愛が重いウマ娘達   作:ガチタン愛好者

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余り物処理が得意とか言う公式が認めるヤンデレというか嫁さん素質


ナイスネイチャの場合

ナイスネイチャ。ブロンズコレクターとも揶揄される微妙な競走成績。たらればを言ってはいけないが同期がもう少し天才まみれでなければ不名誉な称号を貰うことは無かっただろう。そんな環境では三着っぷりに少しばかりひねくれるのはしょうがない。そしてそんなネイチャのやる気を維持するのも大変だ。

 

「またですか。頑張りますなぁ」

 

「これくらいしか出来ないから。俺にとってネイチャは自慢の愛バさ」

 

「勝てないけどね」

 

「事実だから言い返せないがひねくれないでくれよ」

 

トレーナーはトレーナー室で工作に励みながら考える。ナイスネイチャには同期のトウカイテイオーのような才能はない。だからこそ違反ギリギリの、勝てば良かろう戦法を取ったこともあった。それでも何故か三着。最早呪いの域に達している。しかし三着以下を取ることもない。だからこそ弱いわけでは無いが………という微妙な評価をされている。

 

「次のレースだけども………」

 

「アタシもいい加減飽きたっていうかさ、これ以上はお互い良くないんじゃないの?トレーナーさんだって評判が悪いままだよ?担当をいつまでも勝たせられないってさ。こんなのを続けてはや一年ですよ?」

 

「………」

 

言いよどむ。何せこんなことを言ってるネイチャだが普段と明らかに違う。尻尾はへにゃりと垂れ下がり、耳も前に垂れている。負けが続いて明らかに弱気だ。さながら絶不調といったところか。何とかしてやる気を出させたいが………こういうときの常套手段はお出かけ。だが今の状態でお出かけしたとしてだ、他人に変なことを言われて更に落ち込んではいけない。しかし何処か別な環境で気分転換をさせたい。追い詰められていたトレーナーは冷静な判断が下せなかった。そんなトレーナーが繰り出したのは

 

「なあ、次の休日さ、うち来ないか?」

 

「は?」

 

冷静に考えれば教え子を自宅に連れ込む犯罪者。だがこの時トレーナーは冷静ではなかった。

 

「どうせ外出すれば何か言われるのは目に見えてる。それが慰めであれ攻撃であれネイチャは嫌だろ?でもこのまま落ち込んでる訳にはいかない。気分転換が必要だ。となればここじゃない何処かとなればうちしか無いだろ?」

 

「………じゃあお邪魔させていただきますわ」

 

「決まりだな」

 

ついでに言うと気分がダークなせいかネイチャも冷静ではなかった。

 

★★★

 

「あ」

 

「どしたの?」

 

休日。ネイチャを連れて現在住んでいるアパートへやって来たところであることに気がつく。

 

「まさか遊べる物が無いとか?」

 

「それは大丈夫だ。いつか遊べるかなと買ってついぞ出番がないテレビゲームが小積んである。ただな………」

 

「?」

 

「少しばかり冷静になると色々やばい。掃除してないとかもあるけど教え子を自宅に連れ込むのって………」

 

「今さらじゃん。そいじゃお邪魔しまーす」

 

「どうぞ………多分………足の踏み場はあるから………」

 

「そんな大袈裟な………うわぁ」

 

広がっていたのは狭い室内に溢れるゴミ。男の独り暮らしとはこうなるというお手本のような感じだ。

 

「何をどうしたらこうなるのさ」

 

「学園で日付が変わる位まで仕事するだろ?帰りにコンビニに寄って好みのインスタントを購入。帰ったら食べて直ぐにシャワー浴びて就寝。次の日はゴミをほったらかして出勤。これが続いた結果さね」

 

「正座………する場所は無いから端的に言うよ。まずはこれを片付けよっか」

 

「面目ない」

 

★★★

半日後

 

「取り敢えず座る場所は確保できたね」

 

「助かった」

 

溢れてたゴミを片付ければそこは小綺麗なワンルーム。ゴミは一応袋に投げ込んでたお陰か汚れ一つない。良く言えば綺麗な部屋。悪く言えば生活感が無い。

 

「まさかゴミを片付けただけでこうなるとは。ねぇトレーナーさん。トレーナー室に比べて殺風景すぎやしませんかね」

 

「だってここは帰って食べて寝るだけの場所だもの」

 

「土日は?」

 

「いつまでも、あると思うな、土日祝」

 

「おう………」

 

面食らったネイチャだがこの空気のまま遊ぶ気には慣れない。こんな自分に付き合ってくれてるトレーナーに何かしら恩返しがしたい。

 

「ちょっと買い物行きませんか?トレーナーさん何も無さすぎです。取り敢えず食料品を」

 

「何をする気だ?」

 

「片付けついでです。ネイチャさんの手料理ご馳走してあげましょう。どうせまともな食事してないんでしょ?普段頑張ってくれてる恩返しだと思って下さいな」

 

「…………頼む」

 

★★★

 

買い物を済ませた後は備え付けの小さな台所で料理をするネイチャを他所にベッドで惰眠を貪るトレーナー。手伝うな、待っとけと言われて数分でこれである。因みにそれを見たネイチャは微笑んでいる。

 

「うし、起きてくださいなトレーナーさん。ちょいと遅めの昼御飯ですよ」

 

朝イチで家にやって来て掃除、買い物を済ませば正午を過ぎていた。

 

「ん?ああ、ありがとう。良い匂いだ」

 

唯一使われていた家具の小さな机に食事を並べて

 

