霊夢ちゃん!今はいてるパンツ貸して! 作:みけさんわーきゃっと
秋の味覚
「お兄さん、えっと……できたよ」
「おー、さすが大妖精。手際がいいなー」
大妖精に虫食いのドングリ、および虫の食ってない栗を分別してもらっていたのだ。
「えへへ、そんなことないよ」
「いやいや細かい作業は大妖精が一番上手だからなー、と、石臼に移してくれ」
「うん、わかったよ」
なんでこんなことをしているかというと妖精たちが日ごろのお礼と栗やらどんぐりやら柿やらを持ってきてくれたんだが、一人数個でも妖精の数が膨大なため軽い小山ができてしまうぐらいの分量になったんだわ。なんでいろいろと作業しているわけだ。
さっきまで干し柿と樽柿を作っていたら、クソガキたるチルノが渋柿食って悶絶してた。
チルノなら皮むいた柿を凍らせれば簡単に(と言っても数日はかかるが)渋抜きできると言ったら何をおもったか凍らせてすぐ食ったんだよなあ……まあチルノだからな。
栗は栗で別に料理するがドングリは渋いの、甘いの、固いのとめっちゃ種類があるうえにごちゃまぜなので、もう全部まとめて石臼で粉砕してでんぷんを取り出すことにする。
現代人だとでんぷん(片栗粉)は中華あんや揚げ物ぐらいにしか使わないだろうが、ここでは水あめにする需要がかなり多い。
麦芽飴とか芋飴は食いもんを消費するためなかなかに貴重なのだ。その点どんぐりのでんぷんで作る水あめは大根のしぼり汁さえあれば(糖化するのに必要)ほぼノーコストで作れるからな。
もちろん鬼のようにアクが(渋柿と同じくタンニン)あるため、本来なら何度も水にさらして(流水だと流れるので面倒でも入れ替えて上澄みを捨てるやり方)やる必要があるが萃香ちゃんの能力で、でんぷんだけ簡単に取り出せるので、その辺はすごく楽だ。
「これから水あめができるなんて知らなかったです」
「そして水あめに砂糖を混ぜて練っていくと飴玉ができるんだよ、はいあーん」
「え、あーん?」
大妖精にイチゴ果汁を混ぜた飴玉を食べさせる。素直で優しい子なのだが、自己主張が薄い子なのでみんなでいるときは割を食うんだよな、大妖精は。
なので隙あらば甘やかす。
必要以上に甘やかすとだんだん挙動不審になっていくがそれもまた可愛い(外道)
「おいしい?」
「美味しいです」
大妖精を撫でて作業を続ける。といっても石臼でゴリゴリするだけだし、特に難しいことはない。あんまりスピード上げると摩擦熱で熱が入るのでそれだけ注意だ。
あとは海老煎餅などにもする。こいつは霊夢ちゃんの茶請けによくなってる。
川海老をゆでてすりつぶしたのと片栗粉、塩を少々混ぜて、平たくして焼くか油でパリッとするまで揚げるだけだ。ふわふわさくさくでうまいぞ。
たらいに挽いた粉を入れて、あとは水入れて萃香ちゃんにお任せすればOKだ。
お礼は片栗粉なので竜田揚げでも作ってつまみにもっていけばいいだろう。
トウモロコシでやるとコーンスターチができるが、この場合はナゲットになる、ナゲットうまいんだけど、おやつって感じで俺はあまり好きではないな。
大妖精と他愛もない話をしながら粉ひきを終える、つうてもまだいっぱいあるがたらいが満タンになってしまったので仕方ない。
腕もつかれたしな!
「ほい、こいつも食ってみ」
「えっと……いいんですか?」
「いいのいいの、味見は料理人の特権だ」
こんどは無花果を大妖精に与える。
丸のままではなくくし形に切って、皮も向いてあるのでフォークでぶっ刺して食えるようにしてある。
コツは皮をやや厚めに剥くことだ。そうすればそのままがぶりと行けるようになる。
大妖精の分はさらに半分に切って一口で食えるようにしてあるぜ。かじったときにポロリと落ちちゃうからな。
「ん、おいしいです、お兄さん」
「みんなが頑張って集めてきてくれたからなー。大妖精が持ってきた栗も後で料理するからなー」
俺も少し摘まんでまたもや大妖精を撫でて仕事に入る。大妖精もまだお手伝いしてくれるようだ。いい子!
