あの後二人をなだめ、すかして、いなして、スルーして落ち着かせ、『十二の試練』の蘇生に関する部分と『ヘラクレス』の伝承との関係について説明して納得してもらい、なおかつ『獣王の巣』を秘匿できた。
『機動六課』所有の訓練施設。
その内のビル群の中にいるのだが、
「これがホログラム的なやつねぇ」
「ふっふーん。凄いやろ?」
実際凄いけど、予算的にどうなのだろうか。
この課だけ、異常に予算を貰ってるんじゃ?
まあ、しかし、
「何でここに連れてきたんだ?」
「ん?それはなぁ」
もったいぶった様なはやて。
その数分後、
「さあ!行くよ!」
俺の正面で、鎌を構えるフェイト。
その目は、剣以上にぎらぎらしている。
「………なんでこうなった?」
ああ、そうか。
「頑張ってなー」
「お前のせいだ!このポンポコがぁっ!!」
「誰が狸や!?」
こいつが数分前に、能力確認のために模擬戦するとかいったせいだ!
なんで俺があんな目ん玉ギラギラの戦闘中毒者と戦わねばならんのだ!?
「能力を示して、うちに戦力として登録されれば、衣食住は保障するでー」
「かかってこいやあぁぁっっ!!」
ぶっちゃけて言えば、公園でホームレスなり山海でサバイバルなりできるが、血液摂取に支障が出るし、暖かいふかふかの寝床で寝たいし。
ほら、吸血鬼って言っても棺桶でなんか寝てらんないんだよね。
「凄いヤル気になりよった」
「この世は所詮、衣食住と酒・金・女。そして巫女・シスター・新任女教師!それを満たすためなら何でもするさ」
「「………うわぁ」」
………うん。
ここまでドン引かれるとは思っていなかったさ。
でも、本心だからしょうがない。
「さて、そろそろ始めようか」
「止めていたのは六禄君や」
それを気にしてはいけない。
で、
「『フォトンランサー』!!」
「近距離戦しかできない俺に、遠距離戦って酷くねぇ?!」
「だったら近づこうよ!『フォトンランサー・ファランクスシフト』!!」
「近づかせる気が欠片もねえだろ?!」
30発以上の『フォトンスフィア』より繰り出される、『フォトンランサー』の一点集中高速連射で近づけやしない。
何気に誘導機能もあって、避けても向かってくるし。
『獣王の巣』の分体を放てばどうとでもなるが、情報社会ではできるだけ秘匿したいし。
と、ん?
走って逃げている最中、ビルの陰で見つけたそれ。
あんなもんまで再現しているのか。
「ククッ!」
思わず唇が弧を描く。
あれさえあれば百人力だ。
~Sideフェイト~
彼を見失ってしまった。
彼には中遠距離を攻撃する手段がないから、『フォトンランサー』で封殺しようと思って攻撃していたら、人外らしいと言えばそうな速さで逃げ切り、隠れてしまった。
「うぅん。どこに行ったのかな?」
はやてからは、これが試験だとか考えないで、思うように戦えばいいって言われてるけど。
「隠れられてたら、戦いようがないよ」
「へぇ?ま、もう隠れないけどな」
「ッ?!」
上から聞こえてきた声。
まさか、ビルの屋上から跳んできたの?!
声に反応してバルディッシュを振ると、
ガキィンッ!
と、随分と硬質な音が聞こえた。
どこで拾ったのか、彼が持っていた武器は、
「鉄パイプ?!」
「これでも県下有数の不良高入ってんだ。一番の得物は
ギニィッ
と、歪に弧を描くその口は、確かに笑っていた。
「オラァッ!」
「くぅっ!?」
鉄パイプを思いっきり振り抜くことで、私と自分の距離を一度に離す。
魔道師じゃない彼が、空中戦に慣れているとは思えないのに。
………この人、相当に戦いなれている!
