サンノウへ至る頂きへの道のり   作:森林 木

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息抜きに別作品を書いていました。
某ウマ娘怪文書ステークスにて投稿したモノをテンションが上がって追加して書いてしまいました。
何番煎じかも分からなくネタですが
もし、お時間がある際にお読みいただければ幸いです。
https://syosetu.org/novel/282328/



レースを振り返り

「ほら、ケイデンス。落ち着いてきたか?シャワー浴びてこいよ?」

「流石、一流の変態はセクハラを忘れないね?もう、いっぺんムショ行け。二度とシャバに出てくんな」

「どうしてそうなる…」

「そもそも、落ち着いてますし…」

 

 ゴールドシップとたづなの退場後、取り残された面々はレースについて語り合っていた。

 

「いやぁ、ゴールドシップ先輩もだったけどケイちゃんの追込みもめっちゃ怖かったわ…しかも後ろで競り合ってたんでしょ?気にしてる余裕なかったけど」

「アタシ全然気付かなかったよ!ゴルシちゃんとバチバチやってたんだ!」

「いや、アンタはもっと後ろ気にしなよ。いつもの事だけどさ…先頭走ってんだから。先輩に並ばれて掛かったろ?」

「うう…」

「まぁ、ウチも正直抜かれた時どうすればいいか迷いまくってたわ。経験不足か頭の差か…」

「判断が遅い!」

「どうした急に」

「やっぱり、お二人とも速いですね。流石はジュニア級で活躍されているウマ娘です」

「いやぁ…それほどでも?」

「ウチらデビュー戦は勝ったけど、それ以降はレース出てないし…大したこと無いって」

 

 照れくさそうにはにかむデオンドコロンに、頬を赤らめまんざらでもない様子のソロエルティは二人してバシバシとサンノウケイデンスの背中を叩く。

 

「やはり、私には自転車の方があってるみたいですね…」

 

 そうサンノウケイデンスが呟くとビシッと背中を叩いていた二人が凍り付いたかのように固まってしまった。

 

「いいや!ケイデンス!あの脚に常識外れのスタミナ!間違いなくトップを目指せる才能を持ってる!今のレース、ワクワクした!感動した!!」

「そ、そうだよ!アタシもゴール前では抜かれたと思ったもん!」

「いや、ホント。ケイちゃんと競り合ったからこそタイム縮んだし!」

「コロン、2000のタイムなんていつ測ったの?」

「ちょい、言うなそれ」

 

 各々が番トレーナーの讃美に乗っかるようにサンノウケイデンスをフォローしようとする。そもそも、悔しさはあるが落ち込んでいたわけではないのだが。

 

「お気遣いありがとうございます。悔しいですけど、やっぱり実力が違いますよ。デビューもしてないウマ娘ですから当たり前ですよ。久しぶりに全力で走れて楽しかったです。ありがとうございました」

「あぁ…えっと、うん!こちらこそ楽しかったよ!」

「いや、ホントに楽しかった。正直、ゴールドシップ先輩いなかったら様子見しながら走ろっかなーって思ってたけど絶対できなかったわ」

「いや、お前全力出してないだろ?」

「は?」

 

 どうにか空気を和ませようと努めていた二人が再び固まった。番トレーナーの発言に対しドスの効いた響くような声を発したサンノウケイデンスに驚いていた。

 

「番さん。確かに私はスタミナも脚も残したままゴールしてしまいました。しかし、あの状況、あの場で下せる最善の選択…振り返ればより良い選択はあったかもしれません。しかしコンマ数秒を競うあの場で思いついた選択肢の中で間違いなく最も勝率の高い選択をして全力で駆け抜けました」

 

 言い方を間違えてしまったといった様子で番トレーナーの表情も険しくなっていたが、冷静さを欠いたサンノウケイデンスは構わず話を続ける。

「それに対して全力じゃない?私は仮にもアスリートです。そのような発言は侮辱にあたります」

「すまないケイデンス。言葉を間違えた。俺が言いたかったのはお前の適正距離はもっと長い距離なんじゃないかってことを言いたかったんだ」

「適正距離…」

 

 ウマ娘には適正というものがあり、育ってきた環境や遺伝など様々な要因で変化するモノで基本的に芝やダートなどのバ場の適正と、走れる距離の適正で区分される。

 本格化を迎えた後に適正が変わることはほとんどない。並外れたトレーニングによって矯正することは可能だが、わざわざ苦行を行い適正距離を変えずとも、自分に適した距離を走る方が遥かに楽に記録を出せる。サンノウケイデンスが知る限り、この適正距離を克服したウマ娘はミホノブルボンだけである。

 

「あのレース、あと50mあれば間違いなくお前は2着だった。あと500mあれば、手加減していたとはいえあのゴルシに並んでた。お前は既にステイヤーとして恐ろしいほどに完成しているんだ」

「…レースに“もし”は無意味ですよ」

「そ、そりゃあそうなんだが…」

「ねぇ、ケイちゃん!お風呂行こうよ!」

「え?ロエルさん?」

 

 この空気に耐えられなくなったのかソロエルティが唐突な提案をする。

 

「さっきシャワー浴びるとか言ってたじゃん?折角ならお風呂行こうよ!この時間なら多分誰も使ってないしさ!ね、行こうよ!」

「えっと、ロエル?ケイちゃん困惑してるから。多分ロエルが言いたいのは風呂入ったらなんか色々すっきりするんじゃね?ってことを言いたいんだと思う」

「あーっと…すまんケイデンス。俺も興奮して何言おうとしたか分からなくなってきた。ちょっとまとめる間風呂行ってきてくれ」

「いや、シャワーはお借りしたいと思っていましたけど…何を話す気ですか?」

「ケイちゃんケイちゃん、興奮した危ない変態から早く離れよ。はい、大浴場はこちらです。欲情した変態は回れ右」

「よし!行こう行こう!」

「あ。あの…」

 

 またも流されるままに大浴場へと連れていかれるサンノウケイデンス。訴えるように番トレーナーを見やると、軽く手を振り本当に回れ右して踵を返してどこかへ立ち去ろうとしている。それを恨めし気に睨んでいるとくるっと振り返った。

 

「校門の前で待ってる!」

 

 そう言い残すと再び踵を返してどこかへ立ち去ってしまった。もう解散では駄目だろうか。




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