ようこそしたくなかったわ、こんな教室   作:薔薇尻浩作

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短いし話が進まない。早く5月1日の茶柱劇場が書きたい。


歳を取るとついつい親目線で考えてしまいがち。

 

関西を中心に展開しているらしい、ちょっと高級志向で日本茶専門を売りにした某有名な喫茶店。

懐古的な和の雰囲気を残しつつ、それでいて洗練されたモダンなデザインが特徴の店内には他の客が居ない。

どうやら運良く貸切状態のようだった。

 

井草が薫る畳の上にひかれた赤と青の煎餅座布団の上に向かい合うように俺達は座っている。

既に適当に注文を済ませていた俺がふらりと周囲を見渡せば、奥まった半個室を隔てるよう障子戸やインテリアであろう和紙をあしらった日傘や桃色の蹴鞠。

まるで京都の老舗の喫茶にでも迷い込んだのか。と錯覚してしまいそうだ。

 

これでもしも、目の前で白玉クリーム餡蜜を美味しそうに味わっている『彼女』の服装が、前衛的デザインの赤いブレザー姿ではなく華やかな着物に身を包んでいたならば。

きっとこの芸術的な空間を更に昇華させるアクセントになるに違いない。

 

そんな事をぼんやりと考えながら高級感ある天目茶碗に注がれた玉露を啜っていると、対面に座る美少女の弾むような声が響いた。

 

 

「何だかすっごく雰囲気のあるお店だねっ。佐城くん、こんなお店どうやって見つけたの?」

 

 

ヘーゼルブラウンのショートボブ。キラキラと光り輝くガーネットの瞳。

天使のような美少女。『櫛田 桔梗』がそこに居た。

 

 

「入学してから今まで敷地内を隈なく探索していましたのでその時に、ですね。喫茶店、軽食屋、雑貨屋、電気屋、病院。本当にこの島には何でもあるみたいですよ」

 

 

俺の言葉に櫛田は興味深そうな顔でズイッと此方に身を寄せる。

椎名とはまた違った種類の少女の甘い香りが鼻先をくすぐると同時に、彼女の見事なたわわが漆塗りの見事な食卓の上でポヨリとこれまた見事に弾んで形を変えた。

 

 

「佐城くんって意外と行動力があるんだねっ。クラスでは落ち着いて読書をしてる様子が印象的だったから、ちょっとギャップ萌えかも」

 

「インドア派なのは間違い無いのですが、三年間は嫌でもこの島で暮らす訳ですからね。柄にもなく、少し張り切って探索していたんですよ」

 

「そうなんだっ。私も友達と遊んだ時に色んなところを回ってみたけど、こういうお洒落なところは初めてだからドキドキしちゃうよ」

 

 

向日葵のような眩しい笑顔は満悦を表現している。

きっと俺に原作知識が無ければ素直に彼女の言葉を信じ、ダラシない顔で美少女からのお世辞に舞い上がっていた事だろう。

 

 

「櫛田さんに喜んで頂けて幸いです。このお店も路地裏にあるからか、お客は少ないみたいですね。初めて入りましたが中々の穴場なようで安心しました」

 

 

波紋を象った涼しげなデザインの小皿の上に鎮座するのは俺が注文していた琥珀糖だ。

アメジストのような神秘的な美しさを放つ食べる宝石を一口放り込む。

脳髄を蕩かすような官能的な砂糖の甘味。それから舌先に残っていた日本茶独特の上品な余韻。

美味い。無意識の内に頰が緩み、ウンウンと頷いてしまう。

 

 

(あ、イカンイカン。普通に甘味を楽しんでたわ。油断は禁物っと)

 

 

昇天してもおかしくないような幸福のマリアージュに浸りたい。そんな欲望にかられつつも、俺はバレないように目の前の櫛田を観察していた。

 

櫛田の表情はニコニコと擬音が鳴りそうな程に可愛らしい笑顔で彩られている。

だが、これが莫大なストレスを代償に生み出した強靭な『ガワ』である事は俺は原作知識で知っているわけだ。

そう考えるとこの笑顔ですら氷で象った仮面を被っているように見えて、何処か痛々しくすら思えて来る。

 

