健斗とリリカルキャラが“あるアニメ”のキャラたちと出会う話になります。途中から中の人ネタの話になりますので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
オールストン・シーの地上部分は、施設の表の顔である遊園地エリアが広がっており、動かせるアトラクションはまだ少ないものの、関係者とその家族によって所々で賑わいを見せていた。
俺たちは母親たちと別れ、デビッドさんの引率のもと数少ないアトラクションに触れたり、クオン・テクニクスの新製品『エクストリームギア』を使ったスポーツの体験をしたり、体が空いているスタッフに取材して回ったりしていた。
その道中、真一郎さんとさくらさんがデートしているところを見つけた途端、ヴィルは彼らを追い、そのまま俺たちからはぐれて行った。まあ見た目は俺たちと変わらなくても中身は300ぐらいだし、万が一のことがあってもスタッフが丁重に保護してくれるだろう。
それからまたしばらくして、アスレチック・コーナーに目を向けてみると……
「シンクー! ナナミー! 二人とも頑張ってーー!!」
ふと耳に届いてきた声に反応してそちらを見てみると、俺たちと同い年ぐらいの女の子がアスレチック場に向かって一生懸命声を張り上げていた。ツインテールに結んだ茶髪とぱっちりした緑目が特徴のかわいい外国人の女の子だ。
彼女の視線を追ってみると、スポーツウェアを着た金髪の男子と黒髪の女の子が、無数に突き出たポールの上を跳ねるように飛びながら前へ進んでいた。
下にマットが敷かれてあるとはいえ、目がくらむような高さに臆する様子もなく、二人は軽やかにジャンプを続ける。黒髪女子の方は時折バク転でポールに手をつきその反動で前へ跳び、金髪男子は必死にジャンプを繰り返しながら彼女に並び続けていた。
ほどなくして二人はほぼ同時にポールエリアを抜け、休む暇なく急斜面の坂を駆け上げる。
坂を駆け上がった先は、左右に揺れる巨大なボールが挑戦者の行く手をさえぎる一本道となっており、その先に白線が掛けられたゴールがあった。
二人は全速力で駆けつつ、巧みに体をひねり、左右からくるボールを避けながらゴールを目指す。二人の速さは互角で同着もあり得るかと思った。
だが、ゴールまであと30歩ほどといったところで、金髪男子の横に巨大ボールが飛んできて、彼は思わず後ろに避ける。その間に黒髪女子は最後のボールを潜り抜け、ゴールまでまっすぐ走る。金髪男子もその後に続くものの、時すでに遅く――。
「GOOOOOOOL!!」
黒髪女子がゴールの白線を踏んだ瞬間、スピーカーから大音量が響き、彼女の到着と勝利を告げる。すると彼らの奮闘を見ていた観衆もワアアと歓声を上げた。
そんな中、金髪男子は止まることなく彼女に遅れてゴールする。だがゴール地点に付いた瞬間、彼はその場に膝と両手をついて倒れ込んだ。
歓声が沸く中、茶髪の女の子は肩を落とし残念そうな顔で金髪男子の方を見上げる。
そんな時だった……。
「すごーい!!」
「――えっ!?」
思わず声を上げたアリシアに、茶髪の女の子はそちらを振り向く。そして初めて、自分の近くで観戦していた俺たちの存在に気付いた。フェイトは慌ててアリシアを押さえて――
「ご、ごめんなさい、うるさかったよね。――アリシア、駄目だよ、いきなり騒いだりしちゃ!」
「だってあの二人、ほんとにすごかったんだもん! それに私だけじゃなくて、みんなだって騒いでるじゃん!」
歓声を上げる観衆を示しながらアリシアはそう指摘する。するとフェイトもばつが悪そうに口をつぐんだ。
フェイトがアリシアに注意したのは、アリシアが騒いだからだけじゃない。金髪男子が負けたのを見て、少女が落胆しているのがわかったからだ。
だが、当の少女はぶんぶん片手を振って――
「ううん、気にしないで! その子の言う通りだから。……あなたたちも見てたの?」
「うん! 途中からだけど二人ともすごかった!」
少女の問いにアリシアは強いうなずきと笑みを見せる。それにつられたのか、それとも二人を褒められたからか、少女はふふと笑った。……はて、この子の声、誰かに似てるような……。
