羅刹の希求   作:蒼林檎

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第十ニ話『班活動』

カカシから逃げた後、まず埋まっているサスケを見つけて敢えて放置し、サクラを探してサスケの居場所で釣り、罠にかかっているナルトに美しすぎる土下座を披露し、第七班班員はサスケの埋まっている場所に集合した。

 

 

「ーーと、言う事なんだけど」

 

 

 地面に埋められたサスケをサクラと共に救助しながら、スズ取り演習を協力してやろうと申し出ると『何故』と問われた。 このスズ取り演習は仲間同士の落とし合いなのだから当然の疑問だろう。

 ラセツは班活動の目的に沿わない上にパワーバランスがあまりにも偏ったこのスズ取り演習への疑問から話す。

 

 

「……改めて考えると確かにおかしいわね。本来新人の下忍が上忍に勝つなんて無理な話よ。個人なら尚更」

 

「でしょ!絶対無理!」

 

「…まさか、受からせる気ないんじゃねーの…??」

 

「それ思ったけど、カカシ先生はそんなことする人じゃない。目的がちゃんとあるはず」

 

 

 ラセツの説明に3人もこのスズ取り演習に疑問を持ち、首を捻り始める。 その光景にラセツは力なく苦微笑する。

 

 

「…でも、答えが出なくて…取り敢えずスズ取り演習を成功させようって思って協力を申し出たんだけど…」

 

 

 ラセツはこの疑問を持ってからずっと考えていた。このスズ取り演習の意味を。 忍は裏の裏を読むべし。修業をみてもらっている時に何度も言われたこの言葉。

 もしかしたら、否、確実にこの演習には裏がある事をラセツはほぼ確信しており、その裏を読むために必死に頭を捻らすが、ラセツの残念な頭は一滴も知恵を絞ってはくれなかった。

 しかし、それはラセツだったからであり、他がそうとは限らない。

 

 

「……協力…そうか、そう言うことか」

 

「サスケ?」

 

 

 ラセツの疑問と説明を聞いてから何か考える様にずっと黙り込んでいたサスケは閃いた様に小さく呟き、力強い黒い瞳を班員に向けた。

 

 

「協力…おそらくそれがこの演習の目的だ」

 

「どう言うことだってばよ?」

 

「いいか。ラセツが言った通り、この班システムは仲間と連携し、任務成功率及び生還率を上げる目的がある。その班活動の中で最も最重視されるのが《チームワーク》…つまり仲間同士の協力だ」

 

 

 大前提としてこれは理解していなければならないと、班活動の目的について話し、全員が班活動の目的について理解している事を確認した後、サスケは本題に入った。

 

 

「もし、こんな風に仲間割れをする状況に陥ったとしても、自分の利害に関係なく連携を優先して行えるか。それを試されているんじゃないのか」

 

「あぁ、なるほど!さすがサスケくん!!」

 

「スズ取りにした目的はダミーと言うより、個人能力を把握する為。……一石二鳥って訳か、なんとも合理的な試験だな」

 

 

 この矛盾だらけなサバイバル演習の表の皮を破り、裏の目的にたどり着く。 だというのに誰もがすぐに行動を移すことはなかった。

 

 

「…でも、これは推測に過ぎない。スズを取れなかったら落とす演習の可能性も捨てきれない」

 

 

 誰もがすぐに行動を移さなかった理由は、これはただの推測でたどり着いた結論であるかだ。 全員でいけばスズを取れる可能性が高いかもしれないが、同時にライバルである人間にチャンスを与える事にもなる。対して1人で挑めば連携よりも可能性は低くなるが、他に取られる可能性も低くなる。 これは賭けだ。

 誰もが厳しく表情を保ち、沈黙が生まれる。 そんな沈黙を破ったのは軽く手を挙げたラセツだった。

 

 

「…その場合はこの話の元を持ってきたラセツが責任持ってアカデミーに戻る。だから、安心して戦って」

 

 

