慧心学園“女子”軟式ヤきゅーぶ!   作:桜咲く日に

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迎え入れる友

 普段の日常よりも一際騒がしく感じてしまう、ここ慧心学園。私、湊智花は自分を含めた五人で朝の会よりも早いこの時間、ある方を訪ねていた。そして、その人は目の前の職員室前で待っていてくれていた。

 

「みーたんっ! 昨日紗季に送ったメールの内容ってホントっ!?」

 

 真帆がいの一番に先生へと飛びかかる。彼女の瞳は期待と一抹の不安に彩られていて、それを見た先生はいつもの小悪魔的笑顔を浮かべた。

 

「にゃふふ。私が嘘ついたことあったか~? このこのっ」

 

 にやにやとしながら真帆の頬を人差し指でつつく。それに真帆はこそばゆいかのように「や~!」っと声をあげていた。そして、先生へと振り向き、

 

「けっこーあったっ!」

「ありゃっ」

 

 ガクンと。先生がずっこけるような真似をする。でもこの話はきっと、いや絶対に嘘なんかじゃない。なぜなら先生が嘘をつくときは決まって私たちを楽しませる、驚かせるような嬉しいものばかり。だから嘘なんかじゃない。私たちは急かしたい気持ちをどうにか抑えながらその時を待つ。

 

「もちろん、ホントだよ」

 

 親指を突き出しながらはにかむ先生を見て私たちは一斉に歓声をあげた。しかし、真帆とひなた以外の皆は職員室前だということを思い出して自重する。ほら、真帆もっ。

 

「でもねー」

 

 さっきの様子とはまた違った様子で私たちへと向き直る先生。チラリと時計を見る。よかった。朝の会まではまだ時間がある。早起きは三文の得というけれどそれは本当だったんだと実感した。

 

「やっぱり何かあるんですか?」

 

 紗季がそう口にする。……何か、か。きっとあるとすればその子たちが一緒に頑張ってくれるかということだろうか。ソフトボールはボールも大きいから体育などでも行われたりすることもあるし、体力テストなんかでも使用することがある。実際先週にあったテストでは使われていた。何が言いたいかと言えばソフトボールの方が女の子にとって抵抗が少ないということ。プロ選手に女性が出て、甲子園大会でもかなりの少数ではあるがチラホラと女性選手が出てき始めている。しかし、それでも抵抗があるのは間違いないのだろう。サッカーでもそう。屋内のスポーツやテニスなどに比べ外で行われる球技は屋内スポーツよりも女性の数がかなり少ない。そんな中でも珍しい女性がやる球技として有名なソフトボール。もちろん、男性もやるけれども、野球とソフトで言えば世間的には男性が野球、女性がソフトボールと相場は決まっているはずだ。

 

 昨今、増えてきている野球女性選手が多い中でもソフトボールをチョイスして始めた子たち。誘ってやってくれるのか、正直不安がいっぱいだった。

 

「いやさ、誘って“はい、やります”とはいかない気がすんだよね。私の持ちクラスじゃないし、私は赴任して今年が最初だからさ、その子たちのこともよく知らないし。担任に聞いた感じだと三人、皆みたいに仲良しだからひとりが入らなきゃ多分三人とも入らないかもしれないってさ。だから、少し作戦を考えなきゃいけないよね」

 

 そうだよね。そんな簡単にいくはずがない。似てはいるけど別物のスポーツであるのは間違いない。

 

「おー? 作戦?」

 

 ひなたがきょとんとした顔を先生へと向ける。

 

「そ。クラスはみんなの所から二つ離れたAクラスだからさ。名前はねー、ちょい待ち」

 

 先生がおもむろに手帳を取り出す。そして何枚かページをめくり上げ指を止めた。

 

「えーっと、一人目が“前田五十鈴”ちゃん。数字の五に十に音のなるあの鈴でいすず、ね」

 

 先生が一人目の名前を読み上げた。みんなの何人かはハッとした顔をしたが今年、転入したばかりの私にはどうにもその人物像が浮かばない。……役にたてること、あるかな……。

 

「わ、わたし、三年生のころ同じクラスでした。……でもお話したことあまりないです」

 

