羅刹の希求   作:蒼林檎

5 / 35
第五話『ラセツの修行』

 木ノ葉に来て約1年半。

 朝練を終え、《空間転移》にて建物などを巻き込まないよう、正確に里を記憶する為、見飽きてさえきた景色を眺めながら里を歩き回る。その際通りかかった甘味処に顔を出し、栗饅頭を食べる。 ここまでがラセツの日課だ。

 その日課に従い、今日もラセツは朝練を終えて里を歩き回っていた。

 

 

「ラセツ」

 

 

 ここ半年で聞き慣れた静かで品のある低音がラセツの鼓膜を震わす。声のした方に目を向けると予想していた人物の姿が見えた。

 

 

「イタチ、甘味処以外で会うなんて初めてだね」

 

「そういえばそうだな」

 

 

 同じ甘味処の常連客としてイタチとラセツは交流を深めていた。しかし、甘味処以外で会う事は、交流を始めて半年だが本日が初めてだった。

 

 

「あれ?もう1人」

 

 

 弾むような足取りでイタチに近づくと、イタチの隣に誰か居ることに気づく。

 背丈はラセツと同じくらいで、漆黒の短髪に黒い瞳を持つ、可愛らしい顔立ちをした少年だった。

 

 

「あぁ初対面だったな。弟のサスケだ」

 

「ラセツ。よろしくね」

 

「……うちはサスケ」

 

 

 顔立ちは可愛らしいくせして態度は全く可愛くないサスケに、ラセツの中でサスケの好感度はガタリと音を立てて落ちた。 愛想のないサスケの挨拶にイタチはラセツに対して申し訳なさそうに眉を下げた。

 

 

「2人は…これからお出かけ?」

 

「いや、修行だよ」

 

「奇遇だね。ラセツも修行なの!」

 

「これから?」

 

「え?今。」

 

「……散歩の間違いだろう」

 

「オレもそう思った」

 

「失礼な!傍から見ればそう見えるかもだけど、ちゃんと修行なの!!」

 

 

 全く失礼な兄弟にラセツは頬を膨らませ、地団駄を踏む。 そう、全身で全身で怒りを表すラセツに「はいはい」とイタチがそよ風を受け流すような態度を取る。 しかしその態度はいただけなかった。

 

 

「むぅ…、本当なんだから!!修行の成果、今から見せてあげる!!2人ともそこから絶対動いちゃダメだからね」

 

 

 ラセツは失礼な兄弟の返答を聞く前に、《空間転移》の準備をする。交換する空間の大きさと転移先を設定する。 境界の感知に何も反応がない事を念入りに確認したあと、チャクラを練り上げて転移をすると、視界の景色は一変した。

 

 

「どう?すごいでしょ。」

 

 

 腰に手を当て、自慢げに言うが、なかなか返答が返ってこない。 おそるおそるイタチとサスケの顔を見ると、ただ、今起きた事に呆然としていた。

 

 

「…どうしたの??びっくりしすぎて声も出ない??」

 

「時空間、忍術か?」

 

「そうだけど、第一声それ??」

 

 

 感情を口にするより先に術の種類の名前が出てくるのは実に忍らしいが、褒めて欲しかったラセツはガックリと肩を落とした。

 

 

「すげー…、」

 

「ふふ、でしょ!!それを聞きたかったの!」

 

 

 イタチよりも少し遅れて言葉を発したサスケはまだ今の状況に追いついておらず、黒い瞳をめいいっぱいに広げ、あたりを見回していた。

 ラセツが期待していた反応をするサスケに、ラセツの機嫌とサスケに対する好感度は爆上がりする。

 

 

 「《空間転移》はラセツが1度来て座標を記録した場所じゃないと転移出来ないの。だから歩くことも修行なのでーー」

 

 

 上がった機嫌の勢いでペラペラと喋るラセツの視界に突然、端正な顔が息がかかってしまいそうな距離に現れ、ラセツは思わず口をつぐんでしまう。

 

 

「大丈夫か?」

 

「頭がってこと?」

 

「違う。体調だ」

 

 

 心配をするイタチの言葉にサスケは首を傾げる。 サスケから見るラセツは心配なんて必要ではないほど元気に映っているからだ。 しかし、イタチは違った。

 ラセツを見つめる真剣で静かな黒い双眸は逃げることも誤魔化すことを許さない。少しの沈黙の後、ラセツは白状した。

 

 

「…チャクラコントロールがまだ下手くそなだけ。疲れただけだから大丈夫」

 

 

 高等忍術である時空間忍術となると、木登りや水面歩行程度のチャクラコントロールではまだ無駄が多く出てしまう。 その為、1回の空間転移でもごっそりとチャクラを消費してしまう。その上、《空間転移》には莫大な集中力が必要であり、体力を消耗する。

 

 

「そうか、ならいい。……それにしても、時空間忍術が使えるなんて驚いたよ。ラセツは凄いな」

 

 

 俯いていたラセツはその一言で顔を上げ、パッと表情を明るく無邪気な笑みを向ける。イタチも自然と表情に笑みが宿り、視界を周囲に向けた。

 

 

「此処はいい場所だな。」

 

「でしょ??」

 

 

 目の前は崖という結構スリル満載な場所だが、木ノ葉の里が眺められ、時間帯さえ合えば夕日も眺めることが出来るような絶景スポットだった。

 

 

「ここはきっと誰も知らない。ラセツが木ノ葉の里を探検しまくって見つけた秘密の場所なの」

 

