ウマ娘 プリティーダービー リバイバルダービー 作:果てなき狂喜
昨日の出来事からの翌日、朝の作業を終え、昼食を済ませようとしたが、かなり混雑していたため、ウマ娘が使用するカフェテリアへと向かった。
「(とほほ…まさか、食堂が混雑してたなんてなぁ…運が悪いなぁ…仕方ない…ウマ娘達のカフェテリアで食事を済ませようかな…?…って、あれはライスシャワー?一人で食べてるんだ…)」
そう思いながら、食事を受け取り、ライスシャワーの近くへと寄った。
「ライスシャワー、ここいいかい?」
「ふぇっ!?桑原さん!?ど、どうしてここに…?」
「えっとね…生憎、トレーナー専用食堂が、混雑しててね…今日は、このカフェテリアで食事しようかなって思ったところに、ライスシャワーがいたから、ライスシャワーと、一緒に食べたいなって思ってたところだよ。いいかな?」
「で、でも…ライスがいるせいで、ご飯がカラスさんに取られたりしちゃったら…」
「大丈夫だって…あんまり気にしない方が良いよ?」
「う~ん…く、桑原さんがそういうなら…隣、いいよ?」
「ありがとう。」
やはり、ウマ娘という事もあり、自分よりもメニューが多めで自分でも食べきれないかもしれないほど。ライスシャワー以外にも食べているウマ娘を見ていると、凄まじい量のご飯を食べる子もいれば、少しの量を食べているウマ娘もいた。
「えっと…ライスシャワーみたいに沢山食べる子って、どれくらいいるのかな?」
「…え、えっとね?いろんな食べ方があるんだけど…一人は、何度もおかわりする子もいてね?特に、オグリキャップさんとか、編入してきたスペシャルウィークさんとか…いろんな子たちがいる…かな?」
「へ、へぇ…そんなに…」
「ライスも、他の子よりかは食べる方…かな?」
「そうなんだ…やっぱり…」
食事を終え、ライスシャワーは教室へ向かい、午後の授業を終わらせ、トレーニングコースでライスシャワーと合流し、トレーニングを開始した。
「それじゃあ、早速今日もトレーニングだ。主に、中距離と長距離をメインに仕上げていこうと思う。いつもの調子で、怪我がないようにね?」
「うん!行ってくるね!」
最初は芝の中距離コースで、12ハロン2400メートルを計測した。適性的には、やはり、長距離の方がうまくタイムラップが出るが、中距離でも十分な速度がある。
「ひとまず、デビュー戦には、出られるようになってきたし…そろそろ、出てもいいんじゃないかなって思う。」
「ラ、ライス…レースに出られるの…?でも…」
「ライスシャワーが、出たいって思うなら、出てもいいし、出たくないなら、まだ参加申請はしないでおくよ。」
「うん…ごめんね?桑原さん…」
まだ、レースへ出るのに抵抗感があり、不安があるようだ。だが、ライスシャワーが出るきっかけ作りができれば、デビュー戦へ出るようになるかもしれない。そう思って、何かできないか、図書館やまだ足りない知識を補い、メンタルケアなどの本を読み終え、今日は仕事を終え、そのまま自室へと帰った。
その翌日、昼休憩の時間、ふとトレセン学園の中庭にあるベンチをみると、ライスシャワーが一人で本を読んでいた。
「(ライスシャワー…?今日は本を読んでるんだ…いったい何の本だろう…聞いてみようかな?)」
「……。」
「ライスシャワー?」
「あ、桑原さん!こ、こんにちは…」
「ねぇ、何の本を読んでるんだい?」
「絵本だよ?あのね?一番のお気に入りはね?『しあわせの青いバラ』っていう絵本!お話はね?バラがたくさん植えられたお庭から始まるの。色とりどりのバラ達が、訪れる人みんなに幸せをくれるお庭。でもね?ある日そのお庭に…誰も見たことのない真っ青なバラが蕾を付けたの。そしたら周りのバラ達も、お庭を見に来た人たちもみんな、「青いバラなんて気味が悪い」「きっと不幸の花だ」って…そのうち、青いバラ自身も、「僕もダメな花なんだ…」って思って、だんだん萎れてきちゃうんだ…あっ、で、でもね?ここで終わりじゃないんだよ?萎れた青いバラの前に、『お兄様』が現れるの!」