 愛莉がおそるおそるといった様子でチョコンと手を挙げる。

 

「そっかー。どんな子だったのか分かる?」

 

 先生が愛莉の頭を優しく撫でながらそう聞くが……、すごい背伸びをしていた。愛莉は少し逡巡した後に口を開く。

 

「えっと、真面目な人? だったのかな。あ、でも結構慌てん坊だったかもしれないです」

「ふ~ん、真面目、ねえ。小学生女子はけっこーみんな真面目だからな~。真帆と違って。にゃふっ」

「むがー! みーたんのあほっ! あたしほど大和撫子なやついないって!」

「……一番遠いわね。大和撫子っていうのは智花みたいな子のことを言うのよ」

 

 冗談を言った先生に噛みつく真帆。そしてそれに対して紗季はそんな事を言った。私は手をブンブンと振りながら否定してしまう。でも何だろう。やっぱり褒められるのって嬉しいね。ありがとう、紗季。

 

 

 そして先生は再び手帳へと視線を戻し、二人目の名前を読み上げた。

 

「“夏目伊織”ちゃんね。えっと確かカチューシャしてる子じゃなかったっけ? そしてそのカチューシャにちっさい鈴だかボールだか付いてる」

 

 夏目さん……。この子は一応名前だけなら知っていた。というのも頭部に黒いカチューシャをしていること、そしてそのカチューシャにボールのキーホルダーみたいなものが付けてある。変わったものを付けているなあ、なんて思って印象に残っていた。あのボールに描かれていた番号、見間違えじゃなければ初のプロ女性選手のものだっと思う。それが一番の印象であり、勝手ながら私の中で他の人よりも壁が薄くなっている人だった。

 

「おー。いおりならしってる。ひな、去年、おなじクラスだった」

 

 そっか。この学校は一年ごとにクラス替えするんだっけ。前の学校は二年ごとだったから少しだけ違和感がある。でもその変わり色んな友達も出来そうだなあ。

 

「おー! ひなたもヒットしてたかっ。で、どんな感じの子だった?」

 

 先生がそう聞くとひなたは人差し指を口元へと当てて。

 

「おー。たぶん、むくち?」

「むくち? って言われても」

「おー? はなすけどしずかというか、まいぺーす」

 

 うーん、確かに廊下なんかですれ違ったりした感じではクールな印象を受けることが多かったかもしれない。腰も綺麗に伸ばしていたし、何というか気品があるような。

 

「よし、じゃあ最後の一人ね。これ終わったらみんなで教室いくぞー」

 

 先生がひなたから話を聞き終えてそれから三度目の手帳へ。

 

「最後の子は“七島漣“ちゃん。あまり女の子っぽい名前ではないのかな。かっこいい感じだね。それでこの子と同じクラスだった人はいる?」

 

 みんなが顔を見合わせる。

 

「紗季は違うのか?」

「ばか。真帆と私はほとんど同じクラスだったじゃない。真帆が違うなら私も違うわよ」

「おー。ひなもちがう」

「わたしも違う、かな」

 

 それぞれがそう告げる。ここは生徒数も多いし、クラスも前の学校よりも多いからか、誰か一人は同じクラスになっている、というのは早計だったようだ。ましてや真帆と紗季は同じクラスがほとんどだったようだし。もちろん、私は言うに及ばず。

 

「うーん、まあ仕方ないね。とりあえずこの事は休み時間か放課後までお預け。今は教室いくよ」

 

 パタリと手帳を閉じて、みんなに声をかけてから教室の方へと足を進めた。これから始まる朝の会。しかし、私を含めみんな、その事は頭にはなかった。あるのは、どのように彼女たちを誘おうか、それだけだった。

 

 

 

 

「おーし! じゃあみんなで突撃だーっ!」

「待ちなさい!」

 

 ぐいっと、私、永塚紗季は真帆の服を掴んだ。ろくに作戦も考えていないのにこのまま行ったら行き当たりばったりになってしまう。ましてや、真帆だ。間違いなく場を悪化させるだろう。唐突のないことを口走りそうで怖い。それに篁先生は外せない会議が出来てしまったらしく、泣く泣くこの場には欠席している。

