羅刹の希求   作:蒼林檎

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第二章幕間『叫びと誓い』

 ナルトはS級犯罪者の集団であり、尾獣を狙う『暁』に対抗する為、そして、里を抜け、大蛇丸のところへ足を運んだサスケを連れ戻す力をつける為、傷が完治し退院でき次第、自来也と旅にでることを決め、眠りについた。

 

 

「ナルト、ナルト!!!」

 

 

 聞き慣れた鈴を転がすような声音が焦ったように呼ぶ声が聞こえ、ナルトは飛び起きる。 病室に入ってきたのは息を切らし、若葉色の瞳からボロボロと涙をこぼすサクラだった。

 酷く焦っているのは声でもわかったが、サクラの様子でただ事ではないことは頭の悪いナルトであっても察することができた。

 

 

「ど、どうしたんだってばよ…そんな焦って…」

 

「ラセツが…ッ」

 

 

 サクラの口から出た名前にナルトはピクリと反応を示す。

 何かを言おうとして、サクラは地面に崩れ落ちた。嗚咽を漏らし、滂沱の涙を流してただ泣いていた。 

 言葉を紡ぐことが出来ないサクラに代わり、開けっ放しだった病室の扉にいつの間にか寄りかかっていたシカマルが、視線を逸らしながら簡潔に言葉を述べた。

 

 

「ラセツが…里抜けした」

 

「は…?ラセツが、里抜け…!?」

 

「落ち着け」

 

「どう言うことだってばよ…シカマル……その冗談は笑えねぇってばよ!!」

 

「…冗談?」

 

 

 感情のままに吼えるナルトに、シカマルは地を這うような低音と、鋭い眼光をナルトに叩きつけた。

 

 

「オレがこんな冗談言うと、本気で思ってんのか」

 

「……ッ」

 

 

 シカマルは仲間が傷つく嘘は決してつかない。それは仲間であるナルトがよく分かっている事であり、唇を噛み締めて地面に視線を落とした。

 

 

「はぁ、…とにかく詳しい話は火影室にて行われる。行ってこい」

 

 

 まだ歩ける状態ではないナルトを車椅子に乗せ、病院から出る。

 病院から出た途端、里の噂話は里抜けをしたサスケとラセツの話で持ちきりであり、2人を酷く貶して蔑む言葉言葉がいくつも転がっていた。

 

 

「来たね」

 

 

 火影室に着けば、綱手とシズネの他に、カカシ、ガイ、紅、アスマと見慣れた担当上忍のメンバーが居た。

 ナルトは綱手を見た瞬間、押さえていた感情が溢れ出し、心のままに叫んだ。

 

 

「ばーちゃん……ラセツが…ラセツが里抜けってどういう事だってばよ!!!」

 

「落ち着けナルト。順を追って…」

 

「落ち着いてられるかってばよ!!今すぐラセツを追いかけ……、」

 

「聞けと言っているだろう!!」

 

 

 空間を震わし、萎縮させるような綱手の叫びにナルトは黙る。唇を噛み締め、拳を握り、空を映す双眸は激情に揺れていた。しかし聞く耳は持っている。

 綱手はひとつ息を吐き、1枚の書類に目を通しながら話し始めた。

 

 

「…まず、ラセツはひと月前に『暁』によって勧誘を受けていた。…だから暗部を数名監視に置いてたんだが…『暁』のイタチは幻術のエキスパート。もしかしたら何処かで接触していたのかもしれないな」

 

「『暁』から、勧誘…?」

 

「あぁ、ラセツの能力を買ってな。……そして昨日、ラセツは『暁』のうちはイタチと干柿鬼鮫と行動を共にし…里周りの監視及びラセツの監視につけていた暗部達を殺して里を出た」

 

 

 この事実に動揺が広がる。

 暗部は里の中でも優秀と判断された忍が所属している。対してラセツは下忍だ。勝利を手にしたのはラセツである。

 そして、逃げてきたという暗部の男が言ったという言葉に更に驚かされた。

 

 

『あれは鬼だ。名前通り、破壊と滅亡を司る地獄の怪物、羅刹の鬼だ』

 

