魔法少女リリカルなのは 愚王の魂を持つ者   作:ヒアデス

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第10話 それぞれの戦い……そして

「はあっ!」

 

 レヴィはプレシアに接近し、剣型のバルニフィカスを振るう。しかし、プレシアは素早く攻撃を回避し、レヴィの剣は空を切る。そしてプレシアは回避した先から杖を振るって魔法弾を放ってきた。

 

「フォトンバレット!」

 

「うわ――そんな遠くから卑怯だぞ!」

 

 魔力弾を避けながらレヴィは再びプレシアに斬りかかるものの、プレシアはそれも回避し、彼女も再び魔法弾を放ってくる。レヴィはそれを剣で弾きながら――

 

「さっきからちょこまかちょこまかと。大人のくせにボクと直接やり合う勇気もないのか! 女ならここまで来て正々堂々勝負しろ!!」

 

「以前持ってたデバイスがあればそうしたんでしょうけどね。リンディに借りた(デバイス)ではとても近接戦はできないわ。悪いけどこのまま遠距離で勝負させてもらうわよ」

 

 剣を振るいながら挑発するレヴィだが、プレシアは乗らず射撃魔法を撃ち放ってくる。レヴィはうわっと驚いた声を上げながらそれを回避し――

 

「このヒキョウもの! だいたい、子供の喧嘩に親が出てくるなんて大人げないと思わないのか!」

 

「思わないわ! お菓子の取り合いだろうとアニメの言い争いだろうと、愛娘のためならすぐに駆け付けて娘の味方をする。それが母親というものよ! 今の私にとっての座右の銘である『娘☆命』にかけてもそれは覆らないわ!」

 

「……は? なに言ってんの? むすめいのち?」

 

 プレシアが吐いた妄言にレヴィは怒りも忘れ、そんな声を上げながらも……

 

「なんだかよくわかんないけど、王様からの命令を邪魔する奴はみんなボクの敵だ! フェイトとまとめて成敗してやる!!」

 

 レヴィは得物を構え、先ほどより速いスピードでプレシアに迫る。プレシアも先ほどのように回避して見せるが、フェイトの魔導データから造られただけあって、相手もかなりのスピードの持ち主。戦っていくうちに、徐々に癖を読まれて杖やバリアでガードせざるを得ない場面が出てくる。そうなったら専用のデバイスを持つレヴィに分があり――

 

「はああっ!」

「ぐっ――はっ!」

 

 プレシアは隙を見て空いた左手から雷撃を出し、レヴィが避けた隙に彼女と距離を空け、そこから砲撃を撃ち込む、だがレヴィは易々とそれを弾いた。

 

(リンディにはああ言ったけど、やっぱり厳しいわね。以前のデバイスなしだと使える魔法が限られる。特に、集中する暇がほとんどないこの状況じゃ――)

 

 プレシアは今もってSSランクに匹敵する技量を持つ魔導師だ。その技量からかつて一部の人間から《大魔導師》と呼ばれ、フェイトたちに対して自身もそう名乗ったこともあるほどの。

 その頭の中には百以上の術式が詰まっており、少し集中すればデバイスなどなくても、かなりの種類の魔法を使う事ができる――広域魔法や次元魔法などはやはり難しいが――。

 だが、自分と同じ高速移動型の魔導師を相手にして、術式を組み上げる暇がないこの状況では、一瞬で組めるレベルの魔法に限られてしまう。

 それでもプレシアの腕をもってすればAAクラスの技くらいは瞬時に撃ち出せるのだが、レヴィほどの相手にはそれも通じないようだった。

 

(Sレベルの魔法ならそう簡単に弾くこともできないんでしょうけど、あの子のスピードならそれも当たるかどうか……敵にしてわかるけど、本当に恐ろしいわね――)

 

 内心で愚痴を吐いているところで、レヴィは得物を下に向ける。何事かとプレシアが目を見張っていると……

 

「ちょこちょこと……もう頭にきた――だったら、これはどうだ!」

 

 そう言うやいなや、レヴィは得物を振るって青色の雷撃を水面に落とし、大きな水しぶきを上げてくる。八つ当たりか?

 ――いや!

 

「はああっ!」

「――っ!」

 

 水しぶきで視界が塞がれたところで、その向こうからレヴィが突撃してくる。プレシアはとっさに杖でガードするものの、レヴィの勢いは強く、あっけなく弾き飛ばされてしまう。

 そこへ――

 

「はあっ!」

 

 レヴィが剣を振るとそこから青い刃が飛んでくる。プレシアはバリアを張ろうと左手を掲げるが、刃はプレシアの眼前で無数に分裂し、彼女を取り囲んだ。それをバリア一つで防げるはずもなく――

 

「きゃああああっ!」

 

「母さん!!」

 

 無数の刃に切り刻まれ、プレシアの体は空中から落ちる。幸か不幸か、そこは壊れた足場がある場所で、彼女は思い切り体を叩きつけられた。

 

