魔法少女リリカルなのは 愚王の魂を持つ者   作:ヒアデス

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 初めての日記形式ですので今まで以上に至らぬ部分が多々あると思います。本編を2020年とした日付になっていますが計算しやすくするためでそれ以上の意味はありません。ご了承ください。


閑話3 日記(一部抜粋)

2011年6月4日

 

 今日、ついに僕と妻の間に待望の子供が誕生した。名前は『八神 はやて』。

 栗のような茶色がかった髪とぱっちりした目元が特徴のかわいい女の子だ。将来は妻に似た美人になるだろう。世の男どもが放っておかないに違いない。結婚? まさか、お父さんは認めませんよ。はやてはずっとお父さんたちと一緒に暮らすんだ

 

 さて、我が子の誕生とは別に一つ気になっていることがある。

 はやてが眠っているベッドにはいつの間にかもう一人赤ん坊がいて、はやてとその赤ん坊の間には鎖が巻かれた茶色の表紙の本が置かれてあった。

 赤ん坊は黒髪のどこにでもいそうな男の子だが、目の色が左右違っていて、右目が黒く左目が緑色だった。オッドアイというものだろうか。実際に見るのは初めてだ。

 赤ん坊ははやてと本、そして僕たちを見た後すぐに寝入ってしまった。妻はそれを見てくすくすと笑っていた。

 仲良く眠る赤子二人を妻とともに眺めた後、僕は看護師を呼び出して赤ん坊と本を引き取ってもらった。すぐに両親のもとに会えるだろう。

 

 

 

6月8日

 

 あの茶色の本がまたはやてのベッドに戻ってきた。何度病院に返してもその都度はやてのベッドに戻ってくる。病院側も一通り患者を当たってみたが、持ち主らしい人は見つかっていないそうだ。

 それを聞いてもしかしたらと思い例のオッドアイの赤ん坊について聞いてみたところ、あの子も両親らしい人が見つからないままで、現在乳児院という施設に預ける手続きを取っている最中らしい。

 

 

 

6月11日

 

 妻が退院し、はやてを連れて家に戻ってきた。初めての我が家にはやては落ち着かない様子でしばしばぐずり、僕と妻はなんとかはやてをあやした。

 僕たちの荷物の中にはあの茶色の表紙の本がある。何度届けても戻ってきてしまい、とうとう病院の方から僕たちで処理してほしいと頼まれてしまったからだ。

 あの子も今頃は乳児院で過ごしている頃だろう。早く両親が迎えに来てくれればいいのだが。

 

 


 

 

2013年6月14日

 

 あれから早いもので、はやても2歳になった。

 あの本は僕の書斎の本棚に収まったままで、今ではすっかり見慣れてしまった。鎖のせいで相変わらず中身を見ることはできないが。

 そう言えば、今日の夕食時に妻からあのオッドアイの赤ん坊の話が出た。

 妻の友達にある養護施設に勤めている職員がいるとのことで、その人によれば最近オッドアイの子供が乳児院から移って来たらしい。右目は黒で左目が緑とのことで、間違いなくあの赤ん坊だろう。その子の名前を決めようとした時に“けんと”と名前らしき言葉を言ったため、そのまま『健人』と名付けられたらしい。

 妻もあの子の事は気にしていたようで、なんとかうちで引き取れないかと言っていた。僕としては子供が一人増えるくらい構わないのだが。しかしはやてと仲良くなりすぎると、違う意味であの子からお義父さんと呼ばれることになる恐れが……それはさすがに許せな――

 

 

 

7月5日

 

 妻と話し合った結果、健人君を引き取るために養子縁組の審査を受けることにした。縁もゆかりもない子を養子に取るにはいくつかの審査を受ける必要があるようだ。それだけ大きな責任が問われているということだろう。

 はやてに兄弟ができるかもしれない事を本人に話したらすごく喜んでいた。公園デビューも難しい昨今では子供同士が知り合う機会も少なく、寂しいと感じているのかもしれない。

 

 


 

 

2014年6月1日

 

 養子縁組の審査に落ちてしまった。

 幼い実子がいる事と、僕ら自身養子を取るには若すぎることが理由らしい。もしかすれば妻がはやてを身ごもった後に籍を入れたことも原因の一つかもしれない。

 落ちてしまったのは仕方ない。もうしばらくは妻の友達を通して様子を見てみるとしよう。妻のそばでむくれているはやてには申し訳ないが。

 

