社会の荒波に揉まれ、ようやく少しゆとりが持てたので、
遅筆ではありますが、少しずつ執筆活動を再開しようと思っておりますので、気が向いた際に閲覧頂ければ幸いです。
内容もうろ覚えの箇所などございますので、
矛盾などが生じた際にその都度修正致します。
おかしいと感じた際にはご指摘いただけると幸いです。
「おう、お疲れ様。さっぱりしたか?」
着替えを済ませてソロエルティとデオンドコロンと共に校門へ向かうと、番トレーナーは先ほど言い残した通り校門でサンノウケイデンスを待っていたようだ。
「えぇ、いい湯でした」
「湯上りの女の子を見たくて待ち伏せとかいよいよ通報するか?」
「なんでそうなるんだよ…さっき待ってるって言ったろ?」
「待ってると言い残していましたが、まだ何かお話することがあるんですか?」
「あぁ、今日の感想を聞きたかったんだ」
「感想?」
「楽しかったか?」
「…楽しかったですよ。レジェンドとも言えるゴールドシップさんとも走れるなんて貴重な経験も出来ました。流れで走ることになったとはいえ、感謝しています」
「勝ちたくないか?」
「…それは、勝負事ですから。勝ちたいのは当たり前です。たかが体育の授業でも、ロード…自転車のレースでも。勝ちを望むのは自然な事だと思います」
サンノウケイデンスからすれば、常に勝ちたいと望むことは当たり前のことである。何を当たり前の事を聞くのだろうと怪訝な顔をするサンノウケイデンスに対し、番トレーナーは嬉しそうにはにかんだ。
「まぁ、アスリートってのはそういうもんだ。常に勝気で常に次の勝利を見据えてる」
「何を仰りたいんですか?」
「また走りたくないか?」
「…」
「うわぁ…凄いストレートな勧誘」
「バチバチに煽るじゃん」
正直、楽しかった。また勝負したい。また走りたい。そう思った。しかし、自転車を捨ててまで走りたいかと問われれば即答は出来なかった。かといって、自転車に乗り続けるとも、言い切れなかった。
今まで、本気で走って負けたことなど無かったから。
「ケイデンス?」
番トレーナーは黙り込んでしまったサンノウケイデンスを気遣うように声をかける。
「正直、自分の脚で走る楽しさを…改めて知ったような気がします」
「そうか」
番トレーナーは柔らかな笑みを浮かべた。
「でも、私は自転車を捨てきれません」
「捨てる必要はないさ」
「いいえ、中途半端では勝てません。そうでしょう?」
「それは…」
「自転車のレースは、要らなモノを極限まで削って戦います。車体も、ペダリングのロスも、
飲み終えたボトルも捨てながら走ります。それでも勝利に届かないことがある。勝負の世界というのは、そういうものでしょう?」
「確かに、極限まで余分なモノをそぎ落としていくような走りをするウマ娘も少なくない。
だがその反面、全てを背負って走るウマ娘だっている。期待も、責務も、誇りも…
確かに、俺はケイデンスの走りを見たい。でも、お前の好きなモノを奪いたい訳じゃない。好きなモノはお前を構成する大事な一部だ。捨てなくて良いんだ」
「捨てなくて…良い…」
番トレーナーの言葉に戸惑いを隠せなかった。サンノウケイデンス自身、自転車を選択した時点で、もうトレセン学園に行く選択肢を自然に消してしまっていた。走る事が嫌いになった訳ではなかった。ただ、どちらかしか出来ないと思い込んでいた。自転車を選んだから、トウィンクルシリーズに挑む選択肢を切り捨てていた。
「…すみません、少し整理する時間をください。では、今日はありがとうございました」
「あ、ケイちゃん…」
「あー、その…ウチら無理強いするつもりは無いから」
「ケイデンス」
一礼した後、踵を返したケイデンスを番トレーナーは呼び止めた。
「色々言ったけどさ、自分から選択肢を狭めすぎてるような気がしてさ。だから、選択肢はお前が思ってるより柔軟に変えたり出来るって事を伝えたかったんだ。それに、捨てても拾える時は拾えるからな。難しく考えすぎないでくれ」
「いや、余計考えさせるだろその言い方は。頭がピンクだと思考能力低下すんの?」
「え?脳みそってピンクじゃない?」
「そういう事じゃねーよ、てか知らんし」
「その…失礼します…」
軽く振り向き会釈をして、再びサンノウケイデンスは帰路へと向かった。整理していた頭の中が、今のやり取りで真っ白になってしまった。帰ったら改めて考えようと気を取り直した。
先ほどより、少しすっきりした頭で予定を決めた。
「あんたのせいで気まずい感じの別れになったじゃん、どうしてくれるん?」
「俺のせいなのか、あれ?」
「あん?他に誰がいるっての?」
「コロンじゃない?」
「え?ウチ?」
誤字脱字などご報告いただければ幸いです。