—王国国境地帯—
午前8時-晴天- サルミア湖
静かな湖の砂地に無線機、着替えなどが木の根元に雑に置かれている。小鳥が囀る中、一人の女が体を洗っていた。顔はよく見えないが、透き通った肌と銀色の美しい髪に思わず目が行く。洗顔をした後、湖から出てきた。身体からぽたぽたと水滴が落ちていく。
突然無線機から連絡が入った。
無線機「T-80型、応答願う。特別任務が更新された。」
女性「T-80型など腐るほどいるだろ。認識番号T80-U-256957だ。覚えておけ兵士。」
無線機「あぁ、すまない。。以後気をつける。話を戻すが、至急貴官にやって貰いたい任務がある。VIPを救出して身柄を保護してもらいたい。作戦遂行可能な者且つ現地に近い者は貴官しかいない。」
女性「VIP救出?いま補給場で燃料補給するとこなんだが。本当に機動兵とかいないのか?近隣に。」
脇腹をかきながら面倒臭そうに下着を着る。
無線機「それが――スカンディナ王国の王子なんだ。」
服を着る途中、彼女の動作が止まる。
女性「……。」
女性「それはちょっと高くつくぞ。」
5分後――
女はさっきとは嘘のように速い動作で身支度を済ませていく。装甲をつけた後、大砲のような大きい銃と機関銃を背負い、無線機のマイクを顔に装着する。顔は見えないように常にガスマスク をつけている。
女性「任務は承ったが、途中で補給が必要だ。作戦地域で最寄りの補給場を見つけてくれ。」
無線機「了解、善処しよう。作戦地域到達次第連絡を応う。」
女性「あのガキ……。世話の焼ける奴だ……。」
作戦地域到達――
女性「基本戦術システム、発動機起動完了。IFF起動。オールシステムグリーン。VIPは180号舎にいるんだな?」
無線機「そうだ。なるべく穏便に頼むよ。そうだこれ以降作戦指揮官に変わるからね。頼んだよ。」
女性「……注文が多い。」
女性は警備の薄いところから侵入し、見張りを素手で2人殴り殺した。1人は首を折られ、もう片方は胸を貫かれた。
女性「この階の奥の部屋か。
一先ず看守を倒さねば。」
そう言いながらフロアの敵を反撃される前に1人残らず倒した。
ルーカス「な、なんだか騒がしいなあ……。」
「薄暗くて何も見えない……。」
180号舎の二階までは牢屋なので常に薄暗い。一階は囚人たちの呻き声が絶えず響き渡り、二階は重要人物を閉じ込められている。
その中、ルーカスの前に女性が現れ、ガスマスク 姿でルーカスを見つめた。目から放つ赤外線の赤い光が不気味さを醸し出す。
ルーカス「うわあああっ!」
ルーカスはひどく怯え腰を抜かした。
女性「3日ぶりだ、少年。」
ルーカス「お、お前は!
よ、よくもエリアスを殺したな!」
女性「時間がない。ここを出るぞ。」
ルーカス「誰が人殺しと行くもんか!」
「僕は王国軍が来るまで絶対に出ないもん!」
女性「ならば力尽くでやるまでだ。」
女性はルーカス王子を片手で軽々と持ち、左手で抱えながら建物から出る。ルーカスが騒ぎ立てるが、
次の瞬間、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
女性「ちいっ。面倒になりそうだ。」
歩兵「あいつだ!撃て!」
女性はエリアスを抱え込み、弾幕から守った。
これだけ撃たれてもびくともしない。
歩兵1「全然効かねえ!」
歩兵2「くそ、あいつ機動兵だぞ!ロケットランチャー持ってこい!」
女性「重火器で応戦するつもりか。当てれるものなら当ててみろ。」
ルーカス「ひぃぃぃ!」
歩兵3「重火器はやめろ、捕虜を殺す気か!」
攻撃が少し止んだ瞬間女性は隙をつき場にいた歩兵を全て倒す。
放送「厳戒態勢。厳戒態勢。VIPが奪取された。繰り返す――」
女性とエリアスは収容所の外へ脱出した。建物から次々と歩兵や機動兵が湧く。女性は無線機を通じて誰かに報告しているようだ。
