魔法科高校の蛇   作:孤藤海

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第一高校襲撃

 第一高校の校舎上に陣取っていた市丸は、接近する虚の霊圧を感じ取った。一際、強大な霊圧はバラガンのもの。それに準じる強力な五体の虚が、離反した七本槍だろう。その他に四体の虚の気配がある。

 

「まさか十刃ってわけやないやろうし……まあ偶然やな」

 

 バラガンを含めれば攻め手はちょうど十体。他の破面なら十刃の再現かとも思うところだが、そもそもバラガンに十刃に対する思い入れがあるとは思えない。単に生き残りの虚が十体だけだったという話だろう。

 

「けど、こんだけおったら、ボク一人じゃ対処しきれんな」

 

 市丸はバラガンを抑えるだけで手一杯になるだろう。森崎もイヅルとしての能力を取り戻しているとはいえ、何とか一人を抑えられるという程度だろう。残り八体をどうするかは非常に悩ましい問題だ。

 

 ひとまず達也に連絡を取って七草と十文字に呼び出してもらう。現生徒会長と部活連会頭には悪いが、戦場に立っての指揮はこの二人が適任だ。現生徒会長には戦闘力が低い者たちの避難誘導に力を尽くしてもらうとしよう。

 

「作戦会議を行う。講堂に集まってくれ」

 

 少しすると、達也からそう連絡がきた。講堂という場所を選択したということは、今回の作戦会議にはそれなりの人数が参加するということだろう。

 

 実際、入った講堂内にはかなりの人数がいた。第一高校からは達也、深雪に七草、十文字、渡辺、中条、服部、千代田。第三高校からは一条、吉祥寺に、援軍として入ってきた片山。更には伝手を使って依頼していた七草家と十文字家の部隊の指揮官各一名に加えて、千葉寿和。そして、なぜかリーナまでが集まっていた。

 

「とりあえずお前からの依頼だと言って皆を集めたが、状況はどうなっているんだ?」

 

 そう言って達也は市丸に説明役を押し付けてきた。

 

「ボク、索敵はそこそこ得意なんや。それで、第一高校に迫る虚を感知したんやけど、少し数が多かったから、手を借りなあかんかなと思って」

 

「私の方ではまだ何の情報もないのだけど、市丸くんはどのくらいの数の敵が接近しているという情報を得たのかしら?」

 

「十体やね」

 

 市丸が言うと、吸血鬼と対峙したことがある者を中心に緊張が走った。これまで一体を相手にするのでも苦戦していたのだ。十体となれば、困難な戦いになるであろうことは想像に難くない。けれど、それは吸血鬼と対峙したり、配下の者たちの苦戦をしたことを知っている七草や十文字など一部だ。逆に吸血鬼事件に関わってこなかった服部などは、あまり危機感がないように思える。

 

「十体ゆうても、一体が普通の魔法科高校生なら百人が束になって掛かっても勝てんくらいの力を秘めとるからな。そもそも防御力が桁違いに高いから、君やと傷すら付けられん可能性すらあるからな」

 

 そう言うと、当然ながら服部は不快そうな顔をする。ともかく、先に達也や一条にしたのと同じ破面と虚に関する説明を行う。

 

「服部、気持ちはわかるが、吸血鬼は強い。七草とうちの配下部隊が結局、一体も討伐ができなかったほどだ」

 

 そこに十文字が加えて言うと、さすがに服部も難敵と理解できたのだろう。市丸に対する怒りに似た感情が消えた。

 

「あと、敵は一塊で攻めてきてるわけやないからな。どちらかというと全方向から攻めてきとる、ゆう感じやね」

 

「それって、全方位に守備隊を置かなきゃいけないってことと、生徒たちを学外に逃がすことが難しいってことじゃない」

 

「まあ、言い換えればそうなるね」

 

「包囲を突破するという方法もあるとは思うが、さすがに避難する人数が多すぎる。全員を守り切るのは難しいだろうな」

 

 十文字がそう言ったことで、この場で防衛戦を行うということは確定した。そうなると、次の問題は布陣についてだ。

 

「一番、強力な虚はボクが受け持ったるわ。あと離反した七本槍のうちの一人は森崎に任せてええで」

 