「ベッキー、ただいま!」
少女が笑顔を取り戻したところで、アスレチック場にいた金髪男子と黒髪女子が手を振りながらこちらに向かってくる。親戚なのか二人とも青い目をしている。
ベッキーと呼ばれた少女は彼らの方を振り向き……
「あっ――シンク、ナナミ、二人ともお疲れ様!」
「お待たせー! 私たちの雄姿見てくれてた……ってあれ? この子たちは?」
黒髪少女も大きく手を振りながらベッキーさんに応えるものの、俺たちを見て手の動きを緩めながら目を丸くする。そんな彼女にベッキーさんは言った。
「二人の競争を見ていた人たちだよ。たまたま私の近くにいたらしくて……」
「はじめまして、私アリシア! 二人ともエクストリームギアもつけてないのにすごい動きだった!」
ベッキーさんの横から出てきたアリシアは自己紹介しながら二人を賞賛する。それを聞いて――
「いやあ、これでもニンジャの末裔だからね! なんとかギアなんかに頼らなくてもあれくらいできるよ!」
ナナミという黒髪女子はそんな冗談(多分)を言いながら、照れくさそうに頭をかく。
一方、ナナミさんの声を聞いて俺はまたもや引っかかるものを覚えた。今度はなのはもそれを感じたらしく、じっと彼女を見る。
それに気付かず、ナナミさんは頭から手を離して口を開いた。
「あたしは
「あっ、そういえば私もまだ自己紹介してなかった! 私はレベッカ・アンダーソン。小学五年生で、愛知県の紀乃川という町から来ました」
ベッキー――もとい、レベッカさんはそう言いながら姿勢を正す。そして最後に、ナナミさんと競争していた金髪男子が声を上げた。
「僕はシンク・イズミ。ベッキーと同じく紀乃川から来た、アスレチックが趣味の小学五年生です。どうかよろしく」
「奇遇だな。俺たちもほとんどが同じ学年だ。俺は御神健斗。海鳴というところからやってきた」
そう言うとシンクは「同い年! 本当に!?」と言いながら目を輝かせる。
そこで、今まで様子を見守っていたデビッドさんも沈黙を破り、シンクに向かって尋ねた。
「イズミ……もしかして君、
「――そうです! 父さんを知ってるんですか?」
デビッドさんの一言にシンクは目を丸くしながら聞き返す。デビッドさんはさわやかな笑みを浮かべながらうなずいた。
「ああ。うちで見つけた巨大鉱石の調査にあたっていたのが君のお父さん――
デビッドさんはそこで名前と職業を名乗りながらシンクに握手を求める。シンクは快く彼の手を握り返した。
それから他のみんなも一人一人名前を名乗り、ここに来た経緯などを話す。そうしているうちに……。
「へえー。シンクとナナミは従姉弟なんだ」
「うん。シンクのお父さんの妹があたしのママ。それにシンクのお母さんはイギリス人で、あたしの父方の
「――そうだったんですか! シンクさんはもしかしたらと思ってたけど、ナナミさんも……。じゃあもしかして……」
「うん、私もイギリス人。シンクとナナミとは小さい頃から家族ぐるみで付き合いがあって。まあ日本での生活が長くて英語もうまく話せないから、イギリス人だって言っても信じてもらえない事も多いんだけどね」
アリシア、ナナミ、フェイト、それにレベッカも加わって四人はすっかり打ち解けたように話す。それを聞いてなのははついに――。
「あの、ちょっといい?」
その言葉に、四人はなのはの方を向いて「どうしたの?」と言いたげな顔をする。そんな彼女たちになのはは――
「気のせいかもしれないんだけど……ナナミさんって、フェイトちゃんとアリシアちゃんに声が似てない?」
その言葉にレベッカ以外の三人が顔を見合わせる。そしてぷっと笑い――
「「「あははー!! そんなまさか!!」」」
「えっ……」
「ほんとだ……」
「よく聞くと似てるかも……」
本人たちも気付いたようで、わざとらしく三人続けて喋り、お互いの声を確かめ合う。
それを見て……
「実は、最初アリシアちゃんの声を聞いた時からもしかしたらって思ってたんだけど……本当にそっくりな声ね。世界には同じ顔の人が三人いるって聞いたけど、まさかナナミと同じ声の人がいるなんてびっくり」
