勢いで書ききってしまったので後々修正するかもしれません。
そしてお待たせし致しました。10話にして拙いレースシーンをお送りいたします。
かくして乱入者ゴールドシップを交えた4人での出走となったトレセン学園模擬レース。
芝 2000m 良バ場 天候は晴れ。風もほぼ無風でレースをするには絶好の条件が揃っていた。
「おーし、全員準備は良いな?よし、良いな抜錨!出港じゃーい!」
「待て待て!ゴルシ、沖野さんからは好きにしろって言われたけど、無茶すんじゃねぇぞ!」
「了解!564光年差つけてくるぜ!」
意気揚々とスタート地点に向かうゴールドシップに番トレーナーは頭を抱えた。
番トレーナーがスタートの合図をすると同時に全員が綺麗に横一線に並んだ。いや、一人足りなかった。
(ゴールドシップさんは…?)
ちらりと後方を確認すると「やべ」という声と共に走りだすゴールドシップの姿が確認できた。何があったのかとこの時は考えていたが後から聞いてみれば、番トレーナーに向かって投げキッスをしていたらスタートしてしまったという。ただそれだけのしょうもない理由であった。
レース開始から200m通過。先頭はソロエルティ。その後ろにピッタリと張り付いているのはデオンドコロン。そこから更に2バ身ほど後方にサンノウケイデンスは位置どっていた。ゴールドシップはその更に5バ身ほど後方の最後方だ。最初の出遅れからたった200mでこの位置まであがってくるゴールドシップにサンノウケイデンスは畏れを押し込めるように生唾を飲み込む。ゴール前以外の定位置が最後方である追込みの脚質。先頭までもが既に彼女の豪脚の射程圏内である。スパートまでひたすらに脚を貯める黄金の浮沈艦のプレッシャーを背に受けるだけでペースが乱れそうだ。だが、サンノウケイデンスの武器はスタミナだ。ロードレースに比べれば、2000mという距離はごく一瞬である。何時間も走るうちの2分程度である。これだけは、この場の誰にも劣らないという自信があった。
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(さて、200m通過。ソロエルティは相変わらず典型的な逃げ、デオンドコロンは逃げを徹底的にマークする先行、サンノウケイデンスは差しウマか…自転車のレースしてるだけあってペースが崩れないな…で、ゴルシはいつも通りの追込み。正直、いきなり大逃げとかやり始めたらどうしようかと思った…)
番トレーナーは双眼鏡とストップウォッチを片手にゴール地点でレースを見守っていた。
(それにしても、綺麗に各脚質が揃ったなぁ…)
わずか4人のレースであるにも関わらず、大きな4つの脚質分けのウマ娘が揃うというのは、偶然という一言で片付けられない現象に、番トレーナーはわずかに感動を覚えた。
(400m通過。まだ大きな動きもないな。まぁ4人で、まして全員バラバラの脚質じゃポジション争いしようもないよな)
そして、レースが動き出したのは600mを通過した辺りから、サンノウケイデンスが徐々に加速して前との差を詰め始めた。そしてそれを後方で息をひそめていたゴールドシップが目をつけた。
(ゴルシの奴…ケイデンスを徹底マークしているな…ロクにレース走ったことないデビュー前のウマ娘にやるか?えげつないなあれ…)
ゴールドシップはドリームトロフィーリーグでも上位で鎬を削る一流のウマ娘だ。トゥインクルシリーズを駆け抜けた実績は伊達ではない。いわば走りのプロのマンマークである。その足音がじわじわと、確実に自分に迫ってくるのだ。一度もレースに出場していないサンノウケイデンスが感じるプレッシャーははかり知れない。そして700mを通過する直前に差し掛かった瞬間。ゴールドシップの錨がサンノウケイデンスを捕らえた。
「おっしゃあ!」
ゴールドシップは一息でサンノウケイデンスの隣に並び、やや右側後方に位置取りべったりとくっつくように並走する。インコースから外側に出て本加速しようとしていたサンノウケイデンスはゴールドシップと前を走っているデオンドコロンのたった二人で蓋をされてしまったのである。
(おいおい、性格悪いなあいつ…多分思いついたからやったくらいなんだろうが…やられた方はたまんねぇな…)
番トレーナーはこの局面をサンノウケイデンスがどう乗り切るか期待しながらレースを見守った。
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(ほんっと呆れるくらい頭が切れるわね…流石はゴールドシップさん。コロンさんはただインコース走ってるってだけで私をブロックしてるなんてまるで意識してない…そして、多分この人は分かってる。私のスパートが脅威でないことを)
