夢をみた。
目を開くと高い天井が広がっていて誰かに抱えられている。
手足ははとても小さくて体は自由に動かない。
誰に抱かれているのかと顔を覗いてみるけどなんだか霞掛かっていてよくわからない。
—‼︎——!
突然の雷の落ちたような破裂音にボヤけていた聴覚が鮮明になっていく。
「リオは俺が守るんだ!……奪わせたりしない!」
雷にも劣らない怒号に意識はさらに鮮明になる。
その声にはすごく聞き覚えがあるけどこんな声色は知らない。
ぎこちなく首を折るも、相変わらず視界はボヤけていて意識ばかりがハッキリとしている。
大きな破裂音とチカチカと眩しい様は打ち上げ花火を連想させるが、
かわされる言葉はお祭りの空気からかけ離れる物だ。
「全てお前達を思ってのことだ。あの子には、まだ母親が必要だ。」
「そんなのは詭弁だ!どんなに言葉を飾っても結局は見捨てる事と変わらないじゃないか、……アンタは煩わしいだけなんだ」
音と光は激しさを増すばかりだけど声だけが耳にこびりついて離れない。
言い聞かせるような焦燥を含んだ余裕のない声の主はお爺ちゃんだろう、道場に遊びに行った時には蔵で遊んでいると、良く似たような声で怒られた。
「…ゃんだから、お兄ちゃんだから妹を守るんだ…もうおれしかいないんだ……リオを守れるのは、俺しかいないんだ!」
ドクンと心臓が大きく鼓動する。
そうだ、この声はお兄ちゃんだ。
でも、リオの名前を呼ぶ声には知らない感情が込められていた。
怒っているのか悲しんでいるのか、分からないけど、こんなお兄ちゃんの声は聞きたくなかった。
いつもの声を思い出そうとするけど鼓動がどんどん激しさを増して意識が霞んでいく。
目が覚めるんだと感覚的に理解した。
遠のく意識の中で兄の顔が一瞬だけ鮮明に見えた気がした。
ピピピピピピピ
目を覚ますと機械音が騒がしく鳴り響いていたが、目覚めのきっかけはドクンドクンと脈打つ心臓だろう。
「ん…」
いつもより早い鼓動にどんな夢を見ていたか思い出そうとするも焦りだけが残っていて一向に思い出せない。
この焦りはお兄ちゃんに会えば解消される。何となくそんな確信があった。
そうと決まれば急いでリビングに行こう。
お兄ちゃんは、いつだってリオが起きる時間には朝食の準備をしていた。
ドタドタといつもより大きな足音がなるなは、何だか力が入ってるからだ。
リビングに行くとテーブルにお皿を並べている背中が見えた。
走る勢いを残したまま腰に抱きつく。
「兄ちゃんおはよ!」
おっと、と少し声は漏れた物のその身体が揺れることは無かった。
こちらに振り向く顔を見るのが何だか不安で、ついうつむく。
「おはよう、リオ」
そう言って俯くリオの頭に温かな手のひらが置かれた。
リオを呼ぶ声はいつも通りに優しく、先の不安や焦りは何処かへ行ってしまった。
乗せられた手に自分の手を重ねたまま顔を上げると、後ろで纏められたリオと同じ青味かかった髪を揺らし切れ長の目を優しげに歪めていた。
「よかった!泣いてない」
「?泣いてるわけないだろ、もしかしてまだ寝ぼけてる?」
「ひどい!寝ぼけてないいよ!……ってあれ?
なんでだろ?」