アンダードッグは負けられない~噛ませ犬が四つの異世界の間をループしながら【主人公】と共に世界崩壊級の事件へと挑むそうです~   作:三上 一輝

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第一世界『心霊奇譚――機人精霊』
05 現状把握


『先ずは、お前が廻る事になる四つの世界。それらについての情報を纏めておくべきだろう』

 

「そちらには何の知識も与えられていないのか?」

 

 世界を終末へと導く事件に挑まざるを得ない、と忠人が決心した、その後。

 マーティーが提案したのは、奇を(てら)う事の無い、順当な行動である、情報の纏め出しであった。

 

『ある程度の情報は持っている……が、実際に今まで十数年間その世界で過ごしてきたお前程では無い。互いの持つ情報のすり合わせはしておくに越したことはない』

 

「それもそうか」

 

 不幸中の幸い、とでも言うべきか、拷問染みた救済の【波】の影響で飛び起きたお陰で、時間は早朝も早朝。

 ある程度話し合いをする時間は合った。

 忠人としても、何もかも分からない事だらけの現状。話し合うと言うのなら否は無い。

 

『忠人、この世界を起点として、お前が意識を取り戻した順に、便宜上、第一世界から第四世界とまで仮称することにする。そして最初はこの世界――第一世界についてだ』

 

「了解。今居るのは地球の日本で……って所から説明が必要か?」

 

『そこら辺は分かるから良い』

 

「分かった。ああ、でもそう考えると不思議だな」

 

『何がだ』

 

「この世界と、第四世界は別の世界、何だろう?なのに同じ現代日本が舞台ってのは気に成ってな」

 

 平行世界、と言うのなら話は変わって来るが、マーティーの説明を思い出すに各世界は、全くの別世界の筈である。

 だと言うのに、極めて相似した第一と第四の世界の関係性は、忠人に一寸した疑問を抱かせた。

 

『ああ、それか。簡単な事だ。世界救済の波(物語)を探す際に、条件が近しい世界から探して行ったからな。各世界の間である程度以上の相似が見られるのは、そう可笑しい事では無い。顕著なのは第一と第四だが、第二と第三とも似ている箇所がある可能性は高い』

 

「ん、そう言えば、他の世界の歴史上の人物や、神話上の英雄なんかの名前の人間が時々居たりするな」

 

 第二世界と第三世界に関しては、当然言語等も違っているが、それにしては翻訳をした際に、別の世界とリンクする場所があったりするな、と忠人は思い返した。

 

『それにもっと言えば、人間と言う種が覇権を握った世界――という条件下ならば、似た部分が有るのも当然の話だろう』

 

「そういうもんか」

 

 例えば、広い宇宙の中で、人間と酷似した生命体が住む惑星が有るとしたら、その環境は地球に似た物になる可能性が高い。

 それのスケールが一つ大きく成った話だと言えばイメージがしやすいだろう。

 

『これが、足が幾本もある不定形の生命体が、地上の覇権を握った世界であったりすれば、話は変わっただろうがな』

 

 それは勘弁願いたい。忠人は、肩を竦めた。

 

「ああ、それともう一つだけ、確認して置きたいんだが」

 

『ふむ?』

 

お前や俺が(・・・・・)元居た世界は(・・・・・・)どれなんだ(・・・・・)

 

 世界を救う為に、廻る世界を一つから、四つに増やした――そう語ったマーティーの言葉が正しいのなら、四つの世界の内に、自分たちが元居た世界がある筈だ。

 抱いて当然と言えば当然の忠人の疑問に、しかしマーティーは答えなかった。

 

『――それは、お前自身が思い出さなければ、意味がないことだ』

 

「おい」

 

『言っただろう、お前は記憶を失っているだけだと。(おれ)が昔の情報を教えると、寧ろ記憶が元に戻る邪魔に成りかねん』

 

「…………分かったよ」

 

