【完結】もしもウマ娘がブラコンお姉ちゃんだったら最高だよね杯 作:藤原ロングウェイ
活動報告のウマ娘姉化計画予定表に多分書けないと書いたはずのスーパークリーク(姉)編です。
ママではなくダダ甘お姉ちゃんになっておりますが、こういうのはいかがでしょう……?
はじめして。
今年からトレセン学園でトレーナーをすることになったアスカと申します。
突然ですが、皆さんは生き地獄って体験したことありますか?
私はあります。
というより、現在進行系で味わっています。
実は今、学園で臨時の講師をしております。
座学の講師の一人が有給で海外へ、一人が生牡蠣に当たって緊急搬送。
一時的に座学の講師の人手が足りなくなったため、臨時の講師役を新人トレーナーである私にお願いという形で命令が下りました。
あくまでお願いです。なお、絶対に断れない模様。
そして現在授業中です。
私は至極真面目に教えているのですが、周囲を見回すと……
「プッ……」
「クスクス……」
「ニヤニヤ……」
ウマ娘たちからめっちゃ笑われてます。
めっちゃニヤニヤされてます。ちくしょう。
すごいナメられてる感じですが、甘んじて受け入れるしかないのです。
なぜなら……
「あーくん頑張れー♡」
教室の後ろで俺の担当ウマ娘であり姉でもあるスーパークリーク、通称リクねぇがめっちゃ応援しているからです!
「……えー、このようにウマ娘の走り方には個々人で得意不得意、好き嫌いがあり、この走り方をすれば必ず速くなるということはないのです」
「わぁー、すごい! よく出来ました♡」パチパチパチパチ!
姉から称賛の言葉と拍手が送られる。教室の最後方から。
そして授業を受けているウマ娘のそのほとんどが俯きめっちゃぷるぷるしている。
まぁそりゃそうだよね。
超難関のトレセン学園のトレーナーに合格したエリートなはずの男が姉同伴の逆授業参観状態で偉そうに授業してるんだもんね!
しかも俺が話すごとにリクねぇが『あーくんかっこいい♡』とか『さすがあーくん!』とか褒めちぎっているのだ。
下手なコント以外の何者でもないだろう。
救いはないのですか……?
キーンコーンカーンコーン
ああ、やっと授業が終わった……
「はぁ……えー、今日の授業はこれで終わりです。予習復習を忘れずに」
「起立! 礼!」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
「はい、みんなもお疲れ様でした……ほんと申し訳ない」
俺の言葉にあはははは! と笑い声が起きる。
うう、ウマ娘はいい子ばっかりだよ。
これで『キッモ』とか『ヒクわ……』とか『氏ねよ』とか言われたらマジで登校拒否してた可能性がある。
「あーくん♡ お疲れ様♡」
「……リクねぇもお疲れ様。無理しなくていいよ? ずっと後ろに立ってるの大変でしょ」
「かっこいいあーくんの姿が見れるんだもの。大変なことなんてないわ♡」
キラキラ光り輝く笑顔。
「……お姉ちゃん、迷惑かしら?」
リクねぇがうるうるした瞳で悲しそうに呟く。
そしてその様子を固唾と見守るウマ娘たち。
「………………………………そんなことないよ」
「「「「「アッハッハッハッハ!」」」」」
俺の言葉を聞いたウマ娘たちから『甘すぎぃ!』とか『やっぱなー』とか『アスカ講師、本日も敗北ぅ!』とか言われながら爆笑される。
いや、勝てんでしょうアレには……
あの状態のリクねぇにきっぱり迷惑と言えるやつは人の心がないやつに違いない。
「うふふ、授業も終わったし、お姉ちゃんと一緒に食堂にいきましょうね~。あ、迷子にならないように手を繋いでいきましょう♡」
「あははは……」
ならねーよ、とは言えない俺はリクねぇと手を繋いで廊下を歩く。
しかも指と指を絡め合わせた、いわゆる恋人繋ぎである。恥ずか死不可避。
「うわぁ……」
「仲がよろしいことで……」
「ヤバスギでしょ……」
すれ違うウマ娘たちからの心無い言葉が俺のガラスのハートを傷つける。
「いいなぁ……」
「仰げば尊死……」
「うまだっち(意味深)……」
「最後のやつ! ちげぇから! 言葉に気をつけろコノヤロー! 俺をクビにしたいのかぁ!!」
ただえさえ理事長やたづなさんから『風紀によろしくないからできるだけ自重するように』って注意されてんだから……
まぁ将来有望で優秀なウマ娘であるリクねぇから直接『弟を甘やかすのは姉の義務であり常識。それをダメだというならあーくんと一緒に地方に移籍します』とまで宣言されてしまっては誰もそれ以上の文句はつけられんか。
それにただのトレーナーと担当ウマ娘ならうまぴょい(意味深)も疑われて仕方がないところだが、うちは血統書付きの由緒正しき姉弟だからな。
評価としては『姉弟仲ヤバすぎるけどギリギリセーフとギリギリアウトの間』と言われている。
セーフなのかアウトなのかはわからない。
食堂に着く。
「あーくん、ちょっとここに座って待っててね。お姉ちゃんがごはん持ってきてあげるから。知らない人に声をかけられてもついていっちゃダメよ?」
リクねぇはそう言うと俺の返事も待たずに昼食を受け取りにいってしまう。
そしてA定食かB定食かを選ぶ権利は俺にはない。
リクねぇが『あーくんの体に良さそう』と思ったものを持ってくるのだ。
おかげで基本野菜マシマシ定食が選ばれ、健康的男子である俺には少し物足りないのだが、あの笑顔を見ると美味しく頂くことしかできない。
一回リクねぇに隠れて背脂ガッツリ系カップラーメン食ってるのを見つかった時は大変だったからなぁ……(遠い目)
「はい、お待たせー。いい子にして待ってたかしら? そうよね、あーくんはいい子だから大丈夫よね。よくできました♡」
ただ座って待ってただけなのに褒められて頭を撫でられる俺。
……俺? 俺とは一体……? 世界とは……宇宙とは……真理とは……?
