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問い。
人は平等であるか否か。
答え。
人は平等ではない。
そもそも、この質問を投げかけること自体が、どこか情けない『甘え』や無駄な『期待』を含んでいる気がする。
世界中で見ても非常に高い世界平和度指数を誇る我が国、日本に住んでいる人間がこんな質問をすること自体。
何というか、少し烏滸がましい事ではないだろうか?
世界中には家もなく、家族もなく、満足な医療福祉施設もなく。
ただ生きる事。生存して命の営みを送る事だけ。それすら出来ない人間が、世界中の其処彼処にいるのだから。
Mr.一万円札のお偉い様はこう言った。
「天は人の上に人を作らず。人の下に人を作らず」。
だが、断言しよう。この言葉は世迷いごとだ。何の根拠も無い真っ赤な嘘であると。
例として中世ヨーロッパ時代の裕福な王族に産まれた子供と、毎年口減らしで何人も捨てられるような寒村に産まれた子供の価値が同じな訳が無い。
この世に生を受けたその瞬間から、人の上には人が乗っているし、人の下には人が踏みにじられているのだ。
極論は止めろ。と顔を顰めたくなるかもしれないが、現代日本においても大企業の息子と借金まみれの貧乏人の息子では産まれた瞬間から立場が違うだろう。
王には王の。貴人には貴人の。平民には平民の。奴隷には奴隷の。
身分によって幸せの形は様々に変わる訳だから、恵まれた産まれ=幸せの確約という訳ではない。
だが少し考えただけでも『平等』という言葉が如何に薄っぺらく現実味が無いかというのは猿でも分かるだろう。
社会的地位だけでは無い。
子供は親を選べない訳だから、この平和な日本においても育児放棄や児童虐待を受けて育つ悲惨な子供。
彼らは果たしてごく普通の一般家庭で、ごく普通に愛された子供と『平等』などと言えるだろうか。
産まれた瞬間から人間はその遺伝子や環境のせいで残酷なまでの『不平等』と共に産まれ、共に生ていく事を強制される訳だが、残念な事に『不平等』という厄災は我々の人生に未だしつこく、まとわりついてくる。
生まれた時からバラつきがある我々人間のステータスは、恵まれない者に更なる追い打ちをかける為、能力の伸び代に大きな差を作るのだ。
そしてその限界値の差分という、不確かなモノを決定づけるのが、俗に言う『才能』だ。
『才能』は理不尽で、『不平等』の極みである。
パッと見は目につき辛いながらも、確実に存在する、生まれつきの『天命』。
『才能』はやがて人間一人一人の『実力』に『不平等』な『絶対的な差』を生みだし、やがてその大きさを社会的『価値』の違いへと精算していくのだ。
例え話をしよう。
ある青年がテスト勉強の為に教科書を3時間ぶっ続けで暗記に励んだとする。
努力家ながら平凡な彼は、長時間勉強に励んだ甲斐あってか、10ページを丸暗記した。
また、別の少女が同じ条件で3時間暗記に励んだ。
努力家という訳では無い彼女は、時折、休憩という名のサボりをいれつつも3時間でなんと100ページを丸暗記してしまった。
何故か? それは彼女に『速読』や『暗記』、『集中力』という才能があったからだ。
運動神経が悪いと言われている者が野球選手になろうと毎日5時間練習し、5の能力を身につけたとする。
だが『才能』のある者が半ば鼻歌まじりに毎朝30分の練習しただけで10の能力を身につけてしまったり。
残念な事にこれが現実だ。悲しい事にこれが現実なのだ。
『才能』の有無は人間の将来性を大きく決定づける、あまりにも酷い天命なのだ。
人間の価値や生き様を運命的に決定づけてしまう、目に見えない。けれど確かに存在する。
そんな美しくも眩しく、不確かでありながら、確実に存在する『才能』という秘宝。
その中でも例外的に。
一際目立ち、一目で誰にでも理解できる。
そんな特殊なカタチを持った『才能』が一つだけある。
それこそが両親の遺伝や体質によって形づけられる、まさに天の采配によってのみ生まれる『才能』。
この世に生を受けた瞬間、誰が見てもハッキリ顕著する『才能』。
そう、それこそが……
