【まてなかったの】
いやな日だった、秋半ばだというのにやけに暑くじめじめして気分が悪くなるような日。
私は少しでも彼を苦しめる要因を取り除きたくてぬるくなってしまった手拭いを替えようとベットに腰掛けた。
その時、もう1ヶ月程寝たきりだった彼が、いくら私が優しく話し掛けても返事を返してくれなかった彼が………小さな声でそっと言った。
「ねぇ、×××さん知ってる?」
「ーーっ!!」
悲鳴を上げそうになるのを自分の口に手を当てることで抑えた。今の彼にとっては悲鳴でさえ苦しめる事になるだろうから。
話したい事があった。伝えたい事が沢山があった。言いたい事が山ほどがあった。
でもでもでもでもでもでもでも!!!!!!!我慢した
彼を愛していたから
私の事より彼を優先したかったから
「カラスはね、唯一鳥の中で意味も無く鳴くんだって。」
まるで日が暮れる様に周りがだんだん暗く見えなくなってくる中、彼の目だけが……傷付きボロボロになりもう立ち上がる事も出来ないほど弱っているのに、彼の目はだけは依然変わりなく平和の象徴として強く、眩しく、暖かく光り輝いて見えた。
「これは僕が昔聞いた話なんだけどカラスはこの世に未練を残した人が生まれ変わったんだって。カラスが鳴くのはね嘆いてるからなんだよ。ただ嘆くとこしか出来ないから意味もなく泣いてるんだ…。」
彼は優しい手つきで私の頬に触れ涙を拭った
「だからね×××さん。泣かないで?僕は生まれ変わっても必ず、必ず×××さんの所に行くから例えただ嘆く事しか出来ないカラスになったとしても。だからまってて……………。」
「ーーぇ!」
「ねぇってば!鳥見さんおきて!!授業中だよ?」
目が覚めて思わず、顔を覆う髪を寄せながら辺りを見回した。彼は……いない。残念だが、当たり前の事だ、ここは学校で私達の家ではないのだから。
鳥見は茫然と自分の机に顔を埋めた。
「おーい」
なおも続く声の主を確かめようと隣の席を見ると困ったように眉を八の字にしながら委員長が私を見つめていた。
「あ、やっと起きた?まったく…授業中に居眠りなんて内申点に響いちゃうよ?」
クラスで1番真面目な子。クラスに馴染めていない鳥見の事を唯一気にかけてくれる優しい子だ。
しかしどうやら委員長は周りからどれだけ視線を集めているのか気が付いて居ないようだ。
普段から周りを律しようと大きな声を出す彼女のヒソヒソ声は残念ながらヒソヒソとはいえず、鳥見が口を防ぐより先にーーー
「おい、静かにしなさい。まったく授業中に隣の席にちょっかいをかけるなんて…鳥見が可哀想だろ?」
先生にばれてしまった。
委員長は先生に弁解しようと慌てて立ち上がった。
「えぇ!?でも先生、私は鳥見さんをおこ……いえ、なんでもないです。ごめんなさい。」
しかし諦めたのか委員長はまた眉を8の字にしながらへなへなと座った。
全くもってご苦労な事である。居眠りをしていた事をいってしまえば私まで怒られると思ったのだろう。良い人間だろうが将来きっと苦労するだろな。
私の顔は長い髪で隠れているから寝ているかなんて体をぐらつかせないかぎりバレないというのに。
隣から物凄い視線を感じるが無視だ無視。私にはどうでもいい。だがその残念な委員長に免じ先生の話をちゃんと聞こうと前を向いた
「よし、話を戻すぞ?お前らも3年という事で本格的に将来について考えていく時期だ。今から進路希望のプリントを配るがーー」
先生はプリントを大袈裟に掴みそしてそれをばら撒く。
「皆だいたいヒーロー科志望だよね?」
それを合図に生徒が一斉に個性を見せびらかす
髪の毛を伸ばしたり、翼を広げたり、シャーペンを空にうかべたり。さっきまで静かだった教室は嘘のように賑やかになった。挙句の果てには先生もそれを見ている始末だ。
そんな中、となりの委員長はすっくと立ち上がった。
「皆、個性の使用は原則禁止でしょ!!!先生もプリントを投げないでください!あ、先生もプリントを個性で拾わない!!」
ビシ!っと効果音が付きそうなほど勢いよく指を指す。
「あーー悪い悪い、流石は雄英高校志望の委員長だな。」
