霊夢ちゃん!今はいてるパンツ貸して! 作:みけさんわーきゃっと
「さあ、仕切り直しとばかりに戦いが再開されました!……明らかに怪しい挙動で攻撃が外れているのですが、これは映姫さんの力でしょうか?」
「ええ、まあ、そんな感じですね……ただ本来はかすりもしないはずなんですが……?」
直撃コースの攻撃が「ぬるっ」と言う感じで芯を外す。
かなり動体視力に優れていないとわからないが、そこはスピードスターの文。
怪しい動きだというのを見抜いてしまう。
「なんというか面白い加護だな」
「ええ、あれ武人としては普通に迷惑な加護ですね、初見で使いこなす彼は割と異常かと」
神奈子と華扇がやや否定的なコメントをする。
もちろん聞き逃す文ではない。
「と、言いますと?」
「我々武人は鍛錬によって「相手の動きをある程度予測」して戦っている、が、あの加護は予測の動きを狂わせる、私だったら邪魔に感じる」
「ええ、ですが彼は「許容できる範囲の被弾」を「安全」と認識しているようです。ですので想定より動きのブレが少なく、またおそらくですが加護の持ちもよいのではと推測します」
「なるほど」
「わ、私の加護は余計だったでしょうか?そんなつもりでは……」
やや狼狽する映姫。
「ふむ「使いこなしている」のであれば問題ないのではないかしらね?」
「ですね、むしろ今の能力ビルドの彼には向いてるかと」
「さあ、そうこうしているうちに――天子さんが吹っ飛んだ!?いったい何が起きたぁ!?」
攻防の最中に天子の足元が爆ぜ、天子を吹き飛ばす。
天子は獣じみた動きで空中で身をひるがえして何事もなかったように闘いを再開する。
が、再びの爆発、しかし今度は吹き飛びすらせず、爆発を回避する。
「あれは……魔界魔法!?しかも面白い使い方を……」
「お、パチュリーさん、解説お願いします」
呻くようにつぶやいたパチュリーに文が話を振る。
「彼がやったのは魔界魔法、魔方陣を媒介にした魔法よ。一番代表的なものとしては、悪魔召喚があるわね」
「悪魔召喚って、また物騒なものが……」
「実際割と物騒で、魔力の代わりに生贄など、代償を要求される魔法よ、ほら、悪魔との取引には魂とか言うじゃない?」
「なるほどーっていいんですか使って!?」
「多分あの程度なら小悪魔に夢精させられるとか程度で使えるわよ、踏んだ相手にあらかじめ仕込んであった魔法を起動するだけの術式のようだし」
「あー,彼の精は価値がありますからねー」
なお、これを聞いた一部の女性が後で小悪魔を問い詰めようと心に誓ったのである。
……普通にお菓子で買収したので完全な濡れ衣であることは誰もまだ知らない。
「おっと更に何かしかけました……懐から何を取り出し……あっはっはっはっはっはっ!はに……はにまっ!?お馬のヒッヒッヒッヒンっ!までセット!あーはっはっはっは!」
「文さんが何かツボに入ったので私、華扇が解説します、あの埴輪と馬のセットは兵衛と呼ばれる厭魅術の一種です、形代を動かす術ですね、見ての通り巨大化もできます……なぜか王子にそっくりですが土偶兵衛とでも言いますか……一番よく見るのは紙兵衛と呼ばれる式術ですね、鳥の形の紙を投げたら鳥になったりするやつです……しかし誰がこの術を彼に?」
華扇が神霊廟の人間を見やったが神霊廟の人間も驚いている、どうやら彼はどこかからこの術を学んだようだが……いったい誰から?と華扇は思いをはせる。
――先ほど濡れ衣を着せられた霍青娥である。
「おーっと、王子が意外に強い!彼と一緒にコンビネーションをしかけ……ダメだ!シュールすぎておかしいですよ!!あーっはっはっはっはっは!」
もうすっかり「王子」呼びである。まあこれは華扇がうっかり口を滑らせたせいだが。
「確かに見た目はシュールですが兵衛は材質によってかなり強さが変わります。中を空洞化して速さを重視していますが、内容的には魔術で言うストーンゴーレム程度には強いですよ」
「また騎乗してるのもよいな、騎兵はそれだけで戦場に圧をかけることができる」
と真面目に分析をする神奈子。
「見た目のシュールさをのぞけば、実際有効で何よりも二対一というのが有利に働いてますよね」
「ひっひっひっひっ……おーっとここで天子焦れたか無差別地震攻撃だ!ああっ!王子が割れた!?」
「まあ衝撃には弱かろうな、そのための軽量化しての馬での一撃離脱だったろうし」
「ですが馬での突撃は旋回時は大きな隙ですよ――は?」
「うまいな、あれも術か?」
「え、ええ遁甲陣ですね術というよりも、占いに近いんですが」
「多分ですが私の加護のせいです」
と少し困ったような映姫。想定外の使い方をされたのだ。
「ああ、確率変動……」
どういう状況かと言うと遁甲盤の針を指先ではじいたと思ったら天子の周りだけが異常に揺れ始めたのである、もちろんそのすきに何かを仕込む、流れるような行動である。
「多分私の土地神としてのチカラもあるかなー」