 

 酷く脅え、取り乱して帰ってきたという。

 その男は暗部に所属し、長く優秀な男だったという。そんな男であっても恐怖に駆られ、逃げ出し、脅えて取り乱すほど『羅刹』は恐ろしかったという。

 

 

「……ナルト、もうお前の知るラセツは居ない」

 

「んなッ!」

 

「アイツは、もう鬼になった」

 

 

 綱手は目を閉じて暗部が殺された現場を思い出す。上忍達もその現場を思い出し、苦しげに顔を歪める。

 

 現場は、悲惨だった。

 ある者は絶命を約束されている急所を力任せに刃で抉られ、ある者は腹部からは腸が引き摺り出されており、ある者は頭を潰されており、ある者は四肢がもぎ取られており、ある者は上半身と下半身がバラバラに落ちており、ある者は股から脳天まで真っ二つに裂かれていた。

 これらの死体は明らかに幻術に嵌め、静かに殺すイタチや鮫肌で削り殺す鬼鮫の殺し方とは当てはまらない。これらは剛力と《空間転移》を合わせ持つラセツがやったと言われれば、納得のいく殺し方だった。

 

 綱手はゆっくりと目を開け、俯くナルトにラセツの立場をはっきりと口にした。

 

 

「ラセツは大罪を犯した犯罪者であり、最も警戒するべき組織にいる」

 

「なんで…!なんでだってばよ!!!」

 

「そんなの私が知るか!!」

 

 

 嘘だと、幼い子供のように現実を受け入れないナルトの駄々に、綱手は耐えきれないと机を叩いて立ち上がり、すぐに正気を取り戻して力が抜けたように腰を下ろし、頭を抱えた。

 

 

「そんなの…私が聞きたいくらいだ……」

 

 

 綱手はラセツとの付き合いは長くは無い。しかし、浅くはない関わりを持っており、真っ直ぐなラセツに綱手は大きな期待を抱いていた。

 

 

「なんで……ラセツまで…こんなになっちゃったの……」

 

 

 立て続けに仲間を失ったサクラが泣き崩れた。火影を前にしていることも忘れて嗚咽を隠さずに涙を流す。

 

 

「アイツ…」

 

「……ナルト?」

 

「アイツは…きのう、オレが無茶しないような頑張るって言ったんだ……なのに、なんで……」

 

「ナルト……」

 

「オレがッ…火影になった時、右腕になるって、約束したのに…!!」

 

 

 初めてナルトを認めてくれた相手。夢を応援してくれた相手。自分を英雄にしてくれた相手。ナルトに向けられていたラセツの笑顔がナルトの中でどんどんと滲んでいく。かつて描いた夢がどんどん焼けるように消えていく。

 空を映す双眸に涙が溜まり、血が滲むほど握りしめた拳に次々と涙が零れ落ちる。 悲しんでいる、と言葉では表せないほどの感情を掻き混ぜている第七班の班員を前に、綱手は爪が食い込むほど両手を硬く握りながら言葉を紡いだ。

 

 

「これよりラセツはS級犯罪者としてビンゴブックに載せ、生死を問わず捜索する」

 

「ばーちゃん!!」

 

「ラセツは里抜けしただけではない!!サスケとは訳が違うんだ!!」

 

「…ッ!」

 

「里を抜け、暗部を殺し、罪を背負って『暁』に加入した!!ラセツはこれからお前の命だって狩りに来るんだ!!」

 

「ーーッラセツは、無意味にこんな事をする奴じゃねー!!絶対…絶対なんか事情が……、」

 

「ナルト!!」

 

 

 抗議を辞めないナルトを止めたのは、里抜けしたサスケとラセツ、仲間を失い、心を痛めているナルトとサクラの担当上忍であるカカシだった。

 カカシは顔を歪め、黒い瞳を下げ、額を抑え、絞り出すようにナルトを諭した。

 

 

「事情があったとしても……罪を犯した事は変わらない。仕方ないんだ」

 

「何が仕方ないだ!!ラセツも、サスケと一緒で絶対木ノ葉に連れ戻してやる!」

 