「んっん~♪」
ビルの屋上に立ち、私を見下ろしながら鉄パイプを振る彼。
その動きは、鉄パイプの重心を確かめ確実に重い一撃を与えるためのものに見える。
て、言うか、
「質量兵器ですよね?!それ?!」
「質量兵器がどうとかは知らんが、管理局員様とやらはそんなご大層なものを持っていながら、そこらへんの鉄パイプに負けるのか?」
「ッ!そんなことh「ま、どうでもいいけどな」キャッ?!」
私の言葉を遮って、投擲される鉄パイプ。
間一髪でそれを避ける。
危なかった。
もし
でも、これで彼に武器はない!
また新しく拾われる前に、ここで決める!
「『ソニックフォーム』!!」
バリアジャケットを高速機動特化に換装し、一気に距離をつめる。
このスピードなら、何かをすることもできないはず!
そして、至近距離まで近づいた彼の表情が変わり、
「ぼんっ」
ドゴオオォォオオォオオォォォォォォンンッッッッ!!!!!
彼が足を動かすと、それに踏まれていたコード同士が接触。
彼の立っていたビルが爆発し、私はその爆発で吹き飛ばされ正面のビルに叩きつけられた。
爆発の瞬間に見えた彼の表情は、悪戯が成功した子供のように笑っていた。
そしてそのまま、私は意識を失い………………。
~Side主人公~
爆発の衝撃と爆風で、空に打ち上げられる。
しかし、そこらにあった車からガソリンやらエンジンやらバッテリーやら花火の火薬(なぜあった?リアルにも程があるだろう)やらを適当に組み合わせて爆弾を作ってはみたが、即興にしては良い出来だったな。
鉄パイプを手に入れて、その後あいつに見つからないようにしながらゴチャゴチャやっていたが、無事に成功してよかった。
ぶっちゃけ、結構なギャンブルだったからな。
爆弾製作の段階でコードの長さが足りなかったりとか、試しに起爆するわけにもいかないから、ぶっつけ本番だったし、フェイトと距離をとった時に、ちゃんとあのビルに跳べるか分からなかったし。
ま、成功したし、どうでもいいか。
さて、フェイトは、と。
ああ、いたいた。
眼下のビルの一つに叩きつけられたみたいだな。
これでもう、動けないだろ、ううぅぅっ?!
あれ?!
あいつ気絶してないか?
そしてあいつ、墜落してないか?
あのまま落ちたら、お陀仏だぞ!
本当は隠し通したかったが、しょうがない。
「分体一体解放!人を乗せて飛べるやつ!」
間に合え!
~Sideフェイト~
「間に合ったあぁぁっっ!!」
「……………うぅん?」
聞き覚えのある、彼の声で目を覚ます。
そういえば私は気絶しちゃって、え?
ああ、そうか。
私は彼に助けられたのか。
私の目の前の彼の表情は、心の底からホッとしているようで、とても暖かいものだった。
て、
「なんでペガサスがいるのおぉぉっっ?!」
「…いや、なんか人乗せて飛べるので出てきた」
私は今、ペガサスに乗って彼に抱きとめられていた。
いや、こういうシチュエーションとかは嫌いじゃないけどね?
こう、お姫様っぽくて。
そんなことを考えていると、
「【六禄くーん。フェイトちゃん助けてくれたのはありがたいんやけど、ちょう説明して欲しいんやけど?】」
「そ、そうだよ!私も教えて欲しいんだけど!」
空間に画面を出して通信してきたはやてと一緒になってそう言う。
何せ、知りたいことが多過ぎるから。
そう言われた彼は私たちに、
「説明はしてやるが、覚悟しておけ?俺は秘密主義の虚言癖だからな」
まるで少年のような笑顔で、そう言った。
主人公はあくまでも、なんでも有りが基本の戦い方です。
まあ、爆弾作成なんて、さすがにそうそうやりはしませんが。
完全な余談ですが、後書きを書いている最中にどうやら猫が発情期に入ったらしく、家の外が猫の鳴き声で煩かったりします。
お前ら、声はもっと落として行為に励めよ。