初投稿になります。
キングヘイローの口調とか意識してみたのですが、イメージと違ったりしてしまったらごめんなさい。
今のところキング以外には話が浮かんでません。続くかどうか未定です。
「ウララさん。起きないと遅刻するわよ」
トレセン学園の制服に身を包み、いつも通り丁寧に毛並みを整え終えたキングヘイローは布団の中で丸まっているハルウララを揺する。
「キングちゃん〜。後5分〜」
「ダメよ。いつもそう言って寝坊するんだから。早くしないと本当に遅れるわよ」
いつもであれば呆れ顔で言う彼女だが、キングヘイローの表情は明るい。
それもそのはず。彼女にとって今日という日は待ちに待った特別な祝いの日である。
部屋に飾られたカレンダーには赤いペンでしっかりと丸印をしていたし、今日の為に色々とできることをしてきた。
「喜んでくれるかしら…」
机に置いてある箱を鞄の中に仕舞い込み、再びハルウララの方へ視線を移す。
ゆっくりと上体を起こした姿を見てもう三度寝はしないだろうと思ったキングヘイローは一息ついて声をかける。
「ウララさん、先に行くわよ。良い?三度寝はしないこと。授業には遅刻しないこと。わかったかしら?」
「うん…」
気のない返事に心配になるが、このままでは自分が遅刻してしまう為に部屋を出た。
残念なことに今日は休日ではない。その為、トレーナーにこの箱をプレゼントするのは授業を終えた後になってしまう。
すぐにでもプレゼントを渡して、トレーナーの喜ぶ顔が見たいが、学生たる者、サボるわけにもいかない為に時間が経過するまでの我慢だ。
教室へ向かう途中、キングヘイローは鞄に視線を移した。
「大丈夫よね…」
普段からは想像つかないほど弱気な発言。
セイウンスカイが見ていたら弄られることに違いないし、カワカミプリンセスにはこんな姿は見せられない。
「一流であるキングが選んだプレゼントだもの、大丈夫に決まっているわよ」
自分に言い聞かせるように呟くが、それでも表情には表れていた。
「おはようキングちゃん!」
「ひゃっ!?」
不意に呼ばれる声に驚きの声をあげてしまう。
「ス、スペシャルウィークさん…。えぇ、おはよう」
手にニンジンを持ち、笑顔で挨拶をするスペシャルウィークにキングヘイローも挨拶を返す。
「また貴女はニンジンを食べながら来たのね。だらしないわよ」
「えへへ。キングちゃんも食べる?」
「いらないわよ」
キングヘイローは小さくため息を吐く。
「どうしたのキングちゃん。元気ないように見えるけど」
「…そう見えるかしら?」
「うん…。ちょっと不安?」
スペシャルウィークにはトレーナーへのプレゼントについて相談に乗ってもらっていた。彼女の食事を作ってあげるという提案は却下したが。
今日がキングヘイローのトレーナーの誕生日だということは知っているのだ。
「不安じゃない…といえば嘘になるわね。でも、選んだプレゼントに間違いはないわ!」
「うん!キングちゃんのトレーナーさんもきっと喜んでくれるべ!」
そんな会話をしながら2人で教室に向かっていると、後ろの方から声が聞こえてきた。
「待ちなさい!ゴールドシップ!」
「やっほーい!待てという言葉はゴルシちゃんの辞書にはないぜー!」
勢いよく走ってくるゴールドシップを避けようとキングヘイローは道の端に移動し始めたが、待ち合わず持っていた鞄とゴールドシップがぶつかる。
「きゃっ!?」
「うおっ!?」
勢いのままに鞄が宙に浮かび、茂みの中へと飛んでいく。その際に、鞄が空いていたので中身まで茂みの中へと散乱してしまった。
「悪りぃ!でも急いでんだ。じゃあなー」
「コラ!ゴールドシップ!申し訳ありません。後で必ず捕まえて謝らせますので」
逃げたゴールドシップに変わって、追いかけていたメジロマックイーンが頭を下げる。
「気にしないでいいわ。ゴールドシップを咎めようと思ったらキリがないもの。それよりも早く追いかけた方がいいわよ」
