ウマ娘 プリティーダービー リバイバルダービー   作:果てなき狂喜

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第七話~これから方針決(リバイバル)

翌日、今回からライスの他にウララが担当ウマ娘となり、これからの方針をさらにウララを含めた二人に絞ってトレーニングを行うことにした桑原。まずは、ウララの適正や距離を調べるため、レースのテストを提案した。

 

「ウララ、トレーニングを今日から始める…よりも前に、ウララには、レースのテストを受けてもらうかな?」

「テスト!?…でも、勉強じゃなくてレースなら頑張れそ~!!」

 

芝かダートのどちらかが得意か、どんな距離が走りやすいかを、調べるために、テストを行うことに決めた。なお、レースには求められる適性、能力が大きく異なるという事。短距離ならスプリンター。マイルならマイラー。中距離ならミドルディスタンス。長距離ならステイヤー。ただ、稀にどの距離も走れるオールラウンダーというのも聞くが、それに分類するのなら、ハッピーミークが妥当だと思う。さらには、どんな走り方が得意かも調べる必要がある。まず、逃げなのか、先行なのか、差しなのか、追込なのかを知ることが重要。ただ、得意な距離適性戦法で戦うため、能力を発揮しやすいが、ブロックしてきたり、マークされたりなど、状況によっては、妨害されるなど、時にはバ場状態や天候もレースに左右される。

 

「まぁ…簡単に言えば、レースに出るための必要な検査かな?」

「う~ん…そっかぁ…うん!分かった~!!」

「それじゃ、ライスはウララの走り方を見ながら、軽く準備運動が終わったら、長距離コースを7周ぐらい…かな?」

「うん。それじゃ、行ってくるね?お兄様!」

「ウララも同じように、準備運動をして、各距離を芝、ダートに分けて1本ずつ走ってもらうから。一応、本番だと思って本気で走る様にしてね?」

「は~い!!よぉし!じゅんびうんどう、スタート~!!!」

「…(体つきは悪くない…ただ…ライスと比べると、劣ってるくらいか…なら、ウララには、ライスとは違うやり方でトレーニングしていった方が良いな…)」

 

「桑原さん!!じゅんび、オッケー!!」

「よし、まずは芝の短距離から始めよう。ストレッチとかもしているけれど…なるべく、怪我だけはしないでね?」

「うん!よ~しっ!がんばるぞ~!!!」

「それじゃ、よ~い、ドン!!」

 

ストップウォッチのタイマーのボタンを押すと同時にウララは駆けだして、芝の短距離コースを走り始めた。まず、芝の短距離の距離は6ハロン1200メートル。

 

「(劣っているとなると…1ハロンあたりに11…いや、12秒を切ればいい方かな…?)」

 

ウマ娘は、自動車の速度の自足60㎞以上で走れる生き物だが、トップスピードを維持しながらゴールまで駆け抜けることは不可能。だが、70㎞は超えることもあるし、平均速度が60㎞越えのウマ娘も存在する。短距離の場合、本番のレースで最高速に野の乗れば、1ハロン200を大体10~11秒前半で走れることとなる。1ハロン12秒を走るとなると、時速60㎞前後、13秒なら54㎞前後。しかし、短距離を走るウマ娘となると、1ハロン13秒は致命的な出遅れともいえる。ただ、まだ育成を始めたばかりという事もあるかもしれない。タイムが悪くなったとしても、短距離が適正ではないと理解できるから。ただ、競う相手がいないため、全力を出し辛いかもしれないけれど、他に邪魔をされないという意味であれば、優れたタイムを出しやすい。そんなことを考えつつ、ウララを観察して、ラップごとのタイムを測っていた。

 

「(フォームがばらばらで、体勢も少し悪い…しかも半分以上の距離になるとスタミナが持たない…か…)」

 

一応養成学校のレース場で過去のウマ娘の出走レースを見てきたが、走る姿といい、フォームといい、何もかもが未熟そのもの。精彩がまるで足りていなかった。

 

「はぁ…はぁ…ふぅ…はふぅ…ご、ゴールぅ…疲れた~…でも、楽しかった~!」

 

