今回はアンケートの中にいた2人が登場します。それと多少、シングレ風味があります。
「それじゃ今日の練習はここまで。皆、お疲れ様」
「「「「「「お疲れ様でした!!」」」」」」
スピカとの合同練習が終わって数日、練習終わりに俺はビートを呼び止めた。
「ビート、ちょっといいか?」
「ん? どしたのトレーナー?」
「次のお前のレースって大阪杯だろ?」
「うん!! 久々のGⅠだから燃えてくるね!!」
次のレースの話に、笑顔でやる気を出すビート。だけど、俺は彼女に悪いニュースを知らせなければならなかった。
「それが……今回のレースに、あの【マルゼンスキー】と【トライドロン】が参加する事になった…」
その事を告げた瞬間、ビートが笑顔のままビシッと固まった。
「………………………………マジ?」
「ああ、マジもマジの大マジだ」
「そっかぁ…マルゼン先輩にトライ先輩も走るのかぁ…」
ビートは俺の冗談だと思いたかったのだろうが、真面目な顔でそれに答えたら、顔を俯け小刻みに体を振るわし…
「さすがにムゥリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!」
天に向かって、涙目で叫ぶのだった…
マルゼンスキーとトライドロン……トレセン学園で知らない者はいないと断言できるほど、有名な2人だ。
片や驚異的な身体スペックを誇り、圧倒的な速さで逃げ切る事で【スーパーカー】の異名を…片やスペックは多少劣るものの、それを大量のスキルによって、補うどころか限界以上の走りを見せる事から【スーパービークル】の異名を持つウマ娘だ。
また、私生活でもこの2人は仲が良く、学園でも2人一緒にいるところをよく見かけるが、一度レースになるとその関係は一変。両者ともに真紅の勝負服を身に纏い、お互いを倒すべきライバルとして、ターフを全力で駆け抜ける。
そんな2人は勝負服の色から【デュアルクリムゾン】と呼ばれ、多くのファンから愛されている。
その最強格の2人と勝負する事になったのだ。ビート気持ちも解らなくはない…だけど、そんな愛バを支えるのが、トレーナーである俺の仕事だ!!
「安心しろビート。俺が必ず、あの2人の攻略法を見つけてやる!!」
「トレーナー…!!」
「だからお前も頑張ってくれよ?」
「うん!!」
期待の眼差しで見つめてくるビートに応える為、俺は資料室へと駆け出す。
待ってろよマルゼンスキーにトライドロン!! 俺がお前達の弱点を暴き出してやる!!
ビートside
「とはいえ、元々の実力差がなぁ…」
トレーナーからマルゼン先輩とトライ先輩の参戦を聞いて自分でも色々と策を考えてみたけど、結局夕飯の時間まで考えても何にも策は浮かばず、私はカフェテリアのテーブルに頭を突っ伏した。
「どうしたんでしょう、ビートさん?」
「なんか、今度走る大阪杯にマルゼンスキー先輩とトライドロン先輩が参戦するんですって」
「あー…それは災難ですね」
「バジンちゃん、他人事過ぎないッ!?」
そんな私を、一緒のテーブルにいたライズちゃんは心配してくれるけど、イルが理由を話し、ガラケーをポチポチしながら棒読みで返事するバジンちゃんに、私は顔だけ上げてツッコむ。
バジンちゃん、もう少し心配してくれてもよくない!? しかもなんでスマホの時代にガラケーなの!? もしかして機械オンチでしょ!! 絶対にそうだ!!
「いや、コレは知り合いの天っ才物理学者(笑)に頼んで作ってもらった、ガラケー風スマホですから」
「えッ!? それスマホなのッ!?」
「指紋とかで画面が汚れるのが嫌だったので」
それは進化してるの? どっちかというと退化してない? ていうか、さりげに心読まないで!!