 そう言うと、ほとんどの者が疑わしそうな目で見つめてきた。森崎の実力は先ほど、敵わないと酷評した服部よりも下だ。当然の反応と言える。

 

「まあ、ボクが対吸血鬼用に仕込んだってことで納得してくれへん?」

 

「市丸が言うことですので、あながち間違いとも言えないと思います。具体的にどう、と言われれば難しいのですが、森崎の雰囲気が変わったのは感じていました。ここは任せてみてはどうでしょうか?」

 

「達也くんがそう言うのなら……」

 

 納得しているとは言い難いが、一応は受け入れてもらえたようだ。

 

「元は第三高校の生徒だ、七本槍の一人は俺が受け持とう」

 

「将輝みたいに一人で受け持つということはできそうがないけど、僕たち全員なら一人くらいなら受け持てるはずだ」

 

 一条に続いて吉祥寺がそう言ったことで、バラガンと離反した七本槍たち五人のうちの三人までは対応者が決まった。

 

「第一高校の現生徒会の人間として黙って見ているわけにはいきません。私も敵を受け持ちます」

 

「深雪だけを前線に立たせるわけにはいかない。俺と深雪で敵を受け持とう。後はリーナならば、一人で敵一体くらい受け持てるんじゃないか?」

 

 これまで何度も敵対してきた腹いせか、それとも使えるものは使うという方針か、達也がリーナに敵を押し付けようとする。

 

「まあ、これでもステイツで成績優秀と言われてきたから……敵一体くらいは受け持ちましょう」

 

「一人で大丈夫なの?」

 

「ええ、ワタシはこれまで皆さんと連携を取ったことがありませんから、むしろ一人の方がご迷惑をかけないと思います」

 

 リーナはシリウスとしてこれまで吸血鬼との戦闘経験を豊富に持っている。そして、戦場に立つのならばシリウスの魔法を知られるわけにはいかないだろうから、単独戦闘はむしろ望ましいことだと思われる。これでバラガンと七本槍の対応者が決まった。残りはその他の虚四体だ。

 

「七草と十文字家の部隊もそれぞれ一体は受け持つつもりです。それに加えて他の部隊にも何人かは付けられると思います」

 

 七草と十文字でそれぞれ一体。これで八体。

 

「僕も妹たちと一緒に一体を受け持とう」

 

 そう進言をしたのは千葉寿和だ。

 

「妹さんたち、ということは、具体的にはエリカさんの他に、どなたか心当たりがあるのですか?」

 

「妹のエリカの他は、吉田幹比古くんと、西城レオンハルトくんをお願いできますか?」

 

「わかりました。本人たちに伝えましょう」

 

 これで九体。

 

「ならば最後の一体は私が戦える第一高校の生徒を率いて受け持とう」

 

 そう言ったのは渡辺だ。これで十体の虚を迎撃する部隊の指揮官が決定した。

 

「中条さんは戦闘に参加しない生徒たちと一緒にこの講堂で待機して。そして、もしも脱出ができそうなら、皆で脱出して。護衛は先生方にお願いするから」

 

 第一高校の教師陣は魔法師としては優秀だが、戦士として優秀なわけではない。強大な力を持つ虚との戦闘の指揮が取れるとは思えない。

 

「ところで、戦闘に参加要請をするのは誰にするの?」

 

 渡辺が率いる第一高校の生徒たちというのは、具体的でない。その数と戦力によっては戦いは厳しいものになるだろう。それを心配する七草の懸念はもっともなものだ。

 

「風紀委員には参戦してもらう予定だ。他には服部と、桐原たち横浜での戦闘経験がある者たちも参加してもらいたいな」

 

 横浜での戦闘経験となると、明智も参戦を要請される側となりそうだ。明智では虚の相手は厳しいと感じる。けれど、風紀委員は全体的に近接戦向きが多い。そんな中では、明智は貴重な遠距離から相手に打撃を与えられる存在だ。参戦要請の対象となるのはやむを得ないだろう。

 

「防衛部隊のうち、誰かが敵を撃破できた場合は、そこから脱出をできるか、撃破した人の判断で中条生徒会長に伝えてください」

 

 逆にどこかが最初に負けるようなことになれば、第一高校は多くの犠牲を出すことになる可能性が高まる。それだけに皆、緊張した面持ちで戦闘準備を進めた。

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