 

(改めてしっかり絡むと、やっぱり櫛田って面倒くさいキャラなんだよなぁ。見た目は百点満点だし、裏表あるキャラは別に個人的にそこまで嫌いじゃないんだけど、でもやっぱ本音を言えば積極的に絡みたく無いっていうか)

 

 

1学年の間ではその名を知らない者は居ないであろう圧倒的な知名度と人気を誇る天使のような美少女。

それが櫛田 桔梗という女優が『演じている』キャラクターだ。

 

彼女の内面は面倒くさい。非常に、異常に、面倒くさい。

兎にも角にも承認欲求が強く、自分が一番であり、常に周囲からチヤホヤされて持ち上げられていないと気が済まないという異常なまでの我儘さ。

全身全霊を懸けて善人を演じているが、その内心では自分以外の全ての人間を見下し、更にはどんな人間にも一切の信用を見せない傲慢さ。

 

 

(確か、幼い頃は勉強も運動も一番だったけど成長するに連れてその地位が崩れた。だから代わりにクラスで一番の人気者のポジションに収まる事で承認欲求を満たしている……だっけ?)

 

 

脳内で必死に原作知識と彼女のプロフィールを思い返しながら考える。

何というか、一言で表すならば非常に『生き辛そう』な少女だと思うのだ。

 

承認欲求は誰しもが持つ人間として当然の生理的欲求だが、それが肥大化するとこんなにも哀れな少女になってしまうのか。

そう思うと、いっそ恐怖すら感じて背筋が寒くなった。

 

 

「佐城くん。こんな素敵なところに連れて来て貰えたのは嬉しいんだけど……本当にご馳走してもらって大丈夫なの?」

 

 

月末が近くなった放課後に俺からお誘いした今回の食事は、全て俺が奢るから是非に。と言う謳い文句で実現したものだ。

お馴染みのパレットではなく態々ちょっとお高めのこの店にした理由は、人気者である櫛田を目当てにした野次馬を避ける為。

それから今までの誘いを不意にして来たことへの謝罪も込めてだ。

 

茶を飲みながら甘味を楽しむにしては割高な料金が請求されるだろうが、これも必要経費。

もしも今から前言撤回してワリカンで。何て言ってやったら彼女の内心でどんな罵詈雑言の嵐が飛んでくるのだろうか。等と下らない事を妄想しつつ、俺は彼女の疑問にやんわりと肯定した。

 

 

「もちろんですよ。今まで散々に櫛田さんからお誘いをお断りさせていただいた事へのお詫びなんですから」

 

「そんな……別に気にしなくてもいいのに。佐城くんが忙しいのに強引に誘っちゃった私が悪かったんだから」

 

 

眉尻を下げ、大きな瞳を涙で潤ませるその顔は心の底から申し訳なさそうな表情だ。

その顔面偏差値だからこそ許されるあざとくも可愛らしい姿は男の庇護欲を誘い、胸をときめかせる魅力を持っている。

 

 

「いえ、お誘い自体はとても嬉しかったので、櫛田さんは気に病まないで下さい。むしろこうしてお時間を頂いたボクの方こそ謝らなければならない立場かと」

 

「そんな事ないよっ。私はずっと前から佐城くんと一緒に遊んでみたかったんだから」

 

「人気者の櫛田さんにそう言われると舞い上がってしまいそうですね。ですがクラスの男子に今日のことが発覚したら恨まれてしまいそうです」

 

「人気者だなんて‼︎ 私はただ沢山の人と友達になりたいだけだよー」

 

 

俺は櫛田を適度に持ち上げながら、穏やかな微笑みを意識して彼女と会話を続けていた。

コロコロと表情を変える櫛田からはネガティブな感情は察知できない。

だがそれも鉄壁の擬態の成果なのだろう。

きっと腹の中では誘いを断り続けていた事に激怒しているだろうし、こうして俺が彼女を褒め称えたところで嬉しくも何ともないに違いない。

 

 

(俺の中身が歳くってるからか、何つーか、櫛田見てると哀れに思えてきちゃうんだよな)

 

 