「ナルト!我儘は、」

 

 

 カカシの言葉は続かなかった。ナルトが車椅子から転げ落ちたからだ。

 サクラとカカシは慌ててナルトを起こそうと近寄り、向いた蒼い瞳に込められた激情に息を呑んだ。

 

 

「オレは!!アイツの英雄なんだ!!諦めてたまるかってばよォ!!」

 

「ナルト!」

 

「オレは!!絶対諦めねェ!!!」

 

 

 ナルトの全力の駄々は物凄いもので、傷が再度開き、衣服に血が滲んでも暴れて、悲痛な鳴き声が火影室を支配していた。

 

 

✳︎✳︎✳︎✳︎

 

 

 ナルトの大暴れから数日。

 

 傷が完治し、退院したナルトは自来也と旅に出る前に部屋を掃除していた。

 

 散らばっていたカップ麺のゴミや空の弁当、割り箸をゴミ袋へ入れ、ずっと捨てていなかったゴミ袋を1箇所に纏めて、ゴミ捨て場に出しに行く。

 床がスッキリしたところで天井と壁を拭き、棚の埃を落として、水を含んだ雑巾で床を磨く。もちろん乾拭きも忘れない。

 寝台のシーツを整え布団を畳み終わった後、旅の持ち物を最終チェックし、しばらく離れる事になる、住み慣れた部屋を見渡した。

 

 

「……」

 

 

 その時ふと、2枚の写真が目に入った。

 1枚は第七班全員で撮った写真。2枚目が火影の笠を被ったナルトと、満面の笑みでピースサインするラセツ、そして2人を抱き込むように優しく笑っている三代目と撮った写真だ。2枚の写真を暫く見つめて瞼に焼き付けた後、ナルトは靴を履いて家を出る。

 ナルトはイルカと待ち合わせていた場所に向かい、イルカと共に一楽へ入った。

 

 

「…そうか、自来也様と…長旅になりそうだな」

 

「あぁ!」

 

「いいか?サボらないでちゃんと修行するんだぞ」

 

「おう!任せとけって!絶対強くなって…ラセツとサスケを連れ戻すんだ」

 

 

 ラセツとサスケ。その名前が出た瞬間、イルカは僅かに視線を落とした。 2人ともアカデミーにてイルカの担当していた大事な生徒だ。 サスケは里抜けし、大蛇丸の元へ。ラセツは大罪を犯し、S級犯罪者へ。 今の2人が持つ肩書きにイルカの心は傷んだ。

 そして、誰もが蔑視している2人を信じ、諦めないナルトにイルカは笑顔を向けた。

 

 

「ナルト。ラセツとサスケを頼んだぞ」

 

「任せろってばよ!!」

 

 

 グッと頼もしく親指を立てた拳をイルカに向け、元気にラーメンを啜る。 その時、自来也が暖簾から顔を出した。

 

 

「そろそろ行くぞ、ナルト」

 

「おう!」

 

 

 元気よく返事をした後、ナルトはラーメンの麺と具、汁までしっかり飲み干し、胃の中に納めた。

 

 

「じゃ、行ってくるってばよ!!ラーメン代は…出世払いね?」

 

「〜〜ったく!」

 

「いや、」

 

「テウチのおっちゃん?」

 

「いつかまた来るラセツにツケとく。…だからまた、ラセツとラーメン食いに来い」

 

「ーーおう!」

 

 

 ナルトは自来也と共に木ノ葉の里を歩き、強くなることを誓って里を出た。

 

 

 




これにて第一部及び二章完結です。
二部及び三章は12月から開始します。少しお待ちください。

以下紹介

名前:ラセツ
忍者登録番号:012603
誕生日:2月3日
年齢:13
身長:152.2cm
体重:48kg
血液型:AB型
特技:力仕事、鬼ごっこ
好きな食べ物:栗饅頭(山菜鍋、焼き魚)
嫌いな食べ物:酸っぱいもの
性格:阿保、懸命になると周りが見えなくなる。
戦ってみたい相手:自来也
趣味:散歩、どんぐり集め、山菜取り、ナルトの観察
術:空間転移、鬼化

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