「助けてイルえも~ん!! 先輩達に勝てる秘策を教えてよ~!!」
「誰がイルえもんよッ!? とりあえず、策が無い訳じゃないけど…」
「え、マジで?」
結局、私はチームのブレインであるイルに泣きついた。もちろん、策なんて無いと思っていたけど、まさかの言葉に期待が膨らんだ。
「なになにッ!? 教えて教えて~!!」
「ああもう肩掴んで揺らすなッ!! 教えてもいいけど、今のアンタじゃ使えないわよ?」
「なんで?」
「スペック不足」
「やっぱりか~…」
せっかく光明が見えたかと思ったのに、イルの言葉で私は再び絶望に落とされる。
やはりスペックか!? スペックなのか!? マルゼン先輩なら、胸の
「ハァ~イ♪ ちょっといいかしら?」
「混んできたから、相席しても?」
「あ、はい。構いま……え?」
あんまりの状況に、先輩達と変なところで競っていたら横から相席を頼まれて、許可してから相手を見て私は困惑した。だってその相手が…
「マルゼン先輩にトライ先輩ッ!?」
「「「えッ!?」」」
まさかのマルゼン先輩にトライ先輩立ったのだから…
私も声に他の3人も驚きながら2人を見て、見事に固まった。
「あら? どうしたのかしら……まるで熟睡中に寝起きバズーカ喰らって飛び起きたみたいな顔して」
「マルゼン……例えが古いって…」
「え~? どう考えても、ナウなヤングに馬鹿ウケなドッキリ企画じゃない」
「…………………………もうツッコむのやーめた」
マルゼン先輩のちょっと古い例えに、トライ先輩が少し呆れた感じでツッコむ姿は、2人の仲の良さを表してるみたい…
「ゴメンね、びっくりさせちゃったかな? ビートチェイサーさん?」
「あ、いえそんな!? ていうか、私の名前…」
「去年のトリプルティアラを忘れはしないよ。それに…」
まさか名前まで覚えてもらえるとは思ってなくて驚いちゃったけど、トライ先輩の言葉の続きに私はさらに驚かされる…
「
「「「「…………………………え?」」」」
だって、こんな爆弾発言されたんだから……
「えっと……それはさすがに恐れ多いというか…」
「あら、そうでもないわよ? 貴女はそう思わせる走りを、私達に見せてくれたんだもの」
謙遜する私だけど、それはマルゼン先輩に否定され、トライ先輩はウンウンと頷いていた。
え?え? なんで私、こんなに期待されてるの? 待って待って、頭が追いつかないから~!?
「君は気づいてないだろうけど、秋華賞の最後の「トライ、ヒントあげすぎよ?」っと…ありがとマルゼン」
途中、何かを言おうとしたトライ先輩が、マルゼン先輩に窘められて言葉を飲み込んでしまうも、頭が完全にパニクってる私には届かなかった。
「え、えっと……なんか凄すぎて頭がぐちゃぐちゃですけど…」
混乱する頭の中を必死にまとめ、私が口にしたのは…
「私は…お二人に勝つ事が出来るんですか?」
そんなありきたりなものだった。だけど2人はそれにしっかりと頷いてくれた。
「ええ、もちろん♪」
「だって君は……私達のいる【領域】に、もう片足を踏み入れているのだから」
「う~ん……どうしたものか…」
ビート達と別れてから、俺は資料室からマルゼンスキーとトライドロンのレース映像を借りまくり、トレーナー室で何度も見返して対策を考えてたが…
「勝てるビジョンが全く見えない…」
自分の持てる全てを使っても、この2人には勝つ方法が見つからなかった…
「マルゼンスキーを抑えればトライドロンが逃げきり、トライドロンを抑えればマルゼンスキーが逃げきる……どうしようもないくらい、完璧な組み合わせだ…こうなったら、今回のレースは3着狙いで…………ッ!!」(バチィ!!)
どうしようも無さに弱気な考えが頭をよぎるも、俺は自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。
「愛バの勝利を信じなくて…そして勝利に導けなくて何がトレーナーだ!!」
俺は負けさせる為にビートをレースに送り出す訳じゃない!! 絶対に勝てる方法を…!!
