本当にオリキャラばかり出して申し訳ございませんでした。
予定では次回にはレースを走らせることが出来る想定です。
デオンドコロンの部室の更衣室を借りてトレセン学園指定の体操服に着替えている。シューズもピッタリのサイズだ。
「流石トレセン学園…こんなピッタリのものがあるなんて…」
「私たちもシューズをダメにしちゃったりとか、ジャージにお茶溢しちゃったときにお世話になってるよ!」
「いや、気ぃつけなってそれは」
たははと笑うソロエルティの頭をデオンドコロンはぐりぐりと撫でる。傍から見れば姉妹のようだ。
「ケイちゃん、着替え終わった?」
「あ、はい!」
「へぇ、似合うじゃん」
「そうですか?」
サンノウケイデンスはトレセン学園指定の体操服に身を包んだ。ズボンかブルマを選ぶのだが、先ほどズボンの入っていた箱にソロエルティが水筒の水を溢してしまい、やむなくブルマを履いている。その下にスパッツを履いているがどうにも落ち着かない。
「うん!似合うよ!やっぱ入ろうよトレセン!」
「ロエル、とりまその話はいいじゃん。ガチで走るんだからさ。ウチらの方が先輩だからって中距離じゃ負けるかもよ」
「おっと、そうだった…まだ走ってるケイちゃん見てないのに気が早かったよね!」
「いや、集中力乱すなって話してんだけど…」
「ロエルさん、コロンさん」
「ん?どしたケイちゃん」
「私、レースとあれば自転車に乗っていようが、自分の脚で走ろうが、勝ちにいきますよ」
サンノウケイデンスはことレース、こと競争とあれば負ける気はない。真っ直ぐに二人を見据える。決して負けないという意志を込めて。サンノウケイデンスは負けず嫌いであった。
「わぁ、すっごいビリビリしてんね!」
「ウチらの同期でこんなプレッシャー感じんのロエルくらいなんだけど。ガチじゃん」
にやりと牙を見せるように笑うソロエルティと、すっと目を細めて獲物を見定めるかのようなデオンドコロンにゾクゾクとした高揚感を感じた。まるでロードレースのスタートを今か今かと待ちわびている時のようにサンノウケイデンスは獰猛に笑みを浮かべた。
三人でコースまで歩いて来る途中に走り出す枠番を相談していた。その様子を先に準備をする為にコースにいた番トレーナーがこちらに手を振っていた。
「よし、ケイちゃん。ウチら外側行こうか?」
「いいえ、公平にじゃんけんで勝った順で内枠にしましょう」
「うん!賛成!内枠とりたいもん!」
「アタシはいっちばん観客に見えるようにいっちばん外側走るぜ」
「いや、だからケイちゃんがじゃんけんって…」
誰の声でもないその声に違和感を覚え三人揃って声のした背後を振り返ると、真っ赤な勝負服を身にまとった長身のウマ娘が仁王立ちしていた。
「ゴールドシップ…先輩!?」
「ぴすぴーす!もう、先輩なんて堅苦しいの嫌だぞ☆ゴルシちゃんって読んでね(はぁと)」
「かっこ閉じるまで言葉で言う人初めて見たー!」
「黄金の浮沈艦…ドリームトロフィーの生ける伝説…ですね」
音もなく現れたのはサンノウケイデンスを超える長身で葦毛の、美しいウマ娘だった。彼女はゴールドシップ。チームスピカの一員で黄金の浮沈艦の異名を持つウマ娘だ。現在もドリームトロフィーリーグで活躍しているいわばレジェンドと呼ばれる大物である。実物を目にすると、美形揃いのウマ娘から見てもその美しさに目を奪われてしまう。誰もが羨む理想像なプロポーションにクールな顔立ち。パリコレに出ているモデルすら嫉妬しそうだ。
「おい!ゴルシ!お前まだ夏合宿中だろ!?なんでここにいる!?」
絶叫に近い大声でゴールドシップを問い詰める番トレーナーにゴールドシップは飄々とした態度をしていた。
「そりゃ聞くのは野暮ってもんだぜ番ちゃん。アタシに黙って面白そうな事しようとしやがって!知らなかったか?ゴルシちゃんレーダーからは逃げられないんだぜ?」
ゴールドシップはレースの戦歴もさることながら、その奇行で有名なウマ娘である。度々レース後にトレーナーにラリアットをしに行く様子や、サングラスをかけレースに登場したり、ウイニングライブで創作ダンスをしたりと訳が分からないことをしている。しかし、ファンサービスはよく、子供たちに一番人気人気のあるウマ娘とも言われている。その姿から
『黙れば美人、喋ると奇人、走る姿は浮沈艦』
という格言のようなモノがネットで生まれ、あっという間にお茶の間にも浸透していった。
「あ?沖野さん?え?ゴルシなら今目の前ですけど…なに?マルゼンスキーのドライブに行ったきり帰ってこなかった?え?マルゼンスキーだけが今帰ってきた?もう色々起こりすぎでしょ…はい、とにかく今目の前で元気にはしゃいでますよ…えぇ、無事みたいですよ。というか、なんで勝負服…」