やや右後方を走るゴールドシップは時折振り返るサンノウケイデンスに、にやりと牙を見せるように意地の悪い笑み見せた。まるで、「前の二人抜かしたいんだろ?行けよ、アタシもいるけどな」と言いげな挑戦的な挑発。何故これほど徹底的にマークされているのか分からないが、600m地点からの加速だけで、サンノウケイデンスの弱点がゴールドシップに気付かれた。そしてこのマークをどう振り切るか。それが問題だ。
(このまま残り600m…いや、スパート体制に入る最終コーナー前までこのままのポジションをキープされたらもう勝ち目は無い…)
サンノウケイデンスの思い描く勝ち筋は残り800mまでに先頭に立ち、そのままスパートで加速し続けるロングスパートだった。しかし、ゴールドシップが隣を走っていることによりそれが難しくなった。しかも、隣を走っているだけで走路妨害ではなく、こちらが強引に前に出ようとすれば斜行になりかねないという嫌がらせとしか思えないポジショニングだ。多少減速した所でそれに合わせて減速され、最終直接になれば全員まとめて撫できるという。爆発的な末脚があるからこそ可能な変幻自在の作戦だ。
「おう、もう残り1200m切ったぜ?どうすんだ?」
後方からゴールドシップの声が聞こえる。やはり、サンノウケイデンスに加速力がないこと、トップスピードにもっていく為に距離が必要であることが分かっているのだ。ならば、強引にでも外にでなければならない。
「ふっ!」
サンノウケイデンスはブレーキをかけ急激に減速した。脚も使い、最後尾になってしまう策だが、スパートをかける為にはこの方法しかなかった。急ブレーキをかけるサンノウケイデンスに流石のゴールドシップも反応しきれず、サンノウケイデンスの前へと躍り出た。その隙を見逃さず再び外側へと進路を変え再加速をするサンノウケイデンスに「やるじゃねぇか!」とゴールドシップは一瞬だけ振り向きそう吠えると先団目掛けて一気に加速していった。それに置いていかれまいとゴールドシップの背を追いかけるがその差は広がるばかりだ。更にブレーキしたことによりデオンドコロンとの差も5バ身ほどに広がってしまった。サンノウケイデンスにできる事は無茶した脚に鞭打って最高速度まで素早く加速してゴールドシップに追い付くこと。少なくともソロエルティを捉えなければ勝負にならない。
「ギア、下げないと…」
そう呟きサンノウケイデンスは態勢を低くし、脚の回転を早める。短い歩幅で走るいわゆるピッチ走法だ。
(先輩もケイちゃんもアガって来た!)
後方の足音を聞き咄嗟にペースを上げるデオンドコロン。しかし、ソロエルティとの差は縮らない。ソロエルティは後方の確認などしていなかったが、無意識にペースを上げていた。背後に感じる異様なプレッシャーからか、表情は少し険しく掛かり気味のようだ。
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(残り1000m、折り返し地点だ。もうデオンドコロンとゴルシが並んでいる。見たところ1バ身先にいるソロエルティは既にいっぱいいっぱいだ。多分、残り100m付近で失速するだろう。慣れない中距離のレースに、ゴールドシップのプレッシャーもあって完全にペース配分を間違えてるマイルならギリギリスパートで垂れなかっただろうが…)
残り1000mを通過した所で、もう勝者は決まったと番トレーナーは判断した。
(デオンドコロンはスタミナはなんとか保っているがそれでもゴルシに離されないように走ってるから思い通りのペース配分になってないだろう。スタミナ勝負じゃあいつに勝てない。スパートで突き放されるだろうな)
そして番トレーナーは最後尾についたサンノウケイデンスを見つめる。
(ケイデンスは早めに加速してロングスパートをかけようとして失敗。それでもあのブロックを振り切ったのは大したものだ。あのピッチ走も、回転数は見事なものだ。だが、平坦を走るにはパワーが足りない。スタミナの消費も激しいあの走り方じゃ、自慢のスタミナが底をつくだろう)
そう考えていた矢先、サンノウケイデンスはより深く前のめりに、前傾姿勢となり更に脚の回転数を上げた。
(嘘だろ!?まだ回るのかあの脚!というか、残り900m…950m手前か?あの位置からスパート?そんなもん、デビューもしてないウマ娘がやるようなもんじゃない!)
