小さな口で咀嚼を始める。

指の先から、徐々に徐々に齧り獲られ、痛みは延々と続き終わることを知らない。

逃げようにも手足は縛られ、何が己を痛めつけているのか、何が自分に触れているのかも分からぬよう顔には覆いをされている。

命乞いを重ねても、小動物には届くことはない。

その身に死が訪れるその時まで、ただただ度し難い痛みだけが自分を苛み、周囲には自分を害する存在のみ。

終わる先は発狂か死だけ。

鳴き声で鼠かなんては分からない。

鼠、特に拷問でも使われるドブネズミはチューチューなんて鳴きはしない。

キーキーという声だ。

チューチューなんて可愛らしく鳴くのは、もっと小型のハツカネズミくらい。

 

そう、鼠は可愛い生き物なんかではないんだ。

 

 

「【………鼠と何かあったんですか?】」

 

「飼っていたハムスターにテレビのコードを齧りきられた」

 

「【それだけ?!】」

 

「強いて言うなら後は、中学の時に高校生の女と寝たらその彼氏とかいうのがしゃしゃり出てきて喧嘩を売られたから、手足の骨をへし折ってから事前に鼠が(ねぐら)にしていることを知っていた下水管に落としておいただけだ」

 

 

命乞い?

そんなものは聞こえなかったなぁ。

 

 

「【なあ、あたしらのマスターって…】」

 

「【………忘れましょう】」

 

「お前ら失礼d、と、追い着いたな。おーい」

 

「あ、六禄さん!」

 

 

角を曲がったところで見慣れたエリオの毛色が視界に映り、声をかける。

いるのはエリオにキャロ、そして倒れている金髪の少女。

おそらくこいつが、あの『聖王』のクローン体であるヴィヴィオなんだろう。

 

まあ、そんなことは、どうでもいい。

 

うろ覚えだが、この後原作では戦闘になったはずだ。

『レリック』の回収もあるし、ひとまずは撤収だな。

 

 

「俺がこの嬢ちゃんを運ぶから、お前らは手近な出口を開けてくれ」

 

「分かりました!」

 

「…分かりました」

 

 

元気に返事をするエリオと、気遣わしげに少女を見つめるキャロ。

ふむ。

 

 

「エリオー、探索の前にちょっとこっちおいでー」

 

「なんですか?」

 

 

エリオを呼び寄せ、耳元で囁く。

 

 

「キャロが不安そうだから、探索中はずっと手をつないでてやんな。あと、ここを出たら後のことは全部俺がやっておくから、残りの休暇を二人で楽しんでこい」

 

「え?!」

 

 

驚いたように声を上げるエリオ。

手をつないでとか言ったせいか、顔も少し赤くなっている。

やれやれ、俺がこのくらいの時には、しょっちゅう女友達(セフレ)と…いや、これはどうでもいいか。

 

 

「ほれ、行ってこい」

 

「は、はい!」

 

 

背中を押して、キャロのところに向かわせる。

まったく、幼いっていうのは、無垢っていうのは、可愛いもんだねえ。

 

 

ドド

 

 

………ん?

 

 

「なんだ?」

 

 

突然、思考に割り込んできた音。

どこからか、まるで膨大な量の液体が流れてくるような音が………。

 

 

「む、六禄さん」

 

「どうした?キャロ」

 

 

慄いた表情で、俺の背後の暗闇があるはずであろう方を指差す。

それに対して後ろを向くと、

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!!

 

 

「なにぃ?!」

 

 

鼻を突く鉄錆の匂い。

鮮血の濁流が狭い下水管の中を押し進み、俺たちを飲み込もうとしていた。

ここは下水管の中。

逃げ場なんてない。

 

 

「ちっ!『混濁の壁』ぇっ!!」

 

 

『混濁の壁』で下水管をふさぎ、濁流がこっちにまで流れ込むのを防ぐ。

壁と濁流が衝突し、轟音を立てるも壁は動じずに存在し続けている。

どうやらあれは、Bランク以下にはなるらしいな。

 

徐々に音も止み、向こうで動きはなくなったのが分かる。

だが、気は抜けない。

ここで解放しようものなら、あっという間にここは鮮血で満たされてしまう。

だからまずは、分体を総出で血をがぶ飲みするところから始めなくてはいけないだろう。

 

そう思い、行動しようとした瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハ!やっぱりまーくんだ!」

 

 

…おいおい。

来るとは分かっていたけど、心の準備はできていないぞ。

 

一本道を振り返る。

するとそこには、

 

 

「久しぶりだね!まーくん!菫だよ!!」

 

 

現ナンバーズ13でもある、幼馴染の『閃日(せんひ) (すみれ)』がいた。

 

 

 

 

 

 




主人公のブラック加減暴露と新キャラ登場。
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