 

「なんだよーっ。時間ないじゃんっ」

「それでも。ちゃんと考えなきゃダメだろ。向こうだって都合があるんだろうし、いきなり入れ、なんて言ってどうすんのよ」

 

 一応、休み時間に彼女たちと同じクラスの友達に話を聞いてきた。聞いたところによればどうにも三人とも学習塾などには通っていないらしい。とりあえずこれだけでも大きな収穫ではある。それについ、数ヶ月前まで部活をやっていた以上、部活禁止なんて心配もしなくていいし、グローブとスパイスシューズさえ持っていれば特段、必要なものはないはずだ。バットは部室にあるし、最悪真帆が真帆のお父さんから買ってもらって持ってきそうでもある。だから試合までにユニフォームさえ支給できればなんの不安もない。だからこそ、後はどう説得するか、これだけである。

 

「まずはどう話を切り出すかね。本当は部活やりたいけど……、野球部に入るのはって感じかもしれないし。でも女子野球部が出来てることを知らない可能性は高いからそこからね」

「そうかも知れないね。いきなり男子の中に六年生から混ざるのって勇気要りそうだし……。女子野球部なら気兼ねなく入ってくれるかもしれないわ」

 

 智花が賛同してくれる。これでもし三人が入部してくれれば後たった一人になる。そうすればどうにかなるかもしれない。それに長谷川さんも五人しか居ないのに試合がどうって話されても迷惑だろうし、なんとか試合できる人数にまで増やせればコーチを続けてくれる気にもなるかもしれない。

 

「でも、試合があるし、それに勝てなければすぐ廃部って聞いて、だ、大丈夫かな?」

 

 愛莉が不安そうに意見を述べる。そうよね、そこが問題だと思う。はっきりいって、これで9人揃うならまた違うだろうけど、まだ試合条件すら届いていない状況。さらに届いても負けたら廃部。最悪の展開になれば三人から再び大事な“部活”を奪われる機会を与えてしまうことになる。

 

「そんなこと言ってたら始まんないだろっ。早くいこうぜっ!」

「ちょっ、だから──」

 

 ガタリっ。そのような音が人気のなくなったこの教室へと木霊した。ドアがすーっと開き、私たち五人はその方へと釘付けになる。何も悪いことをしているわけでもないのに、固まってしまった。しかし、それはすぐに解けることはなかった。なぜなら再び固まってしまう事態が起きたからである。

 

 

「ねえ、あなたたちでしょ。休み時間に私たちのこと、なんか聞いて回ってたの」

 

 少し訝しげな瞳で射抜かれた。

 

 ドアのそこには、髪をポニーテールで纏め、前髪を二つのピンで止めた女の子、今日、彼女たちの教室のドアから覗いた人──七島漣が立っていた。

 

 

 

 

 まずいわ……。話の内容を聞かれていなければいいのだけど……。しかし、そうでなくとも彼女は明らかに警戒しているのが分かる。まあ、そうよね。女子同士で、かかわりのなかった人間が自分のことを嗅ぎまわっていたら普通は怒るもの。男子でも怒る人は怒るだろうけど、女子同士はまた深読みなどをしてしまって厄介なことになる。

 

「本当にやめてくれないかしら、そういうの。言いたいことがあるなら直接言ってほしいわね。それともバレないとでも思ったの? ドアの所からチラチラこっち見て話してるし、クラスの子に聞けば私たちの事をいろいろ聞いてきたって言われるし。何か気に障ることでもしたかしら」

 

 まくし立てるような猛攻。こちらに言い分がないわけではないが、多少踏み込んだことも聞いてしまったので、それに対しても怒っているのだろう。確かに、卑怯なことをしたかもしれない。

 

「ちょ、ちょっと待って! わ、私たちは何もあなたたちに何かしようとか思ってやったんじゃなくて……」

 

 智花がそう慌てて否定する。智花のそれは嘘をついているようには見えないはずだ。智花や愛莉ほど隠し事や嘘が下手な人はいない。実際にその様子を見て七島さんも視線の強みを緩めた。

