ツインターボ「……師匠!師匠!!師匠ーーー!!!」(連載中) 作:ゆきたか
不定期更新で、長くて全10話くらいを予定しています。
よろしくお願いいたします。
「ツインターボ失速! 第四コーナー前で早くも一杯一杯だ!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「う〜! また負けた〜!」
青色の髪と特徴的なオッドアイ
彼女の名はツインターボ、トレセン学園に通う大逃げで知られるウマ娘だ。
昨年は『七夕賞』『オールカマー』と重賞を連勝し、G1戦線での活躍も期待されていたのだが……今年の彼女は絶不調。『中山金杯』『京都記念』と出走したが勝利とは程遠く、今日に至っては格下のオープン戦に出走してみたもののまさかのシンガリ。
「あの時もーーっとグワーーーっていけてれば勝てたんだよな〜。よし! 今度のレースこそターボが1着だ!!」
普通のウマ娘ならばこれだけ大負けが続くとやる気が不調……下手したら絶不調まで落ちるものだが、ツインターボにそんなそぶりは全く無い。
これだけ負けてもへこたれないのは、ツインターボか某ピンク髪のウマ娘くらいではないだろうか。
「よーし! 明日からはこれまで以上に大逃げの練……んっ?」
ふと大きな歓声が聞こえた方向に目をやる。気分転換にとレース後に街をブラブラしていた所、気付けば大分遠くまで来てしまっていたようだ。目をやったその先には、そこには大勢の小さなウマ娘達がトレーニングに精を出していた。
「ここは……あっ! 府中ウマ娘レース教室だ!!」
【ウマ娘レース教室】
ウマ娘達がレースのいろはを学ぶ教室、人間の世界でいうと塾のようなものだろうか。
全国各地に様々なウマ娘レース教室があるが、この府中ウマ娘レース教室はその中でも特に規模が大きく
通っていた者たちの中からトレセン学園に進学する者も少なくない。
実はツインターボも府中ウマ娘教室に通っていた1人だ。
何も考えず歩いている内に、無意識に懐かしの場所に来てしまったようだ。
「うわ~~~! みんな頑張ってるな!!」
近くまで行き、練習風景を目の当たりにしたツインターボは思わず感嘆の声を上げた。
生徒ウマ娘達全員の目が曇りもなく光り輝いている。これは……トレセン学園では見られない光景だ。
はじめはどのウマ娘達も目に沢山の輝きを持ってトレセン学園に入学する。
しかし『敗北』『挫折』『怪我』などを経験し、徐々に輝きを失っていく者たちが殆どだ。
「先生! 今日もありがとうございました!!」
自らが生徒だった頃を思い出し
どうやら練習が終わったようだ、生徒ウマ娘たち全員が先生ウマ娘に向かって挨拶をする。
元気な後輩たちの頑張る姿を見て気合も入った。気づけば夕焼けもだいぶ落ちてきている。門限を過ぎてしまったら、厳しい寮長の恐ろしいタイマン説教が待っている……トレセン学園に戻ろうとツインターボがその場を後にしようとすると
「今日も最後に先生と勝負がしたいーー!」
「先生の大逃げが見たいー!」
「私も見たいー!!」
「勝負しようーーーー!」
『大逃げ』という言葉を聞き、足が止まる。
大逃げ至上主義のツインターボとしては、他の大逃げウマ娘の存在がとても気になったようだ。
「はいはい、分かりました。じゃあ今回も2400mの1対4でいきましょうか。みんなで話し合って誰が走るかと走る順番を決めてね」
「はーい!」
「1対4? あれれ?」
思いもしなかった対決に頭が混乱するツインターボだが、その後の先生ウマ娘の説明を聞いて理解した。
どうやら2400mを先生ウマ娘は1人、生徒ウマ娘は1人600mの4人リレー形式で走る様だ。
いくらなんでも1対4は無謀だ。子供とはいえそこにいるのは全員、府中ウマ娘レース教室の生徒。
練習風景を見て分かったがどの子もレベルが高い。
1対4でも勝てるくらいに先生は速いのだろうか……と、ツインターボが考えているのもつかぬ間
「ジャンケンポン!!」
「やったーー♪」
「負けた〜!」
ジャンケンにより走る子が一気に決まり、各自自分の走るポジションに移動していく。
「ターボの大逃げには敵わないだろうけど、おてなみはいけんだ!」
先生ウマ娘と第一走者の生徒ウマ娘がゲートに入る。そして勢いよくゲートが開く。
