PCの不調を以前お伝えしましたが、掃除してなんとか起動。
その後、再びダウン・・・
1~3月分がすべて吹っ飛ぶ。
かくしてテンションの下がった英梨々と倫也はやっつけ仕事をして小説を投稿するであった・・・
「冬休みの宿題・・・一緒にしてあげてもいいわよ」
「新年の第一声がそれかよ・・・あけおめ」
「あけおめ。倫也」
玄関前に英梨々が立っている。
今日は1月の5日。
「上がっていいかしら?」
「ああ、どうぞ。スリッパ使うなら適当にな」
「うん」
キョロキョロしながら英梨々はリビングに進む。
「誰もいないの?」
「もう平日だからな」
「・・・そう」
「何か飲む?」
「じゃあ・・・紅茶で」
とりあえずソファーに腰をかける。
どうも緊張するというか、やる気がおきないというか。
「ハワイどうだった?」
「暖かかったわよ」
「そりゃあ、そうだろうよ」
「倫也はお正月なにしてたのよ?」
「たまっていたアニメ見てた」
さすがに年末年始はお休みだった。
英梨々も日本に残りたかったが、GWのように1人で寂しい想いをするのが嫌でハワイについていった。
倫也が家でアニメをみているなら、そっちのほうが良かった気がする。
「あっ、これ・・・おみやげね。一応」
「悪いな」
倫也が紅茶の入ったマグカップを英梨々の前に置き、自分もソファーに座った。
受け取った袋を開けると中には青いアロハシャツが入っていた。
「・・・夏だな」
「あっちは常夏なんだからしょうがないでしょ」
「ありがと・・・夏着るよ」
「今、着てみなさいよ」
「今っ!?」
「せっかくだし、『似合わないわね』って、ちゃんと感想いってあげるから」
「否定前提なんだ・・・」
倫也が服をもって洗面所へ行き着替えた。部屋の中とはいえ半袖シャツ一枚は寒い。
「どう?」
「えっと・・・想像以上に似合わないわね」
「一言付け足すなよ。もういいな?」
「うん」
倫也がまた着替えてからリビングに戻ってくる。
「なんか、こう・・・盛り上がらないわね」
「そりゃあそうだろうよ。1月のイベントなら無難に初詣か何かだろ・・・」
「それ、友達にあって失敗するやつなんじゃないの?」
「・・・凧揚げとか、独楽回しとか、羽子板とか?」
「小学生じゃないんだから」
「スキーとか?」
「倫也、スキーできるの?」
「できない」
「スノボーもできないでしょ?」
「当たり前だろ」
「ああ、でも雪遊びとかカマクラつくったり、雪ダルマ作ったりは楽しそうよね。那須の別荘いく?」
「バイトがあるから・・・」
「・・・そう」
英梨々が紅茶を飲む。
だいたい1月イベントっていっても、投稿が11月だか12月になるのは納得がいかない。
「ねぇ倫也・・・冬いちゃは作るの?作らないの?」
「・・・だからさ・・・英梨々。こないだも言ったと思うけれど、まずこの作品を完成させてだな・・・それから企画を・・・」
「そんな言い訳聞きたくない。恵とは40話以上も作って、あたしとは作れないってことでしょ?」
「そうは言ってねぇよ」
「帰る」
英梨々が立ち上がる。
「やっぱりあたしはサブヒロインなんでしょ?結局、倫也はあの子を選ぶんだわ」
「それ、別な物語だし、この物語は英梨々のためのものだろ?何が不満なんだよ」
「だから、時期よ。お正月でないのにお正月の話を投稿したり、バレタインしたり・・・」
「それは小説だからしょうがないよね?読者だっていつ読むかわからないわけだし・・・、現実の時間と小説の中の時間は違うわけだし」
「そうやって言い訳ばかり!」
英梨々が玄関に行く。
倫也は後ろを追いかける。とはいえ困った。
「で、具体的な内容とかあるのかよ」
「ぜんぜん」
「・・・これのあと2話は?」
「ぜんぜん」