 

 ……もしこれが逆だったら真帆あたりは掴みかかっていってもおかしくないものね。『もんくあんのかー!』とか言いながら。

 

「そう。じゃあなんでそんな事したの?」

 

 今度は疑問いっぱいな顔をして聞いてくる。これはきっと私たちの部活のことを知らないからだろう。

 

「まずはごめんなさい。あんなことをして」

「……別に。嫌がらせのためとかそんなんじゃないなら気にしないわ」

 

 私が丁寧に謝罪を入れる。こちらに悪意はなくとも、褒められた行為ではないし、それによって相手を不快にさせたのだから頭くらい下げなければいけない。すると、

 

「は、話はどうでしょうか?」

「……れん、どなた?」

 

 ドアの後ろから現れたのは見覚えがある二人。ソフトボール三人集の残り二人である、前田五十鈴さんと夏目伊織さんである。

 

 前田さんは少し戸惑いながら入室してきた。彼女は丁度腰あたりまである髪を右肩の方へ一纏めにしている。

 

 そしてもう一人、夏目さんは少し短めの髪に話題に出たカチューシャをしている。ひなたの言うとおり口数があまり多そうには見えない。

 

 すると夏目さんがひなたに視線を向け、口を開いた。

 

「ひなた、こんにちわ」

「おー。いおり、こんにちわ」

 

 少し緊張感漂う教室にほんのりとした空気がなだれ込む。知らない者同士で、さらに人見知りしやすい子いる中、どうにもこの二人はマイペースである。

 

「あ、あたしはここにいていいのでしょうか、漣さん……」

「……なんでそんなにオドオドしてるのかしら」

 

 前田さんが七島さんに助けを求めるような声音を発する。七島さんはそれに呆れたようにため息を吐いた。

 

「よしっ! こっからはあたしが仕切るっ!」

 

 数秒ほど沈黙が続いたその瞬間、真帆が拳を前へと突き出し、そう宣言する。

 

「ねえ、れんれんたちはソフトやってたんだよなっ!?」

「れ、れんれん!?」

 

 真帆の突然の渾名呼びに驚きを顕わにする。真帆は基本的に渾名で呼ぶのがデフォルトなのだ。

 

「七島さん、こいつの渾名呼びは誰でもそうだから気にしないで」

「そ、そうなんだ」

 

 七島さんのような少し気が強そうな人に“れんれん”などという渾名をつける……、本人はそういう経験がないのだろうか、なんだか顔が少しひきつっていた。

 

「話を戻すわ。……そうね、私たちは去年の夏くらいまでソフトをやっていたけど」

 

 七島さんは少し改まったその後に少しだけ影の差した顔色でそう話してくれた。前田さんや夏目さんもそれに頷いていた。

 

「でもそれがどうしたの?」

 

 つい、先ほどの雰囲気とは打って変わり、純粋な質問をしてくる。

 

「あのね、うちの学校に二つ目の野球部が出来たんだ」

「二つ目の野球部?」

 

 智花が説明を始める。仕切ると公言した真帆は話せないのがもどかしいのか、それでいて智花を尊重しているのか、ソワソワしながらも黙っていた。

 

「そう。野球部。えっとね、男の子しかいない最初の部と違って、二つ目の部には私たち五人しかいないの」

「……そう、よくあのカマキリ男が許したわね」

 

 七島さんは野球部顧問のあの先生のことを忌々しそうにそう呼んだ。なんというか、ソフト部を潰したのはカマキリだという噂を聞いたことがある。顧問だった先生の都合で土日に練習をすることが多かったそうなのだが、そうすると練習日が重なる日はグラウンドを二分割にしなければならず、お互いに邪魔だったのだろう。さすがに慧心のグラウンドもソフトと野球を同時に思いっきりやれるほど広くはないのだから。

 

「だ、だからソフトとは少し違うけど七島さんたちが良ければうちの部活に入らないかなって」

 

 智花がそこまでを言い切った後、七島さんの服の袖をちょいちょいと引っ張る夏目さんがいた。

 

