【完結】もしもウマ娘がブラコンお姉ちゃんだったら最高だよね杯 作:藤原ロングウェイ
この話でテイオーお姉ちゃん編は終了です。
よかったらテイオーお姉ちゃん編の感想、ここすき頂けると嬉しいです。
「デートでよくあるじゃん? 『ごめん、待った?』『ううん、今来たとこだよ』ってやつ」
「…………プッ! あはははははは!! 何それ!? それをやるためだけに走って距離とって走って戻ってきたの!?」
「ほら、イオねぇ、セリフ。ごめん、待った?」
「クスクス……もう、しょうがないなー! ……すごい待った!」
「えぇー!? そこは『今来たところだよ』でしょ!? 実際今来たばっかなんだから!」
「あはははははは!!」
オレを指差して爆笑するイオねぇ。
良かった、機嫌が直ったみたいだ。
「はー、はー……アスカが頑張って体を張ってくれたから許してあげましょー。優しいテイオーお姉ちゃん様に感謝するぞよー!」
「ははぁー! ありがとうございますぅー!」
そしてオレたちは笑いながら手を握り、外へと歩き出した。
ショッピングモールへとたどり着いたオレ達は、やや遅めのランチをいただくためにお店を物色していた。
「あー! ボクこれ食べたい!」
オトクなランチメニューでも1000円を超える、ちょっとお高めのファミレスの前でイオねぇが大声を上げる。
そこにあるのぼりには『期間&ウマ娘限定!キャロットの円卓ハンバーグ』と書かれていた。
クソでかい丸形ハンバーグに、それぞれ産地の異なる12本のにんじんがぶっ刺さっているというトンデモ料理のようだ。
値段は……まぁそうだよね。ウマ娘用のやつだからアレだよね。
「じゃあここはいろっか」
「うん!」
とはいえイオねぇはトレセン学園入学前から取材とか受けてたし、オレもトレーナーとして給料出てるし問題ナッシング。
中に入り、席に案内される。
「ボクはさっきのやつー! アスカは?」
「オレは……ミックスグリルでいいかな」
「じゃあボクがボタン押してあげる!ポチッ!」
ピンポーン!と音が鳴り、少しして店員さんが来る。
「ご注文をお伺いしますー」
「円卓ハンバーグのごはん特盛りと、ミックスグリルのご飯大盛り。あとドリンクバー2つ」
「かしこまりましたー」
店員さんが席を離れると、イオねぇがガバっと席を立つ。
「テイオーお姉ちゃん様が飲み物を持ってきてあげよう! 何飲む?」
「じゃあ……メロンソーダで」
「おっけー!」
イオねぇがルンルンとドリンクバーコーナーへ向かう。
まぁ何をしたいかはなんとなくわかっているんだが。
「おまたせ~!」
「……何それ」
イオねぇが持ってきたのはメロンソーダと、なんか濁った色をしている妖しい飲み物だった。
「これ? ふっふっふー、テイオーお姉ちゃん様特製コルピスレモンだぞ!」
ドヤ顔のイオねぇ。
名前からしてコーラとカルピスとCCレモンのキメラなんだろうな。
とんでもない悪魔合体だよ。コンゴトモヨロシク……
「子供かよ……オレみたくクールにメロンソーダにしとけよ」
「はぁー!? メロンソーダのどこがクールなんだよ!」
「めっちゃクールやんけ! コーヒーのミルクいれたらクリームソーダになるんだぞ!?」
「ボクのと発想変わんないじゃん!」
「かーわーりーまーすー!」
「じゃあ飲み比べてしてみよーよ! どっちが上か教えてあげる! 姉より優れた弟なんて存在しないのだー!」
「言ったなー!」
ぎゃーぎゃー騒ぎながら飲み比べる。
コルピスレモンは意外に美味しかったのが悔しかった。
「おまたせしましたー。円卓ハンバーグのご飯特盛りと、ミックスグリルのご飯大盛りになります」
「キター!」
店員さんが目の前に料理を置いてくれる。
「「いただきまーす」」
チキンを一口。うん。なかなかの味やね。イオねぇの作るチキンのが美味しいけど。
しかし、クソデカハンバーグににんじんが12本突き刺さってるとか圧巻だな……
ハンバーグを見ながらそんなことを思っていると、イオねぇがハンバーグが刺さったフォークを差し出してきた。
「しょうがないなー。はい、一口アーン」
「いや、別にほしかったわけでは」
「はいはい、そういうのいいから。はいアーン!」
「……アーン」
まぁくれるというならもらいますけどね。
うん、ハンバーグもけっこう美味い。イオねぇの作るハンバーグには劣るが。
「じゃあボクはソーセージもらおっかな! アーン!」
「強制的等価交換!」
イオねぇにソーセージをアーンで食べさせる。
ちくしょう、もっていかれた……!
