前世の記憶を持つ少年
かつて世界の命運をも変えうる大きな戦いがあった。
しかし、その戦いは、死後の世界に近い尸魂界で秩序を維持していた死神の間で起きたもので、現世を生きる人々には記録はおろか認識すらされていない。
けれども、ボクはそのことを知っている。いや、それだけではなく、その戦いの記憶を色濃く持っている。
一般的に、人は生前の記憶を保持しない。死後の世界については言わずもがな。
けれども、なぜかボクは前世の人としての記憶を持たないくせに、前世の死後の世界の記憶があった。
その前世の記憶で、ボクはその戦いの当事者だった。
表向きは尸魂界を裏切った大罪人、藍染惣右介の右腕。けれど、その実は百年以上もの間、藍染の命を密かに狙い続ける獅子身中の虫。
そうして、訪れた千載一遇の機会に裏切りを実行した。
しかし、それは藍染に見抜かれており、ボクはあっけなく返り討ちにあった。
その戦いの結末がどうなったのかは実のところはわからない。
けれど、何事もなかったかのように人の歴史が紡がれていることから考えて、薄れゆく意識の中で最後に目にした希望の手によって藍染の野望は打ち砕かれたのだろう。
そうであるならば、彼女もきっと大丈夫だったはずだ。
それならば、たとえ自分が反逆の上、裏切りに失敗して死んだ大罪の愚か者と評されることになったとて、何の後悔もない。
けれど、彼女のいない世界で、ボクは何のために生きていったらいいんやろうな。
※
二〇九五年、四月。
ボク、市丸ギンは何の因果か死後の世界の記憶の名前のままに、十五歳の高校生として現世の日本を生きていた。
二〇九五年の現世では過去の記憶と異なり魔法という力が実用化されていた。どうやら一九九九年に初めて確認された異能であるらしい。
年代的に藍染の起こした事件が起因になったのかもしれないとも考えたが、全世界で同じような力を持った人が確認されたということから、何か別の能力。例えば滅却師の扱う力の亜種のような力が表に出ただけなのかもしれない。
人間同士の争いに、尸魂界は関与しない。だから滅却師が霊なるものに力を振るうのならば介入するが、人間に向けて使われるのなら放置される可能性は高い。
ボクは記憶だけではなく、死神の能力も保持したまま現世に生まれ落ちた。前世では尸魂界を守る死神の頂点たる護廷十三隊の隊長に就いていたボクにとって、魔法の習得はそれほど難しいことではなかった。
魔法は希少な力だ。幼い頃から高い魔法への適性を示したことでボクの将来は魔法師と自然と思われるようになっていた。
ボクとしては、特に確たる将来への目標などはなく、適性のままに毎年のように国立魔法大学へ最も多くの卒業生を送り込んでいる高等魔法教育機関、国立魔法大学付属第一高校へと入学を果たしたのだった。
BLEACHの市丸ギンの転生物です。
隊長時代の能力を維持しているため基本的にかなり強力なキャラです。
もっとも、お兄様が強すぎるので、最強キャラではありません。