ようやく芝の短距離のゴールにたどり着いたと同時にタイマーを止めた。ウララは息を切らして、汗を流して疲れた表情をしているが、笑顔で地面に倒れていた。

 

「…」

 

ストップウォッチに表示したタイムを見て困った。全力で走れとは言ったものの、タイムを見た限りであれば、スタートから中盤辺りまではスタミナが残っているが、中盤から最終コーナーに差し掛かるところでスタミナがなくなっている様子で、脚質は逃げだと思ったが、そうなると、この様子では、逃げの戦法はかなり厳しい。それどころか、スタートしてからほかのウマ娘にマークされて、置き去りにされるであろう。

 

「はぁ…はぁ…桑原さ~ん!ど、どうだった~!?」

 

ぐったりしつつも嬉しそうに元気で駆け寄ってきたウララにスポーツ飲料を渡し、微笑しながら言った。

 

「う~ん…タイム自体は悪く・・・ないんじゃないとは思うけれど…その…まぁ…えっと…じゃ、じゃあ…休憩したら、マイルに移ろうか。だけど、大丈夫かな?走れる?」

 

流石に、あまり早くなかった。遅かった。本気で走ったかい?と言い辛くて、つい遠回しに次の距離に移ると言ってしまった。それに、手を抜いて走っている様子は全くなかった。

 

「う~ん…うん!大丈夫!今日のウララ、ぜっこーちょー!!まいる…?だっけ?なんでもこ~い!!!」

 

文句も言わず、休憩が終わると楽しそうにマイルコースまで駆けて行った。

 

「…調子は悪くないんだけどね…」

 

ウララの背中を見送りながら、小声で呟いた。

 

「(短距離が苦手ってわけでもない…いや…仮に短距離が苦手だったとしても、それなりのタイムが出る訳…だよね…という事は、距離が長くなるにつれてスタミナがなくなっていたとなると…やっぱり、得意な距離は短距離ってことになるのか…ただ…まだ測ってないわけだし…決めつけはよくないな…)」

 

トレセン学園には入れるウマ娘は子供の頃からでも走るのが速い。地元では負け知らず。だという者も珍しくはないらしい。ただ、これからの育成方針で、どんどん成長していくとしても…彼女の能力は、他のウマ娘に劣っているように見えた。いったいなぜと思いながらも、マイルのタイムも測っていた。

 

「…」

 

タイムを確認してみると、やはり、短距離よりもかなり遅いタイムとなっている。再度休憩させて、今度は中距離のタイムも測った。

 

「……」

 

やはり、距離が長くなるにつれて段々とタイムが伸び続けている。というより、遅い。

 

「………」

 

最後に長距離走のタイムを測ったが、絶望的。もうかなり遅い。こんなときどんな表情をしてウララの前に行って、タイムが悪かったか、何か別の言葉を言えばいいのか悩ませていた。そんな自分とは違い、ウララは辛かったというのに、終始元気で笑顔のままだった。

 

「ぜぇ…ぜぇ…はぁ…はぁ…く、桑原さん…ど、どうだった…?」

 

いくら、休憩をはさんだとはいえ、各距離のコースを走ってかなり疲れている。ウララは、肩で息をしながら、こちらへと問いかけたが、笑顔と共に達成感と思われるものが見て取れる。

 

「(となると…最後はダートの方だけど…この様子だと…芝じゃなくダートが適正って可能性もあるかもしれないけれど…このタイムは酷すぎるなんてレベルじゃない…ライスと比較してもライスの方が圧倒的だね…こりゃ…)」

 

下手をしたら、今の疲労した状態のウララならば、100メートル走に限っては、人間の方が速いと言わざるを得ないと思うほど。走らせてみた結果。距離が延びるにつれ、1ハロンごとのタイムが悪くなっている。短距離~長距離を比べた場合は当然このと。さすがのウマ娘でも、長距離を短距離と同じように走り続けれいられるほど生き物の枠からは圧倒的に外れることはない。ただ、逃げ続けられればの話であるが。他の中等部のウマ娘と比べれば、ウララの能力はかなり劣っているのかもしれない。もしかすると、地方のウマ娘より劣るのかもしれないと心配するのと危惧するぐらい。

 

