【完結】もしもウマ娘がブラコンお姉ちゃんだったら最高だよね杯   作:藤原ロングウェイ

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感想、ここすきありがとうございます!
多くの感想をいただきまして、やはりマルゼンお姉ちゃんはつよいとおもいました(小並感)

前回の感想でボブから『ブラコン度Aにしては平常運転すぎるのでは?』と訝しがられたので、藤原の脳内にのみ存在していた存在しない記憶を書きあげることにしました。
結果、ヤマもオチもなくただイチャイチャするだけの回になりました。後悔はない。
でも感想などいただけたら嬉しいなって思う今日この頃。

チヨちゃん実装おめでとう!


マルゼンスキー(ブラコン度:A)と弟の日常の場合

「あー寒い寒い」

 

 俺は朝から寒空の中、マルねぇの住んでいる高級マンションまで足を運んでいた。

 愛しいお姉さまから『せっかくオフなんだし、たまには姉弟水入らずでゆっくり過ごしましょ♪』と言われたらそりゃね。しゃーなしやね。

 マルねぇの部屋の前に着いたのでインターホンを押す。

 

 ピンポーン♪

 

『はーい、どちらさまかしらー?』

「オトオト。弟だよ。ちょっとアレがうんたらかんたらでにんじんが必要になっちゃってさ。500本くらい」

『むっ、これは今流行りのオトオト詐欺ね! うちに弟はいません! ガチャ!』

 

 インターホンからの音声が途切れる。

 俺の意味不明なネタにちゃんと付き合ってくれて、口で電話を切る音まで入れてくれるマルねぇは優しい。

 まぁいちいちチャイムを鳴らさなくても合鍵は持っているので、鍵を開けて中に入る。

 

「お邪魔するよー」

「邪魔するなら帰って〜♪」

 

 奥のリビングからマルねぇの声が。

 むっ、タマモクロス的切り返し。マルねぇも成長(?)したな。

 いや、でもあのギャグ自体けっこう古くからあるから成長してないのか?

 まぁなんでもいいか。

 

「あいよー」

 

 なので返事をしてからその場で踵を返し、玄関に向かう。

 そして靴を履き、ドアを開けて外に出る。

 ……それから待つこと十数秒。

 ドタドタドタ!と音が聞こえ、バン!と乱暴にドアが開けられる。

 

「なんで帰っちゃうの!?」

 

 そこには慌てた顔のマルねぇが。

 うちのお姉さまは慌てた顔もまた美しい。

 

「いや、邪魔するなら帰ってって言われたし」

「それはタマちゃんの持ちネタでしょー!? もーお姉ちゃんチョバチョブ!」

 

 両手を腰に当ててぷんぷんしているマルねぇ。

 古いよ。それわかる人、今どんだけいるんだろ……

 ちなみにチョバチョブとは『超バッド超ブルー』の略語であり『最悪な事態にとても憂鬱!』といった意味になる。

 なお、これを今も使用する哺乳類は現在マルねぇ以外に確認されていない。

 

「ワッハッハ。では、ただいまー」

「……ふふ、おかえりー」

 

 二人で室内に入り、リビングにたどり着く。

 

「あー寒い寒い」

 

 すると、すぐに目の前にあるモノに潜り込むマルねぇ。

 

「……はぁ」

「なぁに、いきなりため息なんて。幸せが逃げちゃうわよー?」

「いや、この前聞こえたマルねぇを慕ってる後輩ウマ娘たちの話が思い出されてね……」

 

 俺は目を閉じ、先日道すがらに聞いた会話を思いだす。

 

『マルゼン先輩ってどんなお部屋に住んでるのかな?』

『きっと真っ白なお部屋にキレイなシャンデリアとかあるんじゃない!?』

『きっとそうだよー! そこにアンティーク調の素敵なテーブルとイスが置いてあってさ!』

『そこでお洒落な部屋着でワインを飲みながら高級スイーツとか食べてたり!』

『キャー! マルゼン先輩素敵ー! めっちゃオシャレー!』

 

 そうだよね、学園だと速くてかっこよくて優しくて頼りになる素敵な先輩だものね。

 夢、持っちゃうよね。

 

「それが……コレだもんなぁ」

「べ、別にうちの中だしいいじゃない。動きやすいし楽だもの!」

 

 マルねぇが着てるのは使い古しのジャージ(しかもなぜか俺のやつ)で、その上に赤いはんてんを纏っている。

 そして、使い古されたこたつ! 酷使されたせいでちょっと薄くなった座布団! 緑色がやや薄くなってるお茶! 硬そうなせんべい! 美味しそうなみかん!

 セブンアウト! ゲームセット!