「キャアアアアアァァーーーッッ‼︎ スッッゴク‼︎ スッゴク‼︎ もうヤバイぐらい最高に、最上に、最っっっ強にカワイイですよ‼︎ お客様‼︎」
「アッハイ」
「うっわ無理ヤバッ‼︎ 美し過ぎて尊過ぎて胸キュンしちゃう‼︎ あかん興奮で涎垂れてきたズジュル‼︎ 少女漫画で憧れた理想のお姫様が私の手で今ここにイイイィィッ‼︎ ウヘヘヘヘ……‼︎」
「アッハイ」
それこそが『容姿』だ。
……多分。
南国の高級スパを意識したオシャレな作りの店内で仕事に励んでくれた、担当の美容師は落ち着いた雰囲気の妙齢の美人である。
だが、瞳をキラキラ。を通り越してギラギラと輝かせ、興奮のせいで顔を真っ赤にしては鼻血と涎を垂れ流し、恍惚の笑みで俺を誉め殺している様は、何というか。
もはや、残念の一言でしかない。
さすがフィクションの世界、ラノベの世界。
本来なら登場しないようなモブキャラまでもこんなにしっかりとキャラ付けされてるとは恐れいる。
(何で髪を切りに来ただけで、こんな騒がれなきゃアカンのだ)
俺の死んだ目と現実逃避に気付かないのか、美容師のお姉さんはそのまま流れるように髪のケアの仕方や、オススメの整髪剤の紹介。
そしてドライヤーの当て方やヘアアイロン(髪に巻くコテの事らしい。オッサンにはアイロンというとシャツの皺伸ばしのアレしか思い浮かばなかった)のやり方についてマシンガンの如く語り続ける。
それについてはまだ仕事の一環として理解できるから良いのだが……
何故このゆるふわ系のお姉さんはオススメのブランドの化粧品や、服装のコーディネートまで提案してくるのだろうか?
え? 彼氏がキスしたくなる魅惑のリップメイクのやり方?
要らんわそんなもん。
大体カットの最中の雑談で俺の性別は男だと10回以上は説明しただろうに。
(まあ、無理もないけどさ。この顔だしなぁ。我ながら何食ったらこんな顔面偏差値になるのかワケ分からんし)
美容院。否、ヘアサロン(違いは判らんよ。オッサンには)に備え付けられてある大きな姿見に写るのは輝くような美貌を持つ儚げな美少女だった。
月明かりを蕩かしたようなプラチナブロンドの頭髪はショートボブをベースに、立体的な仕上がりとなっている。
醜態を現在進行形で晒しているとは言え、美容師の腕自体は確かなのだろう。
レイヤードテクニックを存分に奮い、ナチュラルパーマを最大にまで生かしたふんわりとしたヘアスタイルは、我ながら西洋絵画に出てくる天使の如く神秘的で美しい。
前髪は緩くアシンメトリー状。
軽く流しただけの、いっそ寒々しいぐらいのシンプルな作りが素の美しさを最大限に。
つまりはこの佐城 ハリソン少年の最高の美貌を至高の域にまで引き出しているのだ。
その魅力や否や。
一度街中を歩けば男子は新たな恋の予感に胸を高鳴らせ、女子は嫉妬の炎にその胸を焦がしつつも思わず視線を奪われる事、間違いなし。
(この顔で男なんだから詐欺だよなぁ。っつうかどうせ美少年? 美青年? に憑依するんならもっと正統派なイケメンが良かったんだけど。こう、背高くて、筋肉あって、堀りが深い感じの正統派に)
身長190センチの筋肉モリモリマッチョマンの変態。とまでは高望みしないけどさあ。
キャーキャーと鼻血を吹き出しながらもカシャカシャと勝手に写真を取って盛り上がっている推定年齢20代後半の残念美人の醜態に頰を引攣らせながらも、俺はそんな事を考えて必死に現実から逃避していた。
「タダになるどころか逆にポイントを貰えるとは……美人は得ってよく聞くけど本当だったんだな」
時刻は夕方。
昼食を始めとして細々とした簡単な買い物を終えた俺は自室に戻って鏡を見ていた。
あの後、テンションの振り切った美容師のお姉さんが。
「カット代はタダでいいので‼︎ むしろ此方が5000ポイント払うので‼︎ モデルとして広告に使わせて下さい‼︎ お願いしますううう‼︎ こんな最高のモデルは二度と現れないんですうううぅぅぅ‼︎」
と大声で喚いて五体投地してくるものだから、推しに推されてそういう形になった。
明らかに俺のバストアップ画像が男性モデルではなく女性モデルとして扱われそうなのが正直なところ微妙な心境だが、ポイントが貰えるならばそんな些事は水に流す。