 


 

 

2015年4月6日

 

 仕事先でとある外国人と知り合った。口元と顎にひげを生やした『ギル・グレアム』というイギリス人だ。

 僕の父親ほどの年齢の男だが、気さくな人ですぐに仲良くなった。

 グレアム氏はもうすぐ4歳になる僕の娘、はやてのことを何度も尋ねてきた。

 彼ははやての成長ぶりや日々の振る舞いを耳にしてはほほえましそうに笑い、そんな彼に僕もはやての事をいろいろと教えたが、あの子のそばに現れた茶色の本に話が移った途端、グレアム氏の目がギラリと光った。まるでその話が出てくるのを待っていたかのように。

 そして彼は茶色の本のことばかり聞いてくるようになった。あの本が欲しかっただけか。そう思ってがっかりしたもののこうも思った。ここまで娘自慢をさせてくれたんだ、あんな本が欲しいならあげてもいいだろう。鎖が巻かれていて中身が読めないような本が欲しいのならだが。

 だが、本とともにはやてのそばに現れた赤ん坊、健人君の事を話した途端、彼は驚愕し、健人君に関することを次々と聞いてきた。はやてや本の時よりも事細かに。

 明らかに尋常ではないと思った僕は仕事を理由に逃げるようにその場を去った。

 

 しかし、こうして後になって考えてみれば僕の方が過剰だったのかもしれない。色々不思議なところがあるとはいえ健人君はただの子供だ。グレアム氏があの子の事を知ったところでどうということもないだろう。……しかしなぜだろう、どうしても嫌な予感がぬぐえない。

 

 

 

5月10日

 

 妻の同意を得た上で再び養子縁組の審査を受けることにした。所帯を持って数年経っていることと仕事で昇進したことで、今度は合格する見込みが高いらしい。

 また落ちてしまった場合にがっかりさせないように、今度ははやてには内緒にしておこう。それにあの子の驚く顔が見られると考えたら、ギリギリまで内緒にしてみるのも悪くない。

 

 


 

 

2016年4月17日

 

 ようやく審査に合格した。後は本人と面談してお互いに同意すれば縁組は成立するとのことだ。

 

 

 

4月24日

 

 妻とともに施設を訪問し健人君と対面した。あれから実に5年ぶりの再会になる。向こうは覚えていないだろうが。

 僕たちと会った時、健人君は左目に眼帯を付けており、怪我でもしたのと尋ねた妻に彼は首を横に振るだけだった。そこで僕たちは彼が眼帯を付けている理由を悟った。おそらく緑色の左目を隠すためだろう。

 健人君と話してみて抱いたのは、年の割にしっかりしている、しかし誰も寄せ付けようとしない子供という印象だ。

 施設の人に聞いたところによると、目の色が左右違うことで他の子供との間で常にいさかいが起き、職員の中にも彼の目を気味悪く思っている人がいるらしい。そんな状況の中で、健人君は一年ほど前から左目に眼帯をつけるようになったとのことだ。

 もしはやてまで施設の子や一部の職員と同じ反応を見せれば、彼を再び傷つけるだけかもしれない。

 考え直した方がいいかもしれないと思いながら、僕と妻は施設を後にした。

 

 その夜、はやてに左右の色が違う目を持つ人たちの事を話した。はやては興味深そうな顔でそれを聞いて、会ってみたいと何度も言った。そこに嫌悪感や忌避感はない。

 そんな娘を見て、この子なら健人君と打ち解けることができるのではないか、僕と妻はそう思った。

 

 

 

5月15日

 

 あれからおよそ一月、僕たちは考えた末に健人君を養子にすることにした。すでに施設や本人の了承も取ってある。

 家に着いたら、まずあの本を彼に渡そう。あの本と健人くんの間には深い繋がりがあるような気がしてならない。まあ、いらないとつっ返されるとは思うが(笑)。

 

 すぐに彼の信用を得ることはできないだろう。しかし健人君に認められるようになるまで、僕らは努力を続けるつもりだ。そしていつかは僕らやはやての事をかけがえのない家族だと思ってほしい。

 

 今日の午後に健人君を引き取りに行く予定になっている。あの子と一緒に家に戻った時にはやてがどんな顔をするのか、とても楽しみだ。

 

 

 


 

 日記はここで終わっており、これ以降のページはすべて白紙である。

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