「・・・冬休みって何日あるの?」
「さぁ・・・2週間ぐらいじゃないの?」
「行き当たりばったりだな」
「臨機応変って言って欲しいわね」
「フォーク准将かよっ」
「じゃあね」
玄関のドアがばたりと閉まる。
「・・・どうしてこうなった・・・」
前回までは多少強引ではあったが順調だったはずだ。英梨々ルートは紡がれていた。
正月を初詣で過ごし、バレンタインでチョコのやり取りをして、3月は英梨々の誕生日がある。
完璧な構成じゃないか。何が不満なんだ・・・
倫也は玄関で立ち尽くす。
『だから、英梨々にメインヒロインは無理なんじゃないかなぁ・・・?』
後ろから澄んだ少し高い声が聴こえた。
倫也は振り返らない。ここには誰もいないはずだ。
ケータイを手にとり、霞ヶ丘詩羽に電話をかける。
「もしもし・・・詩羽先輩」
「あら、倫理君。あいかわらずの流れね」
「どうして・・・どうしてこうなったんですか?」
「さぁ・・・?ゴールが見えてきて緊張しているんじゃないの?」
「でも、次回作の話なんて突然されて・・・」
「いつもならボツよね。だから、あまり劇中劇はしないように、さわむ・・・英梨々には伝えたのだけど」
「俺・・・どうしたら?」
「私からは何も言えないわよ。ただね・・・英梨々が冬休みの物語を望むなら・・・それを叶える以外に方法はないんじゃないかしら」
「作者が年末年始忙しいですよ?」
「そんなの作中人物には関係ないじゃない。要はね・・・これは試されているのよ」
「試される?」
「そう。つまるところ、倫也君が『あの子』を選ぶのか、英梨々を選ぶのかを・・・それってつまり、作者が英梨々のために書けるのかどうかってことでしょ?」
「言っている意味が・・・」
「そうね・・・そうよね。『加藤恵』の物語を毎日ぶっ続けで書くようなことをしたのに、英梨々にできないなら、それってその時点でやっぱり英梨々は負けているのよ。そうでしょう?」
「・・・俺にはどうすることも・・・」
「そうともいえるし・・・そうじゃないともいえるわよ。あなたの気持ちはどうなの?安芸倫也のイデアは今なにを考えてどうしたいの?」
「それは・・・」
ツーッ ツーッ ツーッ
電話が切れた。
首筋に冷たい金属の感触がある。
倫也は振り返らない。
いつもこの辺でボツ原稿の山になる。
楽しいはずの英梨々ルートが頓挫する。
『さよなら』
倫也は耳元で声を聴いた。
物悲しい声だ。
けど・・・暗い物語では終わらせない。英梨々だって成長している。
※※※
「バレンタインよりも、節分とかのほうがいいかしら?」
英梨々は倫也の家から自宅へ帰る途中だ。勢い駄々をこねて『冬いちゃ』を提案してみたものの、難易度が高い。
学園祭イベントをやめて過去偏にすることで、『あの子』の登場を回避したものの、やはりじっとしていられる性格でもないらしく、すでに亡霊のように登場してしまった。
(ボツにすれば回避できるのだけど・・・時間がないのよね)
自由にできる話はあと2話だ。それでまとめてしまいたい。
英梨々は英梨々なりに考えている。
そして、ぐるぐると似たようなところを周って、結論がでる。いつも一緒の答えだ。
「つまるところ・・・もうあたしが倫也に抱かれてしまえばいいのよね」
R18を書ける作者の元に産まれたのかどうかはわからない。原作者はそれのプロのようだが。
それなら1話ですむ。『冬いちゃ』のように多大な時間をかけなくても済みそうだ。
次回、倫也にそれを選んでもらおうと決めて、英梨々はこれをボツにせずに投稿をする。
ふふふっと一人で笑いながら。
本質的な問題を棚上げにして。
(了)
普通にラブコメを書けとお叱りを受けた。
いや、大丈夫。ちゃんと英梨々が着地するから。