英梨々っていうのは小学校の頃好きだった子の憧憬のようなものなのでしょう。
異性は異性なんだけど、性愛とは違うと思います。
うん。プラトニックなんだな(赤面)
06 水着回
ある暑い夏休みの日。
倫也は英梨々の家に遊びに来ていた。
「でかいな・・・」
「そう?ずっとこれだったから、よくわからないけど」
倫也と英梨々はビニールプールの縁に座って、裸足の足だけをプールにつけている。
ビニールプールといって、縦3メートル 横2メートル弱の大きさがあり、角には小さなウォータースライダーがついていて、そこから水がたえず流れている。
ビニール製とはいえ、とても頑丈なので大人が座るっても大丈夫だ。
2人の間にはお皿にカットされたスイカが置いてある。
「スイカ食べたら?」
「ああ、うん。いただきます」倫也がスイカを1つ手にとって齧りつく。
甘いのはもちろんだが密度がとても濃い気がする。
「・・・うまいなっ!」倫也が感動する。
英梨々も一口、ガシュリッとかじる。
「あら、意外といけるわね」
倫也が一つ目を食べ終わる。白いところまですっぱくなくて、かじって食べられる。
種は皿の端のほうにまとめて置く。
「ふぅ・・・やっぱ千疋屋の一流品は違うよな」
「違うわよ?」
英梨々は足をゆらゆらと水中で揺らしている。
一応、水着を着ているが、上に白いロングTシャツと着ていて、水着は見えない。太ももあたりのTシャツは少し濡れている。
「ん?高いのかと思った・・・。新宿タカノ?」
「これはね。『サカダのタネ』の開発中のものよ」
「『サカダの種』ってなんだ?」
「はぁ・・・あんたそんなことしらないで、よく果物たべているわね」
「いや、突然ディスるなよ」
「いい?サカダの種は上場もしている種子メーカよ。農家に種を売る会社ね」
「それで?」
「そこではたえず品種改良を進めているのよ」
「へぇ・・・」
「これはその試作品ね」
「いくらぐらいするんだ?」
「開発費を収穫された個数で割ったら、大変な数字になるんじゃないかしら?」
「・・・」
「これが市場に回ると、初セリで数十万とか百万とか値が付くのよ。たまにニュースでみるでしょ?」
「ああ、うん」
英梨々が二つ目のスイカを手に取る。
倫也はスイカを眺める。庶民としては少しヒく。
「遠慮なんていらないのよ。貰い物だし」
「ああ・・・じゃ、いただきます・・・」
倫也がスイカをかじる。
足は英梨々と同じで水につけている。ひんやりとして気持ちがいい。
「スーパーボールはまだもってる?」
「捨ててないから、どこかにあると思うけど・・・」
スーパーボール。色とりどりのものがある。縁日で掬ったスーパーボールを英梨々は集めていて、箱いっぱいある。100ではきかず、おそらく300個ぐらいあった。
子供頃は、それをウィータースライダーの上から、ドドドドッと流しいれるのが倫也は好きだった。
そのあと、2人は破けないポイでスーパーボールを掬って箱に集める。
それの繰り返しだ。飽きずに夕方までやると、手の指がしわしわになった。
当時の英梨々は、白いワンピースにフリルスカートがついていたものを着ていた。陽光に照らされると水面も髪の毛もキラキラと輝く。
「あれは・・・好きだったなぁ・・・」
倫也がしみじみと水面を眺める。
「探してきてあげてもいいわよ?」
「いや、いいよ」倫也が笑ってしまう。
流石に高校一年生にもなって破れないポイでスーパーボール掬いは恥ずかしい。
まったりとした時間が流れる。
倫也は最後のスイカを手に取った。
それを齧って、「うまいな・・・」と感想をいう。
「さてっと。水着回はこの辺でいいかしらね?」
「はははっ。さては見せる気ねぇな?」
「だって、こんな子供プールで水着なんて、恥ずかしいじゃない?」
「そうだな・・・」
最初はハワイだった。次にフランスのニース。それからイングランドのブライトン、エーゲ海クルーズ、モルディブ・・・も行った。
そういうわけで、この英梨々。すでに日焼けしていて茶色い。
倫也にいたっては、もっと黒い。
夏を満喫しすぎた。
「お前・・・ボツ原稿増やしすぎだろ・・・」
「ボツにするから、ややこしいことになるのよ」
