ヒーローの異端児   作:白天竺牡丹

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第8話 敵対関係

 ヴィラン連合を紹介した日の埋め合わせとして、2週間後の土曜日に再度デートに誘われ、そこで婚約指輪を荼毘君が購入し、一緒にご飯を食べるという約束をきちんと果たしてくれた。

 その婚約者経由で連合全員の携帯番号を知り、モスがムーグルマップを表示したタブレットに座標を転送しているおかげで、彼らを監視できているが、罪悪感があるのでヒーロー公安に渡す手も考えた。しかし、それではせっかく得た彼らの信用を早々に失うため、選択肢から外している。

 

『リカバリーキャット、聞いて下さい。マグ(ねえ)が極道に殺されたんです。それに、ミスターの左腕も犠牲になりました』

「それはお悔やみ申し上げます。次会えたら、弔さんに香典包んで渡すからね」

『香典って…。仏式で大丈夫なんですかね』

「さあ。宗派聞くの忘れた」

『でも、悼む気持ちが伝わって嬉しいです』

「良かった。ところで、どこの極道か分かる?」

『弔君によると、シエハッサイカイってとこのナンバーツーらしいです。あ。それと、「個性が発動できない」ってミスターが言ってました。銃を持ったヴィランと夜道には気をつけて下さいね』

「ありがとう。おやすみなさい。被身子さん」

『おやすみなさい。リカバリーキャット』

 

 夜も遅いことから別れを告げて電話を切り、すぐにモスに探りを入れた。

 

「モス。ヒーローネットワークに接続して、シエハッサイカイについて表示して」

《イエス・マム。……。死穢(シエ)八斎會は、指定(ヴィラン)団体で、現在も警察の監視下にあります。チームアップ要請があれば受けますか?》

「もちろん」

 

 翌日、勤務中に死穢八斎會を一週間前からマークしていると言うオールマイトの元相棒(サイドキック)。サー・ナイトアイからチームアップ要請があり、ナンバーツーの治崎(ちさき)(かい)が関わっているとして、それを快諾した。

 

「サー。ある筋から仕入れた情報ですが、治崎の手下が、“個性”を一時的に消す銃弾を所持しているそうです」

『何!? どこから仕入れたんだ?』

「それは言えませんが、確たる証拠が無いのが心苦しいです」

『いや。情報の真偽はともかく、要請を受けて下さり、ありがとうございます』

「こちらこそ、選んで下さってありがとうございます」

 

 そこで、サーから昨日、3年の通形君と1年の緑谷君がパトロール中に治崎と接触した際、治崎の娘であるエリちゃんの存在が明らかになった。両手脚に包帯を巻かれていたという緑谷君の証言から、その幼女が“個性”を消す類の“個性”を所持しており、弾丸の中身は細胞か血肉を用いていると仮説を立てれば、ミスターの“個性”が使えなかったという被身子さんの証言と合致する。

 事務作業を後回しにして、すぐに商業の拠点である大阪の中でファットガム事務所へ情報を回すと、まだそれを所持した極道と接触していないらしい。情報の出所を尋ねられたが、秘密だと返すので精一杯だ。

 

 

 数日後、被身子さんと分倍河原さんがそこへ出向することになり、ヴィラン連合の要となる彼らもろとも一斉に逮捕する算段を立てる。そのことを同じくサーにチームアップされたため、助手席に座っている相澤先生に伝えると、眉間の(しわ)が深くなった。

 

「デートに行くと言った日に、あなたの携帯の待ち受けを偶然見たんだが、あの男と通じているのか?」

「どう答えれば納得して頂けますか? そんな目で見ても、相澤先生は私を黒だと断言できるほどの証拠がありますか? 無いなら、今は黙っていて下さい。悪を一掃したいのは、私も同じですから」

 

 ナビゲーションをしているモスに、スマートフォンからタブレットに蛇腔(じゃくう)総合病院の間取り図を転送するように頼む。

 

「これは?」

「リハビリがてら、各階のものを撮影しておきました。看護師の噂話によると、殻木(がらき)理事長が研究する時に(こも)る部屋があるそうです」

「研究?」

「どこの階の部屋か。どんな研究なのか詳細が判らないので、今はそこに勤める看護師達に協力を仰いでいます」

「これで白だと思えと?」

「どう判断されるかは、相澤先生にお任せします」

 

 到着してからは会議室前で待機し、生徒達に挨拶を交わしていく。それが粗方終わると、サー・ナイトアイ事務所主催のもと協議の時間になったが、ファットガムの証言から自分が立てた仮説が正しかったと証明された。