彼女の笑顔は完璧だ。死ぬほど嫌っていた堀北や、下衆な目線を隠そうともしない山内や池にすら一切の嫌悪感を露わにしない完璧過ぎる仮面だ。

 

Dクラス内の女子ほぼ全員から慕われている櫛田は、きっと女子グループ内のドロドロとしている内情なんかにも適切な心配りをする為に常に気を張り続けているのだろう。

それでも彼女は完璧な笑顔を浮かべている。不満や疲弊も一ミリも外に出さず、ただひたすらに莫大なストレスを孕みながら完璧な笑顔を浮かべている。

 

だが、自分を押し殺してまで彼女は『善い人』をやらなければならないのだろうか?

 

 

(学生の頃からこんな生活って……下手なキャバ嬢や風俗嬢よりもストレス溜まるぞ。マジでいつ身体壊してもおかしくない気がする)

 

 

誰だってそうだが将来的に社会に出れば、殺してやりたいぐらいムカつく上司や生理的に無理な同僚とすら、腹の中で殺意を抱きつつもニコニコと笑顔で接してペコペコと頭を下げなければならない。

 

それも、とてつもなく長い間。働く必要がなくなるまで。ずっとだ。

 

 

「ボクはあまり積極的に人付き合いができるタイプの人間ではないので、こうして櫛田さんに親しくして頂けて本当に感謝していますよ」

 

「感謝なんて大袈裟だよー。きっと佐城くんと仲良くしたい人は多いと思うよ? 今度誰か誘ってカラオケとかどうかな?」

 

「ええ、是非とも。櫛田さんさえ良ければ」

 

 

前世では独身だったし、結婚願望すらなかった身だ。

だがもしも、もしも俺が家庭を築き娘が産まれていたとしたら。

あまりにも痛々しい作られた笑顔を浮かべている、哀れな少女の様には絶対になって欲しくない。

 

自分の欲望の為に本当の自己をすり減らし、他人の信頼を得る為だけに他人に望まれた虚像を演じ続ける。

そんな姿は、あまりにも哀れでは無いだろうか。

 

 

(まあ、櫛田本人からしたら他人に哀れまれた所で余計な憎悪を生むだけなんだろうけどさ)

 

 

仮に俺の方から最大限の譲歩と同情を持ってして櫛田と仲良くなろうとしたところで結局、生まれる絆は偽物だろう。

全てを見下し自分以外の何者をも信頼できない彼女からすれば、他人との関わり自体が負担にしかならない。

きっとこうして楽しそうに端末をスワイプしながら「誰を誘おうか?」何て微笑みながら次回の遊びのメンバーを吟味している今ですら、内心では友人が少ない俺のことを嘲笑って侮蔑しているのではないだろうか。

 

 

(いっそ過去や本性を知ってる事をバラして本音を曝け出せる親友ポジでも狙ってみるか?……いや、普通に無理だな)

 

 

此方側も裏の顔。と言うほどのものでも無いが敬語をやめて前世と同じように普通のオッサンとして猫をかぶるのを止めて接してみたとしよう。

ついでにハリソン少年のトラウマとなった過去の事件だって暴露してもいいかもしれない。

 

互いに忌々しい過去を打ち明けて擬態の為の猫の皮を剥ぎ取りあい、古傷を舐めあい孤独を癒しやがて二人は掛け替えのないパートナーとなりましたとさ。めでたしめでたし。

……いや、白々しいにも程がある。何て空虚な妄想か。

そんな都合良く物事が上手くいく事なんて絶対にあり得ないだろうに。

 

いくつかの二次創作では櫛田と仲良くなったり恋人になったりするifを読んだ事もあったが、中身がオッサンの男の娘がDクラス入りしている事以外は原作に忠実なこの世界。

うろ覚えの知識になりつつあるが、原作での櫛田は堀北を退学させる為に龍園と組み、なおかつ協力者となった龍園本人すら退学させようと企んでいたイカレ女だ。

仮にこちら側が心の内や過去の事件を曝け出し「裏表があるのは同じだ」と共感を煽ったところで「俺だけは君のこと分かってるよアピール? ハハッ、キモッ」と嘲笑されて終わるだろう。