 最初、その場合はスズが取れたら早い者勝ちにしようと提案するつもりだった。しかし、2択を選ばせる事になってしまったのも、班員がリスクを負うことになってしまったのもラセツが原因であり、責任を取らなければと思っての行動だった。

 しかし、ラセツの言葉に賛同する声は一向にあがらなかった。

 

 

「なーに言ってんだってばよ。ラセツを1人になんかしねぇってば!」

 

 

 上がったのはラセツの言葉に対する否定であり、ラセツは紫紺の瞳を大きく見開く。 何故ならナルトは初めて会った時から『火影になる』と夢を掲げており、その最低条件は《忍》である。 その上、この演習に受からなければ、ナルトが2度も落ちた卒業試験をまた受けなければならない事は理解できているはずなのに。

 

 

「確かに早く忍にはなりてーけど、ラセツを踏み台にしてまで受かりたくねぇってばよ」

 

 

 忍になる道も完全に絶たれたわけではない、卒業試験はもう一度受ければ良いと、いつものように溌剌とした笑顔を向けた。

 

 

「…話を持ってきたのはお前だが、お前の話から連携の答えを出したのは俺だ。なら、オレにも責任を負う義務がある」

 

 

 ナルトに続き、サスケの言葉に更に驚く。

 サスケはこの第七班班員だけでなく、アカデミーの誰よりも忍になる事を望んでいたからだ。

 

 

「その代わり、落ちたら卒業試験まで毎日修行に付き合えよ。オレには足踏みしてる余裕なんてないんだからな」

 

 

 サスケは否定を許さないようにそっぽを向く。 すると今度はサクラが力強く笑いかけ、口を開いた。

 

 

「この演習に違和感があるって賛同したのは私よ。それにこれで落ちたら、仲間割れする様な演習は班活動の目的に反するって火影様に直談判してやるわ」

 

「サクラ強い」

 

「当たり前でしょ。サスケくんと離れるつもりなんてないわ」

 

 

 1番逞しいのは恋する乙女であるサクラだった。

 サクラはラセツの手を引きながら立ち上がり、続いてナルトとサスケも立ち上がる。

 

 

「…さ、そうと決まれば第七班みんなでスズを取って受かりに行くわよ!!」

 

「よっしゃーー!やってやるってばよ!!」

 

 

 受かれば良し、落ちれば火影に直談判の死角無し万全状態でカカシを探す。 

 そして、切り株の上に座り、愛読書を読むカカシの姿を見つけ、事前に話し合った作戦通り、東にラセツ、西にナルト、北にサスケ、南にサクラ、とカカシを囲むように各自気配を消して隠れる。

 作戦を開始しようとした直前、カカシは愛読書を閉じ、辺りを見回した。

 

 

「……来たな」

 

 

 カカシの視線は隠れている4人全員を捉えており、居場所はバレていると確信する。 仕掛けてくるかと警戒するが、カカシはその場から動く気配はなかった。

 

 

「……お前らに言いたいことがある」

 

 

 読めない表情に地を這うような低い声。 怒っているのだろうか。何かまずい事をしてしまったのだろうかと不安と恐怖が思考を駆け巡り、ラセツはごくりと唾を飲み込んだ。

 しかし、カカシの態度は一変し、満足と言わんばかりの笑みを浮かべた。

 

 

「お前ら……合格!」

 

「え?」

 

「は?」

 

「よっしゃーーー!!オレ忍者!忍者!!」

 

 

 カカシの合格宣言に、ナルトははしゃいで茂みから姿を現すが、他の班員は急展開についていけず、唖然としていた。

 頭の整理が少し終わった後に茂みや木の裏から各自姿を現し、カカシの前に集合する。

 

 

「……合格?」

 

 

 不安げに紫紺の瞳を揺らし、恐る恐る確認するように尋ね、カカシは軽く頭を縦に振った。

 

 

「あぁ、お前らはこの演習の真の目的に気づいたからな。」

 

「……仲間との連携…チームワークだな」

 

「そうだ。確かに忍者にとって卓越した個人技能は必要だが、班活動に置いて最も重要視されるのは『チームワーク』だ。……だからこの演習は自分の利害に関係なく、チームワークを優先できる者を選抜するのが目的だった」

