私は揺れる船の上で、見慣れた
屈強かつ強面な父様の手の中には、ぐっすり眠りについている赤ん坊がいるのだ。
赤ん坊もよく父様の姿を気にせず寝ていられるな……娘の私が言うのもアレだが父様の顔は子どもにはなかなか馴れぬものだろうに。
……いや、それよりも何故父様が赤ん坊を!?
完全に固まった私の前にずいっと、父様は手を差し出してくる。
「レオナ、世話はお前がやれ。」
「…と、父様……この赤ん坊は……」
「お前の妹だ。
弟妹が欲しいと言ってたじゃねぇか。」
「なるほど、私の妹……妹…!?」
声を荒げた私にポンっと赤ん坊を押し付け、父様は船の中へと消えていってしまった。
腕の中でもぞりと動く暖かい赤ん坊を抱いて、私は立ち尽くした。
確かに…確かに私はペロスペローの自慢話が羨ましく感じ、10年ほど前に父様に弟妹が欲しいと言った事があった気もするが……本当に妹が出来るなど誰が想像できようか!!
いやいや、そもそも子育てなどどうすれば良いのだ!?
今までの人生、殆どを戦闘に費やしてきた私に
……こ、この柔らかく脆弱な生き物を育てろと父様は言うのか…?
無言でオロオロする私の後ろから、頼もしい二人が声をかけてくる。
「お嬢、いつまで固まってるんだ。
……いらねぇなら、捨てても良いかカイドウさんに聞きゃあいい。」
「いやいや、まさかカイドウさんがなァ…!
あの時以上に驚いたぜ~……って、おい。
レオナ? 固まっちまってどうした?
…キングのアホの言う通り、いらねぇならカイドウさんに言えばいいんじゃね?」
「キング、クイーン……
いや、要る要らないの問題ではない。
……なにより私の妹と言うことは、それ即ち父様の娘!
ならば、無下にはできない……それに父様がくれたものを捨てるなんて、私に出来る筈がないッ…!!
よって、この赤ん坊は私が面倒を見る。
キング、クイーン……そして、今ここにいる皆よ。
騒がしくしてすまなかったな、だがこの赤ん坊には手を出さぬ様にしてくれ。
……では各々持ち場へ戻れ!」
「「「「へい!レオナ様!」」」」
「本当ファザコン拗らせてんよなァ……まぁ、レオナが良いなら良いけどよ~。
んじゃ、おれは作業戻るぜ。」
「……お嬢らしい判断だ。」
わらわらと仕事に戻っていく船員達とは逆に、私は赤ん坊を抱き抱えながら自室へと向かって行く。
…………次の島で子育て本があることを祈りながら。
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あの衝撃の赤ん坊との出会いから1年。
その時の赤ん坊は父様からヤマトと名付けられ、なんとか無事に育てられている。
今現在ヤマトは1歳6ヶ月ほどだ。
……まぁ、生まれた瞬間が分からないから予測でしかないがな。
しかし、どうやら調べた所によると赤ん坊は片時も目を離してはならぬ存在らしく、ちょっとした事で死ぬと言う。
例えば、赤ん坊用のベッドから落ちたりなどだ。
……挙げ句には少し力を込めるだけで潰れる可能性すらあると言う……なんと恐ろしき生き物だ!
赤ん坊とは…子どもとは……なんて繊細な生き物なんだ……。
こんなにも育児が大変で難しいなんて私は知らなかった。
父様……少し不器用な貴方がこの様な困難を乗り越え、私を育ててくれたこと……本当に、本当に感謝してもしたりない!!
必ず、育てて貰った恩は返す。
なにがなんでも親孝行してみせるからな、父様!
と、そんな事を考えながら私は手作りの本をヤマトに読み聞かせしていた。
他にもヤマトの服もベビー用ベッドもあらゆる物が私の手作りだ。
なにせ、なかなか赤ん坊の為の物が島で見当たらない……苦肉の策だ、許せヤマトよ。
いつかは父様の子どもとして相応しき品を、この姉が手に入れてやるからな。
ぺら……ぺらっ…と。
ヤマトは上手に布製の絵本を捲る。
「ふふふ、ヤマト。
少し捲るのが早いぞ?
