気長にお待ちいただければ幸いです。
「うわぁ…広い」
「そうでしょ?ウマ娘がまとめて帰ってきても大丈夫なように広くしてんだって!」
「ウチも最初見た時はビビったわ。銭湯かよって」
サンノウケイデンスはソロエルティとデオンドコロンに連れられトレセン学園の大浴場に来ていた。デオンドコロンのいう通り銭湯のようだ。それも、一般的な銭湯の男湯女湯合わせたような広さだ。
「さ!早く入ろう!」
素早く服を脱ぎ捨ててスパンッと引き戸を開け意気揚々と浴場へ入っていくソロエルティに「待ちなって」と言いながら慌てて服を脱ぎそれについていくデオンドコロン。サンノウケイデンスもそれに続くように脱いだ服を畳んでから浴場へと入った。
「ほれ、ちゃんと身体洗ってから入り」
「えー?バーってお湯浴びてあったまってから洗ってもいいじゃーん」
「ウチらドロドロなんだからちゃんと洗いなって」
いの一番に湯船に直行しようとするソロエルティを捕まえ、わしわしと頭を洗っているデオンドコロンの姿はまるで姉妹のようだ。
「お、きたきたケイちゃん…おぉ…」
「コロン?」
ソロエルティの頭を洗う手を止めまじまじとこちらを見つめるデオンドコロンの視線が恥ずかしくなりサンノウケイデンスは身をよじらせる。ソロエルティは泡で目が開けられておらずサンノウケイデンスが来た以外の状況は分かっていない。
「いやぁ…発育、凄いな…」
「でっかいね!」
「いくら女同士とはいえ恥ずかしいんですけど…」
シャワーで泡を流したソロエルティと、デオンドコロンの中年男性のセクハラのような発言をされつつ、その視線はサンノウケイデンスの胸部へと注がれている。サンノウケイデンスは両腕で抱きかかえるように胸部を隠した。
「いやぁ、ごめんごめんウチより大分ご立派なモノをお持ちだったからつい」
「コロンはもう育たないもんね!」
「は?ロエルおまなんつった?ちょっと表出るか?それともそのチチくれるんか?」
「ちょ、怒んないでよぉ!」
「その…個性ですので、そう悲観することはないかと…」
「はっ、大は小を兼ねるんですよお嬢さん方…大きくて損なことないっしょ?」
「そんなことないよ!走ってると揺れるんだよこれ!」
「ゔっ」
自分の胸を押し上げるように持つソロエルティにデオンドコロンは自身の胸を抑えてうずくまった。
「それに、ケイちゃんくらい大きいと重いよね?」
「え?えぇと…」
ソロエルティに同意を求められたが、ここで首を縦に振るとデオンドコロンに更なる精神的苦痛を与えてしまいかねない。サンノウケイデンスは必死に胸が大きいことのデメリットを考えた。
「私くらいのサイズだと可愛い下着が中々見つからなかったりしますし、一概には大きい方がいいとは言えないのではないでしょうか?」
「はぁぁぁぁ言ってみてぇ…メイショウドドウさんみたいなチチ引っさげて言ってみてぇ…」
「ドドウさんの凄いよね!あれレース中痛くないのかな?」
目に見えて落ち込むデオンドコロンにどう言葉を投げかけたらいいか、胸にコンプレックスを抱いたことのないサンノウケイデンスには分からなかった。何かトラウマになるような事があったのだろうか。
「ブラがないとか、ウチらアスリートはみんな色気のないスポブラだっての」
「それにしても、ケイちゃんの脚すっごいね!どうなってんの?」
「どうなってるって…自転車やってると大腿筋というか太股周りが発達しやすいんですよ」
「へぇ~触ってみて良い?」
「えぇ、どうぞ」
「うわ、なんかすげぇ…ガチガチかと思ったけど押し返される…ぷるぷるしてる感じなのに弾力っていうか…」
「すっごい!角煮みたい!」
「か、角煮…」
「ロエル、その言い方はマジで謝れ」
「え!?ごめん!えーと…ナスみたい!」
「食べ物で例えんな!」
「はぁ~生き返る~」
「おっさんくさいわ。溺れんなよロエル」
「溺れないよ!子供扱いしないでよ!」
「いや、寝落ちして沈んだことあったろ。急に静かになったと思ったら風呂の底で寝てたぞ。マジこっちの心臓が止まるかと思ったわ赤ちゃんかお前」
「そうだっけ?」
広々とした浴槽を三人だけで使っているという優越感と開放感を感じつつ肩までしっかりと湯に浸かり吐息をこぼすサンノウケイデンス。思えば久しぶりに大浴場へ来たなと思い返していた。
「ふぅ…」
「色っぽいねぇケイちゃん。テレビの温泉リポーターみたいじゃん。やっぱプロポーションか?胸か?」
「なんかエロいね!」
「同性でもそれは恥ずかしいんですけど…」
「ロエル、お前もうちょっと言葉選べし。発音する前に一旦思いとどまれ」
じっくりと湯船を堪能し、十分に身体を温めた一同は湯冷めしないうちに脱衣所で着替えていた。
「ケイちゃんの黒いレースのブラ可愛いね!」
「うわ、おっとなぁ~」
「いや、選べるほど無かっただけで…」
「んなエロエロな下着付けてたんだぁ~」
「ちょっと!自分でロエルさんにそういうこと言うなって言ってたじゃないですか!」
「いや、だってこれは言い逃れできないって…」
「えぇ…」
「よし!着替え終わり!」
「待ち、ロエル。まだ髪びしょびしょじゃん。こっちこい、ちゃんと乾かすから」
「コロンってお母さんみたい」
「おい、老けてるって言いたいんか?ウチ同い年だぞ。花も恥じらう乙女だぞ」
「乙女?」
「ん?疑問に思うトコあったか?怒らんから言ってみ?」
「ゼッタイもう怒ってんじゃん!」
軽口を叩きながらソロエルティの髪を乾かすデオンドコロンを横目にサンノウケイデンスも念入りに自分の髪をブラッシングしていた。
「おし、出来上がり」
「アタシ髪短いから勝手に乾くのに…」
「いや、水遊びしたゴールデンレトリバーくらい濡れてたら乾かねぇから。てかなんでそれで服濡れてないんよ…」
全員が着替え終わるとソロエルティとデオンドコロンがサンノウケイデンスを校門まで送ってくれるというので素直に応じた。
「ケイちゃん、安心して。ウチがあの変態から守護るから」
「あ、はい」
最後に番トレーナーが待っているのがよほど不安らしいデオンドコロンと共に校門へと足を進めた。
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