【完結】もしもウマ娘がブラコンお姉ちゃんだったら最高だよね杯 作:藤原ロングウェイ
全くネタが出なくて困り果ててゴルえもんに泣きついたところ、ゴルシ姉弟がガチで一晩でやってくれました。
やはりゴルシ……! ゴルシは全てを解決する……!!
「トレーナーさん、もうすぐクリスマスですね。貴方さえよければ、その日にお時間をいただきたいのですが……」
右にいるエイシンフラッシュが恥ずかしそうに微笑む。
うーん、キレイだ。お淑やかの中にも芯がまっすぐな感じが見て取れるのがいいね。
「お兄様、あのね、ライスね、お兄様のためにケーキを焼くから一緒に食べてほしいな」
左にいるライスシャワーも照れながら、けれど嬉しそうに話しかける。
いやー、かわいい。控えめで華奢な感じが守ってあげたくなる。
「ああ、素晴らしきかな、ウマ娘」
俺は
……え? ああ、俺の担当の話じゃないよ。
(3mほど離れた)右にいるエイシンフラッシュと(5mほど離れた)左にいるライスシャワーの専属トレーナーとの心温まる会話をきいてただけだから。
え? 俺の担当ウマ娘? それはね……
「Yo!Yo!あたしの名前は最強ゴルシ! こんなナリでもやるときゃやるし! 我らが星を侵略しにきた火星人ども半殺し! でも戦い終われば皆仲良し!」
コレ、ムーンウォークしながらわけのわからないラップを軽快に口ずさんでるのがうちの
侵略してきた上に返り討ちで半殺しにした満身創痍の異星人と仲良くやれる自信ないよ俺。
「はぁ……」
どうもこんにちは。アスカです。
『お前の姉なんだから弟として責任もって面倒を見ろ』とか意味不明な理由で我が姉、ゴールドシップの担当トレーナーになった者です。
ハハッ、笑えよ……
いや、別にゴルねぇのこと嫌いなわけじゃないよ? むしろ好きだよ?
でもね、俺は世界の変革を求めてトレセン学園に来てトレーナーになったのよ。
俺の世界ではウマ娘=ゴルねぇだった。
そんな俺が『いや、ウマ娘はゴルねぇみたいなクレイジーなやつばかりじゃない、トレセン学園にいけばきっと可愛くて穏やかで気が利いてまともなウマ娘だっているはず……!』という希望をもったとしても仕方ないよね。
まぁ結果はご覧の通り、姉のトレーナーになってしまったわけですが。
「なんだぁ? いきなりため息つきやがって。病気か?」
「なんでもないよ」
「……へいへーい! ゴルねぇちゃんラジオの時間だ! この番組では弟のリクエストを待ってるぜ! 素晴らしい愛のエピソードと一緒にメールしてくれよな!」
しねーよ。
「おっと、ここでメールが入ったぞ。ラジオネームは【恋するおとぴっぴ】!『なぜ姉を好きになると心が切ないのですか?』?」
知らねーよ。
「それは心臓がお前に忙しなく蹴りをかましてるからだな! 単純に考えればいいのさ! つまり……ダラララララララ、ジャン!」
ドラムロールを口ずさみながら俺の周囲をムーンウォークし続けるゴルねぇ。
器用だなー。
「結論として心不全の可能性が極めて高いですね。早急に病院にいくことをオススメします」
「いきなり素に戻るな!」
「アヒャヒャヒャヒャ!」
俺のツッコミに大爆笑するゴルねぇ。
DJ→真顔→爆笑の温度差がすっごい。テンションジェットコースターかよ。
「んで? どうしたん?」
「いや、他のトレーナーたちの担当ウマ娘は普通にかわいくていいなと思ってね……」
「んぁ? ゴルねぇちゃんがかわいくないとでも?」
あーん?と因縁つける感じで迫ってくるゴルねぇ。
その顔はかわいくないな……
「ゴルねぇはかわいいけど普通ではないでしょ」
「確かに」
真顔で頷くゴルねぇ。
何を他人事みたいな顔しとんねん。あんたのことやで。
「なるほどな。それでフラッシュとライスを見てたわけか」
「うちのお姉様にもあれくらい素直な可憐で清楚なかわいらしさがあったらなぁーと思ってた次第ですよ、弟は。まっ、無理な相談だけどなー」
「そうだな」
真顔で頷くゴルねぇ。
だからあんたのことだっつーの。