 色々と腑に落ちない部分は合ったが、最終的に忠人は頷かざるを得なかった。

 なんせ現状、力関係はマーティーの方が上だ。

 マーティーが教えない、と黙り込めば、忠人はそれ以上に追求する手段を有していないのだから。

 だから、仕方がなかったし……それにある程度は推察が可能(・・・・・)でもある(・・・・)

 

『話を戻すが、この世界の特徴は?』

 

 嘆息一回。あからさまに強引に打ち切られた話に釈然としなかったが、忠人は第一世界の説明を再開した。

 

「大雑把に言えば、超常現象など存在しないと思われている表社会の裏側で、異能の力を持った者たちが普通に存在している世界だ」

 

『心意、だな』

 

『先ずは、お前が廻る事になる四つの世界。それらについての情報を纏めておくべきだろう』

 

「そちらには何の知識も与えられていないのか?」

 

 世界を終末へと導く事件に挑まざるを得ない、と忠人が決心した、その後。

 マーティーが提案したのは、奇を(てら)う事の無い、順当な行動である、情報の纏め出しであった。

 

『ある程度の情報は持っている……が、実際に今まで十数年間その世界で過ごしてきたお前程では無い。互いの持つ情報のすり合わせはしておいた方が良いだろう』

 

「それもそうか」

 

 不幸中の幸い、とでも言うべきか、拷問染みた救済の【波】の影響で飛び起きたお陰で、時間は早朝も早朝。

 ある程度話し合いをする時間は合った。

 忠人としても、何もかも分からない事だらけの現状。話し合うと言うのなら否は無い。

 

『忠人、この世界を起点として、お前が意識を取り戻した順に、便宜上、第一世界から第四世界とまで仮称することにする。そして最初はこの世界――第一世界についてだ』

 

「了解。今居るのは地球の日本で……って所から説明が必要か?」

 

『そこら辺は分かるから良い』

 

「分かった。ああ、でもそう考えると不思議だな」

 

『何がだ』

 

「この世界と、第四世界は別の世界、何だろう?なのに同じ現代日本が舞台ってのは気に成ってな」

 

 平行世界、と言うのなら話は変わって来るが、マーティーの説明を思い出すに各世界は、全くの別世界の筈である。

 だと言うのに、極めて相似した第一と第四の世界の関係性は、忠人に一寸した疑問を抱かせた。

 

『ああ、それか。簡単な事だ。世界救済の波(物語)を探す際に、条件が近しい世界から探して行ったからな。各世界の間である程度以上の相似が見られるのは、そう可笑しい事では無い。顕著なのは第一と第四だが、第二と第三とも似ている箇所がある可能性は高い』

 

「ん、そう言えば、他の世界の歴史上の人物や、神話上の英雄なんかの名前の人間が時々居たりするな」

 

 第二世界と第三世界に関しては、当然言語等も違っているが、それにしては翻訳をした際に、別の世界とリンクする場所があったりするな、と忠人は思い返した。

 

『それにもっと言えば、人間と言う種が覇権を握った世界――という条件下ならば、似た部分が有るのも当然の話だろう』

 

「そういうもんか」

 

 例えば、広い宇宙の中で、人間と酷似した生命体が住む惑星が有るとしたら、その環境は地球に似た物になる可能性が高い。

 それのスケールが一つ大きく成った話だと言えばイメージがしやすいだろう。

 

『これが、足が幾本もある不定形の生命体が、地上の覇権を握った世界であったりすれば、話は変わっただろうがな』

 

 それは勘弁願いたい。忠人は、肩を竦めた。

 

「ああ、それともう一つだけ、確認して置きたいんだが」

 

『ふむ?』

 

お前や俺が(・・・・・)元居た世界は(・・・・・・)どれなんだ(・・・・・)

 

 世界を救う為に、廻る世界を一つから、四つに増やした――そう語ったマーティーの言葉が正しいのなら、四つの世界の内に、自分たちが元居た世界がある筈だ。

 抱いて当然と言えば当然の忠人の疑問に、しかしマーティーは答えなかった。

 