「ありがとうございます。それでは」
走り去っていくメジロマックイーンの背中を見て、大変ねと呟きながら、鞄が飛んでいった茂みへと向かう。
見事に持ち物は散乱していて、2人でキングヘイローの持ち物を拾うが、予鈴のチャイムが鳴った。
「キングちゃん!急がないと遅刻しちゃうよ」
「そうね。一流のキングが遅刻なんてあってはならないもの」
視界に入る持ち物を急いで拾って鞄へと仕舞い、走って教室へと向かった。
なんとか授業には間に合い、遅刻することなく学園の授業が始まった。
同じクラスであるグラスワンダーやエルコンドルパサー、スペシャルウィークはいたが、セイウンスカイの姿は無かった。
(スカイさんはまたサボりね)
まったくあの人は、と内心で呟いた。
いつもと変わらない授業を受け、昼休みの時間となった。
グラスワンダーやエルコンドルパサー。スペシャルウィークと一緒にカフェテリアで食事を取っていると、セイウンスカイが合流した。
「おやぁ?みなさんお揃いだね〜」
「あ、セイちゃん!」
「遅いわよスカイさん」
「いやー。今日は暖かくて良い昼寝日和だよー」
にゃはは、と笑うセイウンスカイに他のメンバーは呆れたように彼女を見る。
セイウンスカイのサボり癖が今に始まった事ではない為にツッコむことはしないが、これで勉強についていけていることに疑問を感じる。
「セイちゃん。最近増えてませんか?」
「良い天気が続いててー。グラスちゃんも一緒にどう?」
「遠慮しておきます」
「残念。エルちゃんは?」
「遠慮しておきまーす。サボったらグラスに何言われるか分かったもんじゃありませーん」
「エールー?」
「ひっ、なんでもないでーす…」
みんなで笑い合いながら昼休みを終えて、再び授業に戻る。
あっという間に午後の授業も終わり、後はプレゼントをトレーナーに渡すだけ。そう意気込んで鞄を手に取る。
「頑張ってねキングちゃん」
スペシャルウィークがキングヘイローに向かっていう。その横でグラスワンダーも微笑んでいる。
「な、何を言ってるのかしら。トレーナーにプレゼントを渡すだけでしょ」
少し顔を赤くしながらキングヘイローは鞄の中に手を入れる。
すると赤くなっていた顔色は段々と青くなっていく。
「ない…」
「どうかしましたか?」
「無いのよ…」
「無いって、もしかしてプレゼント?」
静かに頷く。
確かに寮を出た時はあった。何故、鞄の中に入っていないのか、その答えはすぐに浮かんだ。
「あの時…!」
ゴールドシップとぶつかって鞄の中が散乱してしまった時に箱を取り損ねてしまったのだ。
「っ!」
「もしかしてあの時に?」
「ええ。探してくるわ!」
「私も手伝うよ!」
「私も一緒に探します」
「スペシャルウィークさん。グラスさん。気持ちは嬉しいけど貴女達はこの後トレーニングでしょ。疎かにしてはダメよ」
「でも…」
「大丈夫よ。拾い損ねたものを取るだけだから時間は掛からないわ」
「…私も見つけたらすぐに連絡しますね」
「礼を言うわ。ありがとう、グラスさん」
2人は今日、トレーニングがあるために彼女達の提案は断っておいた。
急いで、朝にゴールドシップとぶつかった場所へとやって来て茂みの中を探す。
「なんで、なんでないのよ!」
茂みは深くない。それなのにも関わらずないということは誰かが持っていってしまったのだろうか。そんな考えが頭に浮かぶ。
しかし、あの場にいたのはキングヘイローとスペシャルウィークのみで他の人に聞いて回るのは途方もない。
かと言って新しく買いにいく時間はない。どうすればいいのかと考え込んでいると声がかかる。
「あれ?キング…?」
「っ!……トレーナー」
見られたくない人に見られてしまった。トレーナーにだけは見られたくなかった。
「どうしたの?」
「…なんでもないわよ」
「何かあるなら相談に乗るよ?」
「大丈夫よ。それよりトレーナーはこんなところで何をやっているのかしら」