『無理な相談だけどなー』の返事に『そうだな』の即答はないだろ、ひでぇわ。
「弟よ、それはアレだ。『隣の芝は走りやすそうに見える』ってやつだ」
「えぇーそうかぁー?」
「だって今話題に出たフラッシュとか懐にレイピア隠し持ってる女だぞ?」
「むっ」
「ライスなんか隠し持つどころか普通にナイフぶら下げてんだぞ? あいつら普通か?」
「むむっ」
確かにそう言われると……
「あとはグラスも薙刀振り回してるし、タイキなんか実弾か模擬弾か知らんけどピストルバンバン撃ちまくってるぜ? オグリはなんか光りだすし、ブライアンは殴って地面割り出すし、例を上げればキリがねーよ。トレセンのウマ娘なんてやべーやつばっかだぞ」
一つ一つ指折りしながら説明するゴルねぇ。
そう言われると……俺が想像する『まともなウマ娘』ってどれだけいるんだろうか。
「それに比べてゴルねぇちゃんよ。そんなやべーことしてねぇだろ? 周囲が普通で自分たちだけおかしいなんて脳の錯覚なんだよ、錯覚」
「なるほど、あんたほどの実力者がそう言うなら……って、ゴルねぇもたまに錨振り回してんじゃんか!」
「こまけぇこたぁいいんだよ!」
大きく手を降るゴルねぇ。
全然細かくねぇよ……
あっぶねぇ、あやうく騙されるところだったわ。
「全く、いちいちそんなこまけぇこと気にしてっからハゲんだよ」
「ハゲてねぇわ」
「ああ、悪い。ヅラだったな」
「ヅラでもねぇわ」
「え、いつ植毛したの?」
「お前マジでいいかげんにしろよぶっ飛ばすぞ」
俺とゴルねぇはお互いにアンアン言いながらガンつけ合う。
「はぁー? ぶっ飛ばす? 誰を、誰がぁ?」
「俺が、【黄金の不沈艦】ゴールドシップをだよコノヤロー」
「おもしれぇ、やれるもんならやってみ──」
「黄金神拳奥義、雷神掌!」
「ぎゃぁぁぁ!」
脛を抑えてぴょんぴょん飛び跳ねるゴルねぇ。
説明しよう! 黄金神拳とは我が家に伝わる伝説の格闘術である。
そして奥義、雷神掌は絶妙な力加減で素早く弁慶の泣き所に水平チョップを食らわす荒業である。
全力でやるとマジケンカになるので注意しよう!
「マジでやりやがったな! よかろう、弟よ。キサマに身の程を思い知らせてやるわ! 姉より優れた弟など存在しねぇってことをな! アタシの名を言ってみろぉ!」
「黄金神拳は一子相伝。伝承者は二人もいらないってことを教えてやろう……」
ヤツの構えは捨て身の構え。
こちらも死を覚悟せねばなるまい……!
お互いに変なポーズを取りながら間合いを計っていると……
「またやってるよあの二人……」
「仲良しだよねー」
道歩くウマ娘ちゃんたちからクスクス笑われながら、そんな言葉が聞こえる。
「変態のゴルシとトレーナーだからねぇ」
「ほんと
「!?」
その言葉に衝撃が走る。
な、なんだと……? 俺がゴルねぇとそっくり、だと……? そんなまさか……
今まで『{変態のゴルシ}とトレーナー』と言われていると思っていた。
もしや『変態の{ゴルシとトレーナー}』という意味だったのか……?
「嘘だ……そんな……俺が……やつと同じ……」
「どうしたブツブツと。闘技!神砂嵐の準備か?」
嘘だっ! 俺がこんなのと同じ評価なんておかしい!
アンケートをとるしか!と思い、あたりを見回す。
お、ちょうどいいカモがいるじゃないか!
「おーい、そこのウマドルー!」
「ん? 私?」
「そうそう! ウマドルオーラを隠しきれてないファル子ちゃん!」
「いやー気をつけてたんだけど、隠しきれなかったかー☆」
キャハッ!みたいなポーズを取るファル子。
扱いやすくて助かるぜ。
「そんなものすごいオーラをバリバリ垂れ流すファル子に聞きたいことがあってさー」
「なになに? なんでも聞いて☆」
「もしかしてだけど──」
「もしかしてだけど〜!」
ゴルねぇから合いの手が入る。
「……もしかしてだけど〜(♪)」
「もしかしてだけど〜!」
「俺ってゴルねぇ並のヤバイやつに見えてるんじゃないの〜?(♪)」
「え、うん」
即答! しかも真顔!
