これ、誤投稿してしまいました。一瞬で消しましたが・・・
さて、ラス前。
相変わらずの英梨々としびれを切らした倫也の話。
この話の最後の倫也のセリフは、なんていうか魂を感じました。
「はい。チョコ」
「ども」
「今年もあたしからしかチョコもらえないんでしょ?」
「英梨々、『も』っていうけど、去年までお前からチョコなんてもらってねぇーぞ?」
「去年まで毎年、机にチロルチョコ入っていたでしょ?」
「んっ・・・まぁな」
「誰からだと思ってたのよ」
「悪戯だと思ってたんだが?」
「はぁ・・・そういうネガティブ思考がオタクの根幹にあるのよね。学校一の美少女からチョコをもらっているとか思わないわけ?」
「思わないよね。普通」
「まっ、なんにせよ感謝しなさいよ。1つでももらえたらバレタインを呪うような非モテ男子にならずにすむんだから」
「ふっふっふっ」
「何気持ち悪い笑いしているのよ」
「今年もはいっていたんだよ」
「何が?」
「チロルチョコ」
「はい?なんで。誰から?」
「えっ?学校一の美少女からじゃないの?」
「・・・」
「・・・」
暖房の効いた倫也の部屋にコタツ。籠の中にみかん。
2人はこたつに入ってヌクヌクとしている。
TVには録画してあった、「白い砂のアクアトープ」が流れている。
英梨々は少し考える。・・・ここは、これ以上掘り下げない。
「スルーでいいわよね?」
「ああ、かまわん」
何かと気をつかう。誰にとはあえていわない。
英梨々が抹茶を飲む。
「それでね倫也。前回、話をしたけれど『冬いちゃ』がダメなら『R18小説』はどうかしら?」
「おまえ、頭大丈夫か?」
「あたしはいたって冷静なつもりなんだけど・・・」顔は赤い。
「それ、無事に話が進むと思う?ホラー映画の中にある男女のシーンぐらい死亡フラグたってない?」
「・・・そうよね。でもね、倫也はどうなのよ?そんな『誰かさん』の邪魔は別問題じゃないかしら?倫也があたしとR18小説を作る気があるかどうかが大事だと思うけど」
「・・・ふむ」
話が直接的すぎて実感はわかないが・・・英梨々の言い分も一理ある。とは言え、そこにいたるプロセスが大事なのであって結論が大事なわけではない。
イベント導入を簡略化するのはともかく、内容すべてを放り投げてのR18では意味不明だ。
「どんなのを考えているんだ?」
「えっとね・・・ほら、那須の別荘に駆け付けてきた時、あの後看病してもらって元気になって・・・少し2人で過ごしたでしょ」
「英梨々」
「何かしら?」
「そんな弱った女の子を襲うような行為は主人公といえないだろ?」
「合意だったらいいんじゃないかしら」
「そういう問題じゃないだろ?」
「そういう問題でしょ?」
「いいか、女の子と2人で夜を過ごす機会は幾度となくあったが、一切手を出さないのが俺だ」
「倫理君って言われる理由よね」
「うん。そもそも健全な高校生ラブコメだからな」
「お堅いのよね・・・倫也は」
「当然の感覚だと思うけど」
「臆病なだけでしょ?」
「・・・」
そこは否定できないな。
「じゃあ、話を変えましょ」
「・・・ふむ」
倫也が透明カップにはいったホットはちみつレモンを飲む。
「あの別荘イベントってさ・・・なんだったのかしらね」
「あれは・・・英梨々ルートフラグを立てたのだろうな」
「じゃあ、なんで負けるのよ」
「そこだよ。英梨々。原作者だって考えられなかったんだよ。何しろあれは英梨々ルートだからな、次の話がバレンタインまで飛ぶわけだろ。そこで重ねるように視聴覚室での恵ルートだ」
「あたし・・・何してたのかしら?」
「・・・いや、お前に問題はないよ。問題なのは昨今のラブコメ事情と行き当たりばったりのシナリオ構成なんだろう。ヒロインレースだからしょうがないのだろうけど」
「どういうこと?」
「いいか、もう再三繰り返していることだがな・・・」
英梨々ルート。考えすぎて頭が痛い。
「突然、絵を描けなくなるという設定。さらに高校生同人作家がメジャーゲームのメインイラストレーターに抜擢される無茶ぶり、絵が上手くなるために倫也をまた裏切って移籍を決意する英梨々・・・これだけの無理筋を押し通して退場させているからな」
「・・・」
「これこそが、結論ありきの物語のサブヒロインの悲劇性だよ」
「うん」
「そして、英梨々ファンの亡霊を産んだ理由であり、納得されない理由でもある」
「じゃあ、あたしは悪くない?」
「もちろん。悪くはない・・・ただな」
「何?」
「いいのか言って?」