 

「まぁまぁ、せっかく来たんだから座って座って。お姉ちゃんの隣座って」

「狭いよ。ギューギュー詰めだよそこじゃ」

 

 こたつをめくって自分の隣に誘導しようとするマルねぇを横目に、とりあえずマルねぇの左側に腰を下ろしてこたつに入る。暖かい。

 

「別にいいじゃない、くっついてた方が暖かいでしょ?」

「俺も年頃の男の子なんでね」

「あら、お姉ちゃんの隣だと恥ずかしいのー? もー、あっくんてばシスコンなんだからー♪」

「はいはい」

 

 まぁ事実なので否定はしませんがね。

 

「あ、あっくん。お姉ちゃんみかん食べたいなー」

「ん? ……どうぞどうぞ」

「なーんーでーよー! みかん取って! 剥いて! 食べさせて!」バンバン!

「子供かよ……自分でオナシャス」

 

 こたつをバンバン叩いていたマルねぇがサッと両手をこたつの中に入れる。

 

「お姉ちゃんの手はこたつに入っているので忙しくて出られませーん!」

「じゃあ我慢しましょうねー」

「やーだー! お姉ちゃんみかん食べたーい!」

 

 こたつに入りながら体を左右に揺らすマルねぇ。

『いつも素敵なマルゼンスキー先輩』が俺と二人きりだといつもこれだもんなぁ。駄々っ子かよ。

 まぁ俺だけ特別ということで密かに嬉しくはあるんだが。

 

「しゃーないなー」

「フー!」

 

 こたつに入ったまま、ジュリアナ的にクネクネ動き出すマルねぇ。

 せんべいを扇子に見立てて頭上でクルクル回さないでください。笑ってしまいます。

 とりあえずみかんに手を伸ばし丁寧に皮を剥く。

 

「まだかなーまだかなー」

「もうちょい待ちかねフクキタル」

「ププッ! 何それ、ちょっと面白いわね。お姉ちゃんも使っていい?」

 

 目を輝かせるマルねぇ。

 マルねぇが学園でこれ使ってスベったら間接的に俺がスベったことになるので出来ればやめて頂きたいところではある。

 

「特許取ってるから使用料がかかりますよ……よし、完璧」

「ありがとー! あーん」

 

 みかんの皮と白い筋を剥き終えた俺に向かって口を開けるマルねぇ。

 ……ふむ。少しマルねぇで遊ぶか。

 左手に持っていたみかんを右手で一房摘み、そのまま自分で食べる。

 

「あっ!」

「みかんうめぇ〜」

「あっくん!? それはお姉ちゃんのために剥いたみかんでしょ!?」

「久しぶりに食べるみかん、美味し」

「美味しじゃなくてー!」

 

 両手を前に出しブンブン振るマルねぇ。

 もういっちょいきますか!

 

「もう一個食べよーかなー」

「むぅー!」

 

 マルねぇは唸るとこっちに身を乗り出し──

 

「パクッ!」

「あっ」

 

 俺が食べようと持っていたみかんの一房をパクリと食べてしまった。俺の指ごと。

 

「モグモグ……全く、あっくんは私には意地悪なんだから」

「…………」

 

 なんだろ、俺の指に触れたマルねぇの口内の感触にちょっとドキドキしてしまう自分が悲しい。

 シスコンとは業の深い生物ナリ……

 

「……あら? あっくん、なんか顔赤いけど大丈夫? 風邪でも引いちゃった?」

「あー気にしなくていいよ。発作みたいなもんだから」

「???」

 

 よくわかってない顔をするマルねぇ。わからなくてイインダヨー。

 話題を……話題を変えるんだ……!

 

「……そういえば、この部屋はけっこう綺麗にしてあるね」

「当たり前だのクラッカーよ。リビングは癒やしの空間だし、ごちゃごちゃしてたら滅入っちゃうでしょ? 綺麗だし暖かいし、電波もバリ3。チョベリグよ!」

「ふむ、善き哉善き哉」

 

 ドヤ顔のマルねぇ。

 しかし、弟の俺には感じ取れてしまった。

 その表情の中にほんの少しの『焦り』が混じっていることを。

 

「ちょっとお花摘みに」

「古風ねぇ」

 

 残念ながらマルねぇに古いとか言われたくないかな……

 トイレにいく……フリをしてある部屋のドアの前で止まる。

 

「マルねぇ、ここって空き部屋だったっけ?」

「えっ!? そ、そうね。なんの変哲もないただの空き部屋よ?」

「ふーん……」

 

 そこから立ち去ろうとすると、マルねぇが露骨にホッとした表情を見せる。

 ……クロだな。

 

「……うまぴょい警察だ! ガサ入れを行う!」

「あぁっ!?」

 

 いきなりドアをバンッ!と開ける。

 そこには……

 

「……で? この惨状は何かな?」

「えーっと……そのぉ……」

 

 ついこの間まで空き部屋だったそこは、多くの空きダンボール箱によって占拠されていた。

 