「なんでやー! なんでやファル子ぉ!」
「な、なんでって言われても……見たままとしか……」
「ウマ娘のために公園で一人『ぴょいっとハレルヤ!』を歌って踊りながら滑り台まで滑って練習してる、トレーナーの鏡であるこの俺のどこがヤバいというのかー!」
「いや、そういうとこでしょ……じゃあ失礼するね☆」
軽く引き気味のファル子が走り去っていく。
ちっ、まんまるファル子じゃ当てにならん。
もっと素直でマトモなウマ娘じゃないと……
「おーいアスカー! このゴルねぇちゃんがひと肌脱いで、良い相談相手見つけてきたぜぇ!」
ゴルねぇが連れてきたのは……
「貴様ら、朝っぱらから何をしている」
「お、お前はトレセン新選組副長!?」
「意味がわからん」
そこに立っていたのは【鬼の副会長】ことエアグルーヴだった。
こえーんだよなーこいつ。
この前なんかウマ娘ちゃんにゴルねぇの奇行を止めてくれって言われて頑張ったけど止まらなくて。
最終的にエアグルーヴが来て収まったんだけど、なぜかゴルねぇだけでなく俺にも反省文書けとか言い出してさ。
遠回しに『なんで私がそんなことをしなければならないのですか? 君に何の権限があってそんなことを言うのですか? 私トレーナーなんですけど?』みたいなことを言ったのよ。
そしたらエアグルーヴの返事。なんて言ったと思う?
『は?』
一言だったからね。しかも豚を見る目だったわ。
結局ごめんなさいして反省文書いたよね。
「ちょっとタイムね」
エアグルーヴに一言断り、ゴルねぇを引っ張りだす。
「おいゴルねぇ、何しとんねん。なんで俺らの天敵連れてきとんねん」
「いや、なんかこっちに向かって走ってきてたから」
うそー、じゃあ確実に俺らになんか用じゃーん。こーわーいー。
……しょうがない、用件を聞くか。
もしかしたら俺とは無関係かもしれんし。ゴルねぇは知らんが。
「麿に何用でおじゃろうか?」
「学生から『朝っぱらから奇行を繰り返す姉弟がいる』という通報を受けてな」
「わぉ、そりゃ大変だ! ならそれの取締りヨロシャス! じゃあ俺らはこれで……」
「待て」
「「ぐぇー!」」
さっさと立ち去ろうとしたが襟首を掴まれ阻止される。
「ゴルシ、アスカトレーナー。放課後生徒会室へ来い」
「なんで俺が!?」「なんであたしが!?」
「「横暴だー!」」
俺とゴルねぇが抗議する。
俺達姉弟は権力に屈したりしないぞ!
「ゴルシは寮生たちから『寮内に備え付けてあったお茶の中身が全て青汁にすり替えられていた』という苦情があった」
「うわ、そりゃねぇべよゴルねぇ。さすがの俺も引いたわ。さっさと出頭しろ。罪を償え」
「そんな……ううっ、あたしは皆の健康のためを思って泣く泣く青汁を──」
顔を覆って泣き出すゴルねぇ。
「アスカの給与から天引きでいっぱい用意したのに……」
「はぁ!? おまっ、マジふざけんなよ!?」
泣きたいのは俺の方なんですけど!?
「どうでもいい。そしてアスカトレーナーには『公園で独り歌って踊って滑り台を滑っている不審者』の容疑がかかっている」
エアグルーヴはそんなことお構いなしに話を続ける。
こいつ、鉄の女すぎだろ。
あとどうでもよくねーよ。俺の給与の話だよ。こちとら生活かかってんだよ。
「コイツです! その不審者はうちの弟です!」
「てめぇ! 売りやがったな!?」
「へっへーん! バーカ! あたし一人で逝くかよ! 死なばもろともだぜ!」
「クソがぁー!」
ゴルねぇと胸ぐらをつかみ合う。
「黙れ」
「「はい……」」
が、エアグルーヴの一言でションボリゴルシ姉弟になる。
ううっ、こわいよぉ。
「放課後、忘れずにな」
そして口パクで『死にたくなければな』と付け加え去っていくエアグルーヴ。
「「……あぁーめんどくせぇー」」
こんな時でも仲良く言葉が被る俺たち仲良し姉弟なのだった。
その後、放課後に生徒会室で第564回ダジャレ王決定戦が行われ、やる気がだだ下がりする未来を、エアグルーヴはまだ知らない。
ゴルシ姉弟を書く時は毎回必ず深夜。