レベッカは頬に手を当てながらつぶやきを漏らす。アリシアの声に反応したのはびっくりしただけでなく、ナナミと同じ声に驚いたかららしい。
そんな彼女も実は……。
「レベッカさん、変なお願いだと思うけど、今の言葉を男口調で喋ってくれないか。できれば“僕”という一人称も入れて」
俺がそう言うと、レベッカは「えっ?」と戸惑う。それを聞いて何人かは変な目で俺を見るが、なのはやフェイトも気付いたらしく……
「レベッカさん、私からもお願いできないかな。笑ったりしないから」
「うん。勘違いかもしれないけど、知ってる人の声に似てる気がする。もちろん嫌だったら無理にと言わないけど……」
二人からもそう言われ、レベッカは視線を宙に浮かせて少し迷うそぶりを見せながらも。
「まあ、シンクの物真似と思えばいいか。……じゃあいくね。
…………最初アリシアの声を聞いた時からもしやと思ってたけど……本当にそっくりな声だ。まさかナナミと同じ声の人がいるなんて…………僕もびっくりだ」
…………。
途中から興が乗ったのか、抑揚をつけながらレベッカは言い終える。しかしあぜんと沈黙する俺たちを目の当たりにして、彼女はだんだん我に返ったように顔を赤くして、ぼそりと「これでいい?」と聞いてきた。
だが俺たちの口から出たのは、哄笑でも、彼女に対する返答でもなく……。
「クロノ君と同じ声だ!!」
なのはがそう叫んだ瞬間、皆は「あっ!」という声を上げる。
そう。ナナミがテスタロッサ姉妹と同じ声のように、レベッカもクロノとまったく同じ声だったのだ。
同じ顔の人間が世界に三人いるのなら、同じ声の人は何人いるのだろう。
まあミッドチルダみたいな異世界も含めれば、同じ声の人間が何人かいても不思議ではないのかもしれないし、これまでの間にも同じ声の持ち主を何人も見てきたのだが。
困惑するレベッカたちにフェイトとアリシアは簡単にクロノの事を教える。それを聞いてレベッカも「私と同じ声の男の子がいるなんて」と、信じられないような口調でつぶやいた。
それを聞いて俺の脳裏にあるアイデアが浮かぶ。そして俺はレベッカやナナミに向かって言った。
「信じられないならちょっと試してみるか?」
「試すって……?」
「なになに? なんか面白そうな予感がするんだけど!」
可愛らしく首を傾けるレベッカと、俺がやろうとすることを察したらしく身を乗り出してくるナナミ。彼女らに向かって俺はある遊びを持ち掛けた。
◇
『もしもし、プレシアです』
「あっ、もしもし母さん、フェイトだよ」
『フェイト……どうしたの、なにかあった?』
フェイト
「ちょっと暇が出来たから母さんの声が聞きたくて……迷惑だった?」
『そ、そんなわけないわ! 私なんかの声でよければいつだっていくらだって聞かせてあげるわ!』
「そこまでしてくれなくていいよ。ところでちょっと母さんにお願いしたいことがあるんだけど」
『なにかしら? フェイトがお願いなんて珍しいわね』
娘への溺愛ぶりを確かめて、ナナミはニヤリと笑みを浮かべて言った。
「実はオールストンを回ってる間にお金なくなっちゃって、ちょっとお小遣い貸してもらえないかなって」
『本当に!? いくら必要なの? 一万円くらいあれば足りるかしら?』
「一万! ほんとにいいの!?」
いきなり一万ものお金が出てきたことに驚きながらもナナミは思わず目を輝かせる。すると彼女の横から――
「ちょっと! さすがにまずいよ!」
隣からレベッカの声がかかり、ナナミも我を取り戻す。するとプレシアはレベッカの声に気付き――
『あら? 誰かいるの? なのはちゃんたちじゃないみたいだけど……』
「あっ! ええと……園内を回ってる間に仲良くなった子たちがいて、その子が声をかけてきたんだ。レベッカっていう子――」
ナナミはそう言って誤魔化し、プレシアも「そう」と納得したような声を漏らす。
そしてナナミは小遣いに話を戻し。
「あっ! よく見たら結構残ってた。やっぱりお小遣いはいいや。ありがとね母さん」
『そう? 別に無理しなくていいのよ。愛娘たちのためなら一万や二万どうってことないんだから。……ところでフェイト、ちょっと声の雰囲気が違わない? ……どちらかというとアリシアに近いような……でもあの子にしても少し声色が違うし……まさかとは思うけど』
