今話は元ネタを知らない人には少し分かりにくい内容になっているかも知れません
それと悪霊とあるサーヴァントの生前にオリジナルな設定が入るので…地雷な方は注意です
一行が移動してきてはや数十分、酒場の中はすっかり盛り上がり黄金の鹿号の船員も、その他の客達も入り乱れ吞んでいた
そんな店内の喧騒と離れた位置でフードを被り顔を隠しながら1人で飲むアヴェンジャーを見ながら端の方に座る立香とマシュ
「リュパンさん…大丈夫でしょうか
『準備があるから先に行ってて』
なんて行って何処かに行ってしまいましたが…」
「うん…何をしに行ったんだろう」
一度自分達から離れ何かの準備をしに行った仲間を2人が心配していると不意に入口の扉が開いた
待っていた仲間かと顔を向ける2人、しかしそこに立っていたのは可愛らしい少女ではなくヨレヨレの服を着た浮浪者風の男だった
「さ、酒を…一杯…」
その男が上着の内ポケットから出した手には銅貨が数枚、店で一番安い水で薄めたエールを一杯飲むのがやっと…そんなものだった
そのお金と引き替えにエールを受け取り端の席に座る男
そんな男に酔っぱらった海賊の一人が絡みに行った
「おい兄ちゃん!名前は!?」
「デ、デジレ…ボードリュ…」
隣に座りつつ肩を組み絡む海賊
そんな海賊は揶揄するように酒を飲みつつ言った
「こーんな場末の酒場に来てよ!良いカモになっちまうぜ?」
「し、仕方ねぇだろ…
す、好きなんだよ…船乗り達に聞く…
ぼ、冒険譚ってのが…」
その言葉に大笑いする海賊
そんな海賊の船長であろうか、少し上等な服を着た酔っ払いが近寄ってきた
「なァら俺様の冒険を聞かせてやるよ!!
今は酒も飲んで気分が良い…特別にタダでいいぜ!!」
「あ、あぁ…聞かせてくれよ旦那…」
「その時サメが襲って来やがった!
だが俺はソイツの頭に一発!鉛玉をぶち込んでやった!!」
「へぇ…そいつはすごいなぁ…」
「なんか怪しげなその島に上陸した!
そして洞窟を見つけてよ…中に入っていったんだ」
「つ、続きは?それから…どうなったんだ…?」
「どうだ!偉大な俺の冒険は!」
「さ、さすがだなぁ…
お、おれとは比べ物にならないくらい、冒険してんだなぁ…
さ、捜し物1つ見つけられねぇ…おれとは大違いだぁ…」
武勇伝を語り終えた海賊に対してオドオドと自分を卑下しつつ答えるボードリュ
「ほーぉ、お前なんか捜し物してんのか!
ならアイツを頼ってみればどうだ?」
「あ…アイツ?アイツって…誰だい…?」
「話を聞いてくれた礼に教えてやるよ、ソイツの名はティア・ダルマ
ここから離れた島に住んでる預言者の女さ!」
武勇伝を語りすっかり気を良くした海賊は上機嫌に肩を組みながら教えた
「へぇ…そんな奴がいるんだなぁ…
で、でもおれには行けそうにもねぇなぁ…
そ、それで…ソイツはどこにいるだ…?」
「オイオイ、さすがにそこまでは教えられねぇって!
自分で探し出してみるこったな!」
「ま、まぁ…仕方ないよなぁ…
あ、ありがとよぉ旦那…良い話聞かせてくれてよぉ…」
そう言いながら持っていたジョッキを傾けエールを呑もうとするボードリュ
「お…の、飲みきっちまった…
き、今日は…もう帰るよ…」
名残惜しそうにそう言いながらジョッキをその場に置いて席を立ち出口に向かうボードリュ
その時壁に立てかけられていたマシュの盾にぶつかってしまった
「わ、悪い…お嬢ちゃん…
こんなモンしか無いが…詫びに、受け取ってくれ…」
慌てた様子で服を漁るボードリュ、そして内ポケットから一輪の萎れた花を差し出すと店から出て行った
「これは…ルピナスの花…?」
手渡された花を眺めていたマシュ、すると不意に何かに気付いた様子で顔を上げるとボードリュが去って行った出口の方に顔を向けた
「マスター!キャプテン!今すぐあの方を追い掛けましょう!」
その頃ある海域にて──…
嵐の中を進む幽霊船の甲板にて手に聖杯を携えた悪霊──デイヴィ・ジョーンズは佇んでいた
「この海で死んだ魂はオレのロッカーに仕舞われる…
ならばサーヴァント共の魂を呼び戻す事が出来るかと思ったが…」
そう独り言をこぼしながら聖杯を掲げるジョーンズの前に複数の召喚陣が浮かび上がるとそこから黒ひげやヘクトール
アン・ボニーにメアリー・リード…その他にもたくさんの英霊達…
特異点が再構築されるよりも前、
「上手くいったは良いものの…
正規の召喚で無いからには弱体化しちまうか…まぁいい」
そう悪態をつきながら歩く悪霊、そしてある男の前で止まるとニマリと笑いながら声を掛けた
「久しぶりだなァ…?
えぇ?エドワード・ティーチィ…」
「ジョ、ジョーンズ…!」
消えたと思ったら再度召喚され困惑していた黒ひげ
しかし声を掛けられ顔を上げ、目の前に立つ男を見ると冷や汗を掻き始めた
「さぁ生前の貸しを返して貰おうか!
貴様の望み通りに、ベンジャミン・ホーニゴールドを消し!
ラ・コンコルド号を奪い!
そしてその船長にしてやったんだからなァ!
願いは叶えてやったァ!」
「正確にはアレに乗っていたのは半年くらいで…その後座礁したんでござる」
詰め寄るジョーンズを前になんとか言い逃れようとするティーチ
しかしその言葉にジョーンズは笑いながら言い返した
「どんな事情があったにせよアレが貴様の船であった事に変わりは無い!
その証拠に得意げに語って来たのだろう?
これこそが我が船【
そう言いながら黒ひげの右手を取り、蛸足になっている指で器用に鉤爪を外すジョーンズ
「
鉤爪を外されたティーチの手のひらには黒いシミ…黒丸がしっかりと刻み込まれていた
「なァに…ちょっとした、
言いながら口髭の蛸足を使いボッ…ボッ…とパイプを蒸かすジョーンズ
そしてプハァ…と煙を吐き出しながらニマリと笑うのだった