魔法少女リリカルなのは 炎雷春光伝   作:しばらく

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2話 赤い落とし物 前編

 

それが起きたのは丁度お昼を食べに食堂へ向かっている時だった。けたたましいサイレンが鳴り響き緊急時の赤色灯が食堂への道を塞ぐ様に赤く染める。こうなって仕舞えば休憩もなにも後回しだ、と司令室へ駆けるのと、同時に通信が入る。

 

「こちらグリフィスです、八神司令、今はどちらにおられますか?」

 

「こちら八神はやて、いま食堂までの道をひきかえしてる。すまんけどみんなの指揮よろしくな」

 

「ハッ、現在ミットチルダ東部国立公園でガジェットドローンが確認されました。避難中の市民の話によると現地に居合わせた一般の魔道士が交戦中のことです」

 

「うちからの戦力は?」

 

「高町隊長とフェイト隊長にヴィータ副隊長が先行で現場に向かっています、フォワード各人もこれより向かわせます。ロングアーチは現場の確認を可及的速やかにおこなっております」

 

「それにしても、東部といえば娯楽施設くらいしかなかったはずなんやけど。何かをレリックと誤認しての動きか、うちらに探りを入れてるのか」

 

「それが…敵戦力は前回の廃棄都市区画での戦闘に匹敵しています」

 

「なっ!——」

 

あまりの事態に走りながらでも頭を抱える。

最悪や、民間人に被害が及びレリックの存在もかんがえられる、しかも完全にノーマークやった。

幾度と思考を巡らせても現状の情報量では大した成果も出ず脚を早める。

 

「了解、民間人の避難と現場の確認を最優先で、今の避難状況は」

 

「現在、陸戦の魔導士が避難誘導をしていますが交戦中の一般魔導士にはガジェットが密集していて近づけない様です。サーチャーを飛ばして戦況の確認を——映像きました!」

 

「もう直ぐ司令室に着きそうやから続きはついてからや」

 

そう言って通信を切り目前に迫る司令部の扉を蹴破る様に開く。

 

「ごめん、お待たせな。…それで戦闘戦況は?」

 

「はやてちゃん!、それが…」

 

ロングアーチを取り仕切っていたリインがこちらを振り向く。モニターには居合わせたと言う魔道士の戦闘状況を映しているが…

 

「敵ガジェット部隊を圧倒しています!」

 

「なーーー」

 

映し出された少年は後ろ手に縛った髪を優美に揺らし舞う様であった、が対峙しているガジェットの尽くが打ち砕かれていた。

スバルのシューティングアーツとは違う独特の武術で近づく敵は潰し、飛行型を魔力で形成した刃で撃ち落とし、迫る増援は龍を模した砲撃で薙ぎ洗っている。

 

気がつけばグリフィス君とリインがこちらの指示を待っている、良く見ると司令室に詰める職員たちが緊張感を纏いこちらに意識を向けている。

 

「取り敢えずみんなご苦労さん、こんな大事な時に居ないなんて指揮官失格やね」

 

はにかみながらそう言と固かった空気が僅かに和らぐ。

今回の事件現場は普段と違い民間人が多く、判断が遅れればそれだけ被害が広がる。幾度となく敵を退けてきた確かな局員でもその身を硬くしている。

 

「まずは戦闘中の一般魔道士との接触を可能な限り早く、それからレリックの有無をたしかに」

 

「魔道士との接触を試みていますが強力なAMFによって念話は繋がらずデバイスへの通信もジャミングされています、現在は急ぎで中継機を飛ばして再度の通信を試みてるです!」

 

「レリックにつきましては既に確認されています、こちらを」

 

リインに続きグリフィスが映像を指す。そこには戦闘中の一般魔道士とその後方で多重のシールドに守られた少女が映っている。手元がズームされると無骨なケースが抱えられてるのがわかる。

 

「こちらの画像を分析すると先日の聖堂教会の管理施設から奪取された物と一致する事が分かりました」

 

「となると前回の戦闘でレリック奪取時に被弾していて何らかの故障によって彷徨い力尽きたってところやろか。気付かずにみすみす放置していたなんてお互い職務怠慢やなぁ…」

 

裏付ける様にガジェットは避難民に興味を示さず彼等に殺到している。幸運と言うには憚られるが絶好の機会だ何としても取り戻したい、が現状では不可能に近い。先行した3人が到着するのに少なくとも15分は必要だ、奴らの手に渡り其れだけの時間があれば今度こそ手が届かなくなってしまう。

 

可能とするには打てる手は一つしかない、だがそれは管理局員として余りにも反する行いだろう。

 

「中継機、到着しました通信はいつでもできますです」

 

「そんなら交信はうちが受け持つから、すぐ繋いで」

 

ここまでお膳立てされて交信まで任せて仕舞えば本当に私がいる意味が無いのだはないかと思ってしまう。

それと同時に指揮官が不在でも完璧に機能して迅速に対処できている様は、まさに即応部隊として組織した甲斐があったと言う物だ。

機動六課は元々、管理局の組織の大きさ故に小回りが効かず事態への対処が後手に回ってしまうのを憂いて結成した部隊だ。

その意義を遺憾無く発揮出来ているようでこれからの判断にも自信を持てる。

 

「通信繋がります!」

 

「こちら管理局です、聞こえていたら応答してください——」

 


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