「喰らえ山津波!とか聞こえますねー、でもどうやって動かしてるんです、あの土砂?精霊です?」
「あの術式はおそらくは死霊術じゃないかしらね……ポルターガイストって言えばわかりやすいかしら?でもあれだけの質量自在に動かすってのが正直腑に落ちないんだけど……?」
「すいません、それも多分私の加護のせいです」
「そういえば閻魔大王でしたね……」
先ほどから映姫が恐縮しっぱなしである。自分でも「少し加護強すぎたか?」と思い始めるぐらいには。
「いやあれは仕方がないでしょう、私は魔法が専門だから言うけど、思い付きで「できそうだからやってみたら出来た」っていうのがどれだけ常識の埒外にあるか……」
「違うわよ」
と、ここまで沈黙を保ってきた霊夢が短く声をだす。
「と、言いますと?」
「アイツは妄想が得意なのよ、だからいっつも「これが出来たらこうしよう」って考えてんのよ、ただそれだけの単純な事よ」
「おー、さすが正妻の「誰が妻よっ!?」言うことは違いますねーっとさらに動きがあったようですよ」
「いや、オンバシラはそう使うものではない、隙が大きいからな……もどったら特訓だな……ん?」
足元からの連続オンバシラを見て、顔をしかめる神奈子。しかして何やら妙なことに気づく。
「なんだあれは……いや、ペースを乱すためだろうがわざわざすることか?」
「おーっと柱になにか……はたてーっ!ズームっ!ズームっ!……映像出ました!……これはひどい」
「一応ちゃんと詩の体裁は整えているようですが、まあなんというか武術だけではだめですね……」
漢詩を読める美鈴などは、あまりのひどさに爆笑している。そして……天子の書き直しだが――
「これもひどい、私一応これでも記者の端くれなのである程度は勉強していますが……たぶん私のほうがまだましなもの作れそうですよ」
「あの二人実は相性いいんじゃないでしょうか……」
「ふむ、しかしおちょくるにしては無駄に手が込んでいるが……」
「彼はちょーっと独特ですからね、正直何をしでかすかわからないところが彼の一番の持ち味でしょうね!っとさらに攻防は続きます!大量の呪符をばらまいて……弾幕もかくやかというぐらいの色とりどりの大量の剣が宙を舞って天子さんに襲い掛かる!」
「神剣飛襲!?また贅沢な使い方を……なんで消えないんですか!?」
「踊る剣の術式が聞こえたわ。付与魔法もセットで使っているみたいね」
華扇が驚愕し、パチュリーが補足する。
「えーっと解説お願いします、まずは神剣飛襲から!」
「正確には「五行霊剣符・神剣飛襲」と言います。五行霊剣符自体は道士がよく使う符で握り締めるとその属性の霊剣が出ます、握っている間出続けるので近接戦闘をこなすタイプの道士には愛用されていますね、で霊剣符を握らずに投げると神剣飛襲という術になります、これは相手に向かって飛んでいく術ですが、まっすぐしか飛ばず、また一発での使い捨てです。正直あの符って玉を粉にしたものを墨に混ぜて書くので一枚作るのに数万円ぐらいするんですよ……」
文に振られ、自らの疑問は置いておいて解説する華扇。
まあ華扇も「どうせパチュリーが解説する」と思っているのだが。
「で、私の推測なんだけどその「まっすぐに飛んでいくだけの代物」を「踊る剣」の術式で自在に飛び回らせているみたいね、剣という共通項でまとめたのかしらね……?正直魔法と魔術とか精霊魔法と魔法とかそういう術者はそれなりにいるし「仙術も魔術も使う」人間だって希少だけどいたわ……でもこういう使い方はおそらく世界初よ、少なくともこのパチュリー・ノーレッジが知る限りではないわ」
「なんか思ったよりスゴイことしてるようですが……ところで彼その高価だって言う符を少なくとも50枚はほおり投げてる気がしてるんですが、そこんところどうお考えです?霊夢さん?」
「なんで私に聞くのよ……?」
「いや、だって、ねえ?」
「……アイツが自分で稼いだお金をどう使おうと私には関係ないでしょ?たしかにこんなくだらない戦いで使うのはもったいないと思うけど、いざという時のためには多少散財しても準備はしておくべきだと思うわよ」
ちなみにこれには少し華扇の思い違いがある。どうせ粉にするのだからくず宝石や研磨した後に出た粉でもいいのである。さらに割と地底で出土するのでそこまで高くはない。
それでも手間暇を考えれば万札を投げているのに等しいのだが。
「さあ、もはや格闘と言うよりも弾幕ごっこじみてきました、色とりどりの剣が飛び交い、近くによっては切りあい離れてはまた術を飛ばす、天子さんも術というか緋想の剣の能力でしょうが風やらいしつぶてやらで迎撃をしていきます!」
「いや、普通に強くて驚くな」
「神奈子さんから見てもですか?まあ確かに今まで実況してきた中ではトップクラスに強い相手だとは思いますが」
