祝福の歌声~コナン世界でライスは頑張って生きてみるよお姉さま!~ 作:クレナイハルハ
カノンside
目が覚める、確かにザフキエル様の言っていた通りカノンは天使としての記憶を忘れて数日間はライスシャワーに憑依した人間として暮らしていたようだ。既にライスシャワーの体はだいぶ改善されている。鏡を見ると目元の隈は消え、体も毎日食事を取っていたからか痩せ気味から、原作と同じくらいの姿に戻っていたライスシャワーが佇んでいた。
だが、この世界。名探偵コナンの世界の主要人物である、江戸川コナンこと工藤新一やジン、降谷 零達と出会ってしまった。更には彼らの他の死ぬはずであった人達を助ける形と成ってしまったのは凄く不味い。
世界が変わる、ザフキエル様に怒られるかも。いくらその時に天使としての記憶がなかったと言え、報告書書かされる。カノンは報告書を書くの面倒。
カノンがライスシャワーに憑依してから少なくとも二回は時を超えて、今の状態で体感だと1ヶ月半程は過ぎている。ザフキエル様でも、ずっと一つの世界を止めていられる訳じゃない。
恐らく、本来ライスシャワーがいるべきだったウマ娘の世界も少しずつだが時は動き出している。早く、彼女をウマ娘の世界に返した方が良い。でも、今のライスシャワーの状態は憑依したカノンが本気で走り、それを通してライスシャワーは走る意味を少し思い出した状態だ。
走る意味を思い出したとしても、それ以上に彼女の心の奥底に根付いたトラウマはそう簡単には消せない。もし、効率を求める……もとい早く済ませるなら、天使としての力を一つ使いそのトラウマとなってしまった時の記憶を消せば良い。
でも、それだと後々彼女に問題が起こるだろう。だからカノンはこうしてライスシャワーを元気付けていくしかない。貴方は凄い、貴方は出来るって。それが今のカノンに出来る事。
「ふぅ 」
目を閉じてゆっくりとベッドに横になり直す。ゆっくりと深呼吸をしながらライスシャワーの意識が起きている精神世界へとゆっくりとカノンの意識を繋げる。
すると、真っ暗で何も見えない世界が広がっていた。静かで足が地に付いてない、それに手を動かしても何かに触れる事もない。まるで空中。
「んっ!」
現実世界なら不可能だが、精神世界ならカノンは天使。だからライスシャワーの体に憑依していても翼は生やせる。背中からバサッと言う音と共に翼が現れた。
取り敢えず、翼をゆっくりと羽ばたかせながら下降していくと、やがて地面らしき場所にライスシャワーが佇んでいるのが見えた。見つけた、カノンはライスシャワーの丁度目の前にゆっくりと降り立つ。
「ライスと同じ姿の天使様?……」
驚いた表情でカノンの顔と背中の翼を見るライスシャワー。
「それはカノンが貴方の体に憑依し、貴方の体を借りているから。本来、天使のほとんどは自身の姿を持たない、だからカノンは貴方の姿を参考にした。」
「ライスの体に憑依って………どういうこと?」
「自己紹介、カノンはカノン。天使、ザフキエル様の補佐。」
「えっと、ライスシャワーです」
「カノンの任務、貴方の体に憑依して、体を元の状態に戻すこと。」
「元の状態?」
「ライスシャワー、貴方はある事から食事を取らず睡眠も取らなくなった……あってる?」
「はい…………。」
「だからカノンが貴方に憑依して寝れない貴方の変わりに寝て、ご飯を食べた。貴方の体は、もう元の状態に戻ってる。」
そう説明しながらライスシャワーの表情を伺う。その表情には驚愕が出ていた、確かに自分の知らぬ間に自分の体が治ってるってびっくりするよね。
「どうして、ライスなんかを……」
「貴方は少し悪い方に考えすぎる感じがある」
憑依していた時、カノンは彼女を知る人として彼女らしく行動していた。確かあの天使様が言うロールプレイだったかな?していたけど、彼女は、物事を凄く悪く考えてしまう節がある。自分のせいでって。
「もっと広く世界を見てみよ?カノンが貴方に憑依した時、貴方らしい行動をした。どうだった?」
「うらやましいって、思いました。歌で沢山の人を笑顔にして……ライスもそうなれたら良かったなって。」
「みんなを笑顔に出来たのはカノンだったからじゃない、ライスシャワーだったから」
「え?」
「貴方の姿で、貴方の声だったから出来たこと。」
カノンじゃ出来なかった、たぶん。決まった実態を持たなかったから
「それに、貴方だったからあの人の鞄を取り返せた。それに、走ってたとき貴方も意識あったでしょ?」
いくらウマ娘へと憑依した天使であっても、その時は普通の人として行動していた。急に人としての走り方からウマ娘への走りに変わるのは難しい。だからこそ、意識のあった彼女が正しい走り方へと正してくれた。
「あの人は、怪しく見える格好をするライスにも笑顔で優しく接してくれて、ニンジンも売ってくれたから……」
「貴方も一緒に走ってくれたから、あの人の鞄と笑顔を取り返せた。
あの時、彼女に伝えたいと思った言葉。その言葉を伝えると彼女は肩を震わせながら俯く。
「少しなら、大丈夫なんです………でも!」
ライスシャワーが顔を上げる、彼女はその瞳から涙を流していた。
「怖いんです……」
「?」
「沢山の人の前に出ると、あの時の事を思い出して……声が聞こえて、怖くて体が震えて、逃げ出したくなるんです……。」
悔しそうに、悲しそうにそう話す彼女の声は段々と大きくなっていく
「ライスは………ライスはもう一度走りたい!でも!……でも、怖い。怖くて、体が震えて止まっちゃう!それに誰も私が走ることを望まない!ライスは、ライスは………どうすれば良いの……」
どうすることも、誰かに助けを求める事も出来ずに涙を流す彼女を私はそっと優しく、痛くしないように抱き締め、頭を撫でる。
「あ………」
昔に女の子が泣いてたらこうやって抱き締めて頭を撫でてあげたらその子は落ち着くって、前にお仕事を手伝った時にエロース様に教えてもらった。だから実践してみたけど、本当に落ち着くんだ。その後変な事も言ってたっけ?確か『今の天界の中、女の子同士での愛もありなのよ!女の子同士で恋愛するべきなの』だっけ?