「じゃあ、指で押して……簡単にぐにっていくヤツはこっち、そうじゃないのは俺にくれ」
「えっと力は……?」
「軽くでいいよ、簡単にいくやつは熟してるからすぐ食わねえとなんだわ、氷室に入れても数日かな?」
「うん、やってみるね」
ちなみに過去にチルノにやらせたら全力で行きやがるからすぐ戦力外通告を出したんだが、それでもしつこく「あちょー」とかいって突いてたので蟷螂拳(エセ、習ってはない)で肘のツボついたら悶絶してた。
「こんな感じ……かな?」
「どれどれ……おっ、流石だな。こんな感じでいいぞ」
とここでも手際よく作業をする大妖精。マジ有能。
撫でながら褒めると「いえ……そんなことは……ないですよ」とやや挙動不審気味、もう一息だな(外道)
さておき俺は固い無花果をさっとゆでで(あく抜きと殺菌のため)ざるにあけて冷ます。粗熱が取れたら橙のしぼり汁や酢橘など酸味のある汁をかけてたっぷりの砂糖をまぶしてしばし待つ。
その間も大妖精を愛でるのを忘れない。
しばらくすると、漬物と同じく水が上がってくるので、それを使ってとろ火で煮あげていく。マイクロ八卦炉マジ便利。
無花果のコンポートの完成だ。
熱いうちに殺菌した(お湯でゆでればOK)瓶になみなみと詰めて封をする(これで真空になる)氷室で一週間凍らせて氷室で一か月、完全に凍結させれば半年は持つぜ……まあ華扇ちゃんが結構食うんでそこまで持たねえけど。果実だけ、煮汁だけでも使い道は多いので結構便利だ。
できたばっかりのを軽くトーストしたパンなどにのせて食ってもうまい。大妖精も「ふあああ」とかいってご満悦だ(今食わせた)
「えっと、私ばっかり美味しいもの食べて、いいんでしょうか……」
「ん?大妖精はいつもお手伝いしてくれるいい子だからなー、たまにはいいだろー」
となでなで。「ああ、でも……」とか言ってる。可愛い。
次に栗!
「これは大妖精のクリちゃんだなあ、大きいなあ」
「あ、はいがんばりました」
軽いセクハラも通じず、ピュアだなあ(むしろ俺が汚れすぎ)
だが、たぶんラルバ辺りには余裕で通じる、意外にリグルにも通じたりする。
先ほど仕分けしてもらった時にすでにぬるま湯に漬け込んであるので、だいぶ柔らかくなってる。
こいつをペティで切り込みを入れて……まずは鬼皮(外部の硬い奴)を剥く。
「大妖精は渋皮剥いてくれ、鬼皮剥き終わったら俺もやるからゆっくりでいいぞ、怪我しないようにな」
「はい、大丈夫です」
ん、とひと撫でして二人で作業する。
妖精連中の中で刃物持たせられるのは大妖精と三月精(意外に料理する)ぐらいだな。
もっともかぼちゃとか栗とかちょっとコツがいるものは大妖精とルナチャイルドにしか任せられない。
さらに魚をさばくとかになると、大妖精の独壇場だ。
いやマジで有能だな大妖精。
「大妖精は一家に一人欲しいぐらい有能だな」
「いえ、その私なんて全然……」
というか大妖精いなかったらチルノまともに食えてないと思うぞ。
俺?まあ腹すかせてたら食わせるけど(なんだかんだ甘い)
鬼皮を剥いていく作業中に特に立派なものはわきによけておく。
それを見た大妖精が俺に問いかけてくる。
「ふえ?お兄さんそれは……?」
「ん?これは形がいいからな、マロングラッセにする」
「まろんぐらっせ?」
「出来たら最初に食べような」
と撫でる。
「えへへ、楽しみですお兄さん……なんか私ばっかりいいのかな…‥?」
「いいんだよ、大妖精はとってもいい子だからね」
「え、う、うんわかりました」
よし、もう一息って感じだな!(外道)