「だって、そこが大事なのよね?」
「ああっ、そうだな」
倫也がはちみつレモンを飲む。甘い。
「・・・安芸倫也は加藤恵に一目惚れをして・・・彼女が好きなんだよ」
「・・・っ!」
ガタン。英梨々が立ち上がる。
それから、わなわなっと震えている。わかってはいる。
「落ち着けよ。英梨々。大丈夫だから」
「・・・ちょっと、トイレ」
英梨々が部屋から出ていく。
倫也は頭をポリポリとかく。そして深々とため息をつく。
相思相愛なのは原作の話だ。この同人はまた別。
倫也と英梨々は相思相愛であり、そこには問題がない。
問題は孤立する加藤恵だ。加藤恵をフェードアウトして英梨々と結ばれる物語は違う。
倫也が目指すのは英梨々も恵を幸せにする物語だ。
ずっとぐるぐるしている。
しばらく考え事をして、英梨々の戻ってくるのが遅いことに気が付く。
急いで下に降りて玄関に向かうが、英梨々の靴はなかった。
言葉が直接的すぎた。その後の展開を説明する前に英梨々が傷ついてしまった。当たり前だが・・・R18のような直接的な話もでたのでついつい分析的になってしまった。
倫也は靴を履き玄関を開ける。
走って追いかければ追いつくだろう。
・・・そして、世界がない。いつものことだ。ボツ原稿になる展開。
誰もいないはずの後ろから、少しトーンの高い澄んだ声が聴こえる。
「ほら、また投げた。だいたい読者が一桁まで落ちる英梨々に英梨々ルート作成は無理なんじゃないかな」
「あーあー!聞こえない聞こえない」倫也は耳をふさいで、玄関から何もない外へと走り出した。
※※※
「どこよここ?」
「どこでない場所で、どこでもない時間。英梨々。君と話がしたい」
「こんなのってずるくない?」
「英梨々、よく聞けよ。いいか、原作は原作だ。俺らは俺らだよ」
「でも、あんたがさっき言ったように加藤恵のことが好きなんでしょう?」
「ああそうだな。恵のことも、詩羽先輩のことも、出海ちゃんや美智留のことだって好きだ」
「なによそれ。ここにきてハーレム主人公っぽいことなんていわないでよ」
「でも俺は・・・俺はさ・・・英梨々が好きなんだよ」
「・・・何よそれ。5人みんな好きっていいたいわけ?」
「違う。英梨々が一番好きだし、英梨々を選びたい」
「・・・そんなこと、突然今いわないでよ?そういうのはしかるべき場所でしかるべきタイミングでいうべきでしょう?」
「英梨々は乙女だな・・・」
「なっなによ・・・」
「俺は、どんな場所でも、どんな時でも、お前が好きだよ」
「・・・からかわないで」
「だから、ここでいい。このどこでもない場所で俺はお前を選ぶよ。お前が強くなれるなら・・・恵を振ってでもお前をちゃんと選ぶよ」
「やめてよ・・・恵は泣かせないで」
「なぁ英梨々、俺らは高校一年生を演じてきた。そこに問題はなかっただろう?なぜ劇中劇にした?普通に過ごせばよかったんじゃないか?」
「そんなの・・・知らないわよ。それにあたしは嫌だったの」
「何が?」
「この原作にない架空の時間がよ。恵のいない冴えカノなんて・・・」
「そっか。じゃあ、もうひと踏ん張りするしかないな」
「逃げたい」
「そうもいかないだろ?いつまでも逃げてはいられないし・・・いつか物語は終わるんだよ」
「だいたい、あんたはあたしでいいの?」
「お前がいいんだよ。いい加減わかれよ」
「じゃあ、なんで夏休みにあたしと過ごさないで恵と過ごしたのよ」
「お前は何もわかってねぇーな」
「なによそれ」
「あの物語は恵の物語じゃねーよ」
「はぁ?何言ってんのよ?誰がどーみても恵の物語でしょ?」
「いや、あれは英梨々の物語だよ」
「意味わかんないっ!」
「意味わかんないやつは、ここまでたどり着けてねぇんだよ!」
「何キレ気味になってんのよ」
「だから、お前は自覚をもてよ」
「なんの?」
「メインヒロインのだよ!」
(了)
次でラストになります。
余談ですが、PCが不調なんで修理センターにもっていったんです。
電源が立ち上がらないので原因を特定しようとしたら、電源がはいりやがる・・・
まったく問題なし。
モニターに映る壁紙は素数をアレンジしたものなのでオシャレだ。
問題は、デスクトップのフォルダやワードのタイトルが「英梨々」であふれていたことだ。
相手はスルーする。俺もスルーする。それが大人ってもんだ。
調子が悪くなった段階で、英梨々の壁紙を替えて置いてよかった・・・
危うく、あとがきで『英梨々の笑顔が画面いっぱいに映った。』とかいうリアルオチになるところだったよ・・・