仮面ライダーのバイクがウマ娘になったら   作:疾風の警備員

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どうも、疾風の警備員です。

今回は前後編に分けて、トレーナーとビートチェイサーとの出会いから、トリプルティアラ達成までの話になります。


第1話 ビートチェイサー 前編

「ほらライズッ!! そこで脚を止めないッ!! 最後まで諦めるな!!」

 

「は、はいぃ~…!!」

 

練習用のターフを走るライズに俺は激を飛ばす。シグとの差は既に5バ身差まで広がっていて、そこで諦めたのかライズが速度を落とそうとしたが、俺の目は見逃さないぞ。

 

「アオハル…ロケットダァァァァァァッシュッ!!!!」

 

そして最後の直線でシグが全力で走り、ライズも追いつこうとするも、途中で速度を緩めた事が原因で6バ身差でゴールとなった。

 

「ヨッシャア!! 今回もアタシの勝ちだ!!」

 

「ハァ…!! ハァ…!!」

 

「これで1800mを5周……そろそろ休憩とメンバーを入れ替えるとして…次はビートにするか」

 

肩で息をするライズと練習状況を鑑みて、彼女達に休憩を指示して俺は次に併走させるビートを呼ぼうとスマホを出そうとして止めた。

 

ビートの事だから、もうすぐ…

 

「おーい!! トレーナー!!」

 

「お?」

 

そう思っていたら誰かから呼ばれ、視線を向けるとビートがこっちに向かって歩いていた。

 

「どうした? 何かライブの練習メニューでわからないところでもあったか?」

 

「ううん、そっちは大体は終わったから大丈夫。どっちかというと、トレーナーからそろそろ併走メンバーの入れ替えの呼び出しがくるかな~って思って来たんだ♪」

 

そう言って笑顔を見せるビートに、俺も笑い返した。

 

「さっすがビート。俺をよく理解してる」

 

「トレーナーとは、長い付き合いだからね~♪」

 

想像通り、ビートは俺の考えを予測して、こっちまで来てくれたみたいだ。以心伝心でなにより。

 

「今は休憩中だから、それが終わったらシグと入れ替わってライズと併走してくれ」

 

「りょーかい!!」

 

俺の頼みにサムズアップで答えるビート。そんな彼女を見て、俺はビートとの出会いを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビートチェイサーと出会ったのは、俺がトレセン学園にトレーナーとして入って少ししてからだ。

 

「今度の選抜レースに出るウマ娘はっと…」

 

与えられた自身のトレーナー室で、もうじき開催される【選抜レース】を走るウマ娘の確認をしていた時だった。

 

―ガタッ―

 

「ん?」

 

窓の方から変な音が聞こえ、鳥か何かがぶつかったのかと思いパソコンから視線を外し、窓を見ると…

 

「あ…」

 

「…………は?」

 

鳥ではなく、ウマ娘が窓に張り付いていた。あまりに突拍子もない光景に俺は脳の処理が追いつかず、少しの間フリーズしてしまった。

 

「あの~…窓、開けてもらってもいい?」

 

「ッ!? ち、ちょっと待ってろ!!」

 

しかし、俺は彼女の声で我に帰り、落ちそうになってる彼女を助けようと急いで窓を開けると、彼女は何事もないようにそのまま部屋へと入った。

 

「ふぃ~…ありがとう、入れてくれて♪」

 

「大丈夫か!? どこか怪我は…!!」

 

「うん、大丈夫。壁を登ってこの部屋に入ろうとしたら貴方がいて、少し驚いた時に足が窓に軽く当たっただけだから」

 

「壁を……登って?」

 

それを聞いて俺は呆れた。階段を使えばすぐなのに、壁登りしてトレーナー室に侵入しようとするウマ娘がいたことに…

 

「この……馬鹿野郎ッ!!」

 

「うひゃあッ!?」

 

もちろん、俺はその事に対して怒った。ウマ娘どうこうではなく、普通に危険な行為だったからだ。この部屋のある3階から落ちれば、それこそ大怪我じゃ済まないしな…

 

「それで、何でこんな危ない事をしたんだ?」

 

彼女を正座させてある程度お説教し、次に俺は彼女がこんな事をした理由を聞いた。それを聞かない限り、彼女に壁登りを止めさせたり、落下を防ぐ対策なんて出来ないからだ。

 