沖野トレーナーから電話がきたらしい番トレーナーがちらりとゴールドシップを方を見るとこれでもかと胸を張りふんぞり返っていた。
「決まってんだろ?レッドでホットなチリペッパーを爆発させる為の正装だぜ?アタシはこれからあっつ~いヒトトキを体験しなくちゃいけないんだ。邪魔すんなよ?」
「いや、お前今休養中だろ!?勝手に走んな!マックイーン!はいなかった…エアグルーヴを呼んでくれぇ!」
「リギルの連中も全員もれなく海でバカンス中だぜ?」
「そうだよ!そりゃそうだよな!」
「鬼の副会長もいないし、今日からトレセンはゴルシちゃんの天下だぜ!」
ケーケッケとまるで悪役のように高笑いするゴールドシップを見て番トレーナーはうなだれてしまう。それをすぐ近くで見ているサンノウケイデンス達は混乱していた。
「あの!ゴルシちゃん!どうして夏合宿中にトレセンに戻ってきたんですか?」
「ちょっ、おま、ロエル!」
「ほーう?お前、見どころあんなぁ?なんて名前だ?」
いや、ソロエルティは混乱などしていなかった。むしろ興味津々といった様子で先ほどゴールドシップに言われた通りに『ゴルシちゃん』と呼んでいた。
「はい!ソロエルティです!よろしくお願いします!」
「おっし!今日からお前は名誉ゴルゴル星人ゼロゼロセブンだ!」
「やったぁ!やったぁ?」
「なんなん?この会話…ウチ全然わかんないんだけど…ケイちゃん分かる?」
「いいえ、私もまるで理解できません…」
結局、ゴールドシップとソロエルティの二人の常人には理解できない会話を二人が満足するまで番トレーナーは頭を抱えて見守っていた。そしてサンノウケイデンスとデオンドコロンは自分達には解決できないと諦め、しばらく二人で談笑していた。
「それで、結局何しに来たんだゴルシ?」
「いやん?そんなに見つめちゃいやん♡えっち♡」
「お前そんなんで恥じらうようなタマじゃねぇだろ…乙女か」
「あ?」
「いだだだだだだだだだだ!?わ、悪かった!やめ、離してくれぇ!」
ゴールドシップは素早い動きで番トレーナーの腕を取りアームロックをかけた。あまりに洗練されたその動きに思わずその場の全員が見とれていた。
「ったくよぉ…番ちゃんが合宿に置き去りにされてゴルシちゃんに会えない寂しさで毎晩枕を濡らしてんのを可哀想だと思って顔見せに着てやったのによ…失礼しちゃうぜ」
わざとらしくほほを膨らませぷいっとそっぽを向く。美人がやると絵になるモノで、モデル雑誌を切り取ったような美人が不意に見せるいじらしさ、可愛らしさを感じる。美人は得だというのは本当だなとサンノウケイデンスは感じた。
「そんで帰ってきたらルーキー囲って選抜レースやろうとしてんじゃねぇか!つまり、番ちゃんの彼女候補ってこったろ!?こんな面白い事黙って見てる訳にいかねぇだろ!」
「違うんだが…黙って見ててほしかったなぁ…」
「あの、先輩、この変態の彼女候補ってのだけは勘弁していただけませんか?」
「確かに変態だけどよぉ、悪い奴じゃねぇぞ?しかもコンディション管理が上手いんだぜ?あと麻雀がそこそこつえー」
「いや、ウチもうトレーナーついてデビューしてるんで、間に合ってます」
「アタシももうデビューしてます!」
「ほーん?じゃあ、その黒髪ロングの姉ちゃんか?」
「いえ、私はそもそもトレセンの生徒じゃないんです」
「この娘、今ナカサンの生徒なんですよ」
「え?番ちゃん、お前マジかよ…遂にトレセンの外でやっちまったのか…」
ゴールドシップは番トレーナーを憐れむような目で見ていた。
「待て!お前がそんな反応すんのかよ!」
「トレーナーはたまたまスペとかトレセンの奴だったから助かってたのによぉ…留置所に入っても、マグロカツ丼くらいは差し入れてやるよ…」
柔和な笑みを浮かべ肩を叩くゴールドシップに番トレーナーは深くため息を吐いた。
「おい番ちゃん。ケータイ貸せ」
番トレーナーの持っていたスマートフォンをひったくるとゴールドシップは手慣れた様子で電話をかけた。
「おーす、トレーナー。私ゴルシちゃん。今トレセンにいるの。おーい、もしもし?アタシ今から番ちゃん主催のビッグレースに出るから。止めるんじゃねぇぞ…そんじゃ」
要件は伝えたとばかりにスマートフォンを番トレーナーに投げ渡すゴールドシップはこちらに振り返りニカっと笑った。
「つー訳で、このゴルシちゃんが飛び入り参加してやるからよろしくな!」
ゴールドシップの破天荒ぶりはパフォーマンスではなく根っからのモノなのだなと。サンノウケイデンスは目の前の事実を受け入れきれず、どこか達観した感想を抱いた。
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