「お兄様?」
「そう!心の優しい、とっても穏やかに笑う人、その人は、青いバラの蕾を見つけて、すぐに笑顔でこう言うの!「やぁ、青いバラなんてとっても素敵だ!きっと綺麗に咲くに違いない…是非、買い取らせてください!」って…それでね?萎れかけていた青いバラは、鉢に植え替えられて、お兄様に毎日声をかけてもらって、見事な花を咲かせるの!青いバラは、お兄様のおうちの窓辺に飾られて、道行く人達をたくさん幸せにできたんだよ!」
「へぇ~…素敵なお話だね…感動的な絵本だね?」
「……!桑原さんもそう思う!?えへへ…嬉しいなぁ…!ちっちゃい頃、初めてこのお話を読んだときにね、ライスも、この青いバラみたいになりたいなぁって思ったんだ…みんなを不幸にしちゃう、ダメな子じゃない…みんなを幸せにできる、青いバラに…そう思い始めた頃に、お母様がね?ライスをレース場に連れて行ってくれたの。レース場は人がいっぱいで、迷惑かけたくないから、お家でじっとしてたライスのおめめ、ぐるぐるになっちゃったけど…でもね?それでも…しっかり覚えてるんだよ!周りの人みんな、レースを目いっぱいの笑顔で見てた!応援してる子が、頑張ってレースで勝ったら、みんな…とっても幸せそうなお顔になってた…それでライスも、ライスもね?あんな風になりたいなぁって思ったんだ…みんなを不幸にするだけの、ダメな子じゃなくて…みんなを幸せにできる、そんなウマ娘に…」
「うん…ライスシャワーなら、きっとなれる…なれるさ!」
「桑原さん……!えへへっ…うん、ありがとう!!ライス、これからも頑張ってトレーニングするねっ!」
そして、放課後はしっかりとトレーニングを指示し、メニューをこなしていくと、不意に、黒髪の女性が、無言でこちらを見ていた。
「…」
「あ、あの…何か…」
「い、いえっ!!すみません!!なんだか、仕上がりが段々と上がっていくウマ娘だなぁ…と思いまして…」
「え?あ、あぁ…ライスシャワーですか。そうなんですよ。一昨日までは、まだ体つきが細かったんですが、昨日から段々と、少しだけですが、顔つきもよく、仕上がりがいい感じになってきたんですよ。」
「いいですねぇ…私もミーク…あぁ、ハッピーミークって名前のウマ娘で、一応は全適正距離共に走れる子なんですよ。だから、私…早く育て上げて、GⅠや重賞レースに出させてあげたいって思って!」
「そうなんですか…あ…ところで、自己紹介がまだでしたね。僕は、桑原智也です。」
「あ、桑原さんとおっしゃるんですか!私は、桐生院葵と申します!」
そう、この女性は、黒髪をボブカットに近い形へと整えていて、編み込んだ左前髪をヘアピンで束ね、後頭部には、小さなポニテも見えており、おしゃれに気を遣っている。服装は白のワイシャツに、フォーマルな黒い袖なしベスト、スラックスとブーツは黒で、硬い印象があるが、一部分はフリルが付いている。そして、優れたトレーナーを輩出する名門家、桐生院家の一人娘だという事。あまり親しい中ではないが、会えば世間話をする程度で、やや遠い距離間がある。
「あ、あの!どうでしょうか…ここは、トレーナー同士という事で、意見の交換でもしませんか?」
そういい、目をキラキラと輝かせ、視線を向けてくる。ただ、これが、偵察なら、緊迫したものになるのだが、善意で話しかけてきたとすれば、いい経験になるのかもしれない。それに、先ほど、ハッピーミークは適性も距離も全ていけるとのことで、ライスシャワーの育成には、十分じゃないかと思い、提案した。
「…意見の交換もいいんですが…どうせなら、仲良くなった機会ですし、お互いのウマ娘を競わせれば、いいんじゃないかと思ったんですが…いいですか?」
「!!そ、その手がありましたか!!分かりました、今からミークを呼んできますので、少々お待ちください!」
そういって、桐生院さんは、そのままハッピーミークのいる場所まで行き、自分もいったんライスシャワーのトレーニングを終わらせ、桐生院さんが来るまで待つこと数分後。
「お待たせいたしました。と、そちらの方が、ライスシャワーさんですね?」