 

 

 サバイバル演習の真の目的とラセツ達が推測していた答えが一致し、ラセツはひとつ安堵の息を吐いた。

 

 

「……あと、お前らが集まって話してたこと、全て聞かせてもらったよ。それでお前らが下忍になる資格があると判断した」

 

「えっ!先生あそこにいたのかよ!」

 

「あぁ、いたよ最初から」

 

「全然気づかなかったわ…」

 

「お前らに気づかれる忍に上忍が務まるわけないでしょーよ」

 

「それもそっか…」

 

「忍者は裏の裏を読むべし。忍者のルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。けどな、仲間を大切にしないやつはそれ以上のクズだ。ま、お前らを見る限りそれは大丈夫そうだ。……だが!」

 

 

 カカシは4人にぐうの音も出ないほどの正論の反省点を並べ始める。 カカシの口から溢れるように途切れる事なく出てくる反省点に4人は思わず身体を縮こませた。

 

 

「…と、まぁ。合格したとはいえ、言い出したらキリがないほどお前らには課題が多い。励めよ」

 

 

 そっぽを向いているサスケ以外、肩を落とし項垂れながら弱々しく返事をする。 しかし、カカシは部下となった4人に落ち込んでいる時間を与えてはくれない。 軽く手を叩き、注目を合図する。

 

 

「じゃ、晴れて下忍になったお前らに、今から忍びの世界というものを教えようか」

 

「忍びの世界?」

 

「そう、忍びの世界。……サスケ。ちょっと来い」

 

 

 渋々という様子だが素直に従い、カカシの手が届く距離まで足を進めると、カカシは目にも追えない速度でサスケを地面に押さえ込んだ。サスケの顔からは驚愕が表に出ており、逃れようとするも抜け出せない。

 必死に抵抗するサスケを押さえ込んだカカシは他3人に厳しい視線を送る。

 

 

「サクラ!ナルトとラセツを殺せ!さもないとサスケが死ぬぞ!」

 

「!!」

 

「と…こうなる。人質を取られた挙げ句、無理な2択を迫られ殺される。任務は命懸けの仕事ばかりだ。……これを見ろ」

 

 

 カカシはサスケを解放した後、空いた手で指した先は、多くの文字が刻まれた石だった。

 

 

「この石に刻んである無数の名前。これは全て里で英雄と呼ばれている忍者達だ」

 

「それそれそれそれーッ!!それいい!!オレもそこに名を刻むってことを今決めたーッ!!英雄!英雄!犬死なんてするかってばよ!!」

 

「やめて」

 

 

 嬉しそうにはしゃぐナルトに静止をかけたのはラセツだった。 水底の様に深い影を差す紫紺の瞳に、ラセツが放った否定を問おうとしたが思わず押し黙る。

 

 

「……確かにナルトはラセツの英雄だし、いつか火影を超える英雄になることは知ってる。でも、ここに名前を刻む英雄にはならないで」

 

「ーーッなんでだってばよ!!だってこの石は英雄の名前が!!」

 

「コレは慰霊碑。殉職した英雄達の名前が刻まれている石だよ」

 

「そう。…この中にはオレの親友の名も刻まれている」

 

 

 ラセツの言葉。そして肯定と共に続くカカシの言葉にナルトの視線は慰霊碑に注がれる。 数え切れないほど刻まれている名前は、任務成功の為、もしくは可能性を上げる為に命を落とした数だと理解した瞬間、ナルトの蒼い瞳は大きく揺れ、言葉は今度こそ失われた。

 

 

「この石に名前を刻みたくなかったら仲間を大切にし、信頼し、協力し合え。そして任務を遂行して生きて帰れ」

 

 

 特に返事はなかった。しかし、各自の瞳には生気と覚悟が強く滲んでおり、カカシは満足げに笑みを浮かべた。

 

 

「これにて演習終わり。全員合格!第七班は明日より任務開始だ!!」

 

 

 こうして第七班が結成された。

 

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