「(この実力でトレセン学園に入学が許可されたという事は…何か事情があったのか…それとも…評価する項目が特別に一つだけあった…それに合格した…かな…ただ…手を抜いて走ってるわけでもないし…全力で走ったってことだよね…)」

 

各距離を走らせていたが、短距離しか向かない。正確に言えば、短距離しか体力がもたないかつ、体力が持つとしても、中盤に差し掛かったところではバテてしまう。もっともマシなのが短距離。

 

「(適正距離は短距離のスプリンターか…走り方は追込み…いや、…スタミナ的には無理…逃げにしてもスタミナが持たないし…先行でマークしきれるかというと…無理だろう…そうなると、残った差ししかない。)」

 

まず、差しで育成していくのが無難で、根本的な問題は、走り方のフォームを改善しつつ、スタミナを増強し、スピードを上げさせて、レースではどのような環境、展開によってどうやって走るべきかを教えなければならない。それによって他の距離を走ったりしたり、戦法を選んだりできる水準までは鍛えることができるだろう。とりあえず、分析はここまでにして、本人に感想を求めた。

 

「…ウララ、各距離を走ってみてどうだったかな?」

 

水分補給をしているウララは、笑顔を浮かべ満足そうに言った。

 

「うん!!すっごく楽しかった!!!やっぱり、走るのって楽しいね~!!」

「楽しかったか…そうか…」

 

ウマ娘全員に言えることなのかもしれないが、走るために生まれ、生きていく。他の誰よりも速くレース場を駆けることが存在意義でもあり生き様。中には、走る以外の事に興味を持つウマ娘もいると聞いているが、走ることは、ウマ娘にとって三大欲求の一つに過ぎない。それでも、ウララが走ることを心から楽しんでいる。もし、育成次第で落ちぶれてしまい、ウララの笑顔が段々と曇らせていくことになるかもしれないと思うと、武者震いがした。

 

「……」

「あれ?桑原さん?どこか痛いの?だいじょ~ぶ~?」

 

そんな自分の様子に気づき、ウララは心配そうに覗き込んできた。悟られないようにすぐに表情を取り繕い、微笑みながら首を横へ振った。

 

「いや、大丈夫だよ。それじゃ、次はダートで走ってみようか?」

「だーと??」

「そう、ダートコース。芝のコースじゃなくて、あっちの。地面が砂や土になっているコースがあるから、そこで走れるかい?」

「うん!!!よ~し!!がんばるぞ~!!!」

 

そして、ダートコースで短距離から長距離を走らせると、確信したことがあった。

「(やっぱり、芝が適正じゃなかったんだ…足場が悪いからこそ発揮するってことか…それに、ダートならマイルまでならスタミナがもっているか…なるほど…)」

 

芝の全コースは絶望的なタイムだったが、ダートでは、マイルまで走りきることができる。ウララは、芝で活躍できないものの、ダート且短距離~マイルまでのレースに特化したウマ娘だった。スタミナを鍛えれば、中距離以上長距離以下も走れるようになるが、現状では距離が長くなるにつれてスタミナがもっていない。最高でもマイルまではギリギリ届くか届かないかぐらいだった。

 

「(となると…ダートレースのみにしか出させられなくなるか…しかも、ダートは先行の方が良いって聞くけど…ウララは差しが輝くんだと思う…追込みもダートならいけるかもしれないけど…とりあえず、差し型で鍛えていこうと思う。)」

 

ラップタイムを書き込んだメモ帳に、当面のウララやライスの育成スケジュールを立てる。

 

「はふぅ…ねぇねぇ、どうだった?」

 

メモ帳にペンでスケジュールを書き込んでいると、ある程度息を整えたウララが走ってこちらまで駆けよっていた。

 

「うん、タイムを見る限り、芝よりもダートの方が良い結果だったよ。」

「ほんと!?やった!!やった~!!」

 

褒めただけなのに、ウララは大喜びで、両手を上げその場をぴょんぴょんと飛び跳ねている姿は、小柄な体型もあるが、似合っていた。ただ、ダートのタイムは、他のウマ娘と比べると、少しだけ劣るものだが、きっと、ダートではいい走りをしてくれると感じた。

 

「(これからは、ライスやウララと共に、レースを勝つことができるように育成しなくては!)」


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