「――き、気のせいだよ。じゃあ母さんの声も聞けたしもう切るよ! じゃあまた後でね!」
プレシアが疑念を抱き始めた事に気付き、ナナミは少し強引に話を打ち切り、電話を切る。
そして彼女は、フェイトにスマホを返しながら言った。
「ふぅー、危ない危ない。まさか最後の方で気付きかけるとは。でもフェイトとアリシアのお母さん、いい人みたいだね」
「う、うん。ちょっと行きすぎちゃうところもあるけど……」
「優しくて仕事もできる自慢のママだよ!」
母親への賛辞にフェイトとアリシアは嬉しそうな様子で肯定する。
ナナミはほほえましそうに二人を眺めてから、次はレベッカを見て……
「じゃあ次はレベッカの番ね。クロノ君って人のふりして彼のお母さんに電話をかけるの」
「う、うん……でも、ほんとにいいのかな?」
「大丈夫大丈夫。ちょっと反応見るだけだし、リンディさんにもプレシアさんにも後でちゃんと説明して謝っておくから」
不安そうに言うレベッカに俺はそう言って聞かせながら……
「ただ、今度は少し難しいな。クロノこっちにはいないしあいつのスマホもないし、ただ普通にかけただけじゃすぐにばれてしまう。プレシアさんも怪しんでいたようだし、もう一工夫入れないと……」
そう言いながら俺は腕を組み、リンディさんをだま――試す算段を立てた。
『……もしもし、ハラオウンですが……』
非通知でかけてきた相手に対し、慎重な声でリンディは応答する。それに対し……
「あっ、もしもし……クロノです」
『あらクロノ。どうしたの? 非通知でかけてきたりなんかして』
息子
「えっ、本当? ……仕事の都合で一時的に非通知にしておいたんだけど、そのままにしちゃったかな」
『あら、そんな仕事があったの。まあ今は部署も違うし、とやかく詮索はしないわ。ところで何の用事かしら?』
「う、うん……実は――」
仕事で非通知にしていた、という言い訳にリンディがあっさり納得したことに内心戸惑いながらも、レベッカは
「じ、実は僕、前から考えていたんだけど――エイミィと結婚しようと思うんだ! ……て、えっ!?」
言い終わった瞬間、言った本人が動揺しながら健斗の方を見る。エイミィとは一体誰なのか普通なら気になるところだが、今はそれどころではない。しかし彼女とは逆に、リンディは考え込むように間を空けて……
『…………そう。いいんじゃない。で、いつ籍を入れるの? 式は挙げるのかしら? 今は挙げなかったり身内だけで簡単に済ませたりするところも多いけど、やっぱり息子夫婦の晴れ舞台は見ておきたいわね』
「い、いえ、そこまではちょっと――っていうか、いいんですか? 息子さんが結婚するって言ってるんですよ?」
思わず素になって尋ねるレベッカに、リンディはどうとでもなさそうに言う。
『ええ。クロノが選んだ人なら反対するつもりはなかったし、エイミィならなおさら反対する理由がないわ。ああ見えてしっかりしてるし、安心してクロノを任せられる』
「そ、そうなんですか……」
厳しい口調ながら、そこからにじみ出る息子への信頼にレベッカは驚くと同時に、クロノという人物の母親に尊敬を覚える。そこへ不意に――
『ところで――あなたクロノじゃないでしょう』
「えっ――!?」
突然言い当てられレベッカは戸惑い、否定することも忘れて呆然とする。そんな彼女にリンディは言った。
『最初から妙だと思ってたわ。あの子が仕事中に私にタメ口を使ったり、それを直そうとしなかったり。まあ仕事で非通知を使う事はあるのは本当だけど。でも、さっきの受け答えではっきりしたわ。あの子にしては反応がおかしいし、どこか他人事みたいだった。だからあなたがクロノじゃないと確信したの』
「……」
ずばずば言い当てられレベッカは言葉を失う。まるで推理アニメやドラマで犯人を追いつめているシーンみたいだ。そう思っている彼女にリンディはさらに続ける。
『ところで、さっきプレシアって人のところにも、彼女の娘さんそっくりな声の子から電話がかかってきたみたいなんだけど、もしかしてそれもあなたたちの仕業? たしかレベッカさんって人の声が聞こえたってプレシアは言ってたけど』