「え~と……ここの壁が登ってほしいって言ってたから…なんて」

 

「……はぁ?」

 

だけど、苦笑とともに口にした理由は意味不明なものだった。そんなことで壁を登ってたのか、この娘は…

 

「そういえば、貴方の事は学園で初めて見たけど……新人のトレーナーさん?」

 

「ん? ああ、つい最近入ったばかりだ」

 

彼女の考えに呆れ返る俺が聞かれた質問に答えると、彼女は「そっか」と言って立ち上がった。

 

「とりあえず自己紹介を…私の名前はビートチェイサー。気軽にビートって呼んでね。今度の選抜レースで走るから、よろしく♪」

 

そして、彼女はそのまま立ち去ろうとして…

 

「行かすか、コラ」

 

「ぐぇッ!?」

 

俺は襟首を掴んで引き止めた。その際、女の子が出しちゃいけない声の悲鳴が聞こえるが、知った事じゃない。

 

「ちょっとッ!? 今、本気で首締まったんだけど!?」

 

「お前が説教の途中で帰ろうとしたからだ」

 

「まだ続くのッ!?」

 

「当たり前だ。ほら正座!!」

 

「ひいぃ~!?」

 

その後、小一時間ほど説教して正座から解放し、生まれたての小鹿のように足をプルプル震わせながら帰るビートを見送った。

 

 

 

それからビートと出会す機会が何度かあり、彼女と話したり簡単なアドバイスなんかをしていた。そして選抜レース当日、開始時間の少し前に俺はヨガに近い柔軟をやっているビートチェイサーを見つけた。

 

「ほぉ~…ずいぶん柔らかいな」

 

「あ、トレーナーさん。これでも柔軟性には自信あるからね」

 

そう言って荒ぶる鷹のポーズをする彼女。いや、それヨガも柔軟も関係ねぇよ。

 

「調子はどんな感じなんだ?」

 

「もちろん絶好調!! ぶっちぎりで勝っちゃうんだから!!」

 

「そうか……君は何か目標があるのか?」

 

元気一杯に答える彼女に問うと、笑顔から一転して競技者らしい獰猛な笑みに変わり…

 

「トリプルティアラ」

 

彼女はそう口にした。トリプルティアラはクラシック期にある桜花賞とオークスと秋華賞を勝ち抜いた者に与えられる称号だ。一生に一度しか取る事のできない称号であるために、手にするのはほんの一握りの実力者のみ…

 

「何でトリプルティアラを目指す?」

 

「私の尊敬するお姉ちゃん…正確には従姉だけど、その人が手にした称号だから」

 

「お従姉ちゃん? それは誰なんだ?」

 

「聞いた事ない? トライチェイサーって言うんだけど…」

 

「……マジか?」

 

トライチェイサーの名前なら聞き覚えがあった。桜花賞とオークスを2位と7バ身差で勝ち抜き、秋華賞に至ってはレコード記録を残してトリプルティアラに輝いたウマ娘だ。

 

「まさか君の知り合いだったなんて…」

 

「スゴいでしょ? 自慢のお従姉ちゃんなんだ♪ そしてトリプルティアラを手にしたら……お従姉ちゃんと本気のレースをやるの。そして…勝つ!!」

 

そう語る彼女の顔は楽しみ半分、勝ち気が半分といった表情をしていた。

 

「なら、まずはこの選抜レースに勝たないとな? 頑張れよ」

 

「うん!! それじゃそろそろ(ピリリ♪ ピリリ♪)あ、電話…もしもし?」

 

彼女を激励して、電話の邪魔にならないようにその場を去ろうとした俺だったが…

 

「え………………お従姉ちゃんが…?」(ポスッ)

 

「ん?」

 

彼女の小さい呟きと、何かが芝生に落ちる音がしたので振り返ると、ビートの表情が驚きのまま固まっているのが見えた。

 

「ど、どうしたんだ!?」

 

俺はすぐに彼女の元に近づき声を掛けるが、俺の声が聞こえてないのか、小さく何かを呟くだけだった。

 

「一体どうし…『ビートちゃん!! ビートちゃん!!』ッ!? 繋がったままか…!!」

 

突然の事に訳がわからない俺だったが、ビートチェイサーが落としたスマホから声が聞こえ、この原因を知る為に俺は彼女のスマホを手にした。

 