「「いただきます」」

 

メニューは白ご飯に味噌汁と卵と肉。サラダ。健康的な食事だ。

 

「…………」ポロポロ

 

「どしたのトレーナーさん!?何か不味いものあった!?アレルギーとか!?」

 

「いや、誰かと食べる既製品じゃないご飯って美味しいんだったな。忘れてたよ………あったかいなぁ」

 

「ははは、大袈裟な。味わって食べなされ。実家の店仕込みですぞ」

 

その後は無言で味わうトレーナー。ご飯を食べるときは静かで孤独で豊かで、なんというか救われてなきゃあ駄目なんだ。とは完食後のトレーナーの言葉である。

 

「ふぁぁ………」

 

「おやおや?お腹一杯になったら眠気が来ましたか?寝ちゃっていいですよ?今日はアタシに付き合う予定だったんでしょ?ならお仕事もないでしょ?」

 

「そう…………な……………」スースー

 

「こらこら、せめてベッドで寝なさいなっと」

 

軽々と成人男性を抱えて寝かす。こういう辺りは見た目は可愛くとも人間とは違うと感じさせる。ついでにうつ伏せで死んだように眠るからだろうか。枕の一つも無いことに気がつき

 

「…………ええい、やっちゃえ」

 

えいやっと頭を自分の膝に導く

 

「今日くらいはゆっくり休んでくださいな」

 

★★★

夕方

 

「はっ!?」

 

「お目覚めですか?ぐっすりと眠ってらっしゃいましたね」

 

「すまない。寝てた。ってえ?何してるの?」

 

「何って夕飯の支度ですよ。どうせアタシが作らなきゃ不健康極まりない食事でしょ?」

 

「…………お願いします」

 

「よろしい」

 

こうして何故かネイチャにしっかりとお世話をされてしまったトレーナーだったがこれでも立派な気分転換になったらしい。その証拠にライバルが居なかったとはいえ次のレースでは久しく見なかった一着を取ることができた。

 

★★★

 

それからだ。ちょっと落ち込めばトレーナー宅へ行ってあれこれお世話をするのが定着した。トレーナーも慣れたのだろう、合鍵を作ってからは日々の食事が今までの味気ないものから暖かみのある食事になった。なお寮長の許可は抜かりなく取ってあるので説教の心配はない。ネイチャは気分転換になり、トレーナーは美味しい食事と綺麗な寝床を手に入れる。ウィンウィンの関係であった。今までは薄暗い部屋に変えるはずだったのにトレーニング後は一緒に帰ってご飯を食べる。幸せな日々というやつだった。

 

★★★

 

いつからだろう。自分の気持ちに言い訳をするようになったのは。

 

いつからだろう。必死にやってることはトレーナーさんへの恩返しであって他意は無いとかわざとらしく考えるようになったのは。

 

いつからだろう。トレーナーさんの言葉でやる気が出るようになったのは。

 

第三者から見れば立派な恋である。チョロい?いやいや、思春期にマンツーマンで面倒を見たり見られたりしてればこうもなる。そう、ネイチャは絶賛恋の悩み中であった。

 

「だぁぁ!ラチが空かない。相談しよう」

 

当然トレーナーには相談できない。相談相手はライバルだった。幸いなのはターフの外では友好な関係を築いていること。

 

T「ついにネイチャもそこまで来たんだね。じゃあさっさとトレーナーを自分のモノにしちゃいなよ。知ってる?人間はウマ娘には勝てないんだよ?」

 

E「そうですか、私ならばしっかりと秒単位で管理した上でそうですね、一日か二日放置してみてはどうでしょうか?相手から泣きついてくれば後は煮るなり焼くなり思いのままです。後は実家に持ち帰れば完璧です」

 

なにやら相談相手を間違っている気がしないことも無いがこれでネイチャは決意した。

 

トレーナーに恋するのは当然のこと。つまり自分のモノにしてもかまわない!

 

根本からの間違いには気がつくことなくネイチャは行動に移した。

 

★★★

 

やったことは簡単。いつもやっているトレーナーのお世話をしないだけ。忙しいと言えばそれ以上は追求されない。さすがに力ずくで屈服させるのは気が引けたのだ。

 

数日後

 

「なぁ、ネイチャぁ」

 

「どうしたのさ!?」

 

トレーナーの目の下には隈。しばらくちゃんと寝れてないらしい。

 

「もう限界だ。助けてくれ………今まで美味しかったはずのカップ麺が味がしないんだ。今まで平気だったはずの誰もいない部屋が怖いんだ。今まで平気だったはずの………」

 

まさかここまでとは、想像以上の効果ににやける顔を押さえ込みつつ

 

「しょうがないですなぁ。そのままじゃあ今日の仕事も覚束無いですねぇ。ほら」

 

おいで、と。手を広げるネイチャ。それに躊躇なく飛び込むトレーナー。そこには下衆な考えなど一切ない。ただ救いを求める姿があった。

 

「よしよし、しんどかったね。今日からは用事も無いからまたお世話をしてあげられますよ?」

 

「うう……………頼むぅ」

 

ポンポンと背中を叩いて落ち着かせる。荒ぶる心を悟られまいと上っ面だけは落ち着かせて

 

「いつまでも、一緒だからね」

 

「うん」

 

そして数年後。この一件から一気に輝かしい戦績を残したネイチャはトレーナーとともに学園を去るのだった。

 




はいいつもの深夜テンション。ま、こういうのは深夜テンションで書くのがちょうどいい。
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