その瞬間……先生ウマ娘の存在が一瞬にしてゲートから消えた。
「えーーーーーーーー!?」
ツインターボは思わず叫んでしまった。それは大逃げを超えた爆逃げを更に超えた……例えるなら
『サイレンススズカ』『メジロパーマー』『ダイタクヘリオス』etc……
これまでに様々な大逃げ・爆逃げウマ娘の走りを間近で見てきたし、自らもひたすら逃げてきた……そんなツインターボからしても、このスタートダッシュは異常であった。スタートからわずかな時間で、一気に差をつけた。
「出た! 先生の大逃げ!!」
「私もあんな風に大逃げしたいな♪」
観戦している子たちに驚いている様子は全く無い。どの子もまるで見慣れているような反応だ。
「先生今日も速いよ〜〜!」
「後は任せて!!」
第一走者の子が600mを走り終え第二走者へと引き継がれる。その間にも先生ウマ娘は更に差をつけている
「1000mのタイム58秒6! すげえ!」
「今日も先生、絶好調だ!!」
タイム計測担当の生徒ウマ娘達が興奮の声をあげる。
58秒6、完全に
ツインターボは言葉も忘れてレースに見入っていた。
「(このまま最後までいくの!? でも……)」
彼女自身、大逃げでどれだけ差をつけても後半一気に差を詰められ追いつかれ突き放され……をこれまでに何度も経験している。しかもこれだけの超逃げとなるともう体力は……期待2割、不安8割な表情でレースを見守っていた。
「ハァハァ……今日の先生絶好調だよ! 後はお願い!!」
「うん! 今日は勝つよ!!」
気づけば第4走者の子が走り出していた。
レース中盤までにあった何十バ身もの大きな差は大分詰まっている……いるのだが……
「ふぅ……ここからね!」
先生ウマ娘の表情がかなり辛そうなのはここから見ても良く分かる。しかしそれでも大きな減速はする事なく走り続けている。
もし自分がこの超ハイペースで走っていたらどうなっていたであろうか。2400mどころか2000m……いや、1600mですら持たなかったのでないだろうか……ツインターボの全身は鳥肌、そして……ワクワクに包まれていた。
第四コーナーを抜けて最後の直線に先生ウマ娘が入ってきた。
生徒ウマ娘との差はもう10バ身を切っている。さすがに走る態勢も崩れ気味になっていて、速度はかなり落ちている。
それに比べて生徒ウマ娘は体力十分。はじめからラストスパーとの走りというのもあり、どんどん差が縮まっていく。
──9バ身差
──8バ身差
──7バ身差
──6バ身差
──5バ身差
──4バ身差
──3バ身差
──2バ身差
──2バ身差
──2バ身差
──2バ身差
──2バ身差
──2バ身差
「!?!?!?!?」
ツインターボは自らの目を疑った。あれだけ一気に縮まった差が、2バ身から全然縮まらないからだ。
生徒ウマ娘が力尽きた? 否!! 残り200mを切ってから更に速度を上げている。
それでは何故、差が縮まらないのか?
答えは簡単……先生ウマ娘がそれに匹敵する速度で走っているからだ。
完全に息は上がり表情も非常に苦しそうだ。にも関わらず…………差が2バ身まで縮まったタイミングで一気に速度を上げたのだ。
──残り50m
「ま……負けるもんかーーーーーっ!!!」
生徒ウマ娘が最後の力を振り絞り更に速度を上げる。
2バ身差が1バ身差に、そして半バ身差まで縮む。先生ウマ娘が隣に並ぼうとしている生徒ウマ娘をチラッと見る。そして……最後の力を開放する。
半バ身差が1バ身差に広がった。そして2人はゴールした。
その瞬間。その日一番の歓声が府中ウマ娘レース教室に響き渡った。
「きゃーーーーー!!!」
「負けたのは悔しいけど、やっぱ先生すげ──ー!!!」
「カブちゃん! カブちゃんーーーー!!!」
大いなる歓声を全身に受け、ようやく息を整える所まで体力を取り戻した先生ウマ娘がおっとりとした表情で声を上げる。
「コラ、カブちゃん呼びは駄目だって言っ……あら、あなたは?」
気づけばツインターボは、無意識の内にレース上に入り生徒ウマ娘達に混じってカブちゃんと呼ばれる先生ウマ娘を強く見つめていた。
これが、現役時代に
13戦11勝と言う圧倒的な成績を残した
『カブラヤオー』
との運命的な出会いだった。
時系列ですが、アニメ2期最終話(有馬記念)の翌年5月となっています。
設定としては基本アニメに準じています。