祝福の歌声~コナン世界でライスは頑張って生きてみるよお姉さま!~ 作:クレナイハルハ
今日、私はいつも通り米花町を散策していた。姿はいつもと変わらず勝負服の上から外套を羽織っている。
あれからファンの人達の意見が多かったため、防音の部屋を借り歌っていた歌を録音し歌だけの動画も上げてみた。
思ったよりも高評で、沢山の人が感想を書き込んでくれている。何故か分からないが今のところ、ライスシャワーと言う名前に違和感を持つ人は居ないみたいだ。
そう言えば、お兄様はまだ海外の仕事が忙しいらしく日本に戻って来れていないらしい。歌の動画の事はLIVEに行けなくても聞けるから嬉しいらしいと連絡が来た。
最近は青い鳥のアプリで次はどの場所で歌うのか等を聞いてくる人が増えてきた。ちょっとは人気が出てきたし、おひねりも少しずつは増えている。
あとニンジンを美味しいと感じたあの日から1日3本はニンジンを丸齧りしている。いや本当に野菜嫌いだった頃じゃ考えられない事をしてるよ
「あら!いつもニンジンを買ってくれるニンジンのお嬢ちゃんじゃない!」
そんな声が聞こえて振り替えるといつもニンジンを買っている八百屋さんのおばさんがバックを持って立っていた。
「こ、こんにちわ……です」
「うんうん、こんにちわ。最近はどう?ちゃんとご飯食べてる?ニンジンばっかり食べてちゃ駄目よ?他のお野菜やお肉も食べなきゃ」
「た、食べてるので大丈夫です……」
優しい人だな、数日通っただけでこうも心配してくれるなんて。そう言えば思い出したけど、ようやく最近になって目元の隈がちょっとずつではあるが消えていっている。あと少しで普通の顔になるかなぁ……。
「あの、買い物ですか?」
「まぁね、お味噌をきらしてたの忘れちゃっててね」
そう言いながらおばさんは私にバックを持ち上げて見せる。恐らくこれに財布やらが入っていて今から買いにいくのだろう。
その時だった。
「きゃ!?」
「痛っ!」
私とおばさんの間を男の人がぶつかりながら通り抜けたのだ。
男の人の勢いの強さにおばさんが思わず横に転ぶ。
「引ったくりよ!誰か!……痛っ」
「だ、大丈夫ですか!?」
おばさんの声におばさんのバックが取られたことに気付いた。更におばさんの足元を見れば少し足首が腫れているように見える。
「おい!大丈夫か!ってお前は……」
「ひったくりと聞こえたが大丈夫か……!?」
見ると以前に観覧車であった人とマンションで会ったことがある男の人が二人立っていた。
このままじゃ男の人に逃げられちゃう、追いかけないと。
「あの、誰かこの人と
「あ、あぁ。松田は一応警察に」
「わ、分かった!」
そう言いながら急いで道の端にギターケースを置いて駆け出す。アップも何も無しに走る、ただひたすらにあのおばさんのバックを盗んだ男を追いかけて、バックを取り返す事を1番に考える。
絶対に、おばさんを怪我させたあの男に追い付く。そう思いながら足を動かすが、走る速度は人間の出せる速さのまま。原因は分かっている
本気で走れない、追い付けない。そう考えた瞬間にその考えを頭を振って振り払う。
走りながら先を見ると、男の近くに車が止まり、ドアが空いた。男は近くにいた人達の前をぶつかりながらも乗り込む。不味い、そう思った次の瞬間、車は走り去っていってしまう。
「な、なんだなんだ!?」
「大丈夫ですか!毛利先生!」
「お父さん大丈夫?」
「ッ!………」
先ほどまで車の有った場所で思わず立ち止まる。このままじゃ、追い付けない。
もし追い付くのなら、
「君、どうかしたのかい?あの車に乗っていた人を追いかけていたようだけど」
膝に手を置いて呼吸しながら走っていく車を睨み付ける。頭に浮かぶのはバックを取られたときのおばさんの悲しそうな顔。
なら、答えは決まっている。例え、この世界にウマ娘の存在が露見して研究所に連行され実験さる事になるのだとしても、最後に誰かの笑顔を取り戻す事が出来るなら。
研究所に連行され実験をされる恐怖を捨てる。
原点回帰し、頭にあるのは、あの男の車に追い付きおばさんのバックを取り返しおばさんの笑顔を取り戻すこと。
私はふと、先ほど聞こえてきた方にいる人達を見る。そこにいたのは先程の男にぶつかりそうになっていたおじさん、褐色の肌に金髪の男の人に高校生ぐらいの女の人、そして何故か自分を怪しむ目で見てくる子供。