「……おかしい」

「えっと、何がかしら?」

「……いお的にこれはピンときた感じ。だって五人しかいない野球部が創部されるくらいなら、例え三人しかいなくてもソフト部が廃部にされるのが変」

「……確かにそうね。ねえ、何か条件があるでしょ。それを教えてくれない?」

 

 ……ソフト部からすれば納得できないところもあるでしょう。確かに人数ではこちらが二人多いとはいえ、普通に考えて規定数に達していないのに新たな部活を承認するのはおかしい。何か条件があると思うのが普通なのだろう。

 

「……来週の日曜日に男子野球部との試合があるの。それまでに9人集めて勝てなければ廃部にするって」

 

 智花が重々しく口を開き、そう語る。それを受けた七島さんたちは困惑した様子で。

 

「え、えっと本気、なのでしょうか?」

 

 前田さんがそう聞いてくる。

 

「……確か男子野球部は地区大会優勝していたはず。無理難題」

「……それに私たちに実力を求めても。私たちだってソフト始めてそこまで経っていたわけじゃないわ。そりゃ本気でやっていたけれど、試合は六年生がほとんどだったし……」

 

 夏目さんと七島さんが答えた。自分たちに戦力が求められていると聞き、さらに男子野球部に勝たなければいけない。責任も出来てしまうように感じたのだろう。しかし、

 

「地区優勝がなんなんだよっ! うちのコーチは全国やカントー行っちゃうスゲーすばるんがいんだぞっ!」

 

 コーチのところを長谷川さんで言っても知らない人は分からないと思うのだけど……。

 

「……そう。けれどあなたたちが最初から男子野球部に入っていれば問題ないんじゃないの? だって男子とは名を打っていても結局は女子を禁止しているわけじゃないはずよ」

 

 言い分はもっともだろう。でもそんなことを言ったら智花はもうここではなく、きっとクラブやリトルと言ったかしら? そっちの方へと行っているだろうしなあ……。それに……

 

「ぜってーやだ! あんな奴がいるところでやりたくないっ! それに元々の男子野球部の練習日以外を使うのに、女子野球部が出来たらその日もよこせ、なんて始まってさっ!」

 

 真帆の猛反対。あいつがそこまで嫌なのね。まあ、私もこのチームでやりたいし、長谷川さんにはコーチをして貰いたいし、その方がずっといい。というより、このチームでないのなら部活はやらなかっただろう。

 

 真帆の発言に三者三様、目を丸くして驚いていた。

 

「ねえっ、一緒にやろうよっ! すばるんがいればきっと勝てるって!」

「すばるん……というのはコーチ、でいいのよね?」

 

 コーチすら渾名とは思わなかったのかもしれない。ましてや野球は礼儀や上下関係に厳しいイメージがあるし。

 

「おー。いおり、ひなとやきゅーしませんか?」

 

 ひなたが夏目さんの前までトコトコと歩いていき、言葉を投げかけた。

 

「きっと、おにーちゃんならかたせてくれるよ?」

「…………」

 

 ひなたの魔性が炸裂するなか、夏目さんはただひなたの目をじっと見つめていた。そして──

 

「……れん、いおは入ってもいいよ。ひなたがこんなに楽しそうなのなかなか見れない」

 

 夏目さんが肯定の言葉を漏らす。他の二人は少しだけ驚いた顔をしていて。

 

「運動が苦手なひなたが頑張ろうとする部活、きっと楽しい」

 

 そう言って夏目さんが初めて笑顔を零した。聞いた話では夏目さんが笑うのを見れるのはそうなく、見れたら幸運が舞い降りるとまで囁かれている、らしい。

 

 それに目を見開いた前田さんは、後に優しげな微笑みを浮かべて愛莉の前へと移動し、話かけた。

 

「か、香椎さんっ」

「は、はいっ」

 

 少し頬を赤くしながら前田さんは愛莉の名字を呼んだ。

 

「え、えっとね、あたしも結構背が高くて、だから──」

「背、背!? やっぱり高いんだねっ!? わたし高いんだあああぁぁぁ!」

「えええ! ごめんねっ! なんかごめんなさい! 悪口で言ったんじゃないのですよ? 本当に!」

 