女性「VIPを救出後に脱出した。補給場は?」
無線機「中々派手にやったようだな。。
追っ手がすぐ来るはずだ。一先ず最寄りの補給場の座標を送ろう。」
女性「……駄目だ、遠すぎる。ユーラシア連邦の補給場が近いと思う。」
無線機「それはやめておけ、現在ユーラシア連邦は鎖国状態にあり――」
女性は無線機のスイッチを切った。
女性「少年、私の燃料が長くは持たない。同盟軍の領土まで間に合わないから近くの知り合いの基地に強行するぞ。」
ルーカス「よ、よく分からないけど……。わかったよ……。」
女性「ではこの谷を下るぞ。」
ルーカス「い、いやかなり勾配があるんだけど。」
女性「私にしっかり掴まれ。」
そう言いながら女性は少年を抱き抱えた。
ルーカス「(わっ、すごい暖かい。。)」
ディーゼルの音が少し煩いが、機動兵は人より熱いくらいの体温をもっている。また、ふかふかの体に包まれてルーカスは少し落ち着きを取り戻した。
歩兵「いたぞ!」
女性「では、いくぞ少年。」
ルーカス「え?いや、ちょっとまって、うわぁぁ!」
女性は自分の足にそこら辺にあった鉄板を使って思い切り谷を下った。スノーボードの要領で下った。
無線機「おい!ブリテン領から離れているぞ!256957!」
女性「後で必ずVIPを引き渡す。私が動かなくなれば、この任務自体水の泡になるぞ。」
無線機「何を言っとる!」
無線機「……ううん、クソ。適宜報告するんだぞ!分かったな!」
谷を降りた直後ユーラシア連邦の警備部隊に遭遇した。
ユーラシア兵「……隊長未確認の何かが高速で真っ直ぐ接近してきます!」
分隊長「なんだと!?総員第一戦闘配置!双眼鏡かせ!」
ユーラシアの警備隊に緊張が走る。
分隊長「撃ち方用意!」
BMP-3「あ、隊長待ってください!あれは敵じゃないです!T-80U型です!」
分隊長「なんだと!?撃ち方やめ!銃口を下げろ!」
女性は谷から滑り降りてきた。
分隊長「貴様はどこの隊だ?」
女性「私は傭兵だ。どこの隊にも属していない。」
分隊長「傭兵だと?ユーラシア連邦に何の用だ?」
女性「VIP救出任務で野暮用だ。」
ユーラシア兵「VIP?」
女性がしゃがんでコートの中からルーカスが出てくる。
ユーラシア兵たち「子供……?」
分隊長「誰だね、この子は。」
BMP-3「かわいいねえ〜君ぃ、お名前は〜?」
そう言いながらBMPはルーカスの頭をポンポンした。
ルーカスは恐る恐る自己紹介した。
ルーカス「こ、こんにちは。スカンディナ王国のルーカス・ヨハンソンと申します。。」
分隊長「えっ」
BMP-3「ふぇっ?!」
分隊が急にざわめきはじめた。一国の王子を急に目の当たりにして驚かない人間はいない。
分隊長「スカンディナ王国は一族がクーデターによって滅せられたと聞いたが……。御無礼をお許しくださいませ、ルーカス王子……。」
分隊長が跪き、BMP-3の顔が青ざめる。
ルーカス「あ、ああ皆さんそんなに謙遜しないでください!僕別に気にしてませんから!」
女性「この辺りに補給場は無いだろうか?燃料が切れそうで任務が全う出来ん。」
その時クーデター部隊の追手がやってくる。弾がヒュンヒュン飛んできた。
分隊長「ここの坂を降りて真っ直ぐだ!案内しよう!」
「アキモフ、基地に連絡しろ!敵が攻めてくるぞ!!」
警備隊と共にユーラシア連邦の補給場に行った。
ユーラシア連邦第153補給基地――
基地に到達後サイレンが鳴り響き、厳戒態勢が敷かれた。同時に警備隊は塹壕の中に入り応戦する。兵舎から次々と歩兵が定位置についていった。
一方王子たちは――
女性「軽油満タンで頼む。」
補給隊「はいよー。給油孔は何処だ?」
女性は首の装甲にある給油孔を補給隊に向けた。
補給隊「もしかしてルーカス王子でありますか??」