「あーくん、はいあーん♡」
「あーん」
もう何も考えず、ただただ無心にアスカパックイーンとなり昼食を完食する。あーんで。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした。いっぱい食べられたね~いい子いい子~」フキフキ
褒めつつ俺の口周りを拭くリクねぇ。
「はい、お茶どうぞ~」
「ありがとう」
ずずず……とお茶をいただく。美味しい。
周囲のウマ娘たちの視線と耳がピクピク動いてるのがなければもっと美味しいんだろうなぁ……
「……あーくん、おねえちゃんね、考えたの」
「!? な、なにを……?」
俺の第六感が『ヘビィなやつが来るぜ……気をつけろ!』と告げている。
さすが俺の第六感、素晴らしいお告げだ。
唯一にして最大の問題は、気をつけたところで回避しようがないということだが……!
「あーくん、トレーナーも講師も頑張ってるでしょう? 疲れてるんじゃないかなって思って」
「あ、いや、まぁ疲れてないと言えば嘘になるけど……」
「でしょう!? それでね、それでね、お姉ちゃん考えたの!」
ゴソゴソとなにかを取り出すリクねぇ。
「これを使ったら疲れも取れるんじゃないかなって♡」
「「「「「……は?」」」」」
俺含め、聞き耳を立てていたウマ娘たち全員の声が被る。
リクねぇが持っていたものは
「待って待って待って待って」
目を閉じて深呼吸をする。
すぅー、はぁー……よし。チラッ。
ああ、見違いでも幻でも蜃気楼でもない……
どっからどう見ても、
「これを使ってお姉ちゃんに甘えればきっともっと癒やされるんじゃないかなって♡」
救いは、救いはないのですかぁぁぁ!
「今でも十分リクねぇに癒やされてるよ!! 大丈夫です!!」
「でも……」
「こ、これを使ってるのが理事長にバレたら地方に飛ばされちゃうかも!? リクねぇは俺がトレセン学園をクビになってもいいの!?」
「そ、そうかしら……そうよね。ごめんね、変なこと言って……」
リクねぇが俯き項垂れている。
うがぁー! めっちゃ心が痛いぃぃぃ!
………………はっ!? そうだ!!
「タマさん! タマモクロスに使ってあげたらどうかなたくさんの弟妹たちの長女として気を張ってると思うんだそんなタマさんだからこそお姉ちゃん同士、つまりリクねぇが癒やしてあげるべきでは!?!?」
「っ!? そう、そうよね! タマちゃんもあんなにちっちゃいのに大変そうだものね! あーくんはやっぱり優しいわ♡」
「いやーそれほどでも!!」
周囲のウマ娘たちは『あいつ、タマモクロス売りやがった!?』という顔をしている。
どけ!! 俺は弟ちゃんだぞ!!
こうして人生最大の危機を乗り切った俺なのだった。
なお、この数日後、おしゃぶりをしてガラガラを持ち血涙を流したタマさんに襲撃されドツキ回されたのは言うまでもない。
トレーナーでなければ即死だった……
モブ娘A「アスカトレーナーって大人の男性って感じでかっこい──」
つ おしゃぶりとガラガラ
モブ娘A「──気のせいだったわ(真顔)」
今回の文章に既視感を覚えた方は古参の姉スキーだと思うんだぞっっっっっっっ!