『――それは、お前自身が思い出さなければ、意味がないことだ』

 

「おい」

 

『言っただろう、お前は記憶を失っているだけだと。(おれ)が昔の情報を教えると、寧ろ記憶が元に戻る邪魔に成りかねん』

 

「…………分かったよ」

 

 色々と腑に落ちない部分は合ったが、最終的に忠人は頷かざるを得なかった。

 なにせ現状、力関係はマーティーの方が上だ。

 マーティーが教えない、と黙り込めば、忠人はそれ以上に追求する手段を有していないのだから。

 だから、仕方がなかったし……それにある程度は推察が可能(・・・・・)でもある(・・・・)

 

『話を戻すが、この世界の特徴は?』

 

 嘆息一回。あからさまに強引に打ち切られた話に釈然としなかったが、忠人は第一世界の説明を再開した。

 

「大雑把に言えば、超常現象など存在しないと思われている表社会の裏側で、異能の力を持った者たちが普通に存在している世界だ」

 

『心意、だな』

 

「ああ。己が魂に語りかける事で、世界を塗り替える異能の法。それが心意であり、その使用者たちは心意奏者と、そう呼ばれている」

 

『細かい使用方法などは一旦置いておくとして、大体の力量の目安などはあるか?』

 

心格(しんかく)って値があるな」

 

 読んで字の如く、心――魂の格を表す数値だ、と忠人は答えた。

 

「一から始まり二、三と数値が上昇して行き、十を刻むごとに大幅に格が変わる」

 

『ほう。八と九の間の差と、九と十の間の差には大きな違いがある、という事か?』

 

「その通りだ。【壁越え】なんて言われていてな。心格の値が十増える度に生命としての限界を一つ踏破したと言っていい」

 

『具体的にはどれくらいの差が発生する?』

 

「大体、壁を越えた回数が一つ違うと、蟻と象の差が発生すると言って良いな。二つ差が出来ると、蟻と星。まあ格上殺しの手段を持った上で、奇跡に奇跡を重ねて漸く覆せるのが壁一つの差までで、後は無理だと思ってくれりゃあ良い」

 

 象をも殺せる毒を持つ虫けらは居るかも知れないが、星を溶かしきれる毒を持つ虫など存在しない。そういう話である。

 

『成程、圧倒的な差だ、と。因みにお前の心格値とやらは?』

 

「三十」

 

 つまり、壁を三回超えている。余りにアッサリと言い放ったが、忠人の言葉はそう意味だ。

 余りにも醜態を晒し過ぎていて、そうは見えないかも知れないが、本当に実力()有るのである。

 

「それは、大したものだな」

 

「……まあ、物部の家は関東一帯に強い影響力を持つ、日本でも有数の心意奏者の名家で、その跡継ぎ候補の一人なんでな」

 

『ふむ、それは何よりだ。ああ、多少話がずれたな。それでそんな心意奏者たちが多数居るこの世界は平和なのか?』

 

「――いや」

 

 忠人は、一旦タメを作った後、第一世界の最大の特色をマーティーに告げた。

 

外敵(・・)がいる」

 

『――ほう?』

 

「呼び名こそ各国で様々だが、日本においては逢魔(おうま)と、そう呼ばれている」

 

『逢魔』

 

「一般人には視認すら不可能な、何処からともなく現れて、人を襲う怪物だよ。それらを調伏することこそが、全ての心意奏者の責務だ」

 

『それは随分とまた…………物騒な話だな。それで?その逢魔とやらは一体どれくらいの頻度で襲ってくるんだ?』

 

「日本だけでも、一日、数十万から数百万体以上。まあ、大半は話にも成らない雑魚ばかりだから、数字ほどに危機的って訳じゃないが」

 

『だとしても決して油断して良い話ではないだろう?』

 

「まあな」

 