「あの、大丈夫ですか?さっきの人は──」
私は片手を外套へと伸ばし、しっかりと掴む
「すいません、少しの間
そう言いながら外套を思いっきり引く。バサッその音と共に外套が外れ褐色の男性の手へと向かい、
胸元に青い薔薇の装飾品の付いた漆黒のドレス、腰には小さな短剣がベルトで固定され、頭には斜めに青い薔薇の装飾品が付いた漆黒の帽子が付けられている。靴は黒いソックスに踵にリボンが付けられた漆黒の蹄鉄靴。
「なっ!?」
一度瞳を閉じる、私は上半身を前に出し少し前傾姿勢となり足に力を溜める。
頭の中にある考えは“走りあの車に追い付く”こと。ウマ娘が出せる全力の速さで、今度こそ追い付く。
もう一度瞳を開いた瞬間、何故か周りの人が凄く驚いた様に見えた。
次の瞬間、米花街に黒い閃光が誕生した。
街の人々は見た。
圧倒的な速度で走る
そのナニカは少女の姿をしたナニカ。
黒い少女の姿をしたナニカは歩道を駆けていたが、突如として飛び上がり車道の真ん中の白線。
唯一、車道にて車がめったに現れることの無い場所。
そこへ飛び移り少女はまた走り出す、車をも越える速度で走る、その目に青い炎を宿して。
──駆ける。
────────駆ける。
─────────────駆ける。
初めて、
さっきまでとは比べ物にならないくらいに速い、先ほどから景色が次々と後ろへと流れていく、ウマ娘がいつも見ている世界。
そう思いながら、一台の車を追い駆け車の走らない真ん中の白線をなぞるように走る。
車が先程より加速し前へと走っていく。
負けない、そう思いながらまた走る足に力を込め、加速する。
「………」
加速する車、私はあの車へと追い付くため、歯を食いしばり腰に身に付けた短剣の柄へと触れる。
『……………誓います。』
脳内に思い浮かぶ光景、ステンドグラスの綺麗な教会にて青薔薇の花束を持ち歩む
『大好きな人の為に、幸せの青い薔薇に』
そう言いながら
「
私は更なる速度の領域へと一歩を踏み込む。
私と車の間に開いていた差は二馬身、一馬身とどんどんと縮められていく。どんどんと車が目の前にせまり、
走りながら、ガラス越しに男ともう一人共犯と思われる男を睨み付ける。男達は恐怖に顔を歪めた。
そして私へと進んでくる車へと両手を突き出し、走ってきた車を両手で
普通ならあり無い事だが、
ゆえに、このようなことも出来る。少し手首がしびれたけど。
すると男達が車から出て来るが、表情を見る限り抵抗する気は無さそうだ。
「な、なんなんだよ……なんなんだよお前は!?途中まで、上手く行っていたのに!」
酷く怯えながらも私を指差し喚き散らす男。普通なら少し落ち着いて貰ってから話すのが良いのだろうが、関係ない。
「返して、あの人のカバン。今すぐ」
自分の口から酷く冷たい言葉が吐き出される。そう言うともう一人の男が体を震わしながら車へと戻りおばさんのバックを持ってくる。私はそれを受け取った瞬間に男達の溢した呟きをウマ耳が拾った。
「ば、化け物………」
そんな言葉を無視して、
歩き、暫くして後ろからはパトカーのサイレン音が響き渡っていた
「取り返して、来ました」
そう口を開き、ゆっくりと八百屋のおばさんへと歩みを進めカバンをおばさんへと手渡す。
どうやらあのときに頼んだ二人は、さっき聞こえたパトカーの方へと行くよう頼まれたのかは分からないが、この場所から居なくなっていた。
「あんた、まさか………」
数秒間の沈黙がすぎ、カバンを受け取ったおばさんはやがて驚愕の表情を浮かべた。そっか考えて見れば、おばさんにはちゃんと顔を見せたことは無かったっけ?それに普段からフードで耳を隠してるから分からないのも仕方ないかな。
「ニンジンのお嬢ちゃん、なのかい?」
「は、はい」
「ありがとうねぇ……これ実は旦那が初めてくれたプレゼントでね、ずっと大事に使ってたんだよ。本当にありがとうねぇ」
そう言いながらバックを抱き締めるおばさん、おばさんの浮かべた笑顔を見て、全力で走って良かったと感じた。
「またうちにおいで?いっぱいニンジン仕入れといてあげるから」
「………はい」
そう返事を返し、預けていたギターケースを肩に掛け私は外套を返して貰うためあの人達のいた場所へと向かった。
ご愛読ありがとうございました
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