今度はクラス中からおお〜〜と感嘆の声が広がる。
「もちろん!!ヒーローは私のあこがれですので!」
フンスッ!と音が聞こえて来そうな程、胸をはりながら委員長は高らかに宣言した。
「あ、そう言えば鳥見もだったな。」
先生は思い出したようにぼそっと呟いた。
委員長が集めていた視線は今度は隣の席の鳥見へと移った。残念ながら鳥見は他の人のように個性を見せびらかしたりしないし委員長のように喋りもしない。ただ静かに視線が離れるの大人しく座って待っているだけだった。
「そういえば鳥見って何で雄英高校に行きたいんだ?別にヒーローに憧れているようにも見えないし」
クラスの誰かがそう言うのと同時に他の生徒もそーだ、そーだ、何でなんだよ?と疑念の声が上がった。
本当にうるさい奴らだ。
鳥見は思いっきり顔を顰めた、別にいいだろう誰にも見えはしないのだから。
「こら、やめなさい鳥見にも色々あるんだから。ほらそろそろチャイムが鳴る皆明後日までには必ず提出するように。」
そう言って先生はプリントを配ると、私の方を見て微笑んでから教室を出ていった。
あぁ本当に嫌なやつだ。
私が喋らなくても許してくれる、私をほかの生徒から庇ってくれる。これらも全て私に親がいないから、哀れんでいるからだ。何も知らないのに何も分からないのに自分の中で勝手に決め付けて優しくするのはやめて。
「おれはお前の事を理解しているぞ」と言わんばかりの態度だ。鬱陶しい吐き気がする。
ちょうどチャイムがなった。
鳥見は苛立ちを隠そうともせずバックを乱暴に掴み大きな身体を震わせると教室のドアからではなく窓から飛び降りた。個性の使用。恐らくあの先生なら哀れみから許してくれるだろう。
教室から他の生徒の声が聞こえるがどうでもいい。なぜって?教室の生徒の名前など覚えては居ないから。
興味のないクラスメイト、鬱陶しいだけの先生つまらない学校生活。でももうすぐ終わる。私は雄英高校にいくのだから…
ふと後ろから慌ただしく誰かが近付いてくるのが聞こえた。
「ま、まって!!鳥見さん!!」
急いできたのだろう何時もならキチッとしている委員長の制服は乱れ髪もくしゃくしゃになっていた。
「私ね雄英高校を受けるの。窓から飛び降りるぐらいの運動なら私だって出来るわ!」
彼女はまた自慢げに胸を張っている。
「それより、私鳥見さんが雄英高校受けるなんて知らなかったわ、というより貴方の事何も知らないの。ずっと一緒のクラスなのに私、喋っている所見た事がないんだもん。もしよかったら鳥見さんの事教えて?」
「鳥見、個性は鳥類」
鳥見はぶっきらぼう答えた。
「あ、教えてってそーゆー事では……鳥見さんて可愛い声をしてるのね」
委員長は一瞬驚いた表情を浮かべた後直ぐにニッコリと笑った。
「私は小山内吸子、個性は吸収よ。私もちゃんと自己紹介しないとね!」
2人は学校生活が始まって初めて言葉を交わした。そこには微笑ましい空気が漂っていた。
しかしその空気は
「これで友達よね!もしよかったら一緒に勉強や個性の訓練をしない?」
たった一言で
「2人で雄英高校に行けたら素晴らしいもんね!」
霧散した。
「無理よ。」
鳥見は酷く冷たい声で否定した。
「えっ……」
拒絶されるとは思っていなかったのだろう。さっきの明るさはなくなり驚きと悲しさが混ざった目で鳥見を見つめている。
「別に私はヒーローになりたい訳じゃないから私はただ会いたいだけ。それにね委員長、貴方は雄英高校には受からないわ。」
鳥見はそう冷たく言い放つと、委員長の呼び止める声を無視し空へと飛び立った。今度はついてこれないだろう。
ごめんね、××君私一瞬でも友達が出来るんじゃないかって思ってしまった。違うよね、こんな事をする為に戻ってきた訳じゃないのに私が間違ってた。
あぁ…そうだったもう1つ謝らないと行けない事があるの。
「××君ごめんね。私ーーーーーーー。」
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個性 : 鳥類?
個性 : 吸収