「と言うか16歳にもなって髭どころか無駄毛が一切生えないってどうなってんだ? この身体」
ライトノベルの世界における男の娘キャラの宿命というやつなのだろうか。
前世では中学3年の時点でスネ毛が濃くなり、薄っすら髭や脇毛が生えてきたというのに、この無駄に美しい身体にはそういったものが一切無い。
鏡に映る美少年の顔面は訝しげに歪んでいるというのに嫌味な程に整っている。
天使のようにフワフワと広がる金糸のような髪。
宝石のような瞳は僅かに垂れ、羽のように広がる睫毛が絵画の縁取りの如く。
右目の下にはチャームポイントの泣き黒子。
鼻は筋が通り、耳は平たく象牙の彫刻の様。
頰は薔薇色、唇は桜桃。
そして肌の色は真珠を溶かしたような、煌めく白無垢。
「……何度見ても我ながら二次元めいた顔の作りだ。いや、此処ってラノベの世界だから二次元であってるのか?」
メタ的な話をするならば、ライトノベルなどの創作内における『男の娘キャラ』にとって女性らしい美貌はキャラクター的に必須なのだろう。
一読者として見た時に、女性のような外見が最大のウリである筈の男の娘に、髭や無駄毛といった男性らしさを強調する描写がされていたら萎えてしまう。
作品によっては性別が男にも関わらず、カワイイは正義と言わんばかりにサブヒロイン扱いされる場合もあるのだから、男を感じさせる要素というのは徹底的に排除されているのだろう。
「まさかヒロイン扱いされないだろうな。いや、率先して女装とかしなければ大丈夫か? でも原作内で綾小路が沖谷のこと可愛いって言ってた気が……」
何とも嫌な予感がムクムクともたげて来たところで逃げるようにして頭を何度か振って、鏡から離れて制服を脱ぐ。
部屋着と兼用している学校指定のジャージにさっさと着替えると、帰り際に怖いもの見たさで買ってきた、カエルの卵入りミルクティー(800ポイント‼︎ 紅茶と砂糖と牛乳に‼︎ デンプンの塊を入れただけの代物が800ポイント‼)︎をズゾゾと下品に音立てながら飲んでみる。
「うーむ……味がしない。タピオカって何が美味いんだ?」
昨今の女子高生の流行と味覚の異常さに呆れながらも、ベッドに座り込んだ俺はポケットから端末を取り出した。
入学当初支給されたスマフォ型の端末に表示されているポイント残高は96200ポイント。
もともと浪費を嫌う性格だった為に必要最低限の食費、それから安物の黒染めを始めとした細々した雑貨以外、一切の無駄遣いをしなかった『ボク』。
今日は文庫本2冊と必要最低限の身嗜みを整える為の雑貨類。
それから昼にチェーンのハンバーガーを食べ、帰り際に今飲んでいるタピオカミルクティーを購入したものの、臨時収入のお陰で殆どプラスマイナスゼロまで出費を抑えられた。
(とは言え手持ちの残金だと端金に変わりない。やっぱり金策は必須だよな)
1ポイント=1円と考えれば実に10万円近いの大金を持っている事になるが、残念ながらこの学校では大した金額ではない。
ポイントで買えないモノは無い。という頭のおかしいルールに支配されているこの高度育成高等学校においては10万ポイント払ったところでテストの点数を1点買うことしか出来ないのが現実なのだから、どうにも遣る瀬ない。
「一応金策はいくつか考えた。が、やっぱりリスクがある。というか、端末でポイントをやり繰りする縛りがキツイ。確実に茶柱にバレる」
ガジガジと太めのストローを嚙み潰しながらも、思わず文句が溢れる。
単純にポイントを稼ぐだけなら簡単なのだ。
だが悪目立ちしない。というか、担任である茶柱に悟られないように稼がなきゃいけない。という枷があまりにも面倒だ。
紫煙が似合うクールな美女である茶柱佐枝という人間は女性として考えると最高に近いかもしれないが、教師として考えると最低な部類だ。
原作において綾小路を脅しているし、堀北の思考を誘導してAクラスに近付こうとしている。
結果的に言えば須藤が救われたり無人島で勝利したりとDクラスに益を齎している。
だがやはりその思惑と行動は、国営の教育機関で働いている一社会人としては失格だ。
(もしDクラスで大量のポイントを稼いでいる人間がいると分かれば、茶柱なら確実に利用する。退学を仄めかしてでも……いや、退学もあり得る。のか?)