「――す、すみません! そのレベッカっていうのは私のことです! でも、私もナナミもあなたたちから何か取ろうとした訳じゃないんです! お小遣いがどうのっていうのも思わず口から出たことで――」
頭を下げる勢いでレベッカは謝る。そんな彼女にリンディは柔らかい口調で、
『ええ、わかってるわ。お金が出てきそうになった途端、慌てて態度を変えたもの。詐欺の類じゃないことはわかってるわ。たぶんフェイトさんとクロノに似た声の友達ができて、私やプレシア相手に通用するか試してみたくなったという所でしょう……そんなわけで、これからそのいたずらを考えた張本人と話をしないといけないわね。レベッカさん、ちょっとその子に代わってもらえるかしら』
優しそうなままの、しかし有無を言わさぬ厳しさのこもった声に、レベッカは「はい」と言いながら健斗を手招きする。話の様子からバレた事には気付いているようで、健斗は仕方なさそうに息をつきながらスマホを受け取り耳に当てながら「もしもし」と言った。
その直後――
『健斗く~ん! 人様を使ってまた随分たちの悪いいたずらをしてくれたものね~! そのことについて、今からちょっと私と“お話”しましょうか』
「――!!」
その後、俺はリンディさんから二年ぶりの《お叱りタイム》を受け、改めて彼女の怖さを思い知った。我ながら少し調子に乗りすぎたな。
それから、俺はナナミとレベッカに向かって……
「悪かった。つい調子に乗っちまったみたいだ。とりあえずレベッカたちが悪いわけじゃないのは向こうもわかってくれているみたいだから、安心してくれ」
「あははっ! いいよ別に。あたしたちも承知の上で乗ったんだし。結構楽しかった!」
「もう、ナナミも反省した方がいいと思うけど……。でも、いい人たちだったね。フェイトさんやクロノ君って人、それに顔も知らない私たちのこともよく考えてくれていた」
そう漏らすレベッカにフェイトとアリシアはうんとうなずき、他のみんなも笑みを浮かべる。
そしてナナミはうーんと背筋を伸ばしながら言った。
「じゃあ健斗たちと話しているうちに疲れも取れたし、広場みたいなところでも探して棒術でもしようか」
「おっ、いいね! 今度は負けないよ!!」
棒術という言葉にシンクは目を輝かせながら気炎を上げる。さらに雄一も――
「棒術っスか!? それって棒を使って戦う、あの棒術?」
「うん。父方が『高槻流棒術』やってるから……君も棒やるの?」
ナナミの問いに雄一は首を横に振りながら、
「いえっ、俺がやるのは剣っす! 実家が『草間一刀流』っていう道場やってるんで」
「草間……そういえば聞いたことあるなあ。関東じゃ『橘流』に並んで由緒正しい流派だって。……じゃあ君もあたしたちとやろうか。棒術と剣術の異種試合っていうのも面白そうだし。シンクもいい?」
「もちろんだよ! 僕も雄一君と試合してみたい!」
「ま、待って雄一君! 水族館はどうするの? 一応私たち自由研究で来たんだよ!」
盛り上がる三人になのははそう言うものの、雄一は片手を立てながら告げた。
「悪い。俺はナナミさんたちと打ち合ってくるから、水族館にはお前たちだけで言っててくれ! 俺は元々鉱石をテーマにする気はなかったしな!」
雄一はそう言ってナナミたちのもとに走り寄る。俺たちはそれをあ然としながら見送った。
ヴィルに続いてあいつも脱落か……。それなら俺も……。
そう考えているところで、シンクが歩み寄って来るのが見えた。彼は俺に向かって手を差し出す。
「じゃあ、しばらくの間雄一君を借りて行くよ。健斗君たちは自由研究頑張って」
「おう。シンクも棒術の稽古頑張れよ! ついでに雄一の奴をしごいてやってくれ!」
そう返事を返しながら、俺もシンクの手を握った。
そうして俺たちはシンクたちと別れ、アスレチック・コーナーでのひと時は終わりを迎えた。
今から三年後にシンクが……さらにその数ヶ月後にナナミとレベッカを加えた三人が、かつて300年前に俺と守護騎士たちが行ったことのある異世界《フロニャルド》に行くことになるのだが、それは本当に別の話である。