「ただまあ私ならあんなまどろっこしいことせずに脳震盪で意識を刈り取るがな、首回りとかそのあたりは意識して鍛えないとダメだから、今の天子では達人相手の格闘だと相手にならんよ、まあ綺麗に当てるのは少し骨が折れそうだがな、やりようはいくらでもある」
「私から見たら彼も十分達人だと思うんですが……?」
「まだまだよ。せいぜいがそうね……私がこっちに来る前にいたところにあった興行にK-1ってのがあるのだけれど、そこで圧勝できるぐらいかしら?」
「えっ!?すけさんそんな強いんですか!?」
K-1がわかる早苗が驚きの声をあげる。
「戦い方が根本的に違うもの。人外相手を想定して私も華扇も鍛えているのよ「人外の一撃は重いので基本、攻撃はかわす、人外はしぶといので隙を見せたら動かなくなるまで叩きのめす」……だから殺してはいけない遊びの世界でならたぶん負けはないと思うわよ?むしろ殺してしまって反則負けは起こりうるかもしれないわね」
「えらく物騒なこと言っていますがさすが古代の戦神ですねー、っとおおっと!斬撃からの回し蹴り!パンツ丸出しでよくやりますね天子さん!ただ彼にしては反応が薄いですね?」
「俗にいう色気がない下着ってやつですよ、助さんのこだわりは凄いので……ダメな方に」
相変わらずの早苗節である。
「さて口合戦が……なんでちょっといい感じになってるんですかね、ええとみなさん、殺気を出さないように。特に大妖の自覚のある皆さんはおちつくよーにおねがいしますよーっ!」
さすがに大妖ともなればこれぐらいの距離でも気配が届いてしまうので、さすがに試合に影響が出かねない。
「おおっとここで天子さん大技を決めるつもりだ!高々と飛び上がって要石を召喚だー!霊符をぶつけるも巨大要石はびくともしないーっ!」
「真面目に解説すると時間が長ければ長いほど返されやすいので高く飛ぶのは……おや?」
華扇が解説の途中で怪しい動きに気づいて訝しむ。
そして天子の絶叫と憤怒の叫びが響き渡る。
「くっくっくっ、やったわね」
まさに失笑と言う感じの神奈子。
「えっ!?えっ!?いったい何が起きたんです!?解説お願いします!」
文が混乱する。急に天子が叫んで拘束を解いたようにしか見えなかったからだ。
「ああ、陰毛をむしったのよ、相手が男ならふぐりをつかめばいいのだけど女だしね」
と神奈子。
「なんだかんだで彼は女性経験がなさそうですしね、
と華扇。
なお實とは陰核のことである。
「あれはやられると私でもきついからな……」
「まあふぐりのほうが100倍は効きますけどね」
「なるほど、スケベでも女性には割と甘い彼にしては割と手段を選ばなかったみたいですね!っと……あれ?なんで天子さんいつまでも要石と一緒に落下してるんですか?」
「――!あれは!?」
「聖さん何かご存じで?解説お願いします」
「六字大明呪というマントラです、ただなぜ今使うのか、その目的がわかりません……観世音菩薩のマントラだった気がしたのですが――」
「六字大明呪?なるほど、それで分かったわ」
と一人納得するパチュリー。
「ええっ!?パチュリーさん?で、では解説を」
「西遊記よ」
たった一言で解説を終わらせるパチュリー。
「すいません、もう少し普通の人にもわかるように……」
「ああっ!そうでしたか!私が続きを説明します!」
「あ、聖さんもわかったんですか?ではお願いします」
「はい、これは西遊記の再現です」
「と言いますと?」
「天の猿……斉天大聖は地の果ての五本の柱の一つの柱に名前を書いたのですが、それはお釈迦様の掌だったんですよ」
「なるほど、それで私のオンバシラか」
「はい、5本出したのもそのためかと、あと天子さんを執拗に猿呼ばわりしていたのもですね。これで天子さんは斉天大聖に見立てら――きゃあっ!?」
観客席まで響く轟音、そして土煙がはれたその先には――
「そして五行山、要石に五行霊符でしたか?で五行の力を与えて閉じ込めたのが……御覧の有様ですね」
「ふむ……「見立て」か」
「はい、おそらくですがこまめに要石に五行の力を与えてあげればあの拘束は500年もちます。そういう伝承ですのでってまたあの人は……!」
「おっと、拘束された天子さんに痴漢行為を働いているぞ!……なんで天子さん少しうれしそうなんですかね……?はい、皆さん少し落ち着いてくださいねー、明らかに空間歪むほどの念が出てますよー」
なお、一番出しているのは霊夢である。
「まあ、こうなったらもう彼の勝ちでウッドボールでしょ――え?降参!?なんでですか!?わたしあなたに賭けてるんですけど!?」
文の絶叫とともにこの戦いは幕を閉じたのであった。
夜
「ええ、もう、このじれったいですね!もうバッチ来いな状態じゃないですか!もし途中で目を覚ましてもそのまま接吻の一つでもすれば流されてしまうぐらいの状況ですよ!ああもう、ヘタレ!」
博麗神社の離れの前で永江衣玖が目撃されたとかされなかったとか。
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