普通に考えれば一教師の私怨で生徒のポイントの使用用途を勝手に決めたり誘導したりすれば懲戒解雇待ったなしだ。
だが此処はフィクションの世界なのだ。頭のおかしい高度育成高等学校なのだ。
例え「退学にするぞ」と脅された証拠を録音して上層部。
つまりは理事長辺りに訴えても正当な処分を下してくれるか分からない。
例えば3日間の謹慎。のような、ほぼ名目上でしかない軽い処分で済まされたら最悪だ。
その後の茶柱に目をつけられるどころか怨敵として祟られるかもしれない。
綾小路経由で退学にでも追い込まれたら、ただ顔がいいだけで中身は無能なオッサンに抗いようは無い。
「担任も信用出来ない。学校自体も信用できない。う〜ん、これはクソゲーですな。間違いない」
協力者が必要だ。
俺の代わりにポイントをプールしてくれる協力者が。
茶柱を始めとした、他の厄介な生徒の目を逸らす為には1人で稼ぐのは危険だ。
だが、他クラスどころか時には同じクラスメートですら押し合いへし合い蹴落とし合い。
それが常識となっている、この『よう実』世界の中では簡単に人を信用できない。
契約でガチガチに縛ったとしても、裏の裏をつくような曲者だらけの世界。
倫理観や道徳観といった小学生でも持ち合わせているものを、すっかり放り棄てたような人間の集まりなのだ。
そんな奴らの良心に期待して、信用して信頼して、協力関係を結ぶ。
そんな事は実質、不可能である。
そう、『ただ1人』を除いて。
「Bクラスのリーダー。大天使こと、『一之瀬 帆波』。彼女なら、無条件で、確実に、絶対に、信頼できる」
人間性が腐っていた堀北ですら「本物の善人」と呼ばせた彼女の人の良さは伊達じゃない。
クラスを統率するリーダーとしての素質の有無については賛否両論あるが、その人間性に関しては間違いなく信頼に値する。
何故なら『そう作られたキャラクターだから』だ。
「キャラの内面が読めるっていうのは原作知識の中でも重宝するな。うっかり櫛田に惚れないですむし」
とは言え、一之瀬はBクラス。
図書館での勉強会イベントが発生するまでは基本的に関わり合いは無いし、本格的にDクラスと協力し始めるのは須藤の暴力事件が発生してからだ。
現時点ではDクラスにおいても只の陰キャボッチのモブFぐらいの存在でしかない俺が、いきなり彼女に接触するのはかなりハードルが高い。
「……どう接触するかは考えてある。が、そうなると多少は目立つリスクを負わなきゃいけないな」
空になったタピオカミルクティーの残骸をゴミ箱に放り投げ、俺は再び頭を抱えた。
背に腹はかえられない。仕方ない事なのだ。
俺は一之瀬と接触する為にも『ある女』と友好を結ばなきゃいけない現実とそのリスクが、どうにも不安だった。
Looks(ルックス)。容貌、人の見た目というのは実に重要な要素だ。
「※ただしイケメンに限る」なんてネットスラングが流行するぐらいに、容姿の良し悪しというのは現代社会において。
否、太古の昔から重要視されている。
クレオパトラがその美貌を利用して類稀なる外交センスを発揮したように、その顔の作りや身体つき。
第三者から見た外見の価値というものは非常に重宝される。
それはもちろん女でも男でも変わらない。
男がグラビアアイドルに鼻の下を伸ばすことも、イケメンアイドルグループに若い女性がキャーキャー黄色い声援を送っているのは前世でも今世でも同じだ。
巨乳の美女を遠くから眺めて、あの女を抱いてみたいと男性が劣情を催す事もあるだろう。
筋骨隆々の逞しい男性に本能から惹かれた女性が、あの腕に抱かれたいと妄想する事もあるだろう。
つまり何が言いたいのかというと、男性的、女性的との違いはあれど。
優れた容姿を持つものは周囲の本能を刺激して視線を強く引きつける訳だ。
そしてそれが絶世の。と言葉が頭につくような美貌ならば、もはやそれは凶器だ。
人目を引きつけるどころか。人目を『惹きつける』こととなるだろう。