剥かれた栗は一部を除いて(今日は栗の炊き込みご飯を作る迷いの竹林のせいでたけのこご飯に季節感が全くないのでこれこそ季節の味である)甘露煮にする、しかも砂糖マシマシのだ。
糖度をあげることによって年単位で持つようになるのと、甘くて美味しい栗きんとん(品種改良されてないサツマイモなのでそこまで甘くないのだ)を作るのにも使えるぜ。
色には別にこだわらないのでクチナシを使うのも無しだ。一旦下茹でして、そのあと水と砂糖だけで煮あげていく。マロングラッセのように追い砂糖をして糖度マシマシ。完成だ。
。
「味が染みてはないけど熱が入ってるからほくほくしてうまいぞ、食ってみ」
と小皿に入れて大妖精に渡す。
「はくっ……栗ってこんな甘くなるんですね!美味しいです!」
「グラッセはさらに甘くなるぞー、とはいっても数日掛けて追い砂糖してくから、今日は食えねえけどな」
「ふああ、まだ甘いんですか」
「さっきも言った通りちゃんと食わせるからなー」
と、また撫でり。
大妖精の髪はすごいサラサラで触り心地が特にいい、髪質そのものが柔らかいんだと思う。
「お兄さん、撫ですぎです……」
「嫌だったか?」
「嫌じゃない……けど……私、いいのかな私だけ、こんなにぽかぽかな気分になって……」
「大妖精がいい子だからいいんだよ」
「いい子……じゃないかも……」
「ん?どうしてだ?」
「だって、お兄さん独り占めしてるから……」
「逆だ逆」
「え……?」
「俺が大妖精を独り占めしてるんだよ、だから気にすんな、な?」
「うん……」
「さ、次はリンゴやら山ぶどうやら、コケモモやら、全部ジャムにするぞー、想像してみろ。どのジャムをつけて食べようか迷うぐらいのジャムがあるところを!」
「えっ……ふわあ」
「グッドな笑顔だ!さあ、それを現実にするためにもうひと頑張りしようぜ」
さっきから砂糖がチートな俺だからできる暴挙だな。
本来冬支度は大抵塩だ。まあそういうのは霊夢ちゃんに任しておいて俺はひたすら甘いものを量産するのさ!
ジャムを煮ながら(そしてつまみ食いしながら)大妖精は言った。
「どうしよう……」
「ん?どうした?太る心配か?」
「ちがう……チルノちゃんより…‥お兄さんが……な、なんでもないです!」
「ん、そうか?チルノと言えば出来たら少しチルノのとこにでも持って行ってやれよ、あとリグル。フレッシュだからうまいぞ。あとで知ったら大妖精ばっかり狡いって怒るだろうしな」
「ううん、ありがとうお兄さん……私なんかをいつも気にかけててくれて……大好きです」
「何か言ったか?」
「秘密です!」
モブイナバ・もふイナバ
「ちっ……相変わらず逃げ足の速い……」
迷いの竹林でてゐを発見したので今日こそモフり倒してやろうと捕獲を試みたが、またもや逃げられてしまった。
初遭遇の時にちょっと苛烈なお仕置き(と言っても痛いことはしていない。ひん剥いてガマの穂でくすぐり倒しただけである。まあ最後は息も絶え絶えになっていたようだが)をしただけで少なくとも霊夢ちゃんたちみたいに吹き飛ばしたり処したりしていないので、十分優しいとおもうんだが、それ以来俺の顔を見ると、文字通り脱兎のごとく逃げ出してしまう。
お仕置きされるようなこと(俺を泥の落とし穴に落とした挙句、穴をのぞき込んで煽ってきたうえにさらに上から泥まで落としてきた)をする方が悪いと思うのでやりすぎとは思わないんだがなあ……
少なくとも同じことを不機嫌な時の永琳ちゃんにやったら今頃兎のホルマリン漬けぐらいになってると思うぞ?
