ツインターボ「……師匠!師匠!!師匠ーーー!!!」(連載中) 作:ゆきたか
(本当の門限は一体何時なんでしょうか?)
「こら! 一体今何時だと思ってるんだ!!」
時間は19時間過ぎ、トレセン学園の校舎にて大きな声が響き渡る。声の主はトレセン学園美浦寮の寮長を務めるヒシアマゾンだ。
「ひぃ! ごめんなさい〜!」
「またお前かツインターボ! 今度門限を過ぎたら3時間タイマンあげませんの罰って……あなたは?」
ヒシアマゾンは、ツインターボの隣に誰かがいるのに気づいて叱るのを止めた。見た事の無いウマ娘だ。どことなく、あのシンボリルドルフにも負けない風格を感じるのは気のせいだろうか。
「ごめんなさい、私がこの時間まで付き合わさせてしまったの。私はトレセン学園卒業生のカブラヤオーと言います。ツインターボさんに関して、生徒会長のシンボリルドルフさんとお話したい事があって一緒に来ました」
「あっ、ご丁寧にどうも。卒業生……カブラヤオー……まさか、あの伝説の……!?」
ヒシアマゾンの表情が一変した。
「伝説? 私はただのトレセン学園卒業生よ」
「ただの卒業生だなんてそんな! 当時の走り、映像で拝見しましたがとても衝撃を受けました! ……と、ルドルフ会長への御用ですね! 少々お待ち下さい」
ヒシアマゾンはすぐさまポケットからスマートフォンを取り出しシンボリルドルフへと電話をかける。その様子をツインターボは、唖然とした様子で見つめていた。
普段はみんなから『ヒシアマ姐さん』と呼ばれ、厳しいがとても気さくなウマ娘でもあるヒシアマゾン。それがこんなに固く緊張している所を見たのは初めてだからだ。
「ボソボソ……(師匠ってそんなに凄かったのか?)」
「ボソボソ……(そうでもないわよ。ルドルフちゃんやマルゼンちゃんに比べたら全然よ)」
ヒシアマゾンの電話中に小声で話す2人。シンボリルドルフとマルゼンスキー……なによりこの2人を
「はい……カブラヤオーさんが……ツインターボと一緒に……はい……分かりました」
どうやらヒシアマゾンの電話が終わったようだ。
「お待たせいたしました。ルドルフ会長のいる生徒会室までご案内いたします」
「なんかいつものアマゾンいつもと全然違うー! かちこちアマゾン!」
「ターボ〜、後で5時間タイマンあげませんの罰確定だからな……♪」
「ひぃっ!!」
歩きながら和気あいあいとしたやり取りを2人が繰り広げている内に、生徒会室前に到着した。
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「それではアタシは失礼いたします」
「ありがとう、ヒシアマゾン」
この後大事な話があるのだと言う状況を察してすぐに部屋を出ていくヒシアマゾンと、そんな彼女に敬意を持って感謝の言葉を述べるシンボリルドルフ。わずかなやり取りからも2人の信頼関係が伺える。
「こんな遅くにごめんなさいね、ルドルフちゃん」
「いえ……それにしてもお久しぶりですね、先輩。お会いするのは先輩が卒業して以来でしょうか」
「もう何年も前になるわね。トレセン学園にいた頃は、本当にルドルフちゃんにはお世話になったわ」
「何を仰いますか。私はその何倍も先輩のお世話になりました。当時の私はまだ全然……『遅えわ』……フフッ」
「あらっ、ダジャレ好きなのは相変わらずね」
思い出話に花を咲かせる2人、その様子をツインターボは先ほどと同じように唖然とした様子で見つめていた。
トレセン学園生徒会長にして『無敗の三冠バ』『史上最強バ』『無類のダジャレ好き』
トレセン学園のスクール・モットーを地で行く唯一無二の存在、全ウマ娘の憧れの的。それこそがシンボリルドルフ。
そして、そんなシンボリルドルフが
「(師匠は一体何者なんだ!?)」ツインターボのカブラヤオーへの憧れは、ここトレセン学園に来てから更に強固なものになっていた。
「それで先輩、お話と言うのは? 我が学園生徒のツインターボが関係しているようですが」
懐かし話も一通り終わり、シンボリルドルフが本題について問いかける。
「実は……」
──ツインターボとの出会い
──彼女の熱意に心惹かれた事
──そして彼女の指導をしたい事
カブラヤオーは淡々とかつ丁寧に語り始めた。そしてそれを、真剣に聴くシンボリルドルフ。
「なるほど、そういう事でしたか。
「ターボ、絶対にテイオーに負けないって決めたんだ! その為なら凄い凄いがんばる!! 会長にだって負けないぞー!!」
「フフッ、その日を楽しみに待っているよ」
そう答えるシンボリルドルフの顔はとても嬉しそうだ。トウカイテイオー同様、良い意味でフランクに接してくれるツインターボと言う存在はシンボリルドルフにとって心地良いものだった。
「週1回の稽古の件なのですが、私としては問題ありません。ただ、彼女はトレセン学園の生徒でカノープスと言うチームに所属する身。他方にも確認する必要がありまして……」
「ターボちゃんのトレーナーさん、後は理事長のやよいちゃんにも確認が必要よね」
「その通りです、話が早い。ただ今日はもう遅いので、明日のお昼にトレーナーとやよいさんを交えてお話と言うのはどうでしょう。良ければ2人にすぐ確認いたします」
「明日はレース教室お休みだし大丈夫よ。色々忙しいのに、本当ありがとう」
その言葉を聞くなりシンボリルドルフはすぐ、南坂トレーナーと秋川やよいに電話をかけ確認を取った。『思い立ったが吉日』と言うことわざがあるが、彼女の行動は1つ1つが実に早く迷いがない。
かといってただ早いだけではなく、熟考した上での決断だ。考え始めてから的確な判断を下すまでの時間が異常に短いのだ。競走バとしてだけではなく、頭を使った業務に関しても唯一無二の存在だ。
「2人とも大丈夫でした。それでは12時にトレセン学園第2会議室にてお願いします。……それにしても先輩、変わりましたね。あの頃とはすっかり」
「そうね……子供達に教え始めてからはすっかり緊張する事は無くなったわ。府中ウマ娘レース教室を紹介してくれたマルゼンちゃんには、本当に感謝してる」
「師匠の昔の話!? 聞きたい聞きたい!!」
尊敬すべきカブラヤオーの昔の話。
『愛すべき師匠は一体どんな競争バだったのか』
『そこにターボが強くなる秘訣があるんじゃないか』
ツインターボは興味の衝動を抑えきれず、口に出した。
「面白い話じゃないけど、それでも良かったらいいわよ」
「わーい! 昔の師匠知りたいーー!」
カブラヤオーは語り始めた、若かりし現役時代の頃の話を──