 

「しかし、どうやって渡我やトゥワイスが入ったと分かったんですか?」

「私が知り合いを経由して接触し、正面からアジトに向かい、その中で彼らの信頼を得、個人的に連絡先を知っているからです。そして、彼らが連合から出向して戦力が分断している今こそ、要となる二人を捕まえる絶好の機会だと思います」

「しかし、どうやって…」

「私への信頼を逆手に取り、囮にして拘束後、メイデンへ直接瞬間移動させ、同時に連合との連絡を絶つために携帯を没収する。これが理想形ですが、下手すれば渡我に刺されて死亡、というのも視野に入れています」

 

 生徒達は殉職という重い結末を聞かされ、口を(つぐ)んでしまう。その覚悟で今作戦に臨むことを示し、協議と作戦会議は終了した。

 

 

 3日後の朝。

 巨人に対してはリューキュー事務所で対処し、私達はサーを先頭に本拠地の地下へ駆ける。ルミリオンが透過で壁の向こう側を確認し、壁を破壊しようと力む切島君と緑谷君の体力を温存させるため、私の瞬間移動で全員を運ぶ。しかし、それを察知したであろう敵の気配の変化を、猫の“個性”のひとつである優れた聴覚が感知して、建物内に入られないよう、瞬時に空中に瞬間移動させた。

 

「一人捕まえました。興奮状態にあり、宙に浮かせています」

「でかした、リカバリーキャット!」

 

 まずは一番厄介なミミックを制し、走りながら聴力を頼りに近づいていき、興奮状態になる薬の効果が切れるまで側に居続ける。その間にサー達を先に行かせ、警官から手錠をひとつもらい、それを敵に対して自分で手錠をかけて、マッハで地下を移動し一旦外に出た。

 

入中(いりなか)をメイデンへお願いします!」

「は、はい!」

 

 もう一度走って往復し、バブルガールの側を通り抜けて地下を目指す。その時には距離は大差がついていて、聴力を頼ると遠くで戦闘が勃発していた。あちこちから足音が聞こえて反響し、自分の聴力の良さが仇となっているが、それでも迷路のようにいりくんだ道を最短ルートで前に走り続けた。

 八斎衆を逮捕する警察の方々と、通形君に追いつくための人員を割いている。道中、気絶しているヤクザが3人。燃え尽きたように呆然と座りこむ者二人を見かけた。手錠をかけるのは容易(たやす)くても、問題となるのは連合の二人だった。

 

「お、リカバリーキャット。仕事か? 当然だろ!」

「あ、お久しぶりです。リカバリーキャット」

「久しぶりね。こんな狭苦しい所なんかおさらばして、私と一緒に外に行かない?」

「行く! でも、サツとヒーローが──」

 

 後頭部にサーの印鑑が寸分違わず直撃し、連合から出向してきた二人は脳を揺らされて、脳震盪を引き起こした際に意識を一時的に飛ばし、昏倒するのを避けるため私は二人を支えた。警官が駆け寄り様に後ろ手に手錠をかける前に、逃亡防止に膝上までコンクリートの床に埋める手もあるが、それでは林間合宿時と同様になるのでやめる。

 

「せっかく仲良しになったのに、信頼を裏切るような真似をしていいのか?」

「確かに仲良しになりましたけど、それは私がコスチュームを着ていない時だけ。これを着ていれば、私はヒーローで、彼ら連合を含めたヴィランを逮捕しなきゃいけない。今は、そういう立場なんです。…ごめんなさい」

 

 気を失った彼らに対して小さな子供に言い聞かせるように言い、私は彼らを抱き寄せ、適切な処置をしてから隠し通路入口付近で待機してた二人のところまでテレポートし続けると言い、味方と無線で連絡を取り合う。もしも、二人が息を吹き返した時、迎撃しようにも自身の武器は無く、被身子さんが所持しているナイフ5本。背負っているポンプ。分倍河原さんの腕に装着されたメジャーなど、全てを奪って道中の床に置いて、手錠をかけた。

 数分もすれば目覚める彼らと同行し、敵対関係でなければ友達になれたのだろうかと思いながら、メイデンに収容されるまで見送るが、モスが救急車を呼んでくれたためそれに収容されるまで支え続ける。

 

「では、我々は渡我被身子と分倍河原仁を護送します」

「待って下さい。彼らは後頭部を強打しています。後遺症が出るかもしれないので、病院までで結構です」

 

 そう言って、救急隊員に身柄を引き渡した。

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