「もしもし?」

 

『え? どちら様ですか!?』

 

いきなり出た俺に電話の相手は驚くが、今はビートがこんな状況になった理由を知りたい俺は話を続けた。

 

「いきなりすみません、私はトレセン学園でトレーナーをしている一条と申します」

 

『ああ、トレーナーさんでしたか…すみません、そこにビートちゃん…いえ、ビートチェイサーはいますか?』

 

「おりますが…一体何があったのですか? この電話を取ってから彼女の様子がおかしくて…」

 

『そうですか…私はビートの伯父でして、実は…』

 

そこで、俺は彼女がこのような状態になった理由を知った…

 

『私の娘であるトライチェイサーが数時間前に交通事故にあって…病院に緊急搬送されました』

 

「なッ!?」

 

それを聞いた俺も驚愕しビートを見る。

 

そりゃ彼女が自慢するほどの従姉が、そんな事になったなんて知ればこうもなる…!!

 

「彼女の容態は?」

 

『手術は終わって、命に別状はないのですが……』

 

命は助かってるのに言い淀む彼に、俺はそれ以外で何か深刻な事態になっている事を察した。そしてそれは、ビートと関わりがあるという事も…

 

「トライチェイサーさんが運び込まれた病院はどちらでしょうか?」

 

『え?……府中◯◯病院ですが…』

 

「分かりました。ちょっとお待ち下さい」

 

俺はビートの伯父さんにそう伝えて保留にし、ビートへと向き直り…

 

「おい」(ビシッ!!)

 

「いたッ!?……あ…トレーナーさん…」

 

未だに茫然自失しているビートに全力でデコピンして、意識をこちらに戻させた。

 

「やっと戻ってきたか…大丈夫か?」

 

「う、うん…大丈夫大丈夫…」

 

そう言って笑顔を作る彼女だが、お従姉さんの事が心配で堪らないのだろう…表情には焦りと陰りが浮かんでいた。だからこそ、俺は彼女に選択させる事にした。

 

「今、お前が出来る事は2つだ」

 

「え?」

 

「選抜レースを走ってからお従姉さんの所に行くか、今回の選抜レースを見送ってお従姉さんの所に行くかだ」

 

「…ッ!?」

 

これが今の彼女ができる選択だ。だけど、俺としては今回のレースは見送った方が良いと思っている。今の彼女の精神状態は最悪だ。この状態でレースを走っても、ろくな結果にならないだろう…

 

「俺は後者を勧め「私は走るよ」ッ!!」

 

そしてビートの出した答えは……走る事だった。

 

「確かにお従姉ちゃんの事は心配…でも、それで走るのを止めて病院になんて行ったら、それこそお従姉ちゃんに怒られちゃうもん…」

 

彼女は1度目を閉じ、暫し瞑想した後に目を開けると…そこには先程までの競技者らしい獰猛な笑みを浮かべた彼女になっていた。

 

「いいんだな?」

 

本当なら行きたくてしょうがない心を押さえつけ、走る覚悟を決めるビート。そんな彼女を見て、俺は彼女を支えたいと思った。

 

「もう決めた事だからね。それじゃトレーナーさん、また「レースが終わったら正門前に来い」…へ?」

 

だから俺は彼女を引き止め、レース後の話をする。

 

「俺が学園にお前の外出届けを出しておく。正門前に車と病院までの最短ルートを用意して待ってるからな」

 

「あ…………うん!! すぐに勝ってくるから!!」

 

走り去っていく彼女を見送り、俺は急いでトレーナー室へと戻り、彼女の為の行動を始めた。外出届をたづなさんに出しに行き(事情はビートのスマホで伯父さんに説明してもらったら、理事長に取り次いですぐに許可を貰えた)、自分の車を正門前に移動させてカーナビでルートを検索、彼女の勝利を願いながら最短ルートが組み上げ、完成と同時にビートがこっちに走ってきて車に乗り込んだ。

 

「お待たせッ!!」

 

「結果は!?」

 

「ハナ差でなんとか1位!!」

 

「上等!!」

 

それだけの簡単な報告を受けた後、俺はアクセルを踏み込み病院へと車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビートside

 

私は最初、トレーナーさんの事は厳しい人って印象があった。壁を登ってきたお説教については、純粋に私を心配しての事だから納得できるけど、長時間正座させて足が痺れてるのにそのまますぐ帰らせるとか鬼畜かッ!? って思ったし…

 

でも、学園で何回か会って話す内に、そんな印象はなくなった。カフェテリアで会った時は雑談に乗ってくれたり、走り方に悩んでいた時は、担当でもないのにアドバイスをくれたりもした。今は、頼れる近所のお兄さんって感じかな?