いや、いいんだけどね。元々あげるつもりだったし。
「「ごちそうさまでした!」」
量も量な上、しゃべりながらだったからけっこう時間かかったな。
ファミレスを出る。
「さて、昼飯も食べたけど、どうする? せっかくだしどっか寄ってく?」
「うーん、そうだなー」
キョロキョロあたりを見渡す。
久しぶりにゲーセンでもいくかねーなんて思っていると。
「映画とかどう? 最近見てないし!」
「映画か、いいね。今何やってるかな」
映画館のあるフロアへ向かう。
こういうとこは複合施設って楽でいいやね。
「さて、今の時間で見れるのは〜っと」
「あ、これにしようよ!『劇場版ウマムスボールJ この世で一番食べるヤツ!』!」
「懐かしいなー」
ウマムスボール
映画館の中に入り、券売機に並ぶ。
「ウマムスボール、中等部で……席はやや後ろにしよう」
「えー! 最前列にしようよー!」
「ずっと顔上げなきゃいけないから首痛くなるじゃん……チケット二枚で隣席、と」
ちょうど上映時間ももうすぐだ。ラッキー。
「よーし、ポップコーンとコーラの準備だー!」
「どっちもLLね、LL」
二人で巨大なポップコーンとコーラを持って中に入り、着席する。
そして、映画が始まった。
「いやー、楽しかったね!」
「さすが名作にして傑作!って感じだったね」
ニコニコ笑顔で映画館を後にするイオねぇとオレ。
映画が長編だったから、外はもうすっかり夕方だ。
「アスカはどのシーンがよかった? ボクはねー主人公が覚醒してちょう強くなるところ!」
「あーあそこははずせないよね」
「敵のボスとのわんこバナナ勝負でさ、『お前もさっさとリタイアするといい、あの芦毛のウマ娘のようにな!』からの『芦毛のウマ娘? タマのことか……タマのことかぁー!!』って怒って覚醒するとこ、いいよねぇ……」
作中屈指の名シーンだからな、あそこは。
「オレはやっぱりメジロ特戦隊とのワンアウト対決かなー」
「えー? メジロ特戦隊ー? 甘いものばっか食べてたり、筋トレばっかしてたり、隠れて少女漫画書いてたり、よくわかんない言葉話してたり、なんか微妙じゃない?」
「わかってないなー。一人を除いて皆イロモノっぽいのにすげー強いところがオシャレなんだよ」
胡散くさげな表情のイオねぇ。
まだその程度の『レベル』のようだな……
「……うーん、オシャレなのかなー?」
「イオねぇみたいなお子様にはまだ早かったかなー?」
「なんだとー!? テイオービーム! ちょちょちょちょ!」
「イタくすぐったい!」
イオねぇの両手の人差し指でマッハで体を突かれる。
おのれテイオー……
「あはははは……?」
「ん? どしたん?」
「ん……」
イオねぇの視線の先を見る。
そこには街頭テレビが置いてあり、会長の特集をしているところだった。
『最強の皇帝と呼ばれるシンボリルドルフさんですが、見てくださいこの走り!』
『素晴らしいですね。正直、シンボリルドルフは強すぎて現状だと勝てるウマ娘がいるとは思えませんね』
『無敗の三冠ウマ娘ですからね。私はシンボリルドルフよりすごいウマ娘は見たことがありません』
コメンテーターたちが会長を褒めちぎっている。
