次回は年末開催の予定ですね。
過酷な環境が予想されるので常々体調を管理し、
お体ご自愛下さい。
更新ペースが遅くなり申し訳ございません。
今後の展開がまだぶれてしまっているため、今しばらくお待ちください。
夏休み最後の週末、天気は雲一つない快晴。予報によれば、最高気温は35℃になるらしい。現在午前6時前、日差しが出てきたがまだなんとか涼しい時間帯だ。
「ふぁーあ…おはようさん」
「おはようございます」
集合場所にぼさぼさの髪を掻き、大きなあくびをしながらやってきたのは番トレーナーだ。まだ眠そうな目をしている。
「それで、お前の友達が迎えに来てくれるんだよな?」
「えぇ、アマノカイセイさんという方です」
「聞いた事あるような気がするな…気のせいか?」
「さぁ…お嬢様らしいので、財閥のパーティに出席されてたりする可能性はありますけど」
「いや、じゃあ気のせいだ。マックイーンのところにも出たことねぇ」
雑談をしていると、目の前に黒塗りの高級車が停車した。随分と車体が長い。これは俗に言うリムジンというものだろうか。
「え?リムジン…?」
「確かに、お嬢様だな…」
サンノウケイデンス達が呆然としていると、車窓が開かれ朗らかに手を振るウマ娘がいた。
「ケイデンスさん、お待たせ致しました」
青みがかった葦毛を三つ編みにし、白いワンピースをまとった姿はまさにお嬢様だ。絵画のような美しさに思わず目を奪われる。
「どうぞ、ご乗車ください」
初老の男性がドアを開け、こちらを招く。先ほどまで運転席にいたというのに、いったい何時降りたのだろうか。男性の案内に従い、サンノウケイデンス達はリムジンに乗り込んだ。いつの間にか再び運転席に座っていた男性が短く「出発します」と言い、リムジンは緩やかに発進した。
「あ、お邪魔します…」
「まぁ!貴方がケイデンスさんの仰っていた方ですね。お初にお目にかかります。アマノ家、アマノカイセイと申します。以後お見知りおきを」
「ど、どうも、番と申します。本日はお招きいただきありがとうございます」
「どうか緊張なさらないで、砕けた口調でかまいませんよ。
「いや、それは流石に…でも、ご厚意に甘えて遠慮なく喋らせてもらおうかな」
「アマノさん、今日はありがとうございます。バイクまで用意して貰って…」
「ケイデンスさんも、敬語が話辛いのであれば崩して頂いて結構ですよ。以前から申し上げようと思っていたのですが、中々タイミングが掴めなくて」
「ありがとう、なら私にも遠慮しないで」
「私はこれが自然体でして…」
「無理強いはしないよ。お互い好きに話そう」
「お心遣い感謝致します」
その後、運転手は執事であること。車内の設備についてなど雑談をして到着まで時間を潰していた。
「それにしても、ケイデンスさんも隅に置けませんね」
「え?」
「まさか、ボーイフレンドをお連れになるとは思っておりませんでした」
「本当にやめて」
「え?」
「やめて」
「あ、はい」
ショッピングモールでの件といい、この
「でしたら、お二方はどのようなご関係なのでしょうか?」
「どのような…」
そう問われると、私達の関係はなんだろうかとサンノウケイデンスは思い悩む。友人でもなければ、親戚でもない。恋愛関係なんてもってのほかだ。
「そうだな…町内の平和を守った仲間…か?」
「分かりづらくありません?」
「なら、新聞に載った名コンビってのはどうだ?」
「そうだった…あれ、新聞記事になったんですよね…」
「なんなら、月刊トゥインクルにも載るってよ。乙名史さんが滅茶苦茶張り切ってたからな」
「ウソでしょ…」
ひったくり犯を捕まえた事件について既に新聞に掲載されていることは知っていたが、まさか主に現役で活躍しているウマ娘を特集する月刊トゥインクルにまで載ってしまうとは予想だにしなかった。いくら乙名史記者でも、他紙のコラムに掲載する程度と考えていたのだが彼女の手腕を甘く見ていたようだ。
「まぁ!新聞に?どのようなご活躍をされたのですか?」
「ケイデンスとひったくりを捕まえたんだよ」
「それは素晴らしいご活躍ですね。後ほど調べて記事をスクラップしなくては」
「なんか、恥ずかしいんだけど…」
「恥じることはありません。むしろ誇ってください」
「自分の事を褒めてる記事ってだけで気恥ずかしいのに、それを友達に見られるって余計恥ずかしいんだけど」
「貴女がロードレースで優勝した時のインタビュー記事もきちんと保管しておりますよ」
「ウソ!?私、なんて言ったっけ…変な事言ってないよね!?」
「ふふ…勇ましかったですよ」
「不安になるけど、見る勇気も無い…」
その後、サンノウケイデンスと番トレーナーのエピソードを根掘り葉掘り聞こうとするアマノカイセイを窘めつつ、今日のレースについての話を切り替えコースやルールなどについての確認を行った。
「わたくし、しばらくロードレースから離れる予定なんです」
唐突にそう切り出したアマノカイセイの発言に思わず言葉が詰まる。
「来年からトレセン学園に入学して、アマノカイセイを世に知らしめてみせます」
「トレセンに…」
「だから、自転車はしばらくお休みです。だから貴女と競いたかった。これで最後…というつもりもありませんけれど」
柔らかにはにかむアマノカイセイを見て、サンノウケイデンスは顔を僅かに俯けた。
アマノカイセイは、自転車ではなくトレセン学園に進む道を選んだ。つまり、この先彼女と競う機会はそうそう訪れないということだ。
(私は、ライバルがいなくても自転車に乗り続けるの…?)