 

だから私は最近、トレーナーさんに会うのが1つの楽しみになってて、同室のダンデちゃんにその事を話したら「もしかして、そのトレーナーさんに恋しちゃった!?」なんてからかわれたりもした。

 

ま、まあ? 確かにトレーナーさんはイケメンだし、怒らせなければ性格も優しくて頼りになるし、私の悩みについて真剣に考えてくれるのは嬉しいし、笑ってる時の顔も素敵だし…

 

そこまで考えて、顔が熱くなるのを感じた私は、ニシシと笑ってる元凶のダンデちゃんの顔面に、デフォルメされ黒と金に彩られたクワガタのクッション【ゴウラムちゃん】を投げ、それを喰らって倒れるダンデちゃんを無視して、次の日が選抜レースだったから私は枕に顔を埋めて寝た。でも、胸がなんかモヤモヤしてうまく寝つけなかったけど…

 

そして選抜レースの日、私が外で柔軟をやっていたらトレーナーさんに会った。その時、昨日のダンデちゃんとの会話を思い出して、照れ隠しに荒ぶる鷹のポーズなんてしちゃって余計に恥ずかしい思いをしたけど…

 

でも、最後に私の事を応援してくれて、それがすごく嬉しかった。だから選抜レースで圧倒的な差で1位を取って、トレーナーさんにスカウトしてもらおうとやる気を燃やした時だった……

 

伯父さんからの電話で、お従姉ちゃんが交通事故で病院に搬送された事を知ったのは…

 

嘘…お従姉ちゃんが事故に?……なんで…どうして…

 

正直、その後に伯父さんの声が聞こえなくなるほど、私はショックを受けていたみたいで、トレーナーさんがデコピンするまで放心状態だったみたい。

 

それでも、まだ頭がパニック状態に近い私に、トレーナーさんは2つの選択肢を出した。レースを走ってから病院に行くか、レースを見送って病院に行くか…

 

本当なら、私はレースなんて行かずにお従姉ちゃんの所に行きたかった。だけど、そんな事をしたってお従姉ちゃんは絶対に喜ばないから…だから、走る事にした。

 

私はその場で目を閉じて瞑想し、心配や焦りといった自分の感情を必死に抑え込んで、レース場に向かおうとしたら…

 

「レースが終わったら正門前に来い」

 

いきなりトレーナーさんから告げられ、突然すぎてその意味が解らなかった私に更に細かい内容を教えてくれて、それが病院まで連れていってくれる事だと理解した時、不謹慎かもしれないけど嬉しかった。だから私は勝つことをトレーナーさんに宣言してレース場に向かった。

 

出走時間ギリギリに何とか間に合い、ゲートに入って一息入れたところで…

 

「何かあったの、ビートちゃん? 顔色悪いけど…」

 

隣にいたダンデちゃんから、私を心配する言葉を掛けられた。だけど私は…

 

「ううん、何でもないよ」

 

彼女にそう答えて、正面を見据えた。ダンデちゃんはまだ気にしてるみたいだったけど、私が話さないと判断したのか、同じように前を見る。

 

―ガコンッ!!―

 

そしてゲートが開くと同時に駆け出した。私の脚質は逃げに向いていて、先頭に取ってそのまま後続を引き離していく。この時ばかりは自分の脚質に感謝したかった。これなら多少掛かっていても、周りにはバレないから…

 

第一コーナーを曲がり第二コーナーに入ったところで、ダンデちゃんともう1人…確かシューちゃんだったかな?…が、徐々に私に近づいてきた。私は振り切ろうとするけど、序盤で体力を使いすぎたのか思うほど速く走れなかった。そして第三コーナーに入った時には、2バ身差にまで縮まってしまった。

 

(それでも……負けてたまるか!!)

 

残った力を振り絞り、最終直線に入る頃には何とか3バ身差に広がっていたが…

 

「ダアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

「な、何ッ!?」

 

後ろから聞こえてくる奇声に振り返ると、シューちゃんが物凄い勢いで迫ってきていて、差は1バ身も失くなっていた。

 

(なんて加速なのッ!?)