まぁそうだよな。現時点では最強のウマ娘だし。
「……ねぇ、アスカ」
「なに?」
「……ボク、カイチョーに勝てるかな」
俯きながら、ポツリと零すイオねぇ。
朝っぱらから突撃してきたりやけにハイテンションだった理由の一端はこれか。
ならトレーナーとして、弟として、かける言葉は一つ。
「勝てるよ」
「……なんで言い切れるの? カイチョーは強いよ。多分……ボクよりも」
「だってオレがいるじゃん」
「え?」
オレは胸を張って言う。
どんなに荒唐無稽で根拠がなかろうが、自信満々で言い続ける。
「トレセン学園史上最年少でトレーナーになった天才がついてるんだぞ。無敵の天才ウマ娘の姉に史上最年少の天才トレーナーの弟がタッグを組んでるんだ。負けるはずがない」
「……もし負けたら?」
「勝つまでやろう。何回負けようが、戦うことを諦めない限り敗北じゃない」
「…………じゃあ、死ぬまで勝てなかったら?」
イオねぇが泣きそうな顔でオレを見つめる。
「そしたら…………笑おう」
「……はぁ?」
オレの言葉に、ポカンとした顔をするイオねぇ。
「チェッて言ってさ。あーあ、結局最後まで勝てなかったねって言って、二人で笑いながら一緒に逝こう」
「…………」
「もしその時が来たとしても、少なくともオレだけはイオねぇの隣りにいるからさ」
「…………プッ。あはははは! なんだよそれー!」
腹を抱えて笑い続けるイオねぇ。
やがて、笑いが収まる。
「……そっか。ボクが無敵の帝王じゃなかったとしても、すごくなかったとしても、アスカは最後までボクの隣にいてくれるんだ」
「当然。姉弟だろ」
「……よーし、燃えてきたー! 打倒カイチョー! がんばるぞ、おー!」
完全に不安を払拭できたとは思わない。
それでも、イオねぇはさっきまでよりはずっといい顔をしていた。
「なんか安心したらお腹空いてきたー! 夜何食べよっか?」
「そだね……どーすっか」
二人で『うーん……』と唸り合う。
そしてイオねぇがポンッと手を叩く。
「あ、じゃあさ、二人で食べたいものを言い合いっこしない? それでどっちかにしよう!」
「いいね、そうしよう。ならオレは決まったな」
「ボクも決まってるよ! よーし、じゃあ、せーの……!」
イオねぇとオレは同時に声を上げる。
それは──
「イオねぇの作ったご飯!」「アスカの作ったご飯!」
「「…………」」
二人で顔を見合わせる。
「「あはははは!!」」
そして笑い合う。
以心伝心というか、こういうところは姉弟なんだなーって気がする。
「よし、じゃあ一緒に作ろうか」
「ふっふっふ、このテイオーお姉ちゃん様の美食に驚くなよー?」
「お、言うじゃん。ならオレの男飯も満更じゃないってことを思い知らせてやろう!」
「見せてもらおーか、アスカの料理の腕前とやらをー!」
「うっし、じゃあここじゃなくて商店街で買おうか、安くて美味しいし」
「そうだね!」
そしてイオねぇとオレは二人で手を繋ぎ、道を歩いていく。
帝王と皇帝。その勝負の行方がどうなるのか、その結果どうなるのか、誰にもわからない。
それでも、オレはイオねぇといつまでも、どこまでも一緒に夢を駆け続ける。
死がふたりを分かつまで。