「でも、高校生が海外旅行なんて行かないよねぇ!?」
「そうでもないんじゃないの?親子同士でいくケースもあるでしょ」
「ない(きっぱり)」
「あえて、南半球でスキーとか?」
「ないない」
「そうやって、頭が固いからボツになるんじゃないのかしら?」
「わざとだろ・・・」
そして、結局自宅のプール。混雑しているところを避けるあたりは性格がよくでている。
「だいたいね。倫也。あたしとしては夏休みの間、倫也はずぅーと誰かさんと過ごしていて、あたしとの夏休みは秋に投稿するとか、その辺からして気に入らないのよ」
「・・・一緒に過ごせない理由はバイトだから・・・」
「往生際が悪いのよね」
「他の物語の内容を引きずってこないで・・・」
「別にいいけど」
英梨々が立ち上がって、プールの中に入っていく。深さは40cmぐらいある。
ぶかぶかのロングTシャツが透けて、水色のビキニを着ていることがわかる。
日差しは強く、英梨々の髪の毛が眩い。
庭の蝉がうるさく鳴いている。
英梨々がしゃがんで何かをしている。下半身が濡れてる。
立ち上がるとTシャツが張り付いて、水色の水着がお尻の形に浮かび上がった。
くるりと振り返って、倫也の方を見る。
「あっ!」倫也が叫んだ。
英梨々は大型の水鉄砲を構えている。
「覚悟しなさい。この浮気者!」
英梨々が水鉄砲のトリガーを引くと、空気圧に押されて勢いよく水が出て、倫也の短パンの水着と上に着ていたTシャツがずぶ濡れになった。
「浮気?」
濡れたまま倫也は立ち上がって首をかしげる。
「浮き輪って言ったのよ」
英梨々が水の中を重そうに進んで、いったん外にでる。ヘリをまたぐときの仕草がセクシーだった。
置いてあった浮き輪に空気をいれる。もちろん電気式ポンプですぐに浮き輪は膨らんだ。
「はい!」
英梨々は倫也に膨らんだ浮き輪を渡す。
男の子用の青系統の浮き輪で、倫也はそれを受けとて頭からいれたが、きつくってなかなか入らない。
「英梨々。無理だ・・・これ、小さい」
「そ、残念ね」
英梨々はもう一つ膨らませる。今度は大人用のでかい浮き輪。
英梨々が浮き輪を投げる。
今度は倫也がすっぽりとはいった。
「いい感じ」倫也がプールにぷかぷかと浮かぶ。
英梨々はさらにもう一つ、浮き輪を膨らませて、今度は自分が頭から入った。
ヘリに立ってから、ザバンッと入る。
水しぶきが倫也にかかる。
英梨々も一緒にぷかぷかと浮かんだ。
「まっ、どこでやっても一緒よね」
「人目がない分、気楽だな」
「そうね」
空が青い。分厚い白い雲がただよっている。
英梨々が手で漕いで、倫也の横に並ぶ。
「のどかね」
「そうだな。やっぱ夏休みは何もしないのがいいよな」
「だいたい、あんたはバイトしすぎなのよ」
「しょうがないだろ?ブルーレイBOX買わないといけないんだから」
「今度は何を買うのよ?」
「『ソウナンですか?』なんだけど、知ってる?」
「それ、金髪ツインテールが主人公じゃないかしら?」
「・・・そうだっけ?」
「wikiで出演作品だけ見ているから、そんなことも気がつかないのね」
「・・・一応、みたぞ」
「そう」
2人が漂う。
もう少し大人になったら、場所がプライベートビーチになるかもしれないが、やることは一緒だ。
のんびり過ごす。この贅沢さは他にはない。
「そうだ。倫也。今夜うちでご飯食べてきなさいよ?」
「ん?何かあるのか」
「うん。ホームパーティーなんだけど・・・」
「ああ、給仕の手伝いか」
「・・・うん」
夜のホームパーティーには親の関係者がけっこう集まる。プロの給仕もいるが、倫也も参加すると一万円くれる。時給換算で3000円ぐらいのおいしいバイトだ。
裏で豪華な食事も食べさせてくれるし、断るわけがない。
主な仕事は愛嬌をふりまいて疲れた英梨々の愚痴をきくというのがある。他の人にはできない。
英梨々としては、倫也が蝶ネクタイをしているのをからかう楽しみもある。
「ああ。いいよ」
倫也が英梨々の方を向きながら答えた。
英梨々のTシャツはすっかり濡れていて、胸に張り付いている。水色のビキニが透けてはっきと見える。
英梨々は倫也の方を見ながら笑顔を作る。八重歯を見せながら。
(了)