ただの妄想だと言うのにやけに鮮明なイメージがすんなり浮かぶのだから不思議な話だ。

 

 

「じゃあみーちゃんと……あ、王さんのことね? みーちゃんと心ちゃんと四人でどうかな? あの二人だったら大人しめで優しい娘達だから、佐城くんも疲れることもないと思うの」

 

「そうですね。お二人とは挨拶程度ではありますが顔見知りですし、何の関わりもない方達よりもずっと気楽です。お気遣いありがとうございます」

 

「全然大丈夫だよっ‼︎ 特に心ちゃんは佐城くんとお近づきになりたくてソワソワしてたんだから」

 

「そうなんですか? 挨拶をしても目を逸らされてしまうので、嫌われてないかと少々不安だったのですが」

 

「あはは……心ちゃんは照れ屋さんだからね」

 

 

結局こちらがどんなアクションを取ったって櫛田にはストレスにしかならないだろう。

ならばもう、仕方ない。彼女からは恨まれようが嫌われようが割り切るしかないだろう。

幸いにして櫛田の外面は完璧だし、どんなに嫌われようと表面上は完璧なアイドルを演じてくれる。

 

 

(要するに櫛田の事は格安でお話や食事に付き合ってくれるキャバ嬢みたいなもんだって割り切っちまった方がいいか)

 

 

風俗ほどでは無いが会社の付き合いで散々にお世話になった華やかな夜の蝶達は、どんな客でも気持ちよく褒めて煽てて持ち上げてくれる。

だがその内心では客を殺してやりたい程のストレスに襲われているらしい。

その精神的負担は半端ではなく、せっかく稼いだ金の大半をホストクラブに貢いでしまう人間も珍しく無いんだとか。

櫛田本人は金を稼ぐ為に善い人を演じている訳では無いが、他人の信頼を獲得し秘密を握る事が彼女にとっての給料代わりだ。

 

 

(現役JKというブランドつきの文句無しの美少女。お巡りさんに怯える事なく合法的に未成年とお喋り出来ると思えば、まあ考え方によっちゃあ役得かもな)

 

 

当たり前ではあるが普通のオッサンは歳を重ねれば重ねる程に若い女の子、それも女子高生というスペシャルブランド持ちとの関わりが減っていく。というか滅多に無い。

それこそ教師や塾講師でなければ皆無の可能性もある。

ならば二回目の高校生活。色んな意味で楽しまなきゃ損だろう。

 

 

「それにしても櫛田さんは本当に人望の厚い女性ですね。クラスどころか学年一の交友関係をお持ちなのではないですか?」

 

「そんなことないよー‼︎ クラスでもまだ一緒に遊んだ事の無い人達だっているし、他のクラスの人は……うーん。連絡先の交換ぐらいがメインかな?」

 

「他クラスならば物理的にも心理的にも距離がある訳ですし、それでも十分だと思いますけどね」

 

「でも、せっかく同じ学校で出逢えたなら友達になりたいと思わない? 自己紹介でも言ったけど、私の目標は学年全ての人と友達になる事だから」

 

「櫛田さんでしたら学年の枠を飛び越えて、校内の全ての先輩方とも絆を育んでしまえそうですね」

 

「えへへっ。そうなるといいなー」

 

 

それに下世話な理由を差し置いたとしても、何より櫛田 桔梗はコミュニケーション能力が人外のレベルで高い。

彼女に頼めばよっぽどのボッチ上級者でもない限り、どんな人間の連絡先も手に入れる事ができるだろう。

顔が広い。コネを持つ。というのは非常に有力な武器となる。

俺が初めて櫛田との交流を決意したきっかけも他クラスに在籍している一之瀬との繋ぎが目的だった。

とは言え入学当初から迷走に迷走を重ねて七転八倒してようやく立ち上がり、方針がグルリと変わった今、無理にBクラスと顔を繋げる必要も無くなってしまったのだが。

 

 

(ガンガン稼ぐって決意しちまったからには茶柱に悟られるのも承知の上。まあ態々Bクラスに喧嘩売る真似はしないけども別に仲良しごっこする必要も無いんだよなー。一之瀬に絡み過ぎると南雲が出てくるかもだし)