正直、ロードレースで彼女の他にライバルと呼べる存在はいない。話を聞くと、基本的にターフを走る方が好きだという選手がほとんどであった。
「それなら、俺と会うこともあるかもな」
「まぁ、トレセン学園の関係者なのですか?」
「この人、信じられないかもしれないけど、中央トレーナーなの」
「なんとまぁ!でしたら入学した暁には是非ともスカウトにいらしてください。絶対にスカウトしたくなる走りをご覧に入れます」
「あぁ、楽しみにしてる。とはいえ、スプリンターっぽい脚だな…スピカにはスプリンターいなかったからなぁ」
「スピカと関わりがあるのですか?」
「一応、サブトレーナーだ」
「まぁ…!そのような御仁とお会い出来た事、誠に嬉しく思います」
「大げさだ。まだ担当持ったこともない青二才の若造だよ」
恐らく、サンノウケイデンスも最初の出会いがあれでなければ番トレーナーを心から尊敬したであろう。
ショッピングモールでも、商店街でも。河川敷でさえ出会っていなければ良好な関係になれたであろうに。ファーストコンタクトのせいで、サンノウケイデンスは番トレーナーに対し変態であるというレッテルを剝がせずにいる。いや、事実なのだから剝がす必要も無いだろうか。
「だとすると、ケイデンスさんもトレセンを受験なさるのですね」
「いや、私は…」
つい最近までトレセンに進学することなど更々考えていなかったサンノウケイデンスは言葉に詰まる。
番トレーナーと出会う以前は。トレセンでのレースをする前であればトレセンには行かないと即答したであろう。だが今は自分もトレセン学園に進む道があると、道を示された。番トレーナーに教えられたのだ。
「今、トレセンに来て欲しくてアタック中」
「まぁ…なんて熱烈なプロポーズ」
「ちょっ!?」
「いや、そういう訳じゃなくてだな…トレセンに来ることハナから考えてないみたいだったからこんな楽しい世界もあるぞってプレゼンしただけだよ。実際決めるのはケイデンスだ」
「あら、『俺のところに来い』という口説き文句ではありませんの?」
「んなこと言うかよ…」
気恥ずかしそうに言い捨てる番トレーナーを横目に、サンノウケイデンスは心の中で毒づいていた。
(思えば、見知らぬ中学生に声掛けてウチに来ないかとか…コロン先輩があそこまで警戒するのは当たり前の事に思えてきた…人として尊敬できる点はあれど、恋人とか絶対無理だ)
「タイプじゃありませんごめんなさい。他をあたってください」
「お前な…だから告白とかそういう事じゃねぇっての…」
「でしたら、ケイデンスの理想の男性像はどのようなモノなのでしょうか?」
普段恋愛話をしないサンノウケイデンスはそんなモノを考えたこともなかった。だが強いて言うのであれば、付き合いが楽な事だろうか
「募集するなら、お金持ちのイケメン彼氏かなぁ」
「なるほど、眉目秀麗で資金力のある方…と」
空耳だろうか、どこかで悲鳴が聞こえたような気がした。
雑談を交えている間に、今回ロードレースをするコースが見えてきた。
「さぁ、ケイデンスさん。私の全力を…覚悟をぶつけさせて頂きます」
「えぇ、私も全身全霊でペダルを回す。絶対にゴールは譲らない」
レース場に到着すると、サンノウケイデンスとアマノカイセイがお互い言葉を交わさずレースの準備に取り掛かった。
誤字脱字などご報告いただければ幸いです。
アマノカイセイ:葦毛、161cm B85・W55・H92、肌は透明感のある白