(……うん。こうなると思ってたよ、畜生)
月曜日の早朝。つまりは今日、この瞬間。
Dクラスの席に座る俺こと、佐城 ハリソンは思いっきり針の筵だった。
グサグサと刺さっている。現在進行形でグッサグッサと刺さっている。
そう。視線が、まるで、レーザービームの如く。
それはもう鋼鉄の処女に抱かれるかの如くグサグサと。
(そりゃ、ね。つい先週まで存在感の無いチビガリ陰キャだったのに、金髪碧眼美少女に変身してるんだもんな。二度見どころか三度見するわ。いや、美少女じゃなくて美少年だけど)
俺はそんな事を考えつつも死んだ目で、必死に周囲の注目に気づかないフリをしながら読書に勤しんでいた。
だが、もはや視線の圧の重さと鋭さに耐えきれそうも無い。
四方八方から浴びるレーザービームによって痛みすら感じ始めていた。
周囲の男子がヒソヒソと「お前行けよ」「いや、お前が行けよ」的な事を話しているのが聞こえてくる。
つい先日、「金は稼ぐ。だが人目は引かない。両方やらなくっちゃあならないのが……」なんてカッコつけた宣言をしといたのに、こうしていきなり目立っている。
机に足を乗っけて爪を磨いている唯我独尊自由人よりも、思いっっっきり悪目立ちしている。
だが、こんな真似をしたのには一応、理由がある。
主にこれから控えている無人島試験の為だ。
夏休みを利用した特別試験中は徹底的に行動を管理されるので、今までの目立たない為の擬態の肝である黒染めを一々やっている時間がない。
(いっそのこと坊主にして上からウィッグを被ることも考えたけど……ぶっちゃけ目立つのは髪より顔だから、根本的な解決にはならないんだよな)
それに、これからの体育が暫く水泳になると知っている『俺』からすれば(もちろん、前世の俺が憑依するまで『ボク』は4月の頭から体育で水泳をやるだなんて想像もしてなかった)ふとした拍子に髪を染めている事や、実は乙女ゲーもかくやの美形である事がバレる確率は圧倒的に高くなる。
わざわざ隠しているものが発覚するのと、最初からそういうものだったと開き直る事。
果たしてどちらがマシかと考えた末に、俺は後者を選択。
どうせやるなら徹底的にと先日、オッサンには縁がないであろうオシャンティーな美容院に行き、髪の毛を整えたのもこの為なのだ。
……まあ、一々擬態するのが単純に面倒だというのが一番大きな理由だったりするのだが。
(……とは言えここまで目立つのもなぁ。俺なんかより、よっぽど目を引くのがいっぱい居るだろうに)
溜め息一つ吐くと同時にチラと視線だけで辺りを窺えば、居るわ居るわ。
赤、青、緑。茶色に金に果てにはピンク‼︎
二次元世界ならではの現実ではよっぽど時間と金をかけて脱色染色しなければ実現できない色彩豊かな髪の色。
それにラノベの世界だからこそ、登場人物たるクラスメートは圧倒的に美男美女が多い。
自己紹介で失笑を買った池や、不良の須藤ですら、前世の基準で行ったら十分にイケメンの部類に入る筈だ。
もちろん、ヒロイン候補たる女子生徒達に関しては言うまでもないだろう。
(というか、佐倉よ。目立ちたくないなら、そのショッキングピンクの髪を染めろよ。ただでさえ、その乳でアホみたいに目立つんだから……あっ、ブログに自撮り載せるから染色はできないのか)
閑話休題。
とりあえずこの佐城 ハリソン君の劇的ビフォーアフターによって、当初の目立たず稼ぐ計画は修正。
そうして昨日の夜、就寝まで唸りながら考え新たな方針を整えた。
そう。大天使たる善の化身、一之瀬との協力関係を結ぶ為の布石。
そしてその作戦の肝となるのが……
「お、おはよっ。佐城くん……でいいんだよ、ね?」
Dクラスが誇る腹黒アイドル。
堀北 鈴音を殺し隊の隊長。『櫛田 桔梗』だ。
「おはようございます。櫛田さん。佐城であっていますよ」
俺はそんな彼女にニコリと微笑みながら、しっかりと挨拶を返した。
……本当は嫌なんだけどなぁ。
なんで8000文字超えて話が進まないんですかねぇ……