「…うん。トレーナー室の冷蔵庫が空っぽだから買いに行こうと思って」
「そう…」
「一緒行く?」
「遠慮しておくわ。キングは忙しいもの」
「そっか、残念」
それじゃあね、と言ってトレーナーは行ってしまった。
「今のうちに探し出さないと!」
これで他のウマ娘に聞き込みをしてもトレーナーの耳に入ることはない。急いでキングヘイローは他の娘にも箱は見てないかと聞いて回ってみた。
「箱?ごめんなさい。みてないね」
「うーん。知らないかなぁ」
「箱ー?みてないよ」
小一時間が経過したが結果は惨敗。誰も箱を見ていない。
どうしたらいいのかと考えているうちに気づけば三女神像の噴水広場へと歩いて来ていた。
「…お願いなんてキングらしくないけど、それでも仕方ないわ。お願いよ三女神様。キングに力を貸して」
そう呟くがもちろん言葉なんて帰ってこない。
「あ、やっと見つけたよーキングちゃん」
呑気な声。それだけで誰がに声をかけて来たのかキングヘイローには分かった。
「スカイさん…」
「いやー。探した探した。今日のトレーニングはしなくていいんじゃないかってくらい走ったよー」
相変わらずの冗談。だが、それにツッコミを入れられるほどキングヘイローには気力が残っていなかった。
「何かしら…。今は急いでいるのだけど」
「あー待って待って。はいコレ」
セイウンスカイの手には見覚えのある箱。間違いなくトレーナーにプレゼントしようしていた箱だった。
「っ!?スカイさん!何処でコレを?」
「にゃはは。それよりも早く渡しに行ってあげなよ。大事な日なんでしょ?」
「…えぇ!礼を言うわ!ありがとうスカイさん!」
「はいはい。いってらっしゃーい」
走ってトレーナー室に向かうキングヘイローの背中を見てセイウンスカイは呟いた。
「頑張ってねキングちゃん」
遡ること1時間前。
「どうしたのスペちゃん、グラスちゃん。そんなに暗い顔しちゃってー」
「セイちゃん。実はね」
暗い顔をする2人にセイウンスカイは尋ねたところ、キングヘイローがトレーナーにプレゼントをしようとしていた箱を無くしてしまったらしい。
「なるほど。2人はこれからトレーニングなんだよね?」
「えぇ。私たちも手伝うと言ったんですが、トレーニングを疎かにしてはダメと断られてしまいました」
「…これはセイちゃんが人肌脱ぎますか」
そう言ってセイウンスカイはゴールドシップとぶつかったと言う場所をスペシャルウィークから聞き、向かった。
既にその場所にはキングヘイローがいた。
「なんで、なんでないのよ!」
彼女の声が耳に入る。どうやらこの場所には無かったようだ。
「うーん。ここにないと言うことは…」
誰かが拾った、ということなんだろう。ならば可能性として落とし物として生徒会に届けているかもしれないとセイウンスカイは生徒会室にむかった。
ノックをして生徒会室に入ると、書類を整理している会長ことシンボリルドルフの姿が目に入る。
「ふむ。どうしたのかな、セイウンスカイ」
「いやぁ、ここに落とし物が届いていないかと思いまして」
「落とし物か、君は何かを落としたのかな」
「私っていうより友達が、なんですけどね」
キングヘイローが落とした箱のようなものはないかとシンボリルドルフに聞いてみたところ、答えはビンゴだった。
「それなら今朝、学園の生徒が落とし物と言って届けて来たよ。これで間違いないかな?」
シンボリルドルフが持つ手には箱がある。特徴もスペシャルウィークが言っていた通りだったので間違いないと頷く。
「だが、本人でもない君には渡せない。と言いたいところだが、それなりの事情がありそうだ。持っていくといい」
「ありゃ?良いんですか?」
セイウンスカイが聞くとシンボリルドルフは頷いて彼女に箱を手渡した。
「ありがとうございます。それでは失礼します」