「まったく、邪魔してくれちゃって。じゃあ、まずはオバサンから……えっ? な、なにこれ?」

 

 先ほどフェイトにしようとしたように、プレシアにとどめを刺そうとレヴィは刃を向けるが、突然現れたブロック型の黄色いバインドが彼女の手足を封じ、身動きが取れなくなる。

 その隙にフェイトは痛む体に鞭打ってプレシアの元へと飛んだ。

 

「母さん――母さん、しっかりして!」

 

「フェイト……その様子なら大丈夫みたいね。よかった……」

 

 先ほどまで倒れていた娘が自分を抱き起こす姿を見て、プレシアは安心したように笑う。

 

「よくないよ! どうしてデバイスも持たずにこんな無茶を?」

 

 フェイトの問いにプレシアは笑みを浮かべたまま言った。

 

「あの時のように……何もできずに娘を失うようなことは、もうごめんだもの……それにこれくらい痛くもなんともないわ……私のせいで、今までずっと一人ぼっちだったあなたに比べたら……今さら遅いと思うけど……ごめんねフェイト」

 

 そう言いながらプレシアはフェイトの頭に手を回す。その言葉と感触にフェイトは目の奥からあふれてくる涙を止める事が出来なかった。

 だが、フェイトは涙を流しながらも、プレシアに向かって首を横に振る。

 

「ううん……」

 

「……」

 

 その仕草と表情をどう受け取ったのか、プレシアは顔を曇らせる。フェイトはさらに続けた。

 

「違うよ……私、一人じゃなかったよ。母さんに生み出してもらって、リニスに色々な事を教わって、アルフと出会って、今はお姉ちゃん(アリシア)もいるし、母さんに頼まれた用事がきっかけでできたたくさんの友達もいる。それに……」

 

 フェイトの手から金色の光が漏れ、プレシアの傷を治していく。それとともにプレシアの懐から金色の光が漏れた。

 それはプレシアが運んできた、フェイトの愛武器――《バルディッシュ》に他ならない。

 

「この子とみんなから道を切り拓く力をもらった……だから、私は一度も一人ぼっちになんてならなかった!」

 

『Set up!』

 

 その一声とともにバルディッシュは金色の刃を伸ばした武骨な剣《バルディッシュ・ホーネット》に変わる。フェイトは立ち上がりながらそれを掴み取り、一振りしながらプレシアを振り返った。

 

「あの子を説得してくるから……待ってて、プレシア母さん」

 

「――」

 

 フェイトの言葉にプレシアは涙と笑みを漏らし、うなずきを返した。

 それを見てからフェイトはレヴィの元へ向かう。あちらもバインドを解いて手足の自由を取り戻しているのが見えた。だが……

 

 あとは子供同士の問題だ。もう親が出ていく必要はない。

 そう思いながらプレシアは愛娘(フェイト)と、愛娘そっくりな(レヴィ)との戦いを見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

「はああっ!」

 

 リニスが勢いよく彼に杖を振り下ろす。アレルはそれを難なく大剣で受け止める。そこへ――

 

「はあっ!」

「――」

 

 俺は紺色の魔力弾を撃ち込むものの、アレルはリニスの杖を弾き、一瞬で後ろに逃れる。そしてその直後に――

 

「せああっ!」

 

 アレルは俺の前に現れて大剣を振り下ろす。俺は剣を突き出して防ぎ、今度はリニスが砲撃を撃ち出すが、奴は俺の剣を払いつつ、光を纏った“拳”で弾を弾いた。

 

「えっ!?」

 

 リニスは杖を向けたまま思わず目を見張る。それを目にしてアレルの眼が光った。

 

「リニス、避けろ!」

「――遅い!」

 

 俺が声を上げると同時にアレルは俺の前から消え、リニスの前に現れ剣を振るった。

 

「――ぐあっ!」

「この――」

 

 アレルから一撃をもらい、リニスの体は後ろに跳ねる。

 俺はアレルたちの元へ飛んで剣を振り下ろすものの、奴は大剣を振り上げて俺を弾き飛ばし、再び距離を取った。

 

「リニス、大丈夫か?」

 

「ええ、(かろ)うじて杖で防いでダメージを抑えました。まさか素手で砲撃を弾くなんて……」

 

 リニスは信じられない面持ちでアレルの右手を見る。籠手に覆われたその手は、今は光など纏ってなどいない。

 溜めなしの身体強化、あれが《光の変換資質》の力……いや、おそらく他にも……。

 

《健斗、気付きましたか? 彼が能力を使った回数》

 

《ああ。お前が来る前も含めれば、とっくに“5回”は超えてるってことだろう》

 

 念を飛ばしてくるリニスに、俺はうなずきと返事の念を返す。

 