それでは私が読んでやれぬだろう。」
「んむぅ?」
こてんっと首を傾げ、キラキラと溢れんばかりの愛らしい瞳をヤマトは私に向ける。
……あぁっ!!なんて可愛さだ!流石は父様の子ども!!
父様と同じ瞳の色も、私と同じ角も全てが愛らしい。
絵本の中の龍を指差すヤマトに私は微笑みながら話しかける。
「ヤマト、龍が好きなのか!
ふふふふ……流石は私の妹だ。
その強くて格好いい龍は父様だ、と・う・さ・ま……わかるか?」
「…むぅ…としゃ?…としゃま!」
「!!?
や…ヤマト!今、父様と言ったのか!?
なんて理解が早いんだ……やはりお前は父様の子ども!天才だ!!」
ヤマトが素晴らしい言葉を覚えた事が嬉しすぎて、つい私は少し強くヤマトを抱き締めた。
きゃっきゃっと笑うヤマトが本当に愛おしい……。
絵本を握るヤマトをいつもの様に抱き抱え、私は立ち上がった。
「行くぞ、ヤマト。
その天才ぶりを見せなくては…!!」
早足で部屋を出る。
もちろん、懐に乳児食を忍ばせるのを忘れずに。
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「父様、聞いてくれ…!!」
鬼気迫る顔で現れたレオナ様に俺たちは驚いた顔をする。
部下である俺たちの報告を聞きながら、酒をあおっていらっしゃるカイドウ様も少し驚いた顔をしている……と思う。
正直カイドウ様の表情は、普段から怒っている様なお顔なので分かりづらいため、定かではないが。
そんな考え事をしてる俺の前を、カツカツと音を立てながらレオナ様は横切ると、腕の中にいたヤマト様をカイドウ様に見せ、仰った。
「ヤマト、ほら……さっきの言葉を。」
レオナ様のお言葉に俺たちはきょとんとすることしか出来ない。
暫しの沈黙の後、ヤマト様が口を開く。
俺たちは一体なにを……とゴクリと喉を鳴らした。
「とま…しゃ! としゃま~!」
そう言って腕をカイドウ様の居る方へ伸ばすヤマト様。
カイドウ様は目を見開き、レオナ様は普段の無表情が信じられぬほど綺麗に微笑んでいた。
「聞いただろう、父様。
ヤマトは父様を呼んだんだ!
初めてのちゃんと意味をなす言葉が“父様”だなんて…ヤマトは天才に違いない!」
「そうか、おれを呼んでやがるのか。
ウォロロロロロ…!
なかなか、レオナに似て優秀じゃねぇか!」
「ふふふふ!
父さんに似たんだろう!
偉いぞ、ヤマト。
ほら、父さんが褒めてくれているんだ、礼を。」
「とうしゃ!んま!」
「こりゃ、なんて言ってる?」
「きっと、礼を述べたのだろう。
まだハキハキ喋るには歯が足りないからな。」
「ウォロロロロ!
そりゃ、そうか!」
「ふふ、だがすぐに成長する筈だ。
なにせ父様の子なのだから!」
「ま、む? としゃま~、まっ!」
平和すぎる光景に俺も他の奴らも固まる。
あれ……ここ百獣海賊団だよな?
あの普段恐ろしい猛獣の様なカイドウ様はどこに……あの氷の様なレオナ様の冷徹さはどこに…。
いまだに、笑い合う親子の声がカイドウ様の自室に響いていた。
ー女主詳細(暫定)ー
カイドウの娘であり、ヤマトの姉。
身長:原作開始時320cm(予定)
名前:レオナ(原作開始時40代)←前後するかも
イメージ図↓
【挿絵表示】
ー後書きー
ぱっと思い付いたネタなので続くかは未定。
読んで下さりありがとうございました!