「あなたは……」
「……ぶらぶら」
最後に現れた少年を見て、シュテルとレヴィは一言ずつつぶやく。キリエとイリスも、彼の両隣で呆然とその様子を眺めていた。
そんな中、《王》も少年を見ながら彼に問いを返す。
「“護るべき《王》”と言ったな……貴様ごとき
《王》の問いに少年はこくりとうなずく。
「左様。主や王を守る事こそ、《騎士》たる
《騎士》の問いに《王》は気を引き締めながら答えた。
「如何にも。我こそが永遠結晶と無限の力を手にするべき《王》――ロード・ディアーチェである。貴様こそ何者か? 名を名乗るがいい」
その問いに《騎士》を名乗る少年はすぐに答えず、《
「失礼した。己はアレル。先に言ったように、王や主を護るために在る《騎士》である。だが今、己には仕えるべき主も王もいない。故に《王》――ロード・ディアーチェよ。貴君の麾下に加わり、その大望を果たすために
「アレル……」
アレルという名をつぶやき、ディアーチェは眉を寄せる。
なぜだろうか。アレルという名には聞き覚えがある。それに彼には初めて会った気がしない。
自身の記憶をたどり、頭の中で首をひねっていると……
「いかがかディアーチェ――いや、《王》よ!」
アレルに返答を迫られたことで、ディアーチェは我を取り戻す。そして――
「う、うむ! 貴様がそこまで言うのならよかろう。ロード・ディアーチェの名において、
「はっ、ありがたき幸せ。では貴君に忠誠の証を立てたい。どうかお手を」
「う……うむ…………」
その言葉にディアーチェはほのかに顔を赤くしながら、言われた通り甲を向けた手を差し出す。シュテルとレヴィもアレルに対し不思議な既視感を抱きながら、黙ってそれを見ていた。
だが――
「ちょ――ちょっと待って!!」
アレルがディアーチェの手を取り顔を近づけたところで、あらぬ方から声がかかり、ディアーチェたちはそちらに顔を向ける。そこには顔を隠しながらテーブルの影に隠れているキリエと、顔を赤くしながらも四人の様子を窺っていたイリスの姿があった。
「何か用か? 桃色の」
心なしか不機嫌そうな様子でディアーチェはキリエに声をかける。キリエは顔を隠したまま言った。
「し、臣下とか仲間にするのはいいけど、四人ともそろそろ服を着た方がいいんじゃない……は、恥ずかしくないの!?」
「恰好……」
レヴィがつぶやき、他の三人も自分の体を見る。
四人は体を構築して間もなく、当然体の上にはなにも着ていない――つまり素っ裸の状態だった。
しかし、ディアーチェは不満そうな表情のままキリエを指さし、
「貴様も大して変わらぬではないか」
と言い返した。キリエも先ほど自分の治療を済ませたばかりで、下着の上にシャツのみという格好で、アレルが出て来た途端慌てて身を隠し今もテーブルの裏にいる。
そんな彼女を助けたのは、ディアーチェの臣下の一人、シュテルだった。
「ですが、服を着た方がいいというのは一理あります。防御の面でいささか不安のある姿形であるのは確かかと」
「ボクは防御とか気にしないけど、スースーして落ち着かないよね」
シュテルは平らな胸をペタペタ触りながら進言し、レヴィも体を動かしながらそう言ってくる。アレルも立ち上がりながらディアーチェに告げた。
「確かに、この状態で戦いになれば不利なのは否めん。王よ、モモイロの言う通り、戦に備えて鎧ぐらいは装着するべきではないか」
アレルに言われて、ディアーチェも気を取り直したようにあごに手を乗せる。その奥でキリエはモモイロという呼び方に対して何か言いたげな顔をしていたが、ディアーチェたちは気にも留めず……
「それもそうだな……ならば」
ディアーチェが首肯すると、彼女のまわりに魔力が渦巻き、その身を包む防護服となった。細部が違うものの、その姿はやはりオリジナルが着ているものに似ている。
ディアーチェが目を向けるとシュテルとレヴィはうなずき、同じように魔力でできた鎧を着る。そしてアレルも純白の光を纏い、特製の鎧を装着した。
それを見てキリエは感嘆の息をつき、イリスは服とともに生成された武器を見て彼女らのもとへ進み出た。
「じゃあ準備もできたみたいだし、そろそろ動きましょうか。私たちの邪魔をしに来る子たちがいるから、王様たちはその子たちをやっつけに行ってくれる。あなたたちと同じ姿をしているから簡単にわかるはずよ」
イリスが言うと、ディアーチェは肩をすくめて言葉を返す。
「我らは誰の指図も受けん。力と体をもらった事は感謝するが、頼み事なら永遠結晶を手に入れた後で――」
「あの子たちの狙いも永遠結晶だとしても?」
その言葉にディアーチェはピクリと眉を上げる。それを見てシュテルが「ディアーチェ」と彼女の名を呼ぶものの……。
「行くぞ、シュテル、レヴィ……アレル、貴様も来るか?」
「無論。王の為に力を捧げると誓った身。行かぬ道理はない」
アレルがうなずくと、シュテルは仕方なく主に「御意」と返し、レヴィも「はーい」と声を上げる。
そして三人は割れた窓の隙間から、夜空に向かって飛んでいった。
「……いいの?」
キリエはそう言いながらイリスに顔を向ける。彼女たちだけを行かせてよかったのか、という意味で。
イリスは平気そうな顔で、
「大丈夫……あの子たち《四つの魂》は、永遠結晶……その持ち主に触れていた時期がある。おのずと解放のために動くはずよ」
「持ち主? そんな人がいたの? イリスはそのことを……」
初めて聞く事実にキリエはイリスに問いかけようとする。だが言い切る前にイリスが――
「ええ……
「――!」
そう答えたイリスの虚ろな目を見て、キリエはびくりと肩を震わせる。
そして思った。“この子は本当に私たちの星とパパを助けようとしてくれているのか?”と。
その一方で、イリスはモニターを表示して次の行動の準備をしながら、唇の端に笑みを浮かべていた。
(さて、苦労して目覚めさせたんだから存分に働いてもらうわよ、《王様》たち。あの子たちが近くで動き回れば“あれ”は必ず反応するはず…………待ってなさい、《ユーリ》)