「はい。ライスシャワー、こちらの方は、僕の同期の桐生院さんとそのウマ娘のハッピーミーク。」
「……ハッピーミークです…」
ハッピーミークは、自分よりかは身長は低いが、驚くべきところは、白一色。白髪の髪に尻尾、おっとり、またはぼんやりとした垂れ目、ライスシャワーと同じく細く見えるウマ耳に、花形の飾りをつけている。
「は、はじめまして、ミークさん…ライスシャワーです。よろしくお願いします…」
「…はい、ライスさん。」
そういう訳で、始まったデビュー戦前の模擬レース。芝の中距離と長距離を、実際のレース形式にして、勝負が始まった。
「それじゃあ、実際の皐月賞や日本ダービーと同様の距離で、1着を競うってことでいいですかね。」
「はい!もちろんです!どの距離もダートや芝、全て走れます!」
「(さ、流石は名門桐生院家が選ぶウマ娘…優秀だなぁ…)」
となると、スカウトからそんなに日が経っていないものの、かなりの仕上がりだ。もしかすると、その後の1か月や2か月はもしかしたら、GⅠは余裕で1着を取りそうな予感がする。
「そういえば、得意な戦法ってあるですか?」
「逃げや追込みは苦手ですが、差しと先行なら。」
「そうですか…ライスシャワーと同じ戦法ですか…(同じ戦法なら、かなりライスシャワーの経験や育成に役立つんじゃないだろうか…ひとまず、ハッピーミークがどんな走りをするのかは、見た方が早いだろうしね…)」
準備運動を済ませ、ライスシャワーとハッピーミークは、前傾姿勢を取り、準備が整った。
「それでは、今から中距離模擬レースを始める!よーい…スタート!!」
スタートの合図を出し、同時に駆けだした。二人とも、出遅れることなく、快調に進んでいく。今回は、ライスシャワーの戦法は差しにしている。相手が同じ位置に来たのなら、差し。前に出ているのなら、先行と、わかりやすくなっている。今回は、先行の位置取りのため、中距離は先行、長距離は差しと決めつけられた。スタート地点から、中盤になるにつれ、ライスシャワーは段々位置取りを上げていく。
「(うん…いい位置取りだ…先行で行ってもよかったと思うけど…ライスシャワーは、先行より、差しの方が強いんじゃないか…?)」
最終コーナーに指し代わり、ライスシャワーは、ハッピーミークと同じ位置取りとなり、その差しの末脚でハッピーミークを抜いていく。ハッピーミークはそれに負けじとラストスパートをかけていくが、邪魔になるウマ娘もいないため、グングンと上がっていき、ライスシャワーの独壇場、一人旅となっていた。そして、勝敗は、ライスシャワーの1着となった。
「はぁ……はぁ……ライスさん…強い…」
「そ、そんなことない…よ…?ミークさんも、中盤までは差し切れなかった…ミークさんも強いね…」
「…負けました…か…」
「まだ、一カ月も経ってないですけど、凄いですね、ハッピーミークは…もしかしたら、先行され続けたまま負けちゃうかと思いましたよ…」
「いえ…それでも、負けは負けです…」
「そんなに気を落とさないでください…もしかしたら、次は自分達が負けるかもしれないですから…これから頑張っていきましょう!」
「えぇ…もちろんです!!」
その後、お互いの目指す目標を話し合い、桐生院さんとの連絡先と自分の連絡先を交換し、別れの言葉を言い、去っていった。その直後、ライスシャワーが、思うところがあった。
「…どうしたんだい?ライスシャワー。」
「あのね…ライス、ミークさんトレースしてみて分かったの…やっぱり、ライスも、レースに出てみたい!」
「!!」
「そのためには、まず…デビュー戦で勝たなくちゃいけないもんね…」
「あぁ。だからこそ、トレーニングを欠かさず、やっていこうと思う!それと、怪我だけはさせないし、無茶や無理はしないでね?」
「うん!!」
こうして、1カ月後のデビュー戦に向けてのトレーニングや調整をし、ようやく1か月後のデビュー戦の前日に、最終調整を終わらせ、当日の朝の時間となった。だが、待合場所に、ライスシャワーの姿が見えなかった。