 それほどの数の敵対勢力に狙われている世界。

 それが第一世界の真実であった。

 

『では、この世界でお前の死の原因となった、アレ(・・)も逢魔か?』

 

「――――」

 

 【鋼鉄の赤鬼】。マーティーの言葉を聞いて、忠人の脳裏にその異様が浮かび上がる。

 人としての限界を三度も踏破し、低級の逢魔――それでも常人相手なら簡単に殺傷し得る――が相手であるのならば、数万体が相手でも余裕で屠りさる事が可能な忠人を、意図も容易く殺して見せた怪物、その姿が。

 

「…………いや違う。逢魔じゃない。あれはきっと――機人精霊(きじんせいれい)だ。特級災害と、そう区分されているモノの内の一つ」

 

『そう区分される条件は?』

 

既存社会を(・・・・・)崩壊させる(・・・・・)可能性があること(・・・・・・・・)

 

 襲われて居た時は気が付かなかった、と言うよりは、死の間際より逃走するのに夢中で敵の正体なぞどうでも良かった忠人だが、こうして今、冷静に考えてみれば、あの【鋼鉄の赤鬼】の正体に迫ることは容易かった。

 

「かつて、この世界においては、特級と区分された怪物が幾つも居た。それは強大な力と知恵を持つ逢魔であったり、世の転覆を狙わんとする、心意奏者の秘密結社であったりな。ただそれらは一つ一つ丁寧に処理されて行き、あるものは滅されて、あるものは封じられた。俺が産まれる前の話だから、其処まで詳しくは知らないが、表の社会での世界大戦に乗じて行われた、心意奏者同士での戦争を最後に、特級区分は全て処理が完了したらしい――たった一つ(・・・・・)を除いて(・・・・)

 

『つまり、その一つこそが』

 

「――機人(ファンタズム)精霊(オートマトン)。遥か彼方に浮かぶ機械仕掛けの城に住まう鋼鉄の軍団。確認できる限り千年は前から、どこからともなく現れて、人を呑む災害。(世界)の中に、残された災厄(アンチパンドラ)。この世界が崩壊するほどの事件を起こせる存在が居るのだとしたら、それはきっと彼らでしかあり得ない」 

 

『成程。その機人精霊とやらが、この世界における敵――む?』

 

「え?……本?」

 

 そこまで話した所で、突如として空中に一冊の()が出現した。

 その本は、地面に落ちる事無く、空中を浮遊し、手に取られるのを待っているかのように、忠人の前まで独りでに動き出した。

 反射的に手に取った忠人は、その簡素な本を観察する。

 其処には一つの題名が書かれていた。

 心霊奇譚――機人精霊、と。

 ペラペラと、その本を捲ってみるが、中身には何も書かれておらず白紙のページばかりで合った。

 

「何だこれは?」

 

『――ああ、そういう形になるのか』

 

 困惑する忠人に、納得するマーティー。両者の反応は正反対であった。

 

「これが何か分かるのか?」

 

『飽くまでも推察、だがな。【世界を読み解く者(ワールドリーダー)】を使用した、複数世界の【波】への干渉による世界救済。唯でさえ規模が大きい事象を、実験無しのぶっつけ本番だ。どういった形でそれが成されるのかは不明瞭だったが、恐らくその本こそが、その指示書(・・・)で間違いあるまい』

 

「指示書?これがか」

 

『1ページ目を見てみろ』

 

 マーティーの言葉に従い、出現した本の1ページ目を捲る。

 白紙だらけの本には、しかし、1ページ目にだけは、余りに簡潔な一文だけが記入されていた。

 

「【特異点の確認】………………これが、俺に対する指示だと?」

 

『恐らくだが、な』

 

「だとしても、そもそも特異点ってのは何だ」

 

 忠人のその言葉に、マーティーは、それは簡単な事だと答えた。

 

『【波】の先端。怒濤の流れに乗る存在。ああ解りやすく言うなれば――【主人公】だよ』

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