明らかに無茶な走り方だ。止めるべきだと考えたが、けしかけた自分に止める権利があるのか、このレースを中止して良いのかと呵責を起こした。いや、思えばサンノウケイデンスが強引な減速をした時点で注意するべきだったか。あのようなブレーキのかけ方、脚に負担が掛からない訳がない。そんなものを吞気に感心している場合ではなかった。そんな自分に腹が立った。しかし、止めようと思ったときには既に遅かった。数秒、それはレースにおいて大きな差を生む。もう全員が最終直線に差し掛かっていた。このタイミングではむしろ減速を求める方が脚に負担をかける。もう、このレースの行く末を見守る他なかった。
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残り800mに差し掛かりデオンドコロンの背中をようやく捉えることができた。しかし、その1バ身先にソロエルティが。更に2バ身先にはゴールドシップがいる。ハナを奪われたソロエルティは焦ったのか必死にスピードを上げていた。既にスパート前ほどの速度に達している。そして、デオンドコロンはその二人と競り合うことをやめ、やや後方に位置どった。最終直線で全力でスパートする為に脚を貯める策をとった。そして、サンノウケイデンスは既にスパートをかけ始めていた。最高速度に達するのは恐らく残り650m前後であろう。正直、もうゴールドシップを追い抜ける未来が見えなかった。彼女の方が先行している状況、加速力、スパート距離。サンノウケイデンスはこれらに対応できる策が無い。単純な力量差。これを覆すのは並大抵の策では通用しない。それでも、足搔かなければ勝機などない。
「はぁあああああ!!」
サンノウケイデンスは心の中で自転車のギアをイメージする。そして一気に2枚ギアを重くした。残り700m、想定より早くトップスピードに辿り着いた。デオンドコロンに並んだ。ソロエルティは1/2バ身先。ゴールドシップは既に4バ身先にいる。恐らくまだ脚を残している。しかしもう間もなく最終コーナーだ。トップスピードに乗った今はただゴールまで駆け抜ける。それ以外にもはや考えることはない。気力と根性と地力の勝負だ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「負けるかよ…!先輩でも!後輩でも!」
ソロエルティもデオンドコロンも気力を振り絞って、とうに枯れているスタミナを出し切ってスパートをかける。遥か前方で悠々と走るゴールドシップに縋りつこうと懸命に脚を前へ前へと押し出す。サンノウケイデンスが必死に差を詰めていたが、コーナーでその差を詰めることが出来なかった。残り200m。残すは直線勝負だ。
「おーい!置いてくぞぉ!」
「冗談キツイっすよ…先輩!」
「既に…置いて…けぼり…!」
ゴールドシップは3バ身先行して、ソロエルティは意地で1バ身先。デオンドコロンとサンノウケイデンスはほぼ横並び。アタマ差ほどサンノウケイデンスが後ろか。じわじわと差は詰められているがソロエルティもまだ垂れていない。このまま粘られると最下位もありうる。
「おらおら!追いついてみろぉ!」
ゴールドシップは更に加速してゆく。たった100mで2バ身ほど離された。その表情はなお余裕の表情だった。隣を見ると、ソロエルティとデオンドコロンの表情がこわばった。それでもすぐさまゴールドシップに追い付くことに集中しなおした。残りは僅か100m。
先頭はゴールドシップ。その後ろ5バ身差でソロエルティ。そこから更に1バ身後ろでデオンドコロンとサンノウケイデンスが競り合っていた。
「はぁ…はぁ…」
ソロエルティがスタミナの限界を迎え垂れてきた。デオンドコロンもスピードが落ちてきている。残り50m。サンノウケイデンスはその隙に二人に並んだ。そしてその約3秒半後にゴールドシップがゴールラインを駆け抜けた。それから約1秒後。ソロエルティ、デオンドコロン、サンノウケイデンスが横一列でゴールした。
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