ルーカス「あ、はいそうです。お陰様で助かりました。」
補給隊「力になれて何よりですよ。ひとまず怪我の消毒をしましょう。」
放送「航空機接近中、対空戦闘要員即時待機。」
ルーカス「航空機?!」
女性「それだけお前を本気で殺しにかかってるんだ。さっさと手当を受けろ。」
兵舎から対空専門の機動兵がわらわら現れた。怒号とともに配置についていく。暫くすると戦闘機や攻撃機が群れで飛んできた。激しい戦闘の中、補給基地に軽微な損傷や人員の損耗が生じた。
戦闘が落ち着きはじめた最中、基地内の車が突如王子たちに向かってきた。中年の女性指揮官が怒り狂いながら来た。
指揮官「おい、ベリョーザ!一人で戦争おっ始める気か??聞いてんのか!こら」
指揮官が女性の胸ぐらを掴む。と、同時に首から緑色の軽油が滴る。
女性「やむを得ん状況だ、みろ。」
女性は顔で王子を指し、指揮官の手を払い除けた。
女性「スカンディナ王国の王子だ。時期国王らしいが。」
指揮官「知らんな。」
ルーカス「あ、あの……えっとえっと……。」
ルーカスがあたふたし始め、頼りなさそうな雰囲気をだす。
女性「スカンディナ王国存亡の危機だ。巻き込んでしまったことは申し訳ない。補給が完了次第直ちに出て行くつもりだ。」
指揮官「……我が国は社会主義体制で他国の協力や支援云々は限られた国しかやらん。ましてやスカンディナ王国など…。」
「……私も鬼では無い。必要最低限の支援はしてやる。用があればうちの補給隊員に言え。時間がねえぞ、貴様ら。」
ルーカス「あ、ありがとうございます!この借りは必ず返します!」
指揮官「はあ、さてどう処理すれば……。」
女性「包帯は巻いてもらったか?長居は出来ん。」
ルーカス「はい!」
通信士「ルフィーナ大佐、現在我々が優勢です。敵航空勢力が弱まっております。今が抜けるチャンスです。」
指揮官「わかった。おい貴様ら、今しかねえぞ。」
女性「了解した。支援に感謝する。」
「少年、さっさと中に入れ。」
女性は自身のエンジンをかけ、エネルギーを充填させる。背中のマフラーから排気ガスを地面へ吹き付けた。ルーカスはそのまま女性の装甲とアウターの間に挟まった。胸にすっぽり包まれているが、エンジン始動したばかりかちょっと冷たい。
指揮官「そういや君名前聞いてなかったな。」
ルーカス「ルーカスです。ルーカス・ヨハンソンと申します。」
指揮官「ルーカスか。覚えておこう。」
通信士「時間がありません、お早く。」
女性「さあいくぞ。」
指揮官「国境を抜ける道中、航空戦力は無視できない。うちの対空戦車を連れて行け。」
ルーカス「ありがとうございます!ルフィーナ大佐。」
指揮官「礼は後でいいから、今やれることに集中しな。ほら急げ。」
ルフィーナは対空戦車に命令を下し立ち去った。
ツングースカ「基地司令命令で道中援護させていただきます。こちらへ。」
ツングースカが対空機関砲でルーカスたちを守る。機関砲や対空ミサイルで攻撃し、30mm弾が連なりながら空に弧を描く。暫くすると国境付近まで辿り着いた。
ツングースカ「私たちが行けるのはここまでです。」
女性「支援に感謝する。大佐にも伝えてくれ。」
ツングースカ「了解しました。御武運を。」
そういって彼女たちは帰っていった。
ルーカス「に、逃げ切ったのかな?僕達……。」
女性「取り敢えず、ここまで来ることはないだろう」
「此処からは私について来てもらうぞ。」
ルーカス「は、はい。」
女性「作戦成功。これより帰投する。」
無線機「ああ、音信不通だったから心配だったよ。報酬を渡すから速やかに帰投するように。以上」
ルーカス「へ?報酬?ぼ、僕の救出……?」
女性「そうだ。」
「ついて来い。」
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