頭を下げて生徒会を後にする。その後はキングヘイローを探し回ったが、見つからずに1時間ほどが経過。三女神像の前で彼女を見つけられたのだ。
「…お願いなんてキングらしくないけど、それでも仕方ないわ。お願いよ三女神様。キングに力を貸して」
祈るように言うキングヘイローを見て本来であれば彼女をいじるところだが、セイウンスカイはそんな事をせず声をかける。
「あ、やっと見つけたよーキングちゃん」
疲れた顔をしてセイウンスカイの方へと振り返る彼女。
「スカイさん…」
「いやー。探した探した。今日のトレーニングはしなくていいんじゃないかってくらい走ったよー」
いつもの冗談を言ってみるが、その言葉にツッコミは返ってこなかった。
「何かしら…。今は急いでいるのだけど」
「あー待って待って。はいコレ」
今にも歩き出しそうなキングヘイローを止めて彼女に箱を見せる。
「っ!?スカイさん!何処でコレを?」
「にゃはは。それよりも早く渡しに行ってあげなよ。大事な日なんでしょ?」
「…えぇ!礼を言うわ!ありがとうスカイさん!」
「はいはい。いってらっしゃーい」
無事に手渡した後、すぐにトレーナー室に向かうキングヘイローを見てセイウンスカイは一安心し、頑張ってねと言い、暖かな目で見守った。
トレーナー室をノックするが返事が帰ってこない。どうやらトレーナーはまだ帰って来てないみたいだった。
いつでも使えるようにと渡されていた鍵を使ってトレーナー室を開ける。
「相変わらずね」
1週間前に整理したはずなのに、既に部屋は散らかっている。不器用なトレーナーに思わず笑みが出る。
思い返せば、出会いから既に不器用だった。
母親との電話の後に思わず流した涙。それを見ていたトレーナーは慰めようとしてくれた。
『えっと…。大丈夫かい?』
ハンカチを手に、暖かな視線で心配をしてくれた。
選抜レースでいい結果が残せなかったとしても、一流であろうとするキングに、共に一流を背負ってくれた。
3年間ともに過ごして来た時間はキングにとって忘れられない大切な時間。
本人を前にして言ったことはないが、いつも思っている感謝の気持ち。
今日こそ伝えるべきだ。支え、共に背負ってくれた彼に。
「あれ…、キング。来てたんだね」
「ええ。おかえりなさい」
ありがとう、スカイさん。
ありがとう、スペシャルウィークさん。グラスさん。
今日は素直になれる、そんな気がするわ。
「ねぇ、トレーナー」
「ん?なにキング」
「プレゼントよ」
驚きの表情。いつもは見れない珍しい表情に笑みが溢れる。
「どうしたのコレ」
「今日は貴方の誕生日でしょ」
「覚えててくれたんだ。ありがとう!」
笑顔になるトレーナーに安心感を覚える。
「開けてもいいかな?」
「ええ。もちろんよ」
選んだプレゼントはネックレス。蹄鉄を象ったシルバーのネックレスだ。
スペシャルウィークさんやグラスさん。他の人にも聞いたが、結局は自分がなにをあげたいかだよと言われて選んだのがこれだ。
沢山のものを見て、沢山のものを選んで、コレだけがトレーナーに相応しいと思えた。
「ネックレス!しかも蹄鉄の!嬉しいよありがとう!」
「トレーナー」
「…?」
「今日は誕生日の祝いだけじゃないの。これまでキングを支えてくれてありがとう。共に一流を背負ってくれてありがとう。今まで言えてなかったから、お礼を言いたくて」
感謝の言葉を言い終えると、何故だか涙が流れ出ていた。
「…トレーナーのおかげでキングは…、キングは、これからも一流でいられる。貴方がいれば一流を続けていける。……だから、だから!」
気づけばトレーナーに抱きつかれていた。
温かい温もりにポツポツと流れた涙は大粒に変わっていた。
「これからも俺はキングのトレーナーだ!絶対に離さない!だから、これからもよろしくなキング!」
「…ええ。これからもキングと共にいられる権利をあげるわ!誕生日おめでとう。トレーナー」
今までにない最高の笑顔をトレーナーに見せられた気がした。