「空き部屋って言ったよね?」

「あ、空き部屋よ? 正確には空き(ダンボール箱を収納する専用)部屋! 合ってるでしょ?」

 

 エヘヘなんて笑いながら上目遣いのマルねぇ。

 これが普通の弟で魅了耐性(姉)を持っていなかったら目がハートマークになってメロメロになっていたことだろう。

 でも俺は鍛えられた弟だからね、なんとか我慢できるのだ。

 

「……なにかいうことは?」

「……いやーん、まいっちんぐ♪」

「ブッ!」

 

 あまりにもまいっちんぐポーズが似合いすぎていて、さすがの俺も吹いてしまった。

 深く不覚。

 

「キリキリ片付けますよ!」

「えー、今日はよくないかしら? 寒いし……」

「ダメです。思い立ったら吉日。それ以外は全部凶日です」

「えー、救いはないのですか~?」

「あげません!!」

 

 ガックリしているマルねぇ。

 放っておくと『天気が悪いから~』とか『風水的にちょっと~』とか言い出しかねんからな。

 俺の手が空いているうちにパッパとやってしまおう。

 

 

 

 それから約一時間。

 ダンボール箱を解体し、集めて、縛り……を繰り返し、なんとか片付いた。

 

「ん~、綺麗になったわね! ありがと、あっくん!」

「……もしかして、俺に掃除させるつもりで今日呼んだ?」

「お姉ちゃん、なんのことかよくわからないわ~?」

「全く……」

 

 俺の言葉にクスクスと笑っているマルねぇ。

 まぁマルねぇが悪戯したり我儘いったり甘えたりする相手は俺くらいだからな。

 普段からの見えない重圧がすごい分、マルねぇの心が軽くなるならこの程度のことは喜んでやるけどね。

 リビングに戻り、こたつに入る。

 

「じゃあお姉ちゃんからあっくんへ労いのギュー!」

 

 すると、マルねぇが後ろから抱きしめてくる。

 俗に言うあすなろ抱きってやつだ。言わない?

 

「……いつもありがとう」

 

 そして、マルねぇがボソッと言葉を零す。

 

「……さて、なんのことだか?」

「色々、よ」

「色々と言っても、全部俺が好きでやってることだからね。お礼を言われるようなことは特に」

「…………そういうのも含めて、ありがとう」

 

 マルねぇに抱きしめられたまま、二人共無言になる。

 数分経って、ようやくマルねぇが俺を離し立ち上がる。

 

「よーし、じゃあお昼はお姉ちゃんが頑張って作っちゃおうかなー?」

「お、マルねぇのご飯か。いいね」

「お姉ちゃん特製、ジャポネーゼ・アッシ・パルマンティエを振る舞っちゃう! ほっぺを落としちゃダメよ~?」

 

 指をチッチッと振るマルねぇ。

 ジャポネーゼは日本語にすると『日本風』。

 アッシ・パルマンティエは『じゃがいもとひき肉を炒めた料理』。

 つまり……

 

「結論として、肉じゃがだよねそれ」

「ふぁいなるあんさー!?」

 

 ビシッ!と俺を指差すマルねぇ。

 ファイナルもなにもそれ以外ないじゃん。

 

「はいはい、ふぁいあんふぁいあん」

「………………………………」

 

 目を閉じ、静かになるマルねぇ。

 すげぇ溜めるな。100万円の時くらい溜めてる。

 

「……正解! 優勝賞品はお姉ちゃんの愛情たっぷり肉じゃがー!」

「やっぱ肉じゃがじゃん」

 

 いや、まぁマルねぇの肉じゃがはめっちゃ美味いからいいんだけどね。

 他人に食べさせる時はオシャレな料理を作ることが多いが、俺にとっては肉じゃがといえばマルねぇってくらい親近感と親和性がある。

 

「うーん、他の料理がいいんならそれ作るけど。あっくん、肉じゃが好きでしょ?」

「うん。でもマルねぇの作るやつはなんでも大好きだけどね」

「!? もー、あっくんのシスコンー!」

 

 すごい勢いで今度は前から抱きつかれる。

 そしてめっちゃ胸当たってるめっちゃ胸当たってる。

 さっきはいいシーンだったから何も感じなかったけど、何この柔らかさ。やばくない?

 

「あっくん、大丈夫? なんか変な顔してるけど」

「大丈夫、大丈夫じゃないけど大丈夫だから」

「どういうこと!?」

 

 俺の言葉に衝撃を受けるマルねぇ。

 ああ、全て遠き理想郷(アヴァロン)はここにあったのですね……

 俺は幸せの中で目を閉じたのだった。

 




完璧超人のお姉ちゃんが弟といる時だけは意地悪して我儘言って甘えるダメ姉になる……こういうのが大好き星人です。
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