「オレ達に教えてよかったのか??」

 

「秘密と言ってもラセツ1人の場所じゃないし、…なにより、ラセツの修行を散歩と間違えた仕返しができるしね」

 

「え、」

 

「じゃ、頑張ってね!」

 

 

 イタチが質問する前に、ラセツはぐっと親指を立てて悪戯っぽく笑った後、姿を一瞬で消した。イタチとサスケはその光景に目を見張るも、ラセツが《空間転移》したのだとすぐに気づく。

 ラセツが居ないなら自分達でここから帰らなければならない。 この場所は何処かと把握するために周囲を見渡した際、イタチはあるものを見つけた。

 

 

「……これは」

 

 

 落ちていたのは一本の草花。あまりにも綺麗な断面に手で摘んだものでは無いことがわかる。それにこの草花は周囲には咲いておらず、不自然な場所に落ちていた。

 

 

「に、兄さん。」

 

 

 何故草花はこんな所にあるのだろうか、と考える前にサスケの不安げな声に振り返り、サスケが指差している方向を見て、イタチは思わず眉を顰めた。

 そこには茂みが生い茂っており、通路なんてない。そして2人はラセツが「じゃ、頑張ってね」と悪戯っぽく笑った顔が頭の中に浮かんだ。

 

 

「…サスケ。ラセツを見つけてデコピンをお見舞いしないとな。」

 

「うん」

 

 

 まずサスケが茂みの中に入り、その後に続くようにイタチが茂みを掻き分けるように入る。その際、その茂みに不自然だが見事な断面があるのをイタチは見逃さなかった。

 

 

✳︎✳︎✳︎

 

 

《空間転移》にて疲れた身体を癒すように甘味処にて、大好物の栗饅頭を頬張っていた。

 

 

「ん〜っ!美味しい…!」

 

「それは良かったな。」

 

 

 声のした方を見ると、草や泥を盛大にくっつけたイタチとサスケの姿があり、ジトリとした黒い双眸でラセツを見る。

 

 

「わ、泥んこ。駄目じゃない、洗濯するお母さんが大変だよ?」

 

「誰のせいで泥だらけになったと思う。」

 

「え?ラセツでしょ」

 

「良く、分かってるじゃないか」

 

 

 そう、イタチはパチン、とラセツの額を指で弾き、サスケも間髪入れずに同じ場所で指を弾く。 特にサスケは容赦がなく、弾かれた額がじわじわと痛む。

 

 

「い、痛い…、」

 

「「痛くしたからな」」

 

「2人して酷い!明日、アカデミー入学式なのに!たんこぶある額で行けっていうの!?」

 

「え!?」

 

「さ、サスケ…、なに、いきなり叫んで」

 

 

 突然サスケが声をあげて驚く。黒い瞳は大きく見開かれており、眉はこれでもかと思うほど中心に寄せられている。所謂、信じられない、と言わんばかりの顔だ。

 

 

「……お前、オレと同い年なのか?」

 

「サスケも明日アカデミー入学なら、そうなるね。」

 

「こんなに精神年齢低そうなのに…?」

 

「喧嘩なら買うよ?今なら無料で」

 

「こらこら。明日から共にアカデミーに通う仲間なんだから」

 

 

 真顔で構えるサスケと満面の笑みで構えるラセツの間に入り、2人を喧嘩が勃発しない程度まで宥めた後、ラセツに視線を向けた。

 

 

「ラセツ。サスケと仲良くしてやってくれ」

 

 

 そう、ラセツの艶やかな藍色の長髪を透くように撫で、そう頼む。 そんな頼まれ方をして断れる人間はいない。 

 

 

「むぅ……わかった、わかりました。仲良くしてあげます」

 

「別にいい」

 

「なんだとこのやろう」

 

「……兄さん、早く修行に行こう」

 

「え?無視??湖に飛ばすよ?」

 

 

 再度喧嘩が勃発しそうになるラセツとサスケに、イタチは2人が同じアカデミーに通うという事実に心配から頭を押さえた。 が、妙に気が合ったらしい2人は喧嘩ではなく、好きなクナイや手裏剣の話をし始め、イタチの心配は杞憂に終わりそうな雰囲気を見せていた。

 サスケとの会話が一区切りつき、サスケとイタチは元々の目的であった修行へ行き、ラセツは新たに栗饅頭を頼もうとしたその時。

 

 

「あ、いたいた。ラセツ!!」

 

 

 幼い少年の声がラセツの鼓膜を震わせ、首が折れるのではないかと思うほど、勢いよく声の方向へ顔を向けると、煌めく金髪に蒼穹を閉じ込めた瞳を持つ少年、ナルトが大きく手を振りながら走ってくる。

 

 

「見ろよこれ!!」

 

「それ…火影様の笠じゃん!」

 

「そーそー!!これで写真撮りに行くってばよ!!」

 

「いいねぇ!行こう!!」

 

「おーぬーしーらぁ」

 

 

 さすがは火影。アカデミー入学前の子どもに気配を悟られる事なく背後に立ち、腕を組んでいた。

 

 

「「ぎゃーー!!」」

 

 

 2人はまるで化け物を見たような叫び声をあげて逃げるが、呆気なく捕まり、説教の後に連れて行かれた先は写真屋だった。

 

 

「ふふふ」

 

 

 それが夕日の橙色に染まった頃、ラセツは家に帰り、ラセツと三代目とナルトの3人で撮った写真を写真立てに入れ、部屋の中で1番目立つと思ったところに飾った。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。