 俺の固有技能はまわりより速く動けるようになる分、体にかかる負荷は相当なもので、今の俺でも一日に使える回数は5回が限度だ。

 だが、アレルは今の剣戟だけで2回は惜しみなく能力とやらを使っており、その前までを含めるとゆうに6回は能力を使っているはず。にもかかわらず、奴の顔から余裕が消えることはない。

 少なくとも無理して限界以上に能力を使ってるわけではなさそうだ。奴が人間ではないからか、もしくはそれも《光の変換資質》と関係があるのかもしれない。

 

(……あたりがやけに静かすぎる。《雷光》と《殲滅》、まさか《王》も……いつまでも健斗らに構ってる暇はなさそうだな)

 

 

「……」

「……」

 

「……」

 

 互いにしばらく睨み合ってからしばらくして、アレルはふいに一歩足を進める。

 それをリニスは目ざとく察して彼に飛びかかった。

 ――だが、それが彼の狙い。

 

「はあっ!」

 

 アレルは金色の光を纏いながら、速い速度で彼女に向かってきた。リニスはたじろぎながらも立ち止まり、杖を構える。そこで不意に彼の姿がブレた――。

 

「――させるか!」

 

 俺は剣の切っ先を向け、リニスの眼前に向かって魔力弾を撃ち出す。

 しかしその反対側からも金色の砲弾が二発撃ち込まれて、一発は魔力弾に、もう一発は俺の方に向かって来ていた。これを相手にしていたら絶対間に合わない。

 そう悟るやいなや――

 

 フライングムーヴ!

 

 技能を発動すると同時に、3発の魔力弾は動きを止め、その向こうでは静止したままのリニスに一太刀入れようとしているアレルがいた。

 俺は駆けながら剣を腰だめに構え――

 

 御神流・《飛燕》

 

「――はあっ!」

 

 アレルに向けて剣を振るい、斬撃の形をした衝撃波を放つ。

 さしものアレルもそれを見て動きを止める。それと同時に技能は解け、アレルは俺が放った斬撃とリニスの攻撃をその身一つで受ける形になる。

 だが――

 

「甘い!」

「きゃあ!」

 

 アレルは大剣を握りながら体をぐるりと回転させ、飛んでくる斬撃とリニスの杖を同時に弾き飛ばした。

 その衝撃でリニスは後ろに跳ね飛ばされる。アレルはそこを狙おうとするも――

 

「はあっ!」

「――!」

 

 すぐそばから俺が斬撃を打ち下ろすと、アレルはすぐに反応し大剣で受け止める。リニスもすぐに体勢を立て直し彼に雷刃付きの杖を振るうが、彼は素手で難なくそれを掴み取った。

 そして杖を握った左手を大きく振るい、俺に向かってリニスを投げ飛ばしてくる。

 とっさに受け身を取って彼女を受け止めるものの、その隙にアレルは剣を引き、そのまま俺に向かって振り下ろしてくる。そこで俺は、

 

「――《薙》!」

 

 横から剣を入れて相手の攻撃を払い、続けて二撃目で相手の剣を弾き、がら空きになった体に向けて三撃目を叩きこむ。しかしアレルは腕を巧みに操り、剣を翻すことで俺の斬撃を防いだ。

 なら――

 

「フライングムーヴ!」

「笑止!」

 

 俺は四撃目を撃ちながら技能を発動させた。急激な体感時間の変化によって自分の動きすら遅く感じる中、アレルも能力を発動させ俺に向かって剣を振り下ろした。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「……引き分けか」

 

 息を荒げる俺に対し、アレルは一息つくようにそうこぼして後ろに跳ぶ。

 くそ! こいつの能力には回数制限というものはないのか。《光の変換資質》といい、なんなんだこの騎士バカは!?

 

「なかなかやる。己の(オリジナル)とその好敵手だけあって一筋縄ではいかんか……では、今度はこちらから――」

 

 アレルはふいに言葉を止める。なぜなら……

 

「――えっ?」

「……?」

 

 グラグラと地面が揺れ、俺もリニスもアレルも辺りを見回す。

 そして俺たちは見た、園内の中心から空に向かって伸びる“赤い光の柱”を。

 

「なんだ、あれは?」

 

 それを見て、俺は思わずつぶやく。リニスはもちろん、アレルも呆然と“光の柱”に見入っていた。

 

 

 

 

 

 

「やっと見つけた」

 

 筒状のガラスの中に封じられた、赤く輝く巨大な鉱石の前に立ってイリスはつぶやいた。

 それを聞いて後ろにいるキリエもか細い声を上げる。

 

「もしかして……本当にそれが?」

 

 その声にイリスは「ええ」といいながら振り返り、心からの笑みを浮かべながら告げた。

 

「これが()が長い年月をかけてずっと探していた――《永遠結晶》よ!」

 

 

 

 

 

 この世界には、何でも願い事を叶えてくれる『不思議な指輪』もなければ、泣いてる女の子を助けてくれる『魔法使い』もいない。

 だから私は自分で行動を起こす事にした。

 

 私からすべてを奪った――《ユーリ》への復讐を!

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