 

 

貯金箱代わりに俺のプライベートポイントを一之瀬にプールして貰う必要も無くなった現在、ぶっちゃけ早期に彼女に接触するメリットは無い。

どうせ須藤事件で堀北と綾小路辺りが勝手に同盟を結ぶだろうし、遅かれ早かれ接点は出来る筈だ。

まあ、強いて言うなら佐倉や長谷部に勝るとも劣らぬ巨乳を早く眺めてみたいぐらいか。

 

 

(目の前の櫛田の胸ですら動く度にポヨンポヨン跳ねてる。これ以上の爆乳……是非一度は拝んでみたい)

 

 

普通に最低な理由である。

 

そんな下世話な妄想と荒ぶって来た下半身の煩悩を鎮めながら、俺は小皿に残っていた最後の琥珀糖を噛み砕いた。

ふと見れば櫛田が食べていた餡蜜の皿も空になっている。

味は上々、高級志向の強い店に有りがちで一皿一皿が程よく小さめな和菓子がメインの店なので、食べようと思えばあと二、三皿いけるだろう。

 

 

(前世では甘いものは得意じゃなかったのに、この身体に憑依してからすっかり甘党になっちまったからなあ)

 

 

菓子作りが得意な母親の影響か、大の甘党に育ったハリソン少年の身体は櫛田の食べていた白玉クリーム餡蜜や、メニューに載っていた特上わらび餅に甘味を求める食指が動かされつつあった。

だが、こうしている内にも障子窓からぼんやり漏れ出る陽光は徐々に焼け付くようにして、じんわりと赤く染まっている。

この後に夕食を控えているのだ。あまり甘味を食べ過ぎるのは身体に良くない。それは年頃の少女である櫛田としても、きっと同じ考えだろう。

今日はここらでお開きだ。

 

 

「……ご馳走様‼︎ お茶も餡蜜もすっごくおいしかったよ‼︎ 今日は本当にありがとう佐城くん」

 

「ああ、櫛田さんに喜んで頂けたのなら幸いです。ボクも貴女とご一緒出来て光栄でした」

 

「もうっ揶揄わないでよ‼︎ それに、それは私の台詞かな? 他の女の子に佐城くんと二人っきりでお出掛けしたなんて知られたら嫉妬されちゃうかも」

 

「まさか。クラスでボクに構って頂けるのは櫛田さんぐらいですよ」

 

「またまた〜」

 

 

互いに互いを褒め合い、ニコニコと微笑み合いながら帰路に就く。

側から見た俺達二人は、きっと幸せな学生生活を何不自由なく満喫しているように映るのだろう。

 

 

「櫛田さん」

 

「なぁに?」

 

 

茜色の空の下、俺の声に櫛田が振り向いた。

ヘーゼルブラウンのショートボブ。キラキラと光り輝くガーネットの瞳。

天使のような美少女。

『櫛田 桔梗』が小首を傾げて俺を見つめている。

 

 

「これからも。どうか『友人』として、末永くよろしくお願いします」

 

 

俺の唐突な願いと共に差し出された右手にキョトンとして表情を浮かべた彼女は、その後照りつける太陽すら霞む輝く笑みと共に両手で俺の手を握った。

 

 

「こちらこそ、これからも宜しくね‼︎ 佐城くんっ‼︎」

 

 

天使のような彼女の裏に、どす黒い悪魔の影がチラついたのを気づかないフリして。

 

こうして笑顔で、俺達は歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお余談だが、その場のノリで次の土曜日に櫛田とその他のメンバーでカラオケに行く事を約束してしまったのを思い出した俺は自室で頭を抱えるハメになる。

 

 

(カラオケ……⁉︎ 酒も入ってないのに人前で歌うの⁉︎ っていうか曲どうしよう⁉︎ 今の若い子って何聴いてるんだ⁉︎ ビリーバンバンや人間椅子じゃダメだよな⁉︎……モー娘も……ダメだ‼︎ 多分古い‼︎‼︎)

 

 

当日、結局洋楽でゴリ押しした。

英語ペラペラなのは強い。本当にそう思った。




櫛田視点は後日書きます。

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