 

残り200mで、シューちゃんは私の右斜め後ろにまで迫っていた。

 

(このままじゃ負ける…)

 

私の体力はほぼ使いきっていて、これ以上の加速はできない。序盤で掛かったツケがここに来て回ってきたのだ。

 

―頑張れよ―

 

「ッ!?」

 

その時、トレーナーさんの応援が聞こえた気がした。

 

(それでも…私は…!!)

 

それのお陰かはわからないけど、私の中に力が溢れて加速し、なんとかハナ差で勝利を手に入れる事ができた。

 

「ハァ…ハァ…一着おめでとうビートち「ごめんね、また後で!!」ええッ!?」

 

労ってくれるダンデちゃんの脇を通りすぎ、スカウトに群がってくる他のトレーナー達を振り切り、私は正門前に走った。そこには1台の青いミニバンが止まっていて、それがトレーナーさんのだと判断して助手席に飛び乗った。

 

「お待たせッ!!」

 

「結果は!!」

 

「ハナ差でなんとか1位!!」

 

「上等!!」

 

簡単な報告をして、トレーナーさんは車を走らせる。ルートは少し入り組んだものだったけど、信号機がほとんどないお陰で1度も止まらず走れ、病院に着くと玄関前に伯父さんが立っていた。

 

「止めてッ!!」

 

私の言葉にトレーナーさんはちょうど伯父さんがいる場所で止まってくれた。

 

「俺は車を駐車場に停めてから行く。お前は先に行け」

 

「うん!!」

 

車から降り、伯父さんと少し話してからお従姉ちゃんがいる病室へと向かう。そして病室に着いた時…

 

「ビートちゃん、気をしっかり持ってね」

 

伯父さんがそう言い、どういう意味なのかと思いつつ部屋に入ると、ベッドで横になってるお従姉ちゃんがいた。

 

「あら、ビートちゃん?」

 

「お従姉ちゃん!! 無理に起きなくていいから!!」

 

私に気づいて上半身を起こそうとするお従姉ちゃんを制し、私はベッドの横にある椅子に腰かけた。

 

「伯父さんから交通事故にあったって聞いて…」

 

「そっか、心配させちゃったかな?」

 

「すっごくね!! もう…」

 

それでも生きててくれて良かったって言おうとした時だった…

 

「ごめんね、ビートちゃん」

 

お従姉ちゃんが、申し訳なさそうに謝ってきた。

 

「え? 別に事故の事は謝らなくても…」

 

「ううん、そっちじゃないの」

 

私は事故にあって心配させた事を謝ってるんだろうと思った。だけどお従姉ちゃんは首を横に振って、私から視線を外した。

 

「それじゃなに……を…………ッ!?」

 

何を見てるのか気になった私は、お従姉ちゃんの視線の先を見て、息を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…嘘……」

 

「お従姉ちゃんね…走れなくなっちゃった」

 

私の目に写ったのは………膝から先が失くなったお従姉ちゃんの右足だった…

 

 

ビートside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院に到着後、俺はビートの伯父さんから事故の内容と、トライチェイサーの現状を聞かされた。事故の原因は子どもの飛び出しとトラック運転手の居眠り運転が噛み合って起きたもので、そこに居合わせたトライチェイサーが子どもを助けようと走り、何とか助ける事に成功したそうだが、その時トラックのタイヤに右足を潰されてしまったそうだ。

 

いくら人間より頑丈なウマ娘といえど、文明の利器が作り出した重量物に勝てるわけもなく、右足の骨は粉々に砕かれて復元できず、切断するしかなかったらしい。

 

帰りの車の中、助手席のビートは俯いたまま一言も喋らず、俺もなんて声を掛ければいいか解らず無言の時間が続いていた。

 

「トレーナーさん……私、どうしたらいいのかな…」

 

何とか元気づけようと言葉を探していたら、ビートが小さく呟いた。

 

「私、トリプルティアラもお従姉ちゃんと対等になりたくて目指してたのに…もう、意味無くなっちゃった…もう、何を理由に走ればいいか、わかんないよぉ…!!」

 

そう言ってすすり泣く声が俺の耳に届く。それだけ彼女にとって、トライチェイサーとの勝負は意味のあるものだったのだ。それなのに、他の目標を探したらどうだなど、無責任な言葉を言える訳がない。

 

(何か…何か、ビートの願いと重なるものはないか…!!)

 

俺は必死で頭を回した。彼女の走りはあまり見たこと無いが、俺はこの子が悲しみで涙を流すより、夢を叶えて笑ってる姿が見たかった。だからこそ、彼女の夢を叶える方法を必死に考えて…ある方法を思いついた。

 

これなら、彼女の目標と願いが1度に叶えられる!! しかし、チャンスは1度だけ……逃せば2度と機会は訪れない。だけど、今はこれしかない!!

 

「ビート、1つだけ…トライチェイサーと戦える方法があるぞ」

 

「ぐず…え?」

 

「【秋華賞】だ」

 

「しゅうか…しょう…?」

 

「桜花賞・オークスを勝ち抜いて……秋華賞でトライチェイサーの残したレコード記録を越えるんだ」

 

「…お従姉ちゃんの……記録…」

 

これがビートの願いを叶えられる唯一の方法。トライチェイサーがレコード記録を持っているのは秋華賞のみ…つまり、最強の時のトライチェイサーの記録なのだ。

 

「お前がトリプルティアラを取って、秋華賞のレコード記録を越えられれば……それは、トライチェイサーに勝った事にならないか?」

 

「あ…」

 

「俺は…お前ならそれができると確信してる。どうだ? やってみないか?」

 

チラッと彼女の顔を見ると、彼女の瞳に光が戻っていた。

 

「そっか……それなら、確かに勝ったって言えるかも…!!」

 

「ああ、言えるさ」

 

「フフ、そうだね。それで……こんな提案をしたトレーナーさんは、私をどうしてくれるのかな?」

 

どうやら調子も戻ったらしい彼女に俺は問われる。

 

ここで後は1人で頑張れなんて、ダサい事が言えっかよ!!

 

ちょうど信号が赤になったので車を止め、彼女へと向き直り…

 

「ビートチェイサー、君をスカウトさせてくれ。俺が必ず…君をトライチェイサーを越えるウマ娘にしてみせる!!」

 

そうハッキリと告げた。するとビートは笑顔を浮かべ…

 

「うん、よろしくねトレーナー!!」

 

俺のスカウトを受けてくれた。

 

「そうか。なら、明日から頑張るぞッ!!」

 

「オーッ!!」

 

こうして、俺はビートとトレーナー契約を交わし、彼女の夢の為に歩み出した。




いかがでしたか?

今回紹介するのは、ハードボイルドになりきれないハーフボイルドな探偵ウマ娘【ハードボイルダー】です。


自己紹介:私の名前はハードボイルダー…どんな難事件も解決し、トレセン学園の平和を守るハードボイルドな探偵よ……ねぇ決まってた? それじゃご飯を食べに…え、まだ撮ってる? と…撮り直させてぇ~!?

学年:高等部

所属寮:美浦寮


バ場適正
芝:A ダート:D

脚質適正
逃げ:E 先行:D 差し:B 追込:A

距離適正
短距離:G マイル:E 中距離:A 長距離:A

スキル
逃げ牽制・クールダウン・シンパシー・見惚れるトリック


身長:166cm

体重:検索拒否

誕生日:9月13日


好きな事:謎を解く事

嫌いな事:スリッパで叩かれる事


耳の事:事件解決のヒントは聞き逃さない

尻尾の事:推理中はクエスチョンマークの形になる


足のサイズ:左24.5cm 右24.0cm


家族の事:探偵業を営んでいる父親の影響で、探偵を目指すようになった。


ハードボイルダーの秘密
実は、トランプの勝負にめっぽう弱い


外見
短く切り揃えた黒髪に珍しい黄緑色のメッシュが入った前髪、つり目に左は紫で右は黄緑の瞳というオッドアイの顔


ハードボイルダーの固有スキル
【これで決まりだ!!】

能力
最終コーナーで後ろの方だと、鮮やかな推理で抜けやすくなる。

カットイン
月が浮かぶ夜のビルの屋上に背を向け立っている→首に巻かれたスカーフが靡く→こちらへ振り返る→左手を腰に当て右手の人差し指を突きつける

台詞
「残念だったわね。貴方達の動きなんて…全てお見通しよ!!」

専用楽曲
【Extreme Dream】
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