―コンコン…ガラッ―
そんな時、トレーナー室の扉がノックされ、1人のウマ娘が入ってきた。
「失礼、一条トレーナーはいるだろうか?」
「ん?……し、シンボリルドルフ!?」
そのウマ娘はトレセン学園で生徒会長を務め、レースでは無敗でクラシック三冠を取り、最後には七冠を飾り【皇帝】の異名を持つシンボリルドルフだった。俺は急いでパイプ椅子を用意すると、彼女はそこに座り、俺と向き合った。
「突然の来訪ですまない」
「いえ…それで、貴女はどうしてここに?」
「先程、資料室で大量のレース映像……詳しく言うなら、マルゼンとトライが走ってる映像を借りていく君を見かけたものでね。少しばかりお節介をと思って…」
そう言うと、彼女は俺に一枚のファイルを手渡してきた。俺はそれを受け取り、表紙を見る。
「【
「時代を創るウマ娘のみが到達できる高み……極限の集中状態に入る事で、限界を越えた力を発揮する状態について、私なりにまとめたものだ」
「何故、コレを俺に…」
それを捲って内容を見つつ、俺は彼女の意図を探る。
確かにコレを身につければ凄いが、そんな一朝一夕に身につくものとは思えない。なのにどうして…
そう思う俺の疑問は、彼女の言葉で吹き飛んだ。
「去年の秋華賞…ビートチェイサーはこの領域に、片足を踏み入れた」
「ッ!?」
なぜならそれは、既にビートが手に入れかけてるものだったのだから。
「あの最後の直線での加速……あれは領域に入った事でできたものだ。しかし、不完全だったせいで本領を発揮できてはいなかった」
「あれで不完全…」
間近で見た身としては、あれだけでもスゴいのにその上があると言われてもピンとは来ない…
「もし、秋華賞で本領を発揮できてたら…?」
「彼女はトライチェイサーの記録を、後1秒半縮められただろうな」
「な…!!」
1秒半……一般人からすれば短いと思われがちだが、アスリートがそれを実現するには、並大抵の努力では叶わない。それこそ、血反吐を吐くような鍛練を重ねてようやくできるかどうかだ。
「資料は君に託そう。それを使って、ビートチェイサーを導いてくれ」
「感謝します」
「大阪杯、楽しみにしている」
俺が礼を言うと、彼女は微笑んでから部屋を出ていった。部屋に残された俺は、その資料をジッと見つめる…
「領域……俺にビートをここまで導く事ができるのか?」
あまりに荒唐無稽な力に不安が俺を襲うも、頭を振ってそれを追い払う。
「やってやるさ…!!」
俺は覚悟を決め、資料を読み進めながら現在のトレーニングに領域に至る為のものをプラスしていく。彼女の体に無理なく、しかし確実に力になるようトレーニングメニューを何度も見直しては修正を繰り返し、ようやく形になってきた時には既に朝日が上っていた。
「もう朝か……流石に根を詰めすぎたな。少し寝るか…」
これ以上は彼女達のトレーニングにも差し障ると思い、仮眠を取るために俺は机に突っ伏して目を閉じると、一気に睡魔が襲い、アッサリと眠りについた。
ビートside
「トレーナー、いる~…ってうわぁ…」
私は朝練の時間になってもやって来ないトレーナーを呼ぶため、トレーナー室を訪れた。そして扉を開けて最初に見たのは、床に乱雑にばら蒔かれた大量の紙だった。
「もう、こんなに汚して……あ」
それらを拾い集めていたら、机に突っ伏して寝ているトレーナーがいた。
「まったく……そんな場所で寝てたら風邪ひい……ん?」
私はトレーナーを起こすために近づいたら、机にあるものに気づいた。それは…
「【マルゼンスキー&トライドロン対策トレーニングメニュー】……これって…」
私はそのメニューを手に取り、読み進める。最初は普段とそれほど変わらないものだったけど、途中から見たことの無いメニューが加わっていて、その隣には必ず【領域用】と書かれていた。
たぶん、トレーナーはコレを創るために徹夜したんだろうなぁ…
「私達には無茶させないくせに、自分は無茶するんだから…」
そんなトレーナーに呆れつつ、ここまで頑張ってくれる事に、私の胸が暖かい思いで満たされていく。そしてソファーにあった毛布を手に取って、トレーナーに掛けた。
「今日の朝練はお休みって伝えてきますか。その前に…」
私は寝ているトレーナーの頭を撫でてから、顔を耳元に寄せ…
「いつもありがとう。私も頑張るからね」
そう告げてから、私は部屋を後にし…
(うう~!! なんかノリでやっちゃったけど、スッゴく恥ずかしい~!!)
扉の前で自分のやった事に悶絶する羽目になった…
ノリに身を任せるのはやめよう、うん…
いかがでしたか?
今回はたぶん前中後の三部構成になるかと…(無計画)
今回、ウマ娘紹介はお休みです。
これが作者の年内最後の更新となります。
では次回で、お会いしましょう。皆様、よいお年を。
どの組み合わせが見たい?
-
タキオン&ビルダー
-
マルゼンスキー&トライドロン
-
ゼンノロブロイ&ゴーストライカー
-
ドーベル&ディアゴスピーディー
-
アルダン&ブロンブースター
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ライドチェイサー&ミホノブルボン
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できたら全部見たい!!
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全部書け♪(威圧)