 ──窓から差し込んだ日の光がいい具合に二人を照らし、まるで映画のような友情誕生シーンだったにも関わらず。

 

「リンリンっ! あいりーんを泣かしちゃダメだろっ! あいりーん! 四月生まれはせいちょーが早いだけなんだって」

「り、リンリンってあたしですか!? そうなのですね!?」

 

 崩れた愛莉をどうなか宥めようとしている前田さんに真帆。智花もその後ろであわあわしているし。それを見てすっかり毒気の抜かれた様子の七島さんは苦笑いを浮かべながら私のほうを向いてきた。

 

「──永塚、さんでいいのよね?」

「紗季でいいわ」

「なら紗季。少しだけ時間をくれない? 親にも言わなきゃならないことだし、三人で話してみたいこともあるし。……ま、あの二人は乗り気みたいだからいいけどね」

「最低でも来週の月曜日には教えてくれる? 今日は木曜日だし、土日挟むから丁度いいでしょ?」

「わかったわ。でも誘ったんだから勝たなきゃダメよ? また部活がなくなるなんて思いはしたくないんだから」

 

 そう言って笑いあう。なんだ、こんな人たちなら作戦なんていらなかったのかもしれない。それほどに彼女たちは優しくて、それでいて自分を持っている。話を聞いてくれる。真帆や智花の言葉、そしてひなたや私、愛莉によって分かってくれたんだろう。

 

 ただ、必要なのはこの場所なんだって。このメンバーと部活がしたいって、きっと理解してくれた。

 

 その中に彼女たちも加わってくれると、私たちは嬉しい。

 

 

 

 

  -交換日記(SNS)04◆New

 

『おーい! いるかー! まほまほ』

 

『おー。ひな、いまきた。 ひなた』

 

『今日はいろいろあったわね。 紗季』

 

『でも良かった。本当に。みんな、ありがとう。みんなと会えて私幸せだよ。 湊 智花』

 

『それはわたしもだよ、智花ちゃん。本当にありがとう。 あいり』

 

『なんだなんだ! みずくさいぞ、もっかん! みんなあってのぶかつじゃんかっ。 まほまほ』

 

『うんっ。そうだねっ、真帆。 湊 智花』

 

『そう言えば愛莉とひなたは連絡きた? 紗季』

 

『おー。いおりはおかーさんからおーけーしてもらったらしい。 ひなた』

 

『え、えと、わたしのところも大丈夫みたい。五十鈴ちゃんもおっけーして貰ったって。 愛莉』

 

『よかった……。少し心臓のドキドキが収まったわ。 湊 智花』

 

『ふふっ。智花ってば帰り道も一番ソワソワしてたもんね。 紗季』

 

『ふぇ!? そ、そんなことっ! 湊 智花』

 

『なーなー。れんれんはどーなんだ? まほまほ』

 

『両親が出張だから返事はまだ送れないって。でも多分大丈夫だから三人とも来週から練習に参加するみたい。なんか楽しみね。 紗季』

 

『燃えてきたーっ! 後一人集めればいいだけだっ! まほまほ』

 

『そうだね。……あと、一人かあ。 湊 智花』

 

 

 

 




オリキャラ登場しました。挿絵を一応入れておくので良かったら。
ロウきゅーぶ! の原作の章変わりのところにある鉛筆書きのようなイメージで書いたのですが……。時間がなく、すごく雑になってしまったので先に謝らせて貰います。すみません。



【挿絵表示】

七島漣 6/8 A型 154㎝ 6年A組 



【挿絵表示】

夏目伊織 10/23 O型 151㎝ 6年A組


【挿絵表示】

前田五十鈴 12/3 AB型 164㎝ 6年A組


もう少しいろいろと入部を渋らせるつもりだったのですが、早く試合まで行きたいのもあり入部をスムーズにさせました。

あまりオリキャラだしたくないのですが、最低後一人だけ出さなければなりません。

後は、そうですね。交換日記にオリキャラを混ぜていいものなのか。
でも入れないのもなんか、不自然なような。同じ六年生なのに。この交換日記も初めて数回ですしね。
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