空き地にどっかと座り込んで水筒の茶を煽る、追いかけっこしてたので喉が渇いていたため実にうまい。
草団子も食いつつ休憩しているとぬいぐるみのような兎が現れた。
相変わらず奇妙な造形しているけども、これはこれで可愛いし、本物の兎と間違えてうっかり狩ってしまうことも無いので安心と言えば安心できる。
「おー、イナバか。草団子食うか?」
と団子を差し出すとふんふんと匂いを嗅いでから(こういうところは動物っぽい)かじりついた。
もちろん普通の兎にこういうものを与えてはいけないが、イナバは人間に近い雑食である。普通に肉だって食うし、なんなら兎も食う(むしろ優曇華ちゃんが兎肉食わない)ので特に与えるものに気を使う必要はない。
食い終わった後ぺろぺろと舐めてくるのが可愛らしいが、少しくすぐったい。
イナバホイホイ(胡坐をかいて座っているとすっぽり収まってくる)をするまでもなく、いきなり倒れ込んでだらーんと脚を伸ばしたまま目を細めてる。
最初は急死したかとおもって(おにぎり食わせたのもある、のどに詰まったかと)めっちゃビビったが、兎は人間みたいによっこいしょとゆっくり横になれないのでこうやって卒倒したかのようにいきなり倒れ込むということが観察の結果わかったんだよ。
うりうりというかんじで目の下を撫でたり、おでこのあたりをわしわししたり、背中を毛並みに沿ってゆっくり撫でてるとぎちぎちと音が出る。
歯ぎしりしているんだが、これ、嬉しい時に出るんだぜ?最初めっちゃ威嚇してるのかと思ったわ。
存分にイナバをモフっているとぷるぷると小刻みに震えはじめた。
お?これはもしや……?とおもっていると、ぴょんと俺の懐に飛び込んできたので抱き留めてやる。
背中を撫でながらゆっくりとイナバの中に渦巻いている力(何の力かは不明、妖力に近いが神力の気もする)を撫でに合わせてかき混ぜるように導いてやる。
ぶるぶると瘧のように痙攣するイナバを優しく撫で上げていると……
ぽふん
という小さい破裂音とともにかわいらしい少女……幼女?が俺の腕の中にいた。
てゐに姿が似ているが、より幼い感じだ。幸い服は着ているので犯罪的な絵面にはならないで済んでいる……幼女を膝に抱いて撫でてるのはセーフだよな?
過去にねこまた誕生に出会ったことがあるがその時は全裸だったのでひどい目にあった。なぜか文に写真撮られているし……
「落ち着いて、ゆっくりと人化が定着するまでこのままでいいからな?」
いまだ目をつぶってふるふるしているモブイナバ(人化しているときはこう呼ぶことにしている)のあたまをなでながら、ゆっくりとチカラを調律していく。
俺はいろんな力を使うのでこういう作業は得意なのだ。
やがて落ち着いたのか震えも止まりゆっくりと目を開ける、背中側から抱いているので、二、三度きょろきょろした後、身体をひねるようにして俺と目を合わせてくる。
うん、可愛いな。
「落ち着いたか?」
そう声をかけると、こくんとうなづいてから顎を俺の方にのせるようにして顔に頬を擦り付けてくる。
プニプニスベスベの肌が心地いい。
完全に身体がこっちに向いたので背中を軽くなでながら妖力がちゃんと滞りなく流れているか確かめる。
たまに、兎に戻れないモブイナバがいるのだ。
……この子は大丈夫っぽいな。
「うん、大丈夫だな。おかしいところとかあるか?」
そうきくとふるふると首を振って小さい声で答えた。
「だい……じょ…ぶ」
そう言ってから俺の頬を舐める。
動物にやられると親愛の情だが幼女とはいえ女の子にされるのは少し気恥ずかしいな。
さらに半時ぐらい話をしながら甘やかして様子をみていると再び「ぽふん」という音とともにイナバの姿に戻った。
妖力が切れたようだな。
「よっし、コツは掴んだはずだからあとは徐々にならしていくこったな。動けるか?」
そういうとイナバは顎を膝に擦り付けてから、こくんと頷いた。
「ん、強いいい子だ。じゃあ、俺はいくけど見かけたらじゃれつきに来いよな?あ、あとてゐの言うことは聞かなくていいぞ」
そういって膝からイナバを下ろすと、二三度こちらを見てから竹林に消えていった。
近頃孵化場というか、俺のとこで人化するイナバがやたら増えたような気がする。まあモフモフは正義だからいいんだけど。
役得というわけではないが反てゐグループを作れないかなと実験している。
目指せ下克上だ。
遠くない未来。モブイナバに簀巻きにされたてゐが俺に献上される未来が……あるのかもしれない。
可愛いは正義
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