見れば先ほどまで悲しそうに、苦しそうに話していたライスシャワーが目を閉じて、少し恥ずかしそうにしながら私にされるがままに成っていた。
「大丈夫、貴方の走りはカノンが望む。」
「ライスの走りを、天使様が?」
「ん、もし貴方が苦しくて止まりそうなときはカノンが手を引いてあげる。泣きそうに成るなら抱き締めて上げる。カノンは天使、貴方を導くのも天使の……カノンの使命、だから」
「天使様………」
「一緒に進もう、少しずつでも良いから」
そう言ってカノンは笑う、優しく安心させるように。するとライスシャワーは再び涙を流した、先ほどまでの苦しそうな物ではない、安心したように笑って。
でも、カノンは彼女が元気になったら帰らないといけない。彼女を元気付け、元の世界に早く返さないといけないから。
でも、今は彼女を泣き止ませよう。そう思い、止めていた彼女を撫でる手を動かす事を再開する。
「あの、天使様」
「何?」
「名前で、ライスって呼んで下さい」
「いいよ、カノンは貴方をライスと呼ぶ。」
「はい!天使様!」
まず、彼女を人に馴れさせる事が良い。憑依して彼女を動かしている状態で大きなライブでも開いてみるの良いかも。
そう思いながらカノンとライスは、一人で二人。二人三脚で、ライスを元の世界に返すために頑張ろう。そう思った。
精神世界から現実世界に戻ったカノンは早速スマホで近くで借りれられそうなライブ施設を探す。
『天使様、これからどうするの?』
「まず、ライスが人に馴れる為に何時もの数人、数十人でのライブから少しだけスケールアップする。次のカノンたちのライブは近くのステージで、沢山のお客さんを呼ぶ。今からその告知をする。ライスが意識だけ起きた状態で歌うから、それで沢山の人に対する耐性を付ける」
まず、近くのライブ施設を今から3日後の日の午後に借りる予約をつける。電話したところ、無事に借りることは出来た。なら、あとは告知と、ライブの入場料を設定して当日に施設の入り口で待つだけ。
早速カノン達はスマホの青い鳥のアプリで告知した。
ライスシャワー
ライスはウマ娘のライスシャワー。
ストリートミュージシャンです、何処でストリートライブをするかの告知をします!
歌った歌の動画も上げていく予定です!
沢山の人にライスの歌を聴いてもらえたら嬉しいです!
ライスシャワー@BlueRose,Riseshower
#新曲 #うまぴょい
新しく歌った歌で『うまぴょい伝説』です!
楽しい曲です、楽しんで聞いて下さい!
【動画表示】
ライスシャワー@BlueRose,Riseshower
#LIVEのお知らせ
みんなのお陰で、米花街のLIVEハウスを借りてLIVEすることが決まったよ!
みんな本当にありがとう!3日後の◇月◆日
米花街、桜西ビル地下のステージでみんなを待ってるね!入場者は100~120人くらい。
入場料は一人500円を予定しています。
動画でライスの歌を聞いてくれてる人も、いつもストリートライブに来てくれてる人も、会場に足を運んでくれたら嬉しいです!
歌う曲は全部その日に発表するね!新曲もあるから楽しみにしてて下さい!
「多くの人に馴れられるよう頑張ろう、ライス」
『う、うん。がんばれライスがんばれー、天使様もライブがんばれー、おー!』
こうして、カノンとライスは多くの人に馴れるためライブを行うことにしたのだった。
次回、ライブの告